不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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わっほい、完全に忘れてました・・・。


テスト勉強

 駅までの里程を自転車で突破し、駐輪場で徒歩へと移動手段を切り替える。駅に人は多かれど、周りの人間は俺を見ると蛇蝎を避けるが如く引いていく。

 

 さてと、どこに入ろうか。俺の愛するサイゼは使えない。この時期はどの店も中高生で活況を呈している。テスト期間が被るせいで面倒な。中学の奴らに会うのは面倒だし、かといって居なさそうなところは俺の財布、畢竟、高校生には少々お高い店になるわけだ。

 

 仕方がないので俺は小径に入り、閑散としたカフェのようなところに入った。カランと心地よい音が鳴り、瀟洒な店の内装が目に入ってくる。中にはマスターしかおらず、暗澹とした感じが俺好みなのだが、ちゃんとやっていけているのだろうか。結構な回数足を運んでいるはずだが、俺以外の客を殆ど見たことが無い。

 

「・・・いらっしゃい」

 

 マスターの声に軽く会釈し、隅の四人席に座る。ここに来るときは決まってコーヒー牛乳を頼む。そのままでも常人には十分甘いのだが、俺はそこに備え付けのミルクと砂糖をさらにぶち込む。MAXコーヒーはおいしいが、やはり店の商品はそれとは違ったおいしさを感じる。

 

 少頃、ここで屯在していれば小町からメールが来るだろう。ここならどれだけいても何も言われないし、そもそも回転率気にしなくてよさそうだしな。

 

 阿吽の呼吸のごとく、マスターが俺の席へと熱いコーヒー牛乳を持ってくる。注文しなくとも持ってきてくれるようになったのはいつ頃だったか・・・。

 

 俺好みの味に仕立て上げてから一口。くーっ、美味い! そんな言うほど飲んでないが。だって熱いもの。まあ冷ましつつ飲むのが一番だな。温いのは不味いからダメだ。コーヒー牛乳は熱いものか冷たいものに限る。

 

 歓待にあずかった俺はチャートを開き、ノートも広げる。ウォークマンはつけない。朴訥なマスターとは基本言葉を交わさないし、このゆったりとした店内の音楽は嫌いじゃない。

 

 因数分解と集合は大丈夫なので、取りあえず二次関数を仕上げよう。何々・・・範囲内のグラフの最大最少を求めるのか・・・。

 

~~

 

 一段落がついたので、ぐっと伸びをし、コーヒー牛乳のおかわりと腹ごしらえ用のサンドイッチを注文する。と、カランと音が鳴り、人が入ってくる。珍しいな。何気なくそちらの方を見ると、何やら見慣れた二人が・・・。

 

「あれ、ヒッキー!?」

 

 なんだこいつら。お前らがサイゼ行かないから俺はこっちに来たのに。

 

「こんにちわ。ここに来るのも数年ぶりかしら」

 

「・・・いらっしゃいませ。お久しぶりです」

 

「ええ。こちらこそ」

 

 え、何。雪ノ下もここの常連だったの? あー、まあでもありえなくはないか。由比ヶ浜とかはこんなところには来なさそうだしな。

 

「あっちに座りましょうか」

 

「え、ヒッキーのとこでいいじゃん」

 

「・・・はー。まあ仕方ないわね。一応彼も奉仕部部員なのだし」

 

 いや、来なくていいんだが。雪ノ下さんもう少し頑張ってくださいよ。

 

「紅茶とサンドイッチをもらえるかしら。由比ヶ浜さんは?」

 

「えっと・・・」

 

近くにあったメニューを慌ててとり、由比ヶ浜はむむむと唸りながら、

 

「じゃあフルーツサンドと紅茶で」

 

「・・・かしこまりました」

 

 注文を終えると、二人は荷物を抱えながら、俺の体面に座った。

 

「こんなところで会うなんて思わなかったよね! すごい偶然!」

 

 由比ヶ浜は同意を求めるかのように雪ノ下に笑顔を向ける。

 

「・・・まあ偶然でもないんじゃねえの?」

 

「え?」

 

 この世の全ては必然だ。なるべくしてこの世は成り立っている。既に生まれたときからこの先の生き方は決まっているし、もっと言えば生まれる前の地球が誕生する前から決まっているのだろう。それに踊らされていることにも気づかず生きていく人間はなんと愚かなことか!

 

 ・・・んー、俺もう高校生何だがな。まあ先生にも中二病・・・いや、あれはまだ心は小学生気分なんじゃ? あれに比べればまだましだし、人間だれしも中二病なる一面は持っているに違いない。俺がそうなんだからきっとみんなそうだ! あ、でもこれは自分が普通の人じゃないと通用しないな。俺じゃだめじゃん。

 

「無駄話をしている余裕があなたにあるの?」

 

 雪ノ下の怜悧な物言いに由比ヶ浜はたじろぎ、渋々カバンからチャートを取り出す。

 

「じゃあまず数学からやろう! ヒッキーもやってるし」

 

「そうね。私も数学からやろうかしら」

 

 まあ俺も続けるつもりだったからいいが・・・。この状況じゃ、イヤホンさしてた方が得策かな?

 

 カバンからウォークマンを取り出すと、雪ノ下も丁度音楽プレイヤーを机上に出したところだった。

 

「ちょっと何で音楽プレイヤー出すし!」

 

「は? こうでもしないと周りがうるさいだろ。特にお前が」

 

「皆で喋りながらやるんでしょ!?」

 

「それに、この音楽が気にならなくなってきたら、それが集中してることだってわかりやすいしな」

 

「それには同意ね。それでは一時間ほど各自でやって、その後、由比ヶ浜さんの質問タイムを設けましょうか」

 

「え、ええ~。ゆきのんまで・・・」

 

「お待たせしました」

 

 マスターがサンドイッチと各種飲み物を持ってきてくれた。

 

「わあ~、おいしそう! 取りあえず休憩にしようよ!」

 

「休憩ってのは今まで努力してきたやつがするもんだろうが」

 

「ここまで頑張って歩いてきたし!」

 

 赤ちゃんなら褒められるんだろうけどな・・・。

 

「ごゆっくりお楽しみくださいませ」

 

「ええ。ありがとう」

 

「そういやお前らサイゼ行ったんじゃねえのかよ」

 

「混んでたのよ。それに、うるさいところは嫌いなの」

 

「私も今日サイゼはちょっと・・・」

 

 じゃあ何で昨日提案したんだよ・・・。まあ俺もちらっと見た感じ混んでたからな。部活が無く、テスト週間一日目とか遊ぶためにあると思ってるやつが大半だろう。だって由比ヶ浜がそうなんだもん。由比ヶ浜が普通だからこそ生きるこの考え。

 

「私としては比企谷君がこんなところにいるのが驚きだったわ」

 

「そうそう! こんなおしゃれな店知ってるなんて意外!」

 

 まあ俺なんて見た目ヤンキーかもしれないけど中身ただの根暗なキモオタだからね。顔が多少良くて勉強できるただの人間だからね。・・・正直人間扱いされた記憶が少ないが。

 

「あー、まあ昔色々あったんだよ」

 

 ・・・本当に色々あったなあ。思い出したくないことや、黒歴史や、大失敗。いや、ほんと、消したくなるような人生しか歩んでねえな、俺。

 

 サンドイッチおいしいなあ・・・。




旅行行ってきてたので、時間が狂ってましたねえ・・・。

次回以降気を付けます。

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