テストが終わった。テスト週間中は家で勉強しており、特に特筆すべきこともない。今日から奉仕部が再開だと思うと若干憂鬱になるが、行ってしまえば割とどうでもよくなるので、まあいいか。本当なんだろうね、あのバイトとか行く前にすごく嫌になるの。行ったらやることに集中するから何ともないんだけど。まあ俺は何日かするとバイト行かなくなるんだが。
勉強のかいあって俺は学年一位の称号を得ることに成功した。国語や英語、社会などの文系科目は非常に良い出来で、特に平塚先生教える現代文は満点だった。数学は最後の難問以外は解けていたし、物理基礎や生物基礎なども平均は余裕で超えていた。
雪ノ下に勝てたのかと驚いたが、由比ヶ浜につきっきりだったこと、そして俺は春休みから先取りして勉強を進めていたことを考慮すると、妥当だと言えるだろう。ま、負けず嫌いな彼女がこのまま引き下がるとは思えないので、次はこうはいかないはずだ。そもそも俺は雪ノ下のような天才でもないし。
ガラリと奉仕部部室のドアを開けると、本を開かず、勉強をしている雪ノ下が目に入る。ほらな。思った通りだ。
「うす」
「こんにちは。由比ヶ浜さんはまだのようね」
「お前が由比ヶ浜のことを気にかけるのは珍しいな」
「・・・私が首位を取りのがしてまで教えたのだから、それなりに取ってもらわないと困るのよ」
「ああ、そう」
さてと。ぞれじゃあ俺は本を読みますかね。ペラペラとページを繰るとがらりとドアが開く。
「やっはろー!」
「おう」
「こんにちわ。由比ヶ浜さん」
「って、ゆきのんテスト週間終わったばかりなのにもう勉強してるの!?」
「一応土日挟んでるから終わったばかりというのも違うと思うのだけれど。それに、私はテスト週間関係なく勉強してるわ」
「まあ普段勉強してるやつはテスト週間にテスト勉強しないしな」
「え!? どういうこと!?」
「普段の勉強がテスト勉強になっているからテスト週間も普段のルーティンを崩さなくてもいいってことよ。まあ、今回はそれで失敗したのだけれど・・・」
「ゆきのんテスト悪かったの!? ふふーん、じゃあ私雪のんに勝っ」
「それはないわ」
「そんなこと! ・・・そんなこと、ないよね~、あはは」
「それで、由比ヶ浜さんはどれくらいだったのかしら? 成績表を見せてもらえるかしら?」
「え、あ、はい」
「・・・まあ、こんなものかしら。数学が両方平均以下なのは気になるところだけど」
「いや~、あたし友達にめっちゃ驚かれてたよ! 絶対下から数えた方が早いって思われてたって!」
雪ノ下が勉強見てなかったから確実になってたろうけどな。あと由比ヶ浜めっちゃバカにされてるな。本人気にしてなさそうだからいいけど。でも普段のこいつ見てたらそうなるのも必然か。
「そういやヒッキーはどうだったの?」
「あ? 俺はいいよ」
「あ! もしかしてあたしより低いから見せられないんでしょ!」
何かイラッとするな・・・。まあ雪ノ下の対抗心煽るのも面倒だし、見せないけど。
「お前よりは上だっての。どうせ三桁だろ?」
「う・・・そうなんだけど」
「まあ本人が言いたくないなら放置しておきましょう。何ならずっと放置しておきましょう」
おいそれただの無視じゃねえか。自晦してんのにいじめられるとかなにこれ人生ハードモード過ぎない? そもそも教室でも存在ほぼ無視されてるから才能ひけらかす場所すらないんですけどね!
大体人の順位とかどうでもいいだろ。必要なのは偏差値だけで十分。なのに周りのリア充どもは友達(笑)と天才だのばかだのと。俺からしてみれば総じてあほだ。べ、別に羨ましくなんかないんだからね!
・・・自分のツンデレって驚くほどかわいくないな。いや、そう思ったら思ったで相当やばいやつだとは思うが。
「やあ諸君、久しぶりの部活はどうかな?」
引き戸が音を立てて引かれ、白衣を纏いし愛煙家が現れた。ほんとびっくりするからノックしてくれませんかねえ? まあしないだろうけどさ。
「先生。いい加減ノックをしてください」
雪ノ下の声は苛立ちを含んでいるも、平塚先生は何とも思ってない様子。常人なら震え上がって反射的に土下座かますんじゃあねえかってレベルなんだけどな・・・。パワポケの投手なら間違いなく威圧感ついてる。
「まあまあいいではないか。奉仕部二人でワンツー決めて、私は気分がいい」
・・・この人すごい勢いで地雷踏まなかった?
「・・・一つお伺いしたいのですが」
「何かね?」
「まさか中間テストの首位はそこの・・・比企谷君なんですか?」
「なんだ、聞いていなかったのかね。そうだ。特に現国は満点だぞ! 教師冥利に尽きるというものだ」
俺の個人情報とは・・・。俺が折角明言を避けてきたというのに。
その瞬間、室内の温度がぐっと下がった気がした。その原因は言わずもがな氷の女王、雪ノ下雪乃の発する気だ。隣の由比ヶ浜とか身震いしてる。いや、気がするだけの話のはずなんだがな。きっと雪ノ下はファンタジー世界からやってきたに違いない。冷気を操る魔法少女、雪ノ下雪乃。必殺技はアブソリュート・ゼロ、相手は死ぬ。
「久しぶりだから様子を見に来たがいつも通りのようだな。それでは私は職務に戻るとするよ。色々な雑務が溜まっていてな。・・・若手は押し付けられるものだ。うん、私は若手」
白衣を翻すと、平塚先生はそのまま出て行った。爆弾だけ落として帰っていきやがったよあの教師。
「・・・え、えーっと・・・ヒッキーおめでとう?」
おい空気読め。話題を転換しろよ! いっつも訳のわからん話の飛躍するくせにこういうときは普通なのかよ。しかもその賛辞の仕方は嬉しくない! 何で疑問形? 雪ノ下に気を遣うんならしない方がよかったよ!
「・・・私からもおめでとうと言っておくわ」
・・・こええよ。もう顔がね、目がね、本当に怖い。氷漬けにされそう。ダイ大のレオナ姫みたいに。でも一つ違うのは、俺には助けに来る仲間がいないのでそのまま死ぬことですね。
今日の部活は最悪なり。誰だよ、行ったらどうでもよくなるとか言ったやつ。本もまともに読めないよ! やっぱり部活ってクソだと思いました。ついでにバイトも。
バイトある日に書き始め、バイトある日に書き終わったら、こんな風になりました。
原作読んだのは半年くらい前で、その後にSS読み漁ってたので、どうしても内容が混同したり、記憶の新しい他作者様のSSの方に作品やキャラが引っ張られる可能性があります。ご了承を。