不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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テニス 6

 サーブ権がこちらに移って俺のサーブから試合が始まる。

 

「お前やっぱサーブだめな」

「うるせえ庭木戸。雑魚相手ならいけると思ったんだよ」

 

 聞こえてんだが・・・。他の奴に聞こえたらお前のサーブで点とられたやつらがどう思うか。まあ俺には関係ないか。

 

「ま、俺も神庭のサーブに期待はしてなかったがな」

「うぜえ怪力デカブツ野郎が。次取らなきゃ負けんぞ」

「余裕だろ。てめえこそ疲れて死にかけじゃねえか」

「誰が! 見とけよカス、俺のレシーブからだ! 舐められたまま終われるかよ」

 

 こちらへの視線でわかる。向こうのサーブでセット取られてるのに未だに見下されている。何か秘策があるのか? しかし神庭は口わりいな。すっげえ睨んでくるし。とまれこうまれ、このセットも神庭狙っておけば問題ない。材木座には狙わせないが。変に狙わせると奴の場合ミスショットする可能性が高まる。

 

 こちらのアドでサーブ打てるのはでかい。ここで取らなければ庭木戸の高速サーブがくるのか・・・。

 

 一球目、俺のサーブ。ここが大事! 内側を狙うと材木座に返されたとき、差し込まれる。来た方向に返せるならいいのだが、バックでは難しいだろうし、右で打つと引っ張って次に神庭が打つときに材木座との打ち合いに持ち込まれる。俺がフォローに行ったら対角線に打たれて終わる。

 

 ここは俺がサイドギリ狙って打つ。材木座はあらかじめサイド寄りに待機させといて、神庭の球に備えさせておく。これなら打ち合いになるだろうが序盤は有利になるはず。ただ材木座に決めさせるのはさすがに荷が重いか。素人どうしの相手なら大分できるが、腐っても相手はテニス部だ。

 

 ・・・サービスエースか、少しでも材木座が有利になるように、全力で狙ってくか。せーの・・・。

 

 深く遠くを狙って全力で打つ。球速だけを大事に回転は気にしない。余裕で追いつく神庭だが、さすがに簡単に返せるような球は・・・。

 

「!?」

 

 俺に返してきた!? しかもさっきよりはやい!

 

「ぐっ!」

 

 ギリギリ真ん中に返せた。フォアなのにおもっきり差し込まれた。でも神庭もバックでは・・・庭木戸!? ヤバイ! バックで打つコースに返された!

 

 圧倒的なスピードについていけず、弾くのが精いっぱい。当然相手のコートにすら入らず点を取られる。

 

 ・・・神庭の球速が上がっているのは動いているボールをフォアで打ったからだ。サーブのように止まっている球を打つときは力を込めにくい。逆に速い球は打てばスピードが出る。

 

 ただ神庭が俺を強烈に意識しているのは嬉しい誤算だ。材木座を狙われないだけで生存率は格段にあがる。材木座には悪いがな。

 

 問題は庭木戸がレシーバーのときだ。素直に俺に返されても俺が返せない恐れがある。そこまではいかなくともコースに決めるのはかなり難しい。フォアでもそうなのに、バックではなおさら。

 

 ここから勝ちを拾うにはどうすればいい?

 

 サーブも簡単に返された。思ったよりも楽そうに。あいつらの才能が予想よりも上回っている。

 

 ジャンプサーブは? 勢いつく分威力は増すだろうが・・・返された場合こちらが動きにくい。態勢整えるのに一苦労だし、体力もかなり使う。

 

 ・・・これが俺の限界なのだろうか? 次のサーブも軽く返され、俺への集中砲火。段々とじり貧になり、最後は前に落とされる。

 

 俺に才能はない。今まで培ってきたものも少ない。努力しても天才には勝てないのは自然の理だ。でも・・・あいつらは天才なのだろうか?

 

 以前戸塚のランク付けにおいてSにしなかったのは、彼より面倒な人間がいたからだ。

 

 俺は知っている。誰も適わないような天才を。圧倒的才能を。神に愛された人間を。

 

 あれに比べたらこんなのは何でもない。俺が勝てない道理は・・・ない!

 

「師匠、大丈夫ですか?」

 

「・・・ああ」

 

「・・・? ・・・ひっ!」

 

 材木座の方向を見ると、大仰な仕草と共に顔を引きつらせる。もう俺の目付きにも慣れてきたと思ったんだがな。まあどうでもいいか。




次週テニス編完結・・・かな?
眠い

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