魔法少女リリカルなのは〜君だけの旅路〜   作:テノト

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本日三話連続投稿です。
無印編はこれにて終了。閑話と設定資料を挟んでA’s編へと突入します。
また、新学期が始まったのでこれから忙しくなり、余計に時間が掛かるやもしれませんが、ご承知下さい。


12話 無印編エピローグ

◇年○月○日

 

今日、私に大切な宝物が産まれた。

 

アリシア

 

元気な声でよく泣いて、私がそっと抱き締めると、フッと寝てしまった。

あの人は逝ってしまってもういない。

けれど私は今、幸せをしっかりと噛み締めている。

この子は絶対に守ってみせる。

幸せにしてみせる!

自分と、まだ話せないアリシアとの約束。

これからは、彼方へ逝ってしまった貴方へ送るように、アリシアが一人立ちするまでの間は間隔が空いてもこの日記に記そうと思う。

これは離れても繋がっている私達家族の約束よ。

 

 

 

□年○月○日

 

仕事がドンドン増えていく。

アリシアと居られる時間が少ない。

ああ、今日はアリシアの誕生日だというのに、会議が長引いて帰るのが遅れてしまった。

それなのに、アリシアは家に着くと泣きながら、おかえり!といってくれた。

悲しくて泣いているのに、私を労ってくれるだなんて。

アリシア、遅れてゴメンね。

そして、5歳の誕生日、おめでとう。

 

 

 

▽年△月□日

 

上層部は無理難題ばかり押し付ける。

研究の進みが悪いからといって、給料をカットし始めた。

こんな、たった5年で新しい魔力炉を生み出せだなんて、技術者を馬鹿にしてるとしか思えないわ。

10年あっても普通は足りない。

アリシアの誕生日のために有給をとった私を完全に逆恨みしてる。

同僚の研究者も辞めていく。

上層部は来週には魔力炉を稼働させねばクビだとも吠え始めた。

背に腹は代えられない。

やるしかないの?

 

 

 

▽年△月□日

 

遂に魔力炉を稼働させることになってしまった。

万が一のために、緊急用の防壁の準備は常時展開してあるから大丈夫なはず。

もしこの実験が終わったら、結果は如何であれミッドを離れよう。

この会社に務めていても、私の、それよりもあの子の負担にしかならない。

自給自足ののどかなな暮らし、悪くないわ。

 

 

 

○年◎月●日

 

逝ってしまった

何故

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

 

 

 

◇年○月○日

 

アリシア、貴女をもう一度生き返らせる方法を探してみたわ。

一つはジュエルシードというロストロギア。

もう一つは、パソコンに何故か入っていた、プロジェクトF.A.T.E。

前者は考古学者でもない私には無理。

後者しか道はない。

待っててね、アリシア。

 

 

 

年 月 日

 

違う。

あの子はアリシアじゃない。

完璧なはず。

何が違う?

解らない。

記憶も性格も利き手も癖も、全てアリシアなのに違う。

愛したい。

でも違う。

ああ、アリシア。

 

 

 

 

年 月 日

 

『明日ジュエルシードを運ぶ船を襲撃し、ジュエルシードを第98管理外世界の地球に落とす』

そんな内容の手紙が届いた。

これはチャンスだ。

アリシアとは違うあの子、お人形を使ってジュエルシードの回収をしよう。

罠かもしれないけど、もう後戻りは出来ないところまで来ているのだから関係ない。

待っててね、アリシア。

 

 

 

「以上、容疑者プレシア・テスタロッサの拠点の時の庭園を捜索した時に見つけた日記です。この事から、容疑者は娘の死と追放などによって精神的に病んでいたため犯行に及んだと推測します。精神異常は検査にて医師が認めています。ジュエルシードを取り巻く事件にはまだ輸送船を襲った他の人物が絡んでるようにも伺え、この人物が容疑者に当てた手紙が犯行の後押しをしたようにも見えます。ちなみに、その輸送船襲撃反抗予告の手紙が此方です。故に、検察側の終身刑では重過ぎます。私達弁護側は懲役三ヶ月とリンカーコア封印、管理外世界への追放の処置を求刑します」

 

プレシアの裁判は進み、弁護側の求めた刑が下された。検察側はプレシアを冤罪にした過去を持っているため、裁判ではあまり強く発言はできなかった。

懲役三ヶ月といっても管理局への技術提供をするだけ、それにプレシア自身罪意識を持っていて再犯はあり得ないという事はわかりきっていることのため、扱われ方はある意味ではVIPと変わらない。

リンカーコア封印も、元々プレシアは研究と病によって身体が蝕まれていたためにもう魔法の行使は不可能だった。

あの時、PS事件では薬で痛覚を麻痺させていたために使えたのだ。

フェイトの裁判では、一ヶ月の観察処分が下された。

元々プレシアの精神異常による虐待を避けるためにとった危機回避の行動に過ぎない、というのが裁判長の判断だ。

裁判は終了し、フェイトとプレシアには一時的な釈放が認められた。

そしてここ、海鳴公園にてフェイトはなのはと再開を果たした。

手と手を取り合うなのはとフェイト。

友情とは、如何に美しいかと知らされる。

 

「アリサよ。混ざらなくて良かったのか?」

「性に合わないわ。あの空気は」

「そうか」

「っていうか、何であんたは口をモゴモゴしてるのよ」

「無償に飴を食べたくなったんだ。アリサもいるか?チョコならあるぞ」

「要らないわよ」

「じゃあ、これをなのはとフェイトに渡して来てくれ」

 

ディーはポケットからチョコを三つ取り出してアリサの手に乗せると、スッと後ろへ振り返って歩き出した。

アリサは顔を赤くして、う〜っ、と唸るとなのはとフェイトのところへ駆けて行き、輪の中に加わり手を取った。

男どもはそんな手を取り合う姿を見て、何故か頬を赤く染めている。

きっと男どもの目には二人の周りに白百合の花が写っているのだろう。

何とも言えない、この空気。

いつまでもこの場に居たくしてしまうこの安らかな空気。

フェイトは、なのはに手を振って、クロノの下へかけて行った。

お別れだ。

 

「なのは、アリサ、みんな、ありがとう!ディー、ありがとう!」

 

そう告げて、フェイトは去って行った。

なのはも別れを惜しんだが、さよならとは口が裂けても言わなかった。

何故なら、また会えることを楽しみにしているからだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「アリシア……」

「アリシアだよママ」

 

公園の端、フェイト達から離れたところでプレシアはアリシアと再開を果たしていた。

プレシアの脇にはリンディがとても居づらそうにしている。本当なら自分はこの場から退散しなくてはならないが、プレシア監視の任があるので退散出来ない。

 

「アリシア、ごめんなさいね……。ママ、貴女を守れなかったの……」

 

プレシアはアリシアの前でしゃがんで目線を合わせて手を取った。

プレシアがギュッと手を強く握ると、アリシアは苦笑いしながら、ちょっと痛い、と言う。プレシアはごめんなさい、と謝りつつもその手の力を緩める事はしなかった。

 

「ママは謝らなくて良いんだよ。だってさ、ママ悪くないもん。私が死んじゃったの、全然ママ悪くないもん!」

「でも……」

 

割り切れないプレシアはドンドン顔を曇らせていく。

アリシアは、はぁ、と溜め息を吐いて顔をムッと膨らませた。

 

「あのねママ、私ね、一つだけ怒ってる事があるの」

「えっ……」

「私、死んじゃってから今までずっと見てたんだよ。ママ、フェイトの事をず〜っと虐めてた!私と違うからって、ずっと虐めてたでしょ」

「え、うん、そうね……、ずっと虐めてたわ」

 

プレシアは懐かしい思いで溢れてて、曇った顔でもそこから一喜一憂を見て取れる程心は安らいでいた。

 

「私が公園で始めて遊んだ時の事、ママは覚えてる?」

「ええ、昨日の事のように覚えてるわ……」

「あの時ね、一緒に始めて遊んだ子が、その子のママからチョコを貰ってて、それが羨ましくて奪って食べちゃったの」

「そうね、そんな事もあったわね」

「その時ママはさ、私の事を始めて怒ったんだよね。何て言ったか覚えてる?」

「確かあの時は……!」

「「そんな事して虐めをしたら、独りぼっちになっちゃうわ!」ってね。それで私が泣いちゃったら、ママこう言ったの。「悪い事をしたら、まずはごめんなさい。それで、一緒に遊ぶの。独りぼっちなんかにはならないし、楽しい事が沢山あるわ」ってね。それでね、私にキャンディーを持たせて「ごめんなさい、出来るよね?」って言ったの」

 

ぽつりぽつりとアリシアは語る。その目は段々腫れぼったく潤んでいる。

 

「だからね、ママもフェイトを虐めたんだから、ごめんなさいしなきゃ駄目!今までずっと独りぼっちで、楽しい事なんてなかったけど、ごめんなさいすればきっと楽しい事が沢山あるよ!ね、ママ、約束だよ?」

 

そう言うと、アリシアは一度プレシアの握る手を払ってポケットから飴を取り出してプレシアの手のひらに乗せた。

 

「えへへ……」

「アリシア……」

 

アリシアは左手の小指を立ててプレシアへ向ける。プレシアもそれに応え、小指と小指を絡めて二、三回軽く手を振った。

そしてプレシアは小指を離すとアリシアを強く、強く抱き締めた。

壊れてしまうんじゃないかと自分でも思うが、この衝動をとても抑える事なんで出来なかった。

 

「ママ、苦しいよ……」

「アリシア……アリシア……」

「ママ……」

 

不意に、プレシアからアリシアの体温が下がるのを感じた。別れが遂に来てしまった。

 

「ママも分かってると思うけど、私はもうパパのところに行くみたいだよ」

「…………」

「元々死んじゃってるんだもん。それを無理言ってディーさんにこうして貰ったの」

 

アリシアは生き返らない。ディーはそう決めたが、アリシアが別れの言葉を言いたいと嘆願した為、一時的にアリシアは生き返っている。

だから、時間に限りがあった。

アリシアは遂に自分で立つ事が出来なくなって、自分を抱いているプレシアへと持たれかかる。どんどん体は冷たくなっていく。

 

「あのね、パパって私が産まれた時にはもういなかったでしょ?だから、どんな人だか会うのが楽しみなんだ」

 

二人の目から涙が溢れる。

人はこんなにも泣けるのだろうか。きっと普通の人生を送る人の一生分の涙を今流しているのだろう。

20年ぶりの再開を経て、アリシアは彼方へ旅立とうとしている。

 

「アリシアは死んでしまったが、魂はまだ此方にあったのだ。20年間ずっとプレシアを見ていたが、話しかける事は出来なかったんだ」

 

ディーが歩いてリンディの横に立つ。

 

「ディーさん、ありがとね。最後にママと話せて、私もう思い残す事はない」

「ありがとう……本当にありがとう……」

 

泣きじゃくる二人にディーの姿はきっと見えていないだろう。

 

「じゃあママ、私逝くね。パパもきっと待ってるからさ。フェイト、私の妹と仲良く暮らしてね……約束だよ……」

「分かってるわ……。あの子は私の娘だもの。アリシアの妹だもの。幸せにしてみせるわ。だってアリシアと、フェイトのママだもの……」

「あのね、ママ」

「なあに、アリシア」

「ここまで育ててくれて、楽しい事をいっぱいしてくれて、ありがと……」

 

アリシアは静かに、安らかに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダへ向かい航行する次元艇アースラ。

そこの一室に肩を並べて持たれ会いながら眠る母と娘。

娘からは飴の、母からはチョコの甘い匂いが漂っていた。

 

 

 

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