誰が為に征く   作:駆華野 志想之介

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…………_(:3」z)_

くりっく?
くらっく!


ギルド活動

 

side––––ライ・クラッド

 

まるで中世のイタリアにでも来たかの様な街並みが広がる、第十八層の主街区の外れ。

カエデに連れて来られた宿屋付きの酒場で、俺はやつらのギルドメンバーの三人目と会うことになった。階段を登った二階にある宿の部屋で、ガタイのいい男二人と、愉快げに笑っているカエデに囲まれる形で、俺は椅子に座っていた。

 

「こほん、それじゃあ紹介するわね。こちらがライくん、ロベールはいいとして、これからわたしたちの仲間になるわ」

「よろしくねぇ」

「…………」

 

にこやかに笑いかけてくるガタイのいい男その一、もといロベールは俺に手を差し出してきた。握り返すと満足したのか、隣のガタイのいい男の背中を叩く。

 

「ほらぁ、きみも挨拶くらいしなよ」

「む…………。ミケだ、よろしく」

「あ、ああ。よろしく」

 

椅子に座ったまま軽い会釈をされたので、つられてこちらも頭を下げた。後から知ったことだが、ミケのプレイヤーネームの表記は《Mike》と書いてあるが、マイクではなくミケと読むそうだ。

自己紹介はあっさりと終わり、ギルドリーダーであったカエデ(最初に会った時にロベールをギルドリーダーだと仄めかす発言は、俺を騙す嘘だったらしい)からギルドの勧誘ウインドウが表示された。

【カエデからギルド:Dragon Tooth warriorに招待されました。加入しますか?】

俺は迷うことなく、ウインドウ下部に表示されたYESの表記を押す。すると視界端のHPバーの横にギルドタグが新たに表示された。

 

「ようこそ、我がギルドへ」

 

そう言って笑いかけるカエデにつられて、その場の全員がにやりと笑ったのだった。

 

 

===================

 

 

side––––ライ・クラッド

 

「さてみんな、ライくんが入ったことで、わたしたちのやるべき事の効率が上がるわよ」

「おい、それはなんのはな––––」

「それじゃあ行くわよ」

「聞けって、一体なにを––––」

「「金稼ぎだぁっ!」」

 

そう叫ぶなり宿屋を後にしたカエデとロベールに、俺はぽかんと口を開いたままだった。残ったもう一人、ミケが俺の肩をポンと叩いた。

 

「ギルドホームを買うための資金集めだ、お嬢もロベールも、最近疲れてきているようだ」

「Oh, I see……」

 

憑かれてるよ、アレ。取り敢えず、モンスターと戦うところを観察するだけでも、得るものはあるはずだ。そう思い、俺たちはさっさと二人の後を追った。

 

 

二十八層の迷宮区で資金集めのためにモンスター狩りをしつつ、俺はギルドメンバーとなった三人の戦い方を観察していた。

カエデはモンスターに素早く近づいて攻撃し、モンスターからの攻撃は危なげなく躱していくスピード型。

ロベールは攻撃を仕掛けると言うよりはカウンター主体という戦い方だ。しかし、モンスター相手ではカエデと似たような動きになっていたが、どちらかといえばテクニック系だろうか。

ミケに関しては、反射神経というのだろうか。相手の攻撃を見てから躱すという回避をし、重量感のありそうなハンマーをスイングするというパワースタイルだ。

まさに三者三様といった戦い方をしており、学べることは多いようだ。

そのまま数時間、俺たちは狩りを続けた。結果としてはそれなりの額を稼ぎ、尚且つモンスターの爪やら皮やらがドロップした。

その後、迷宮区内の安全エリアで昼食を兼ねた休憩をすることになり、ロベールが手作りしたという弁当を四人で囲んで食べることになった。驚きなのはロベールが料理スキル持ちなことだが、それ以上に弁当がうまかった。NPCレストランよりも味がしっかりとしていて、食べるというのはこういうことだと改めて感じることができるほどだった。

昼食を終え、さて狩りをしようかと立ち上がったところでカエデに止められた。安全エリア内にはMobがわかないので、これから模擬戦を行うのだとか。

二つ返事で俺は了承した。決闘の間ロベールとミケは先ほどまでのように狩りを行うようだ。

 

「ちっ……ミトといいあんたといい、なんでこんなに強いんだよ」

「全ては経験故よ、君にはそれが足りてないということね」

 

決闘の結果は俺の負け。動きををこちらに合わせてくれはするものの、やはり経験と技術の差が大きいようである。反省会のように、カエデが試合後に端的にアドバイスをくれたので、それをヒントに後は自分で考えるのみだ。

 

 

ギルド加入から一ヶ月経過する頃、俺のレベルは三十二に上がっていた。最前線を走るやつらとのレベル差はまだまだあるが、別に俺は攻略組に入るなんてことは考えてはいない。これまでに様々な知識や技術を教え込まれた。模擬戦はカエデ以外の二人とも行い、最初は一方的であったが、次第に動きにも反応できるようになっていた。

今日も迷宮区に篭り、カエデたちにサポートを受けながらレベリング兼金策のMob狩りをし、休憩中には模擬戦で経験を増やす。

カエデからは体術や気配の消し方を、ロベールからは武器の扱い、ミケからは相手からの攻撃の対処の仕方を学び少しずつ己の糧としていく。

体を使うことのほかにも様々なことを教え込まれた。攻略組にはどんな奴らがいて、武器は何を使うか、どのようなギルドがあるのか。狩りで溜まった余分な素材はどこで売るのが良いかなど、その他にも多岐に渡った。

修練に打ち込む日々のある一日、その日は朝にミトが宿屋に訪ねてきた。傍らには、カエデとの決闘の際にいたロノミアもいる。

 

「こうやって会うのは初めてですね、ライくん。ロノミアです」

「……よろしく」

 

にこやかに笑いかけ会釈をするロノミアに挨拶を返す。まず初めにカエデが部屋を訪れ、ロノミアを見つけて会話に花を咲かせ始め、様子を見にきたロベールとミケは開け放しになっている部屋のドアからこちらを一瞥すると、迷宮区に行ってくると言って出て行った。

 

「調子はどうだ」

「順調。……何しに来た?」

「お前に渡すものがあってな」

 

ウインドウを操作したミトからトレードの申し込みが送られ、聞いたことのない名前の片手剣が一本トレード欄に表示された。ウインドウをみて、こちらからも何か出したほうがいいのかと聞けばミトはいらないと拒否した。渋々トレードを了承し、貰った片手剣を装備してみる。淡い光を放って、騎士が持つような形状の、白亜の片手剣が右手に実体化した瞬間––––。

 

「––––ッ⁉︎」

 

剣が床に当たり、紫色の《破壊不能オブジェクト》を示す文字列が表示される。

驚くべきは剣の重さにある。間も無く攻略組に追いつくであろうレベル帯にある俺の筋力値を以ってしても、この剣は持つことすらままならない。

 

「なんだ……こいつは?」

「単なるドロップ品だ。性能はいいが、俺は使わねえからな。それはくれてやる、使いこなしてみせろ」

 

目標からの期待。それはこの上なく、俺を刺激した。全身が総毛立ち、口角が獰猛に上がる。それに応えるようにミトも愉しげに目を細めながら、ロノミアを引きずって帰っていった。

残った俺とカエデは、先に行ったロベールとミケを追いかけた。先ずはこのとんでもないじゃじゃ馬な剣を使えるだけの筋力値を伸ばさなければならない。武器を選り好みする気は無いが、ミトに使いこなせと言われた以上、やり遂げてみせるという気持ちがある。

 

「ライくん、貰った片手剣の名前はなんて書いてあるのかしら?」

「あん? ええっと、《シーカー》だな」

「…………へぇ。それはまた、君にぴったりじゃない」

 

シーカー、直訳で探求せし者。なるほど確かに、“強さ”を求めようとする俺には似合いの剣だ。

 

 

===================

 

 

side––––NO

 

SAOにおいて、プレイヤー層は攻略を主眼に置くトッププレイヤーである攻略組、最も数の多い中層プレイヤー、そして始まりの街から出ないプレイヤーの三通りに分けられるだろう。

プレイヤーの大半が活動する中層はそれなりに活気に満ちており、行き交う者は多い。そんな中での話題は、プレイヤーの事についての頻度が高い。一番は攻略組のメンバーについてだ。一部を除いてその多くは最前線に宿を取り、最短で攻略を行うべく中層には滅多に降りてこない。特にSAOに数少ない女性プレイヤーについて語る者は多い。実際に最前線の主街区に赴き、その姿を見てきたと語る者にそれを羨ましいと言う者達の姿は珍しくない。

そして攻略組以外にも、話題に上がるプレイヤーは存在する。後に小竜をテイムし、竜使いと呼ばれるようになる少女がいるが、それは今ではない。

現在の中層で有名プレイヤーといえば《歌チャン》と呼ばれる少女が上がるだろう。《吟唱》スキル保持者であり、毎夜どこかの転移門でその歌声を披露することからファンは多いようだ。

そしてもう一つ。顔をフードで隠し、身体もコートで覆い隠している小柄なプレイヤーの噂がある。

消えたと思えば、背後にいる。

それが姿とともに広まっている情報だ。事の発端は中層プレイヤーが数人でパーティを組んで迷宮区に狩をしに入った際、槍を操る全身をフード付きコートで隠したプレイヤーを発見。パーティのリーダーが、一人では危ないだろうと声をかけようとした。しかしそのフードのプレイヤーは横道に入り込んで姿を消した。索敵スキルに反応が無いことから、それなりにレベルの高いプレイヤーであると判断し、引き返そうと結論付けたところで最後尾で背後を警戒していたプレイヤーが「……あっ」と声を上げた。

その声に前を向いていた全員が振り返り、驚愕した。先ほど前方で消えていったフードのプレイヤーが、振り返った先にいたのだ。

そしてまた消え、再び前方に現れる。

パーティは気味が悪くなり、急いで来た道を引き返した。そのパーティによって話が広まり、フードを被ったプレイヤーは《ゴースト》と呼ばれて怖がられ始めた。

 

 

『…………?』

『ん? どうしたの』

『ううん、なんでもないわ。行きましょう』

 

中層で活動するプレイヤーの中で、珍しいものを見るかのような視線を向けられる女性プレイヤーコンビが存在する。彼女たちの会話は全て英語でなされ、義務教育を受けただけの者が多いこともあり、二人の会話の内容を理解できる者は少ない。

最近になって中層に現れた二人のことを知る者は僅かで、ファンのような者は形成されていない。しかし、コンビの片割れは海外の血を引いた人物らしく、端麗な容姿をしていることから注目を集めることになっている。

そして二人を見つめる双眸が静かに佇み、その牙を研いでいた。

 

「もうすぐ、愉しいショウ……だなァ」

 

 

 




四千文字……少なかったですね……
チョット書くネタに困るこの頃、原作片手にできないのは痛いですが、楽しんで書きたいと思います。

はつかねずみがやってきた
はなしは、おしまい
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