「初めまして、戸塚彩加です。今日はよろしくね」
「初めまして、雪ノ下雪乃です」
お互いのことを知らないのは戸塚と雪ノ下だけなので、彼女らの自己紹介だけをすます。そこにコミュ力の鬼由比ヶ浜が入り、そこはかとない百合の香りを感じる。うーん、戸塚は男のはずなんだがな・・・。
「じゃあ早速始めましょうか。まずは各自準備体操をして、軽く打ち合いから」
「堅い堅い堅い! ゆきのん堅すぎだよ! もっと緩く! 最初から適当に打とうよ!」
「・・・? あなたが楽しみたいと行っていたのだけれど。こういった催し事で楽しむと言ったら敵を倒すことによる優越感を感じるだけでしょう?」
俺並みにひねくれた考え方のやつがいた。というか論理的にぼっちが考えればそうなるのは至極当然のことではあるが。由比ヶ浜の言うような楽しみ方はリア充特有のものなのだから。
「ある程度真剣にやることで見えてくるものもあるだろ。それにお前まともにトスあげられんのか?」
「バカにすんなし!」
ヒョイと俺がボールを放ると、由比ヶ浜はすぐさま落下点に行き、そして勢いよく腕を振り上げた。当然基本動作から大きく外れるためボールは狙ったところには行かず、あさっての方向へ。
「あ、あれ?」
てってっと戸塚がボールを拾いに行く。こういった、人が嫌がる仕事を率先して行うあたり、戸塚がリア充だなあと感心ながらに感じる。誰もに好かれる人間というのは得てしてこういうものなのだ。誰もにというのはあり得ないが。ならば大多数の人間に、か。
こうして由比ヶ浜のだめさ加減を目の当たりにした雪ノ下がそこで放置しておくはずもなく、徹底指導が行われる。
「ボールをもっと引きつけて、押し出しなさい」
「違う。指や腕だけじゃなく体全体を使うのよ」
うーん、指導力も流石すぎる。雪ノ下家の人間は全知全能なのかもしれない。
「比企谷君。気色の悪い視線をこちらに向けるくらいならばボールでも追っていなさい。ただ突っ立っているだけならカカシにもできるわよ。いえ、野菜を守る仕事がある分比企谷君よりよほど優秀ね」
そしてこの視野である。罵倒も斟酌することなく、俺にダメージを蓄積させていく。いやまあそりゃ健全な男子高校生の近くで由比ヶ浜級の女が跳んだりはねたりしてたらそら見ますよ。見ますよね?
「やかましいわ。俺だってそこそこ優秀だっつの。戸塚、やるか」
「・・・いいの? あんなこと言われてるけど」
・・・あー、まあ最初は驚くよな。そういやこういったやりとり由比ヶ浜や平塚先生の前以外でやるのは初めてか。平塚先生なんざ一緒になって遠回しに貶してくるし、由比ヶ浜に至ってはすごく仲がいいだのとほざきだすし、戸塚と一緒にいると正常というものを再確認できる気がする。完全に俺は異常よりだけれども。
「いいんだよ。挨拶みたいなもんだから」
特に俺にしてみれば小学校から散々言われてきたことだしな。これが挨拶なら俺超人気者じゃない? 挨拶しかされないけど。
バレー練習1日目、男女に分かれて練習という何のために集まったのかわからないが、由比ヶ浜は確実に上達していた。雪ノ下の教えがいいのは確かだが、由比ヶ浜も流石リア充であり、運動神経は悪くないどころか、いい方だろう。飲み込みが早く、トスを上げる程度なら上も下も難なくこなせるようにはなっていた。当然緩いボールではあるが、球技大会のしかも女子であればそれで十分だろう。バレー部や、雪ノ下といった猛者などと会うことがなければ、ではあるが。
「そろそろお昼休み終わるし、教室戻ろうか」
「うん! 今日はごめんね? あたしのせいで・・・。明日からは皆で打とうね!」
「そうしよう! 由比ヶ浜さん大分上手くなってたもんね!」
球技大会まであと一週間。俺は予定通り事を進めるため、尽力するだけだ。
週6バイトとかいう訳のわからない一週間を乗り切った作者。
昨日の土曜日に至っては9時間労働という社畜っぷりを発揮していた。
定期投稿を断念したため余裕はあるものの、今年の目標である一年生編完了を達成することはできるのだろうか?
次回、夏の球技大会 8
~激突! 比企谷vs雪ノ下!~
絶対見てくれよな!
・・・すまんな、最近忙しすぎて頭がおかしくなっているようだ。反省はしている後悔はしていない。次回はまだ書いてないのでサブタイ通りになるかもわからん。これからレポートを完遂させなければならないのでこの辺で。