アカメが斬る!復讐の滅牙   作:ZERO式

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第02話 黒衣の男

「……金色の……鎧……!?」

 

タツミを含め、その場にいた者は今起きた事に思考が追い付いていなかった。

黒髪の少女もそうだ、目の前にいる鎧の者は仲間ではない。

 

「あれは……ッ!」

 

見覚えがあるのか今まで無表情だった少女は一瞬だが動揺した表情を浮かべる。

だが少女はすぐに考えを切り替えボーっと立ち尽くしていたもう1人の護衛を一刀両断し葬った。

 

「あ、あぁ……」

 

ヘナヘナとその場にアリアは力なく座り込む。

腰が抜けたのかその場から立てずに自分に刀を突き立てる少女を見上げた。

 

「葬る」

 

「待ちやがれ!!」

 

タツミは剣を握りしめアリアに刃を向けていた少女へ斬りかかる。

だが少女はその攻撃を後方へと下がるように回避し、タツミから距離を置いた。

 

「お前は標的ではない……斬る必要はない」

 

「でもこの娘は斬るつもりなんだろ!?」

 

「うん」

 

「うん!!?」

 

あっさりと肯定した少女に軽く度肝を抜かれながらもタツミはアリアの前から離れず、少女へ剣の切っ先を向ける。

 

「邪魔すると斬るが?」

 

「だからって逃げられるか!そこの鎧のお前もだ!お前もアリアを殺すってんならオレが相手になってやる!!」

 

「…………」

 

鎧の者は答えない。

だが、目の前の少女は一度目を閉じ、再び開けると氷のような冷たい眼差しでタツミを見据えはっきりと言った。

 

「では葬る」

 

「……ッ!!」

 

数秒の静寂、だが両者は同時に駆け出し互いの刃を交える。

少女は跳躍し上段から斬りかかるがタツミはそれを何とか受け止め、少女の刀を自身の剣で滑らせると同時に屈みながら右薙ぎに剣を払う。

 

その攻撃を少女は簡単に上空へ回避、くるりと回転し遠心力の効いた蹴りをタツミの左腕に繰り出した。

 

「ヤベッ──」

 

あまりの衝撃でタツミは体勢を崩し倒れかかる。

そこを少女は見逃さず、タツミの心臓へ向けて突きを放った。

 

「カハッ……」

 

「タツミ!」

 

倒れるタツミ。

だが少女は不審そうに倒れたタツミの様子をじっと見つめている。

 

「へへっ……。油断して近付いても来ねぇのかよ」

 

心臓を突かれたはずのタツミがゆっくりと起き上がる。顔は痛みでひきつってはいるがピンピンしているようだ。

 

「手応えが人体ではなかった」

 

「へへっ、村の連中が守ってくれたのさ」

 

タツミが左胸から取り出したのは1体の像だった。

その像の真ん中にはぽっかりと穴が空いており、どうやらこの像がタツミの命を救ったらしい。

 

「…………」

 

その様子を金色の鎧の者はただじっと眺めてるだけで、自分は進んで戦おうとはしていなかった。

その証拠に今まで両手に握られていた拳銃のような武器はなく、鎧のサイドアーマーに接続されている。

 

「なんだ?あんたも同業者かい?」

 

背後から聞こえた声に鎧の者は無言を貫いて腕を組みながらタツミと少女の戦いを相変わらず見ている。

 

それがおもしろくなかったのか獣耳の女性は少々怒りながら鎧の者へ向けて拳を繰り出した。

 

「無視すんなコラ!」

 

鎧の者は一切背後を振り替える事なく、女性の拳を“左手”で確実に受け止めた。

 

「……あんた、何者だい?」

 

今の行動だけで女性は鎧の者の実力を把握したようであっさりと拳を引っ込め、隣に立って同様にタツミと少女の戦いを見始めた。

 

「……外道だよ」

 

そう静かに呟くと鎧の者はゆっくりと歩き出す。

よく見ると丸腰のタツミに少女が斬りかかろうと間合いを詰めているところで、タツミは少女は何か問うているが、少女は聞く耳をもたない。

 

「戦場でもないのに、罪もない女の子を殺す気か!!」

 

少女はタツミの間合いに入り、刀を中断の右薙ぎで構えてタツミを一刀両断しようとする──だが。

 

ギイィィィンッ!

 

「……ッ!!」

 

少女の刀はタツミには届く事はなかった。

それどころかタツミと少女の間にはいつの間にかあの鎧の者が割って入っており、少女の刀を左腕の装甲で受け止めているのだ。

 

「待った」

 

次に先程の獣耳の女性が少女の後ろに立ち髪の毛を後ろに軽く引っ張る。

 

「何をする」

 

女性を後ろ向きで見上げる形で少女は問う。

 

「まだ時間はあるだろ?この少年には借りがあるんだよ。だからそれを今返してやろうと思ってな」

 

タツミへウインクしながら女性は話す。

するとタツミは何かを思い出したかのように女性を指差し、大声で話しはじめた。

 

「あ、アンタはあの時のおっぱい!」

 

「そうだよ~♪美人のお姉さんだ、また会えたな少年っ」

 

すると今までほとんど口を開いてなかった鎧の者が口を開き話しはじめた。

 

「……少年、お前は罪もない女の子を殺すなと言ったな?」

 

「あ、あぁ!当たり前だ、アリアは何もしていない!」

 

鎧の者はタツミとアリアを一瞥すると、次に獣耳の女性へと視線を移した。

 

「ならよ、コイツを見てもお前は同じ事を言えるか?」

 

鍵のかかった扉を女性は一撃の蹴りのみで破壊する。

そして、倉庫の中を見てタツミは絶句した……。

 

「……よく見ろ少年、目をそらすな。これが、帝都の闇だ」

 

無数の拷問器具、宙吊りにされたりバラバラにされたいくつもの人間の死体、そして鼻が曲がりそうな程の腐乱臭と薬品の匂い……。

倉庫の中は文字通りこの世のものとは思えないおぞましい光景が広がっていた。

 

「なんだよ……なんだよコレ……ッ!!」

 

「地方から来た身元不明の者達を甘い言葉で誘い込み、己の趣味である拷問にかけて死ぬまで弄ぶ……それが、この家の人間の本性だ……」

 

呆然と立ち尽くすタツミ、だが宙吊りにされたある死体を見た瞬間、目を見開き、フラフラと前へ歩き出した。

 

「……サヨ?おいサヨ……サヨ……!返事してくれよ、サヨ!!」

 

「……知り合いがいたのか。気の毒に」

 

全員が倉庫内に注目する中、アリアはこそっと逃げ出そうとするが、すぐにその首を獣耳の女性が掴み逃走を阻止する。

 

「おっと!逃げようってのは虫が良すぎだぜ嬢ちゃん」

 

「……この家の人間がやったのか」

 

タツミのその問いに鎧の者が先に答える。

 

「……あぁ、護衛達も黙ってた。故に同罪だ」

 

「う、ウソよ!」

 

大声で否定したのはアリアだった。

じたばたと逃げようともがいているが、女性の掴む力が強くばたばたとしているだけだ。

 

「私はこんな場所があるなんて知らなかったわ。タツミは助けた私とコイツ等と、どっちを信じるのよ!?」

 

タツミは答えない。

だが、ある人物との再会によってタツミの中に抱いていた最悪の展開が現実となった。

 

「……タ……ツ……ミ……?タツミだろ?……オレだ……」

 

「い……イエヤス!!?」

 

倉庫内にあった鉄格子の牢屋の中から手を伸ばす少年、その少年はどうやらタツミの探していた仲間の1人らしい。

 

「オレとサヨはその女に声をかけられて……メシを食ったら意識が遠くなって気が付いたらここにいたんだ」

 

そして、彼の次の言葉でタツミは更に絶句し、その場に崩れ落ちた。

 

「そ……その女が……サヨをいじめ殺しやがった……!!」

 

涙を流し、憎しみのこもった眼差しで少年──イエヤスはアリアを睨む。

 

「──何が悪いっていうのよ」

 

女性の拘束を振り払い、アリアはその場に座り込むタツミに向け本性を現したかのように、大声で彼へ向けて罵倒をはじめた。

 

「お前達はなんの役にも立てない地方の田舎者でしょ!?家畜と同じ!!それをどう扱おうがアタシの勝手じゃない!!」

 

顔の表情は醜く歪み、今の彼女は“善人の仮面”を被った心優しいアリアではなく、仮面を取った本来の姿である残虐で冷酷非常な悪魔そのものだった。

 

「大体、その女家畜のクセに髪がサラサラで生意気すぎ!!私がこんっなにクセっ毛で悩んでるのに!!だから念入りに責めてあげたのよ!!むしろこんなに目をかけて貰って感謝すべきだわ!!あぁ、そういえば良かったわねタツミ?アリアの勘は当たったでしょ?こうして家畜同士、再会できたんだからさぁ!!アハハハハハハハハハ!!」

 

狂ったように笑うアリア、ナイトレイドの2人は嫌悪感を表しながらアリアをまるでゴミでも見るかのような眼差しで睨んでいた。

 

「善人の皮を被ったサド家族か……邪魔して悪かったな、“アカメ”」

 

「葬る」

 

アカメと呼ばれた少女は刀を構えアリアに近付く──だが、それは1人の人物によって遮られた。

 

「待て」

 

アカメを止めたのは鎧の者だった。

アカメは鎧の者を睨むが、当の本人はそれを無視し、目の前で座り込んでいる少年へ向けて言う。

 

「……少年、お前が殺れ」

 

「「ッ!!」」

 

「……お前がこの(クズ)を裁け。目には目を、歯には歯を……悪には悪を、だ」

 

「…………あぁ」

 

短く返事をしてタツミは立ち上がり、アリアへ向き直る。

自分がタツミに殺される事を察したアリアは表情が一変し、青ざめてガタガタと震えはじめた。

 

「殺すの?家畜の分際でこのアタシを殺すっての!!行くあてもなかったあんたを助けたのは誰!?他でもないこのアタシよ!!その恩すら忘れたっていうの!?冗談じゃないわ、アタシはここで死ぬような女じゃ──」

 

ザンッ!!

 

一刀両断、タツミは迷う事なく剣を振り下ろし、命乞いをするアリアを真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれたアリアの胴体は地に落ち、立っていた下半身もぐらっと大量の血を撒き散らしながら崩れ落ちた。

 

「……あぁ、さすがタツミだ……。スカッとした──ゴフッ!」

 

口から大量の吐血をしたイエヤスをタツミは牢屋を破壊し、中から引きずり出す。

息は絶え絶えでガクガクと震えている。

 

「……ルボラ病という病気の末期だな。ここの夫人は人間を薬づけにして、その様子を日記に書いて楽しむ趣向があった……」

 

「……悪いがソイツはもう、助からない」

 

鎧の者からの言葉にタツミは絶句する。

だがイエヤスは笑みを浮かべタツミに話しかけた。

 

「……なぁ、タツミ。サヨはさぁ……あのクソ女に最後まで屈しなかったんだぜ……?すげぇカッコ良かったぜ……。だからこのイエヤス様も……最期は……カッコよく……」

 

最期の力を振り絞り、イエヤスは右手を固く握り締め、タツミの腕に抱かれながら静かに息を引き取った……。

イエヤスの亡骸を呆然と見ながらタツミはすすり泣き、振り絞ったような声で呟く。

 

「……どうなってんだよ、帝都は……」

 

「……少年、君はどうしたい?」

 

「え?」

 

鎧の者はタツミを見下ろしながら言葉を続ける。

 

「このまま怖じ気ずいて故郷へ逃げるか、帝都に残り法で裁けぬ悪を裁く悪になるか……」

 

「悪を裁く悪……?それってどういう……」

 

「……ナイトレイド、どうだ?この少年を仲間にするというのは」

 

「え?」

 

「なに?」

 

鎧の者からの思わぬ提案に2人は固まり、訝しげに鎧の者を見据える。

だが一番驚いていたのは他でもないタツミ自身だった。

 

「お、オレがナイトレイドに!?断る!オレは2人の墓を──」

 

「いいねー♪確かにアジトはいつだって人手不足だ。それに運や度胸、才能もある」

 

「ん」

 

軽くパニックなタツミを女性はずるずると引っ張って行く、タツミの意見などガン無視だ。

 

「はーなーせーっ!!!だからオレは2人の墓をだな──」

 

「2人の遺体は後で私がアジトまで運んでやるから安心しろっ」

 

「ハァッ!?」

 

女性とタツミの姿が見えなくなる。

だが鎧の者の前には黒髪の少女──アカメがただ1人残って対峙していた。

 

「…………」

 

「……お前は敵なのか?味方なのか?それに……その“帝具”は──」

 

「……少なくとも敵ではない、それだけは言っておく」

 

鎧の者はアカメに背を向けてタツミ達が消えた方とは真逆の方向へと背を向け上空へ高く跳躍し、背中から“翼”のようなものを生やして飛び去っていった。

 

 

「……帝具“エクセリオン”……まさか、使用者は……」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「──改めて訊くが、本当なんだな?」

 

3日後、タツミはアカメ達のナイトレイドに入る事を決めた。

同じく3日前のアリア家暗殺の際に現れた白銀と金色の鎧を纏った人物について、ナイトレイドのボスのナジェンダはアカメと一緒にいた女性──レオーネから報告を受けていた。

 

その夜、ナジェンダはアカメ・ブラート・レオーネの3人と共に広間で話をしていた。

 

「間違いない。あれは帝具、神狼滅牙『エクセリオン』だ」

 

「……エクセリオンの所有者は帝国側の人間のはずだが」

 

「あぁ。だがオレの記憶が正しければエクセリオンは所有者と一緒に行方不明だったはずだ」

 

筋肉質の巨漢──ブラートが顎に手を添えながら話す。

 

「行方不明?どういう事だ?」

 

「文字通りの意味だレオーネ。エクセリオンの所有者はオレが帝国を抜ける前か同じ時期にオレと同じように帝国から姿を消したんだ。その理由がオレみたいに帝都に失望し軍を抜けたのか、戦いで死んだか大臣に殺されたかは分からんがな……」

 

「けどあの屋敷に現れたのがそのエクセリオンなんだろ?」

 

意味分かんねーと言いながらレオーネは近くにあったイスに座り、テーブルに置いてあった果物に手を伸ばした。

 

「……エクセリオンを纏っていたのはその行方不明の所有者かもしれない。だが、別の人物が何らかの形で手に入れて使っているという事も考えられる。どちらにせよ、我々の敵にならんとは限らん。敵として判断した場合は……」

 

ナジェンダはタバコを吸いながらアカメ達を見据える。

アカメは腰に携えていた刀──帝具『村雨』を前に突きだし言った。

 

「その時は……私が葬る」

 

 

◇◆◇◆

 

 

──それから数週間が過ぎ、タツミはナイトレイドの仲間達と共に暗殺稼業に勤しんでいた。

だが仲間の1人であり、鋏の帝具──万物両断『エクスタス』の所有者であったシェーレが同じく帝具使いの帝都守備隊の1人に殺され、シェーレと共に行動していたマインも左腕を折られる大怪我をしてしまった。

 

落ち込むタツミだったがアカメの仲間への想いと涙を目にして、彼女へ自分は絶対に死なない事と悲しませない事を誓う。

 

そして場所は変わり帝都近郊──雪が降りしきり、寒さと餓えに苦しむ村を通る一行がいた……。

 

「この村もまたひどいな……。民あっての国だと言うのに」

 

馬車に乗りながら老人──元大臣のチョウリは村人の様子を見て哀れむ。

 

「そんな民を憂い、毒蛇の巣である帝都へ戻る父上は立派だと思います」

 

そのチョウリの隣に座る娘のスピアは父の姿を見て称賛を送った。

 

「命欲しさに隠居している場合ではないからな、このままでは国が滅んでしまう。こうなったらワシはあの大臣ととことん戦うぞ!」

 

「父上の身は私が守ります!」

 

右手で握っていた槍をチョウリに見せながらスピアは笑顔を浮かべながら話す。

 

「いい娘に育ったのぅ……。勇ましすぎて嫁の貰い手がないのが玉に瑕か……」

 

「そ、それは関係ないでしょう!」

 

チョウリの発言に対しスピアは落ち込み、ブルーになりながらブツブツと言い訳じみたような理由をこぼしていく。

 

だが、急に馬車が止まり不審に思ったスピアは馬車の前にある窓の向こうを睨んだ。

 

馬車から約50m離れたそこには3人の黒ずくめの男達が立っており、敵意剥き出しで明らかにスピアとチョウリ達を狙っていた。

 

「また盗賊か!?治安の乱れにも程がある!」

 

急いでスピアは馬車から降りて外にいた守備隊を展開させる。

 

「今までと同じように蹴散らす!油断するな!」

 

くるくると自身の槍を回し、スピアは槍の切っ先を3人へと向けて、自分の周りに守備隊を配置させた。

 

「ダイダラ」

 

「おう」

 

長身の男に名前を呼ばれた巨漢の男は右手に大斧を後ろ手に持ちながら一方前へ出る。

余裕なのか楽しんでいるのかダイダラはニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

その笑みにどこか恐ろしさを抱くスピアだったが、覚悟を決めて槍を構えた。

 

「行くぞっ!!」

 

槍をダイダラへと向けてスピアは展開する守備隊と共に突撃する──だが。

 

「はぁっ!!」

 

ガォォンッ!!

 

横に一振り、たったその一撃で攻撃を仕掛けた守備隊全員を真っ二つに切り裂き屠る。

ギリギリのところでスピアは踏み止まり、槍でダイダラの攻撃を防御するが、槍は真っ二つに切断され、スピアも腹を斬られた。

 

「ぐっ……!」

 

腹を押さえスピアはその場に崩れ落ちる。

痛みで足に力が入らず立つ事も逃げる事もできない。

 

「へぇ……お姉ちゃんやるねぇ。ダイダラの攻撃で死なないなんて」

 

そう言いながら黒ずくめの少年は懐から短刀を取り出し、不気味に笑いながらスピアへと短刀をちらつかせた。

 

「でも、これから起こる事を考えると死んどいた方が楽だった──」

 

「ニャウ!!」

 

「!!」

 

突然の大声、その声にニャウと呼ばれた少年は右側へと素早く飛ぶ。

すると上空から無数の銃弾が降り注ぎ、ニャウがいた場所は穴だらけになった。

 

「誰っ!?僕の邪魔をするのは!!」

 

ニャウは短刀を構えながら周りをキョロキョロと警戒する。

すると上空から何かが高速で滑空してくるのが見え、キラリと光ったかと思うと、水色のエネルギー体が無数にダイダラやニャウ達に向かって放たれた。

 

「はっ!こりゃすげー経験値を得られそうだな!しかも正確に頭と心臓を狙ってきてやがる!」

 

嬉々としながらダイダラは大斧を分離させ、二挺にして降り注ぐエネルギー体を防いでいく。

一方ニャウは素早い動きで攻撃を回避しながらエネルギー体の出所を睨む。

 

見ると翼の生えた人間の形をしたものが上空から音もなくゆっくりと目の前に着地し、背中に生えた翼を収納する。

 

──金色に白銀の鎧、そう……。

 

「……ッ!!神狼滅牙……エクセリオン!!」

 

長身の男──リヴァは驚愕の表情を浮かべながら一歩後退りする。

そしてこれを斃そうと構えるダイダラとニャウに怒号を飛ばした。

 

「引くぞダイダラ、ニャウ!」

 

「何言ってんだよリヴァ!今コイツを斃せばかなりの経験値を──」

 

「経験値を得るのが早いか、お前の首が飛ぶのが早いか……試してみるかダイダラ?」

 

ダイダラの首へ高速で右手を添えながらリヴァはダイダラを冷たく睨み付ける。

まずいと思ったのかダイダラは冷や汗を浮かばせながら大斧を背に携えた。

 

「……了解!」

 

「ニャウもだ!既に任務は達成(・ ・)している」

 

「うー!覚えてろよこのクソ鎧!」

 

エクセリオンに向けてニャウは中指を突き立て毒づきながら、リヴァやダイダラと共に撤退していった。

 

「…………」

 

エクセリオンは両手に持っていた巨大な二挺拳銃をサイドアーマーに収納させ、激痛に苦悶の表情を浮かべるスピアに近付く。

警戒しているのかスピアは切断された槍の刃部分を拾い上げ、その切っ先をエクセリオンへと向けた。

 

「そう警戒するな。オレは敵じゃない」

 

「そう簡単に……信じられるか……!」

 

フーフーと肩で息をしながらスピアはエクセリオンを睨み一向に警戒を解こうとはしない。

 

「……本来なら全員を救うはずだったんだが……。すまない、君1人(・ ・ ・)しか助けられなかった」

 

「え?それはどういう──」

 

スピアは後ろをゆっくりと振り返る。

そこには無惨に殺された守備隊の死体以外に見慣れた服装をした死体が転がっていた……。

 

「ち、父上!!」

 

腹を抱えながらスピアは父親であるチョウリの死体へと近付く。

だが死体にチョウリの首はなく、キョロキョロと周りを見渡すと、破壊された馬車の近くに断末魔の表情を浮かべたチョウリの首が転がっていた。

 

「あぁ……そんな……父上……っ!!」

 

スピアは冷たくなったチョウリの死体を抱き締めながら号泣する。

それをエクセリオンは静かに見ていたが、しばらくすると号泣するスピアに近付き肩にそっと手を乗せた。

 

「……まずは傷の手当てをしよう。でなければ次はお前が死ぬ事になる」

 

「父上……父上……!」

 

エクセリオンは半ば強引にスピアをお姫様だっこの状態で抱き上げる。

そしてエクセリオンの鎧を解除してスピアに自分の素顔を見せた。

 

「あ、あなたは……?」

 

朱色の髪に赤い目、狼のエンブレムが描かれた漆黒のマントを纏う男がそこにはいた──。

 

 

 

 

 

場所は変わり、スピアは自分を助けた男──ディセントに抱き抱えられ、空き家へ連れて来られていた。

だが連れて来られただけでなく、ディセントはダイダラによって受けたスピアの傷の縫合までしたのだ。

 

ボロボロのベッドに横になりながらスピアはイスにもたれ掛かり、タバコを吸うディセントをじっと見つめた。

 

「……悪い、嫌いだったか?」

 

そう言ってディセントは口からタバコを離し、地面に捨て靴で踏み潰して火を消す。

 

「あ、いや……別にそういう訳ではないんだ。ただ、あなたは何者なのかと思ってな……」

 

寒さでスピアが少し震えているとディセントは身に纏っていたマントを脱ぎ、震えるスピアへとそれをかけてあげた。

 

「あ……」

 

「……もう少し経てば外へ出て薪を拾ってくる。それまではそれで我慢してくれ」

 

「うん……すまない」

 

再び訪れる沈黙。

その沈黙に耐えきれずスピアはさりげなくディセントに話しかけた。

そうでもしないと父であるチョウリを失った悲しみで胸が張り裂けそうだったからだ。

 

「ねぇ、あなたは私達を襲ったあの3人を知っているのか?知っているのなら教えてはくれないか?」

 

「……あいつらは三獣士、帝国の将軍エスデスの部下だ」

 

「エスデス……だと──ッゥ!!」

 

思ってもみなかった名を聞きスピアは思わず飛び起きるが、縫合した傷口が痛み苦痛に顔をしかめた。

 

「傷口が開く。大人しく寝ていろ」

 

ディセントに支えられながらスピアは再びベッドに横になり、話の続きをするように頼む。

 

「すまない……。それで、なぜそのエスデスが三獣士を使って私達を襲わせたのだ?」

 

「エスデスは大臣と繋がっている。恐らくは大臣が自分の邪魔になる人物を殺すようにエスデスに依頼した口だろう……」

 

「それが私達だったというのか……なぜだ、なぜ私達が」

 

「……チョウリ元大臣は良識派な上にブドー大将軍の庇護下にいる文官。大臣お得意の冤罪での政敵排除が通じない相手だからな。だからこうしてわざわざ刺客を送りこんで消しに来たんだろう」

 

2本目のタバコに火を付け口にくわえながらディセントは続ける。

 

「それで独自ルートで三獣士が送り込まれたと知って駆け付けたんだがな……すまない、間に合わなかった」

 

「いや……謝らなくていい。私が敵を侮らずにいれば皆も父上も死ななくて済んだんだ。私の弱さが皆を殺してしまった、あなたが来ていなければ私も三獣士に殺されていただろう……」

 

スピアは何もない天井を見上げ涙を流し嗚咽を溢す。

強くなりたい、チョウリと皆の仇を討ちたいとスピアは思いながら拳を強く握り締める。

爪が肉に食い込み血が滲むスピアの手をディセントはそっと握ったかと思うと、優しく開いた。

 

「え?」

 

そして血が滲む手のひらをディセントは包帯を巻いて止血をした。

 

「……薪を拾ってくる」

 

それだけ言ってディセントは壁に立て掛けていた大太刀を左腰に差し、深々と雪が降りしきる外へと出ていってしまった。

 

「……不思議な人」

 

今しがた止血をしてもらった左手をぼーと見ながらスピアはぼそっと呟いた。

戦う事なく三獣士を退けた強者かと思えば、自分の傷を縫合しさらには自分で傷付けた左手を包帯で止血をしてくれた。

 

なぜ自分をここまで助けてくれるのか、あの男に何のメリットがあるのか、様々な疑問で思考を巡らせながらスピアは自分を助けてくれた男の帰りを静かに待つのであった……。

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