「ギルドカードの更新は明日になるようです、それとやはり迷宮は現在閉鎖中になっている様ですな」
併設の酒場でも安価で黒豆茶を飲み始めたタイミングで、ミシェルが受付を終えて戻って来る。
「明日ですか、また時間が空いてしまいましたね」
「……用事は?」
パーティー女性陣から声をかけられ、少し考えるが迷宮にも行けず、ギルドカードを通して与えられる『加護』が無ければ、飽くまでも冒険者は腕自慢程度の一般人である。
故に森での狩りも少し難しい。
「そうだな――」
「ヒビキ様にギルドから連絡があるそうですよ」
「――そう言う事は先に言って欲しいが、今日は自由行動たな」
連絡に苦笑して、メンバーに伝える。
何の連絡か判らんが、時間がかかるかも知れない上に狩りも出来そうに無いならば自由で構わないだろう。
受付に連絡の件を訪ねた所、カウンター奥にある個室に通され待つ様に言われる。
紅茶とお茶受けにクッキーを出され、待つ事十分ばかり、個室の扉が開かれ眼鏡をかけた痩せぎすな男が入って来る。
彼は街の冒険者ギルドの副長、ギルド長は迷宮主がやっていると言うのは公然の秘密なので、実質ギルドの最高権力者である。
「連絡があるって聞いて来たんだが、副長が来るとはな……何の用事なんだ?」
「あぁ、ヒビキさんそんな気にしないでください、空いてるのが私だけだったんで」
確かに普段それなりに暇なギルドの仕事も、今回の騒動ばかりは忙しいだろう。
住人殆どがギルドカードを所持している街、更に今回はカードの表記が更新を促す表記に差し変わっていたのだから、普段更新に来ない住人もギルドに来るのだろうからな。
「連絡と言うのはですね、ギルド長……いえ迷宮主からの連絡でして、どうも頼みたい事があるとか」
「迷宮主が?」
迷宮主からの依頼と言うのは、実は少なくは無い。
ギルド内にある掲示板に、迷宮外で特定のアイテムや素材を手に入れて来て欲しい等、幾つか俺も見掛けた事がある位だ。
「直接頼まれるってのは初めてだな、連絡は取れないのか? 詳しい話を聞かんと手伝うも何も無いぞ」
冒険者にしろ、傭兵にしろ、何も聞かずに依頼を請けると言う事は自殺行為である、以前聞いた噂では何も聞かずに依頼を請けた傭兵が殆どタダ働きだったとか、王族暗殺の依頼だった等危険性が高い。
「えぇ、ギルドカードを更新後に連絡が入る様になると言ってましたが」
「どう言う形式かは知らんが、それなら明日更新するから、請けるかどうかは連絡後に」
副長も頷き、この場での連絡は終わった。
残ったクッキーを土産にギルドを出る、さて……迷宮主の依頼か一体何をさせられるのか、それに依頼料がどれだけ出るかも問題だな。
次もなるべく早めに。
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