しかも腰痛になりかけてるし……。
夕陽に染まる町を見ていた青年はリアスの声に反応し、町からリアスに視線を写した。
リアスは青年がこの町にいること、そして年を取ってないことに驚き固まってしまう。
二人をしばらくの間静寂が支配する。
いったいどれだけの間二人は見つめあっていたのだろうか。
数分なのかも知れない、もしかしたら数十分、あるいは一時間ぐらいなのかも知れない。
見つめあう二人に聞こえて来るのは風により揺れる木の音 車の音 そしてヒトの喋る声。
二人はその音をまるでBGMのように……いや、リアスにいたってはその音に気づいてないかもしれない。
「あはは、見つめあっちゃってお熱いね~、お二人さん」
だが、その二人に声をかける一人の青年がいた。
「……綾時」
リアスと見つめあっていた青年は現れた青年をの名前を呼び、リアスはその声にハッと我に帰る。
思いのほか時間が経過していたのか空は真っ暗になっていた。
そして綾時と呼ばれた青年のそばには街灯があるのだが、本来の機能を発揮していない。
だが真っ暗にも関わらず、綾時の姿はハッキリと見えていた。
「僕もそうだけどなんで君がここに……」
「そのことに関しては今から僕が説明するよ。それにそこにいる彼女にも話さないといけないしね」
綾時はリアスへと視線を向ける。
だがリアスは何の反応も出来ない。
なぜならリアスは本能的に綾時から放たれる死の気配を感じているからだ。
そして本能が告げている、“彼には絶対に勝てない。戦ってはいけない”と――。
「まず君はあの日自分の命をかけて僕……いや、ニュクスをヒトの死に触れてみたいという意志の塊をニュクスに触れさせないために封印した。そこまではいいかな?」
青年にとってはそこは分かりきったことであり、どうでもいいのかヘッドホンのコードを弄っていた。
「はは、君からすればこの部分はどうでもいいことか」
それを見た綾時は軽く笑いながらも話しを続ける。
「だけどその結果君は魂を失い亡くなってしまった」
「っ!?」
リアスは綾時のその言葉を聞いた瞬間に驚いて青年を見る。
なんせ自分の想いビトはすでに亡くなっていると綾時は言うのだ、なら今自分の目の前にいる彼は誰なのだろう……と。
「そもそも君はなぜ封印に自分の魂を使ったのにも関わらずどうして約束の日まで生きていけたと思う?」
その言葉に青年は首を横に振る。
青年からすれば確かに謎なことである。
なぜ自分は封印に魂を使用し、魂がないにも関わらず一ヶ月近くも生きていけたのだろうか。
「簡単に説明するならこうするのが簡単だね」
綾時はポケットからガラスのコップと水の入ったペットボトルを取りだし、コップに水を淹れる。
「このコップは君で水は君の魂だ」
そして綾時はコップを逆さにし、水を流す。
「見ての通りコップに入った水を全て流してもコップの周りには僅かながら水が残る。この残った魂が君を約束の日まで生きながらせた」
つまり大いなる封印を使ったとしても魂の残りカスのようなものがあり、それが青年を一ヶ月近くも生きながらせたと言うのだ。
「でも君の体はそのあと燃やされてしまった」
綾時は持っていたコップを落とすとコップは割れた。
そしてコップの破片の一つがリアスの足下に転がってくる。
リアスは自然と転がってきた破片を拾い、綾時に視線を戻す。
「本来なら魂を失ったり肉体を失ったりしたら生き返るなんて不可能だ。病気とかとは訳が違うんだからね」
綾時はそう言うと優しい表情でリアスを見てから町を見て笑顔で話を続けていく。
「でもこの少し普通とは違う町がそれを可能にした。例え一人一人の想いは小さくとも君があの一年の間に絆を育んだ沢山のヒトの想いが十年とい歳月をかけて集まり、彼女の持つ特殊な駒と相まって君の肉体と魂を新しく作り出した」
リアスは駒という言葉を聞き、制服のポケットに触れ、駒がポケット入ってるかどうかの確認をするが……。
「私の『悪魔の駒
「そう、その『悪魔の駒
「でも少し問題もあるんだ。二人にはこれを見てもらいたいんだけど」
綾時が手を伸ばすと割れたはずのコップが少し歪な形になってはいるものの、戻っていた。
「この通り一度壊れてしまったものがもとに戻っても歪な形になってしまう。これは君も気をつけなくちゃいけないけど彼女も気をつけなくちゃいけない。彼は少し歪な存在になってしまっているからね。つまり彼女たちの言葉で言うなら魔力が駄々漏れの状態なんだ。だから定期的に魔力を彼に送らなくちゃいけない」
青年は魔力なんて言われてもいまいち分かっていないようだが、リアスは薄々と理解したようだ。
「まあ、話すことはこれぐらいかな。……それに僕の方もそろそろ時間みたいだ」
そう言った綾時の体は黒い霧のようなものになり、青年の体の中に入っていった。
『それと安心して、今の君の魂は一から新しく作られたものだから封印はちゃんと存在してるよ』
綾時が青年の体に入った瞬間に綾時の声が青年に聞こえていた。
「安心して、綾時は昔から僕の中にいたから。別れていたのが再び一つに戻っただけ」
綾時が青年の体に入っていくのを見たリアスの視線が気になったのか青年はそう答えたが、青年はあることで悩んでいた。
(僕はこれからどこに住めばいいんだろう……)
青年の所持しているものはヘッドホンと少し旧型の携帯音楽プレイヤーのみ。
財布どころか金もカードも持っていなかった。
綾時との話しが終わってから青年とリアスは場所を移動し、階段を上っていた。
今二人が向かっているのはリアスが住んでいるマンションである。
青年がこれらどうするかと悩んでいるとリアスが自分が住んでいるマンションに住むことを提案したのだ。
本来なら断るべきことだろうが、今の青年は住むところがなければ持ち金もない。
このままではのたれ死には確実である。
いや、のたれ死にをしなくとも綾時の話しだと魔力と言うものを定期的に青年はリアスからかあるいは魔力を持つ誰かから貰わなければならないのだ。
となると断る理由はどこにもなく、青年は頷くことが最善であった。
「……そう言えば名前」
「え?」
「昔に助けたときも今も名前を聞いてなかったから」
「僕は結城
「私はリアス、リアス・グレモリーよ」
青年と少女はようやく自己紹介をした。
理がリアスの住んでいるマンションにつき、食べた料理は簡単なものだった。
リアスとしては手の込んだ料理を食べさせたかったが、それでは料理が出来るのがいつになるか分からないため断念するしかなかった。
そして理は今悩んでいた。
リアスにさきに風呂に入ってもいいと言われ最初は断っていたが、リアスが言葉を撤回するつもりはなさそうなので理は風呂に入ることにしたのだが……。
「リアスって女性だから当然シャンプーも女性が使うような物だよね」
理はさすがにリアスのシャンプーを勝手に使ってもいいのかと悩んでいた。
例えばリアスが両親と一緒に暮らしていれば父親のシャンプーを借りればいいのだが、リアスは独り暮らしである。
使っても構わないのか聞いてもいいが、風呂場からだとそれなりに大きな声になってしまう……それでは近所迷惑だ。
「もう頭と体洗ったかしら?」
「今からだけど」
理が悩んでいると扉ごしからリアスの声が聞こえ、理はちょうどいいやと思った。
「な、なら私が洗ってあげるわ」
「え?」
理はそのとき聞き間違えたのか? と考えたがそれはすぐに聞き間違いじゃないと分かった。
なぜならリアスが風呂場の扉を開け、入って来たためである。
それもなにも身に纏わず、つまり生まれたままの姿で。
普通の男子ならこんな状況になれば慌てるだろう。
リアスに憧れを持つ男子ならヒャッハーと喜びそうな状況であるが、理は慌てもせず、いたって普通だった。
「じゃあ、洗うわよ」
リアスは風呂場に入り、理が持っていたシャンプーを
取り、理の頭を洗いはじめる。
「どうかしら、痛いところとは痒いところはないかしら?」
「大丈夫」
理は気持ちがいいのか目を細めている。
リアスは理が気持ち良さそうにしてるのを見るのは嬉しかった。
理の髪をシャワーで洗い流し、リアスはタオルではなく自分の体にボディーソープを垂らし理に抱きつく。
リアスは自分の体を使い理の体を洗いはじめる。
理は自分の背中に女性特有の柔らかさと少し固くなっている突起物を感じ、理の表情はあまり崩していないが顔がほんのり赤くなっていた。
風呂からあがった理とリアスは自分が人間ではないことや、理も人間ではなくなったことを話したが、理は別に気にした様子はなかった。
そして日付が変わり、悪魔としは夜はまだまだこれからではあるが、理は疲れてるだろうとリアスは考え、寝ることにした。
「僕も一緒に寝るの?」
「ええ、そうよ」
理としてはリビングにソファがあったため、そこを借りて寝るつもりだったが、リアスが一緒に寝ると言い出したのだ。
「それに彼も言ってたわよね、魔力を定期的に補充しないといけないって。これからは毎日寝ながら私が魔力を補充するわ」
それはつまり理は一時的にではなく今日からここにズット住むと言うこと。
理としてはリアスが構わないのなら別に問題ないのだが、問題は別にあった。
「なんで裸なの?」
「私は寝るときはなにも身につけないの」
風呂からあがり、理と話しをしてるときは湯冷めをしないために確かにパジャマを着ていたのだが、今はパジャマを脱いで裸になっていた。
(……もうどうでもいいや)
理はリアスのそういった行動にたいして考えるのを止めたようだった。
そして理はベッドに歩いていき、布団に触れる。
(この布団スゴいフワフワ)
寮に住んでいた頃に使っていた布団も割りと寝心地のよい物だったが、リアスの使っているこの布団は更に寝心地がよさそうだった。
単純に寮の布団よりもいいものを使っているのか、あるいは十年の間に新しい素材が出来たのかも知れないが、理にはどうでもいいことだった。
理は布団をある程度触ったあと横になる。
もちろんリアスが横になれるように十分にスペースを開けているが、理は横になったと同時に寝かけていた。
そしてリアスは部屋の明かりを消し、ベットを見ると規則正しい寝息をたてて理は熟睡していた。
理よ、風呂場でもそうだったが、思春期真っ最中であるはずなのにその反応はどうなのだろうか?
普通なら裸の女性が側にいるんだぞ? ドキドキして寝れないとかそういった反応をしそうなものだが……。
リアスは理があまりにも早く寝た姿を見て、思わず笑いそうになりながらまるで壊れ物を扱うように優しく抱き締める。
それにより理の顔はリアスの豊満な胸に挟まれるが理は寝ているために今の状況に気づかない。
リアスは抱き締めながら理の髪を触っていく。
「…………ん」
髪を触られ少しくすぐったかったのか理は身じろぎをし、リアスも理の髪が触れることによりくすぐったかった。
そしてリアスはもう二度と放さないというように抱き締めていた腕に少し力を込め、理に魔力を送りながらリアスも寝た。