魔法少女リリカルなのは〜君だけの旅路〜   作:テノト

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これを含めてあと3話で無印編は終了です。
他の作者様の作品よりもあっさり終わるように感じる方が殆どだと思います。


10話

「どうやらなのはが勝ったみたいだな、リンディさん」

 

神影は胸を張って誇らしげに言った。

勝って欲しいとは思っていたものの、新参者のなのはが勝てるなどアースラのクルーは誰一人として思っていなかった為、空いた口が塞がらないでいる。

なのはの規格外な才能が顕著に見えた。

 

「まさか勝ってしまうとは思わなかったけれど……いいわ。クロノ執務官、そこにいる参考人重要参考人を引き連れて帰還して頂戴」

「みんな、船に帰るまでが任務だよ」

 

リンディはクロノに指示を出し、射人は(自称)渾身のギャグをかましたところ、全員にスルーされて凹んだ。

そんな時、今通信をしているクロノ達の背後に一人のクルーが気付いた。

 

「艦長、現場上空の次元に小さな歪みを観測。一体なんでしょう?取り合えず、モニターに写します」

「特に変わったところは見当たらないけど……、ちょっとここの当たりを拡大して頂戴」

 

クルーが写した歪みの映像の丁度真ん中を指差して言った。

拡大するとそこには……。

 

「ッ!すぐにクロノを呼び戻して!」

 

魔法陣が浮かんでいた。

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

なのはが落下していくフェイトを追いかけて海へ飛び込む。

フェイトの意識はなく、眠っていた。その顔はとても心地のいい顔だった。

 

「フェイトは……負けたのかい……?」

 

アルフがディーに尋ねるとディーは頷いた。

 

「互いにプライドと自分等の気持ちをぶつけ合ったのだ。負けても勝ってもどちらとも後悔すまい。しかし問題はこれからだ」

 

そう言って空を仰ぐ。

なのはの腕の中でフェイトは目を覚ました。

心配そうに駆け寄るアルフとアリサ。しかし、フェイトの視線はそこにはなかった。

ディーと同じところにあった。

 

「母……さん?」

 

ディーとフェイトの目線には魔法陣があった。空は歪み、魔法陣はズンズン大きくなっていく。

 

「逃げてッ!!」

 

フェイトは咄嗟になのは達を突き飛ばした。

そしてフェイトに向かって魔法陣から放たれる、極太の紫電。

しかし、フェイトに当たることはなかった。

ディーが魔法を逸らした。

 

「フェイト……私の可愛いフェイト……」

 

結界内にプレシアの声が響き渡る。

 

「さあ、そこにいるお方を連れて来なさい。私の大事な大事な客人なのよ……さあ……」

「いや、我だけが行こう」

 

プレシアの言葉に震える身体で魔力を編もうとするフェイトを制してディーは言った。

 

「構わないわ……。さあ、来て頂戴」

 

ディーの前に転移用の魔法陣を出すプレシア。

 

「アリサ、艦長にディーはハッピーエンドの為の交渉の席へ出たと伝えておいてくれ」

 

そう言い残してディーはその場を去って行った。

ギリリッと歯を軋ませて唇を噛みながら悔しそうに返事をすると、帰りましょ、と言った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

クロノが帰るとアースラではアラートが鳴り響いていた。

 

「何だ!?何が起きているんだ!?」

 

クロノは叫んでブリッジへと走る。なのはやアリサ達も一緒になって走る。フェイトは魔力の使いすぎで立つことすら儘ならないため、アルフに抱えられている。

 

「母さん!」

 

クロノがブリッジへ駆け込んだその時に、衝撃がアースラに来た。

とんでもない轟音とともに激しく揺れるアースラ。断続的に続くそれは正に嵐。この例えが優しく感じるくらいに、人や書類や機器が宙を舞った。

 

「一体何なんですこれは!?」

「多分アースラに広域殲滅魔法がぶつけられたわ。しかもかなり手加減されたもの。私達の命ではなく、アースラの機能停止を狙った攻撃ね」

 

書類と人の山からひょっこり顔を出して淡々と状況を把握するリンディ。しかし、

 

「おまけに最後の最後までこっちが狙いというのを見せない為に広域殲滅魔法に隠蔽術がかけられていたわ。しかも自分を囮にして隠蔽術自体にも気付かせない為の派手な演出。見事にやられたわ……」

 

目元と眉毛がピクピク動き、額には青筋が浮かんでいる。

 

「クロノ久しぶりに模擬戦やる?母さんと」

「母さん、絶対八つ当たりだよね?」

「大丈夫よ。ハンデとしてデバイス使わないわ」

「いや待ってデバイスなしだと非殺傷設定使えなくない?実の息子殺すつもりだよこの母親!」

「ま、冗談は置いといて」

 

咳払いを一つして内線でクルー全員へ呼びかける。

 

「アースラは先ほどの攻撃により巡洋艦としての機能を停止しました。しかし、拠点にはなるでしょうし、この事件を解決するまでは本局への帰還なんて出来ません。よって、この任務は続行します。しかし、恐らくこの事件もあと少しで解決になると思います。それまで頑張りましょう」

 

リンディの指令にクルー全員は敬礼した。

 

「リンディ艦長、一ついいですか?」

「何かしらアリサさん」

「私のデバイスの管理人格のディーがプレシア・テスタロッサと交渉すると言って、プレシアのところに行きましたがそれについて何かありますか?」

「彼は何と?」

「ハッピーエンドの為、と言ってました」

「勝手に動かれると困るのだけどもねぇ……。会ったことも無いですし、こちらの事なんて知らない筈だわ。不問にするしかなさそうだわね……」

 

全員でブリッジの片付けに取り掛かったところ、リンディの深い溜め息が響いた。

そうこうしてる間に、フェイトは医務室に運び込まれた。

医務室はブリッジ程散らからなかったものの、少しは散乱してしまったため、フェイトの精密な検査は出来ない。しかし簡易的なものの診断によると、単なる疲労と魔力切れによる気絶らしいのできれいにしたベッドの上で、今は静かに眠っている。

 

「フェイトちゃんのお母さんは、何で雷なんて落としたの?」

 

なのははアルフに尋ねる。

プレシアの取った行動がなのはにはとても信じられないものだった。

 

「アイツはそういう奴さ。いつもフェイトを虐めて、鞭打ってさ……。今ここにフェイトを連れてきて正解だよ。ここならあの鬼ババァからフェイトが何かされることもないし」

 

ここで本当によかった、と気持ち良さそうに眠るフェイトの頭を撫でて微笑みながらアルフは答えた。

 

「取りあえず、あの人はフェイトのことを自分の子供とは思えていないみたいね」

 

リンディにディーのことを報告し終えたアリサが入ってきた。

 

「そうだな。院長に悪さしてるチビがよく雷落とされてたが、本物は落とさないな普通は」

「晃毅、意味合いが若干ずれてる」

「にしても、フェイトって滅茶苦茶腕細いな」

 

晃毅と射人でバカをやってると、神影がフェイトの腕をマジマジと触った。

瞬間、アルフの拳が神影の頬を捉えた。

ブンッ!と派手な風切り音を立てて壁まで吹き飛ばされた。

 

「って~な!。俺なんかした!?」

 

なのはに尋ねたところ、返答は肉体言語だった。壁となのはの拳の間に挟まれて痛みは倍増。なんかもう顔の至るところから血が出て腫れている。

バッとアリサを見ると一言言われた。

 

「変態」

 

自分がしたことを思い出して、そのアレさ加減からか、只の紙切れのようにその場に横たえた。

 

「みんなここにいるみたいだな」

 

クロノが部屋に入ってきた。

神影が横たわっているのを見て見ぬ振りをしてアリサやなのは達の横まで来る。

 

「アリサのデバイス、でいいのか?ディーがプレシア・テスタロッサとの交渉の席に赴いた時に、プレシアが出した転移魔法から位置特定が出来た。プレシアの住む時の庭園に武装部隊を陽動にし、少数部隊で確保に向かうという作戦だ」

 

作戦内容を読み上げながらフェイトの寝るベッドの横にある空いている椅子に腰を掛ける。

 

「僕は勿論小数部隊で確保に回るが、なのは達、今回の作戦に参加しないか?」

「今更だよクロノ君。みんな参加するよ」

「ありがとう。ここまでやらせといて今更だとは思うが、一応の確認だよ。恐らく、今までで一番辛くなるだろうからさ」

 

その場にいる海鳴組が全員力強く頷いた。

 

「ところで君たち2人はどうするんだい?起きているのだろう」

 

そうクロノが言うとフェイトは恥ずかしげに身体を起こした。フェイトの手にはなのはの手がしっかりと握られていた。

 

「……私は行きたい。多分、母さんは捕まると思う。けど私はそれだけの別れ方は嫌。ちゃんと話してお互いをはっきりさせたい。行っても構いませんか?」

 

フェイトは瞳に力を宿してクロノに頼んだ。

アルフもフェイトがあるとこあたしありと言うように頼み込んだ。

クロノは薄っすらと笑みを浮かべて言った。

 

「それじゃ万全になるまでは寝ていてくれ。

君達も小数部隊として行くことになるな。艦長には話しを通しておくよ」

 

フェイトとアルフは深く頭を下げてお辞儀をした。

クロノは、いいんだ戦力が欲しかっただけたからね、と言い残すと部屋を後にした。

この事件の集結は近い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

雷鳴轟く世界、時の庭園にディーは降り立った。外装は禍々しく、魔王の城を訪ねられたらまず思い付くであろう造形だ。

内装は西洋の貴族が暮らしていそうな作りや飾りが施されており、その姿にディーは思わず感嘆の声を漏らした。しかし纏う空気はキリリと冷えていて、まるで時間を止められている様な感覚に陥った。その止められた空気と時間が表す悲しげなものは、永久凍土という言葉がピンときた。

 

「ようこそ。願いを叶えるものディー」

「歓迎を感謝する。大魔導師プレシア・テスタロッサ」

 

大広間までの扉は全て開け放たれており、そこまての道程のみ壁に掛けられているランプは光り輝いていた。

 

「貴方は私の願いを叶えてくれるのかしら?それとも断るのかしら?」

「どうだかな。ただ、願いを叶えるのに相応しいかどうかは見極めさせて貰うぞ?」

「フフフ……お手柔らかに……ね……。それと邪魔が入らないように私のおもちゃを庭園の周りに出しとくわ。フフフ……」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

アースラ艦内は緊張の空気に包まれていた。

 

「これより時の庭園制圧、プレシア・テスタロッサ確保任務を開始します。第一波武装部隊、準備はいいかしら?転送!」

 

リンディの指令を皮切りに第一波が出撃、第二波が転送ポートに乗った。

クロノ達は第三波で出撃だ。

 

「魔力反応多数、とんでもない数の傀儡兵です、ら魔力ランクは多数のCとAが極小数の統制の取れた状態で来ます。このままでは第一波部隊は持ちません。第二波の出撃許可を!」

 

エイミィが叫ぶ。

傀儡兵の数が半端では無いのだ。比率で言えば、1:15以上の差がある。

この戦力差にリンディは爪を噛んだ。

 

「クッ!第二波も早めですが出撃して下さい!第一波部隊は交代。私が広域殲滅魔法を打ちますので、敵多数消滅後第一、二波部隊は残った者で交戦を再開して、負傷者は此方に撤退して下さい。私がブリッジに戻るまではエイミィ執務官補佐が支持を出して下さい。すぐに戻ります。クロノ執務官、出撃準備を。それと民間協力者のみんなをここに呼んどいて」

 

クロノは敬礼すると待機室へ内線を使って呼び出した。

あの一瞬で目まぐるしく変わる戦況。戦場は阿鼻叫喚の混戦状態だ。

支持通りに第一波部隊は一時撤退し、リンディが広域殲滅魔法を使って傀儡兵達を半分壊滅させた。そこに第一、二波の混合部隊が仕掛ける。少し此方が押して来ている様だ。

ブリッジにリンディが戻るとなのは達は揃っていた。

 

「貴方達に伝えて置きたい事が有ります。命の危険を感じたら直ぐに任務から撤退しなさい。艦長命令よこれは」

 

至極当然の事だ。

 

「貴方達は正式な局の隊員じゃないの。だから必ず生きて帰って」

 

そう言うとリンディはなのは達をぎゅっと抱きしめた。そこでボソッと小さくごめんなさいね、と呟いたがそれは誰の耳にも入らなかった。

戦場に異変が起こった。

なんと傀儡兵が湧いて出てくるのだ。戦域いっぱいに広がる魔法陣、それ等全てが転移魔法だと言うのだ。

あっという間にリンディが殲滅した傀儡兵の数を超える傀儡兵が転送させられてしまったのだ。

顔を青く染めるブリッジの乗組員。

リンディがもう一度広域殲滅魔法を打つと言い始める前に神影が言った。

 

「俺達男子組が殿をするから、その隙に武装部隊の人達をアースラに戻して治療をして下さい」

 

リンディは神影の言葉に唖然とした。

 

「クロノとユーノにフェイトになのは、アリサとアルフは時の庭園に突入。俺等も突入したら過剰戦力ですよ」

「俺等がやらなきゃ誰がやれるんですか?」

「大丈夫ですよ。ちゃんとに艦長の命令は守りますから。危なくなったら」

『すぐ逃げる!』

 

神影と晃毅、射人は口を揃えて言った。

なのはが三人を心配そうな目で見ている。

 

「心配すんなよ。俺の悪運は強烈なんだぜ?大丈夫大丈夫!」

 

神影はニッと笑って言った。

 

「それは死亡フラグじゃないかい?」

 

そんなフラグへし折ってやんよ!と神影は意気込んで三人で転送ポートに乗る。

 

「くれぐれも無茶はしないで下さいね……」

 

リンディがそう言うと三人は揃ってサムズアップした。それに暫くの沈黙の後、クルー全員がサムズアップで返した。

 

「僕等も行こう。早速三人が道を開けてくれたんだ。一気に通り抜けるよ」

 

クロノの言葉に突入組は力強く頷いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「外が騒がしいな」

 

ディーが呟いた。

プレシアはそんなディーに腹を立てていた。

 

「そんな事どうだっていいじゃない……私の願いを叶えてはくれるの?くれないの?はっきり答えて頂戴……」

 

「ここの紅茶も中々のものだ。銘柄は何だ?付け合わせのブラウニーはお手製のものなのか?こちらは少し甘味が強いが「貴様ぁ!」フッ。焦るでない」

 

交渉の席には紅茶とブラウニーが出ていた。

かなりの美味なのだが、何か心に引っかかる味がする。

 

「この庭園、この空気、この部屋の飾り、そして汝。ここにあるもの全てから悲しみを感じる。時が止まって感じるぞ。何てしみったれた場所だ」

「貴方にはしみったれて感じるかもしれないけれども、私には輝かしい思い出を蘇らせてくれる素晴らしい世界だわ……」

 

先程叫んだ時とは変わり、落ち着き払って席に着き、ディーの挑発とも取れる言動にも物怖じせずに応えるプレシア。

ディーは一言、母は強しか、と言うと切り出した。

 

「では、汝の願いを聞こう」

「私の願い。それは、私の大切なアリシアを生き返らせる事」

 

ディーはやはりそうかと呟くとプレシアに問いかけた。

 

「フェイトは娘では無いのか?」

「あれはアリシアを元に作った偽物よ。アリシアには成れないわ。哀れなお人形。だからあれには愛情は向けられない。向ける筈がないわ。絶対に……」

 

ディーとプレシアの間の空間がユラユラ揺らいで見える。険悪な空気が辺りを漂い支配し始める。

 

「汝の時は止まっているな。アリシアが亡き者と化した時に。時の庭園。この場所は正に汝の心の中を表している。時の進まぬ庭園だ」

 

「はぐらかさないで……私の願いはどうなるの?答えて!」

 

テーブルをダンッと叩きつける。プレシアのカップに入った紅茶は零れ?テーブルを濡らした。

 

「汝への問答は我は済ませた。後は……」

 

「母さん!」

 

開け放たれる大広間の扉、フェイトとなのは、アリサとアルフが飛び込んできた。

 

「さぁ、これで最後だ。フェイトによる問答を経て願いを叶えるか決しようではないか」

 

 

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