朝、理が目を覚ますとリアスの姿はなくなっていた。
おそらく朝ごはんを作りに台所に行ったのだろう。
理はベットから起き上がり、リビングへと歩いていく。
「……おはよう」
「あら、目が覚めたのね」
リビングまで歩いていった理は台所で料理を作っているリアスの姿を見て、一瞬言葉を詰まらせてから挨拶をする。
なぜならリアスは裸の状態でエプロンを着けた姿、つまり裸エプロンの状態で料理を皿によそい、テーブルに並べていたからだ。
だがさすがは理と言うべきか、まだ少し寝ぼけているが、裸エプロンのリアスを見ても表情は崩さなかった。
普通なら少し寝ぼけていても今の状況に遭遇すれば一瞬で目を覚まし、驚くところだと思うが……。
「食べる前に顔を洗って来なさい」
「そうする」
理は洗面所まで歩いていき冷水で顔を洗う。
冷水で顔を洗ったことにより、まだ少し寝ぼけていた頭がシャッキリとした。
「いつ着替えたの?」
理がリビングに戻るとリアスがテーブルに料理を並べている最中なのは変わらなかったが、制服を着ていた。
顔を洗っている最中にもリアスが料理を並べる音や歩く足音が聞こえており着替えるのに放れたり止まったりしていないはずだ。
「魔法を使えば服ぐらい簡単に着替えられるわ」
それを聞いた理は“魔法ってすごい”と思わずにはいられなかった。
「それじゃ、私は学校にいってくるわ」
「いってらっしゃい」
リアスの作った料理を食べ、昼前にリアスは駒王学園に行こうとしていた。
今日は日曜で学校は休みなのだが、リアスは用事があるらしい。
そしてリアスは一瞬少し寂しそうな表情をして出ていった。
リアスが出ていくのを見届けた理はリビングまで歩いていき、リアスからさきほど受け取った五万を借りた財布にいれる。
この五万は服や歯ブラシなどの日用品を買うのにリアスから貰ったものだ。
財布を制服のポケットに入れ、リアスから貰った合い鍵を財布を入れたポケットとは逆の方に入れる。
そしてリアスと一緒に寝た部屋にいき、部屋に置いてあった携帯音楽プレイヤーとヘッドホンを肩にかける。
(……僕、この町のどこにどんな店があるかなんて全然知らない)
確かに理からすればこの町は昨日はじめて来た町だ。
日用品を買おうと思ってもどの場所にどの店があるかなんて知る余地もない。
(まあ、大丈夫かな。今までもそうだったし)
自己完結をした理は取りあえず町を軽く見て回ることにした。
「神社?」
理が町を歩いていくと一つの神社を見つけた。
まあ、神社を見つける前にコンビニを見つけ、飲み物などを少し買ったりしたのだが。
そして理は仲間のみんなと夏祭りや初詣に行ったときの楽しい思いでを思いだした。
その他にもおみくじを引き、結果が良ければ落ちているお金を手に入れられる嬉しい記憶。
逆に結果が悪ければ財布から札が風によって飛ばされるという悲しい記憶も思い出した訳だが……。
理はいい思いでと悪い思いでの二つを思いだし、懐かしくなり神社に歩いていった。
神社の敷地内に入った理はイスに座り、耳にかけ曲を流す。
理としては少しだけ神社の風景を見るつもりだったが、久しぶりの生身の体とまだ悪魔に転生したばかりでなれてないため、体がダルくなりそのまま寝てしまった。
理が神社で寝ている同時刻、リアスは駒王学園の生徒会室に着いていた。
今生徒会室にいるのはリアスを入れて二人。
「ソーナ! 今すぐ理を私のクラスメートとして転入させなさい!」
「……リアス、休日に呼び出したかと思えばいきなりなんですか。それと理とは誰ですか?」
ソーナと呼ばれた少女は先日リアスとチェスをしていた少女だが、リアスは話しの内容の主語が思いっきり抜けていた。
場所は理のいる神社に戻る。
「うふふ、今日もいい天気ですわ」
朱乃は巫女服を着て手にホウキを持って神社から出てきた。
「あらあら、可愛い寝顔の男の子が寝ていますわ」
イスに座って寝ていた理はいつの間にか横になって寝ていた。
「この辺では見ない制服ですわね」
理が着ている月光館学園高等部の制服は理としては着なれた制服なのだが、この町の住民からすれば見なれない制服だ。
「ですが、この可愛い寝顔はもう少し見ていたいですわ」
朱乃はそう言うと神社から薄めの毛布を持ってきて理にかけ、理の寝顔を見ながらホウキを使って枯れ葉を集めはじめた。
「……クシュ」
太陽が沈みはじめ、肌寒くなりはじめてから理はくしゃみをして目を覚ました。
起き上がった理は自分に毛布がかけられていることに気がつく。
「誰がかけてくれたんだろう?」
「あらあら、目が覚めたようですわね」
理は声が聞こえた方に視線を向けると朱乃が集めた枯れ葉を山のように集め燃やしていた。
「この毛布君がかけてくれたの?」
「ええ。それに万が一風邪を引かれても困りすし」
「ありがとう」
理は朱乃にお礼を言うと毛布を畳はじめる。
「お礼には及びませんわ。私も可愛いものが見れましたし」
「?」
朱乃の言っていることが理解出来なかったが、理は畳んだ毛布を朱乃に返す。
全く町を見ていない理としては少しでも町を見てまわりたいが、帰りが遅いとリアスが心配しそうだと思い、帰ることにした。
理が帰ってくるとリアスの靴がすでにあったが、なぜか家全体の空気が重かった。
「ただいま」
理はなにかあったのかと思いながらも靴を脱ぎはじめる。
そしてリビングの方から男が走るようなドタドタとした感じ出はなく、かなり静ではあるが、リアスが走ってくる音が聞こえ、靴を脱いだあとにリアスが向かってくる方を見る。
するとリアスが目尻に涙を抱きついてきた。
「……どうしたの?」
「あなたがいっこうに帰って来ないからじゃないの。町を探してもいないから私の前からいなくなったんじゃないかって……」
リアスがいつ帰ってきたのかは分からないが、理が神社で寝てる間にかなり心配させてしまったようだ。
「大丈夫だよ。僕はリアスの前からいなくなったりしないから」
自分の帰りが遅かったからリアスに心配をさせてしまったと思った理はリアスを抱き締めながら落ち着かせる。
(でもリアスって意外と心配性なんだ)
それもあるかも知れないが、理だからこそこれだけ心配しているのだろう。
「ふふ♪」
「うふふ、今日は一段とご機嫌ですわねリアス」
リアスとソーナが話をした後日、リアスは上機嫌で自分の席に座っていた。
「当たり前じゃない朱乃」
「それだけ上機嫌なのは朝一緒に登校してきたと噂の殿方が原因でしょうか?」
そう、理はこの駒王学園に転入することになり、リアスと二人で歩いて来たのだが、それを見た駒王学園の一部の生徒が話をしていたのだ。
リアスは学園でも人気があり、瞬く間に学園中に広まってしまったようだ。
ちなみに理とリアスが登校しているのを目撃した一部の男子は血涙を流していたとかいないとか。
「静かにしろー。ホームルームをはじめるぞー!」
理とリアスのことで盛り上がっていたクラスだが、担任が入ってきたことによって静かになった。
「女子ども喜べ。この男っ気のない三年に男子の転入生がやって来るぞ」
担任のその言葉により静かになっていたクラスがまた騒がしくなってしまった。
「おまえら静かにしろって! 転入生入ってこい」
今度はあまり静かにならなかったが、教室の扉が開き、理が入ってきた。
「取りあえずまずは自己紹介だな」
「はい、結城理です。一年間だけどよろしく」
理は簡単に自己紹介を済ませるが理の容姿、そして磨きあげられた魅力が女子生徒をまた一段と騒がせた。
「……まったく、こりゃ暫くは収まりそうにないな」
担任は額に手を当てながらため息を吐いていた。
「結城、おまえの席はグレモリーの隣だ。分からないことはグレモリーに聞け」
リアスの隣と聞いた理はリアスを探すために教室を見渡すと一番後ろの窓際の席に座っていた。
そして朱乃もリアスの隣に座っているのを発見し、理はリアスのもとに歩いていき席に座った。
「うふふ、またあいましたわね」
「うん」
「ちょっと朱乃、いつ理と知り合ったのかしら?」
「うふふ、やきもちですか部長? 彼とは先日神社で寝ているのを見かけて眺めていただけですわ」
リアスは朱乃も美人であるため、自分の知らない間に理と朱乃が知り合っていたのは複雑なようだ。
「今日の一時間目は俺だ。おまえらも結城について聞きたいことが沢山あるだろう。よって一時間目は質問タイムにする!」
担任のその一言でクラス中の生徒が理の周りに集まり、“今着ている制服はどこの高校の制服なのか”“どこに住んでいるのか”“リアスさんと二人で登校していたがどういう関係なのか”“リアスさんと付き合っているのか”等の質問攻めがはじまり、理としては初日から疲れる学園生活がはじまった。