昼休みバレー練習二日目。昼飯をさっと終わらせた俺と戸塚は早めにボールを打って遊んでいた。
「比企谷君バレーも上手いんだね!」
「そうでもないぞ」
単に人より練習しているだけだろう。それが唯一の自己肯定手段だというだけだ。俺に才能はない。
戸塚があげたトスに呼応するようにジャンプし、仮想コート横奥ギリギリを狙って右腕を振り下ろす。・・・つっても俺の慎重とジャンプ力じゃ、下手すりゃホームランだ。かといって角度が急すぎればネットにかかるし、全く難儀なスポーツだ。そこが魅力でもあるんだろうが。
「あら、早いのね。比企谷君はそんなに日の光に照らされて体は大丈夫なのかしら?」
黒い髪をサラリと靡かせながら、絶対の雪ノ下が現れた。鬱陶しそうに髪を払う仕草もシャンプーか何かの宣伝かと見間違えるほど様になっている。
「そりゃ俺をゾンビか何かと勘違いしていないか?」
「遅くなってゴメーン!」
校舎から駆けてくる由比ヶ浜が俺の声を遮る。俺には雪ノ下に弁明することすら許されないのだろうか? そういやこいつは友達とは練習しないのだろうか。リア充を筆頭にクラス内では同じ球技の練習をしているのが通例だ。友達が真剣で無いにしろ、クラス内でやる状況になったにも関わらず、先約があるからとこちらにこさせてしまうのは忍びない。
「そういやお前らクラスのやつらとはやらないのか?」
「あたしのところは大丈夫だよ! 放課後に集まってやるから! あ、だから今日から奉仕部は休むね!」
「僕もそんな感じ。比企谷君も来る?」
「いや、いい。そろそろやろうぜ」
俺の言葉を皮切りに、二対二に別れ、打ち合う。勿論男女で別れている。戸塚は雪ノ下のことを気にかけていたが、事情を知っている俺や由比ヶ浜が動いたから戸塚も動かざるを得なかっただろう。彼も今の雪ノ下の立ち位置を知っているだろうし。
雪ノ下は別に虐められたり、避けられている訳ではないが、彼女自身は神聖視されているのか、あまり話しかけられたりはしないようだ。告白は時たまされているようだが。こういう時の情報はどうやって広まっていくのだろうか? 由比ヶ浜の情報収集能力は目を見張るものがある。
トントンとトスを上げては三回以内に相手コートに返すことを繰り返す。アンダーもオーバーも確認したし、そろそろ打ってくかと戸塚に目配せする。コクリと頷くとスッと頭上に高くボールが上がる。
一球目は雪ノ下を狙って・・・打つ!
流石雪ノ下、戸塚が動作に入った時には既にレシーブの構えをしていた。場の空気を読むことはできないが、スポーツでの対応力は並のそれではない。本気で打つつもりはなかったが、それでも力は込めた。しかし、落下ポイントに難なく入った彼女は事も無げに由比ヶ浜がトスしやすいようにボールをあげる。
由比ヶ浜も高くトスを上げ、雪ノ下がスパイクの用意をする。雪ノ下の性格上戸塚には打たない。それはまさしく鳥が飛ぶかのように美しく、思わず目を奪われる。そして振り下ろされる腕は完璧にボールを捕らえ、手加減という単語など知らんとばかりに強烈なボールを発射する。女子だからという言葉は彼女には通用しなさそうだ。腕がしびれてやがる。でもまあ、上げること自体は何ら問題ないがな。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、雪ノ下を挑発する。彼女ほどの負けず嫌いなら乗ってくれるはずだ。さあ来い、お前ならいい練習相手になる。・・・そんな顔を歪めるほど俺の笑顔は気持ち悪いか、雪ノ下さん。
生存報告と書く意思が残っていることを表明します!
ただ、夏休みはアイマスのSSを書きたかったりするんですよね・・・。こちらも頑張りますが。