夜になり寒さは一層厳しくなってきた。
外で薪を拾ってきたディセントは薪と一緒に取ってきた野うさぎを捌き、木の枝に刺してメラメラと燃える火の前で焼いていた。
「……ほら、焼けたぞ」
焼き上がったうさぎの肉をディセントはベッドの上にいるスピアへと渡す。
「ありがとう」
肉を受けとるとスピアは初めて食べるうさぎに少々罪悪感を感じながらも、覚悟を決めて食らいついた。
いつも食べてきていたものとは程遠い簡素な食事、正直に言えばおいしいとは言えない。
だがそんな贅沢な事を言える筈もなく、スピアは黙々と肉にがっつき空腹の胃袋を満たしていった。
「…………」
黙々と肉を食べるスピアを一瞥しディセントも焼き上がった肉に食らい付きながら、チラチラと外の様子を伺う。
左手には巨大な二挺拳銃の1つ『アクティオン』が握られている。
「……外に誰かいるのか?」
「……今のところはいない。だが、撤退した三獣士がオレ達を抹殺しようと戻ってくる可能性もある。三獣士ではなくとも何かしらの刺客が送られてくるかもしれない」
「落ち着いて休む事もままならないな」
最後の一口を胃に送りスピアは肉の刺さっていた木の枝を焚き火にくべた。
ちらっとディセントを見ると先程よりも視線が鋭く、右手にはもう1つの巨大拳銃『アスティオン』が握られ、左腰には大太刀も差されている。
「……ここから動くなよ」
「え、あ、分かった……」
スピアに釘を刺しディセントは下げていたスカーフを口元に上げ、空き家の外へと出る。
ミシミシと降り積もった雪を踏み締めながら出ると、ディセントを10人の男達が取り囲むように展開していた。
それぞれの手には鎖鎌やトンファー等が握られており、殺意がじわじわと滲み出ている。
「……夜襲暗殺部隊『ブラックハウンド』か」
「ほう……我等の事を知っているとは」
「リヴァ様の言う通りだな。ターゲット2人を殺して帝具を持ち帰──」
ダァンッ!
ニヤニヤと話していた男の頭が半分吹き飛び、辺りに脳漿と血液をぶちまけながら後方へと崩れる。
呆然とするブラックハウンドのメンバー、よく見ればディセントの両手に持ったアスティオンとアクティオンの銃口からは一筋の煙が立ち上っていた。
「貴様ァッ!!」
激昂したブラックハウンドのメンバー達は、撃った構えのまま立っているディセントへと飛び掛かる。
だがディセントはそれよりも高く飛び上がり、下方で自分の事を見上げるメンバー達へ向け、腕を交差させてアスティオンとアクティオンの引き金を引いた。
放たれた5発の弾丸は正確にブラックハウンド10人のうち5人の頭を撃ち抜き、肉塊へと一瞬で姿を変える。
「このっ!」
1人がダガー3本を出して空中のディセントへと向けて投擲する。
回避しようがない、串刺しだと思い男は笑みを浮かべたが現実は予想を悪い意味で裏切った。
「…………」
ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!
3発、たった3発の銃弾をディセントは放つ。
放たれた弾丸は導かれるようにディセントへ回転しながら迫るダガーの柄に当たり軌道を変える。
「んな──」
軌道を強制的に変えられたダガーは投げた持ち主へと戻り、男の頭・喉笛・心臓へと深々と刺さり絶命させる。
ディセントは雪が積もる地面に着地したかと思えば両腕を広げ、アスティオンとアクティオンで間髪入れずに自分の左右にいた男達の心臓目掛けて銃弾を叩き込んだ。
「ば、馬鹿な……!」
「オレ達が……ブラックハウンドがたった1人の銃使いに圧倒されるなん──」
て、と言いかけた男の頭が下顎だけを残し爆ぜる。
ガクッと膝を付き前のめりに倒れるとピクピクと四肢が震え、死体の周りには男の頭
「ひ、ひいぃぃぃぃっ!勝てる訳がねぇ!こんな化け物、勝てる訳がねぇよ!」
最後に生き残っていた隊長と思われる男は持っていた武器を投げ出し、ディセントに背を向けて逃げ出そうと走り出す。
「……逃がすかよ」
アスティオンとアクティオンを両腰のホルスターに収納し、ディセントは左腰に携えていた大太刀を抜刀する。
そしてゆっくりと大太刀の切っ先を逃げる男の背に向け、切っ先に左手を添え左足を前に出した構えを取った。
「死ね」
逃げる男が振り返るよりも速く、ディセントはおもいっきり地面を蹴り、高速で突進をしかける。
間合いに入ったところでディセントは腰を捻り、右手を前へと突き出した。
放たれた大太刀の切っ先は男の後頭部に突き刺さり、その突進力と破壊力で眉間を突き破ったかと思えば、あまりの衝撃で男の頭はブチブチと顎と頬の肉が裂け引き千切られた。
大太刀に突き刺さった断末魔の表情を浮かべる男の上顎から上の頭、ディセントはつまらなさそうにそれを見ると真上へと反動で頭を飛ばす。
そして落ちてきた頭を上段からの左薙ぎで一刀両断した。
真っ白に積もった雪を男達の血が真っ赤に染め上げ、月明かりが残酷に不気味に照らす。
1人その中に佇むディセントは例えるなら獲物を1匹残らず貪り食った漆黒の狼のようだった……。
◇◆◇◆
空き家の中、スピアはディセントが置いていったナイフを持ち、閉まっているドアの方へと向けていた。
……ミシッミシッ。
外から雪を踏み締める音が近付いてきた。
自然と息が荒くなり吹き出る汗がスピアの肌を濡らす。
死ぬかもしれない、そう覚悟を決めるスピアだったが、その覚悟は杞憂に終わった。
「……何してんだ?」
ドアを開けて入ってきたのは先程出ていったディセント本人だった。
どっと力が抜けてスピアはナイフを降ろし、額に流れる汗を拭った。
「てっきり刺客が来たかと思ったんだ。あなたが出て行ったきり戻ってこないから……」
「安心しろ、そう簡単にオレは死なない。……刺客達は全員殺したしな」
「……そう」
短く返してスピアは持っていたナイフを近くの棚に起き、再びベッドに横になった。
チラッと横目でディセントを見ると、彼はアスティオンとアクティオンの銃身下部にあるマガジンを取り外し、一発一発弾を込める作業をしていた。
「あなたのその銃、見たことないな。他国製のものか?」
「いや、これは自分で組んだものだ。故にオレ以外には扱えない」
「……そういえばまだ名前を聞いてなかったな。私の名はスピアという。これでも皇拳寺の皆伝者だ」
「……ディセント。帝具使いだ」
会話終了。
自分の期待しているものとは違う返し方にスピアは心の中で地団駄を踏む。
(それだけ!?他にこう詳しい自己紹介はないの!?出身はどこーとか、得意なのはーとか!無愛想なのにも程があると思うんですけど!)
と、口に出して言いたいのだがいかんせん腹の縫合が開きそうなのでぐっとスピアはこらえる。
少し引きつった笑みを浮かべながらスピアはディセントへと問いかけた。
「そ、その帝具とはあの金色と白銀に輝く鎧の事だろう?あれはいつから持っているんだ?」
「…………」
(シカト!?今度はシカトですか!?もう何なのこの人は!)
ディセントの塩対応に対してスピアはわなわなと額に血管を浮かべながら右手を握りしめる。
だが肝心のディセントはどこ吹く風で弾を込める作業を黙々と続けていた。
それを見てスピアは馬鹿らしく思いため息をつき、ディセントに背を向けて彼のマントにくるまった。
(……私、どうなっちゃうんだろ……)
「──申し訳ありませんエスデス様。ターゲット1名を仕留め損ねたこの不始末、責任は全てこのリヴァにあります」
とある一室、三獣士の1人リヴァはデスクの上の書類とにらめっこするエスデスに深々と頭を下げていた。
理由はターゲットの1人であったチョウリの娘スピアの抹殺を失敗した事、そして突如現れたエクセリオンと戦う事なく撤退したためだ。
「全ての責任の罰、このリヴァ甘んじて受ける覚悟はできております」
「顔を上げろリヴァ」
「は──ふぁっ」
むんず。
リヴァが顔を上げると突然エスデスはリヴァの両頬を掴み、力いっぱいに横へ引っ張った。
「表情が固い。もう少し肩の力を抜けリヴァ」
「うぇ、うぇすですしゃま!?にゃ、にゃにを?!(え、エスデス様!?な、何を!?)」
エスデスの予想外な行動にさすがのリヴァも動揺しつつ、地味な痛さにプルプルと体が震える。
そしてようやくエスデスが頬から手を離すとリヴァはヒリヒリと痛み熱を帯びる頬をさすった。
「ターゲットを1人仕留められなかったのは確かに遺憾だ。だが撤退したその判断は正しい、さすが元将校だっただけはある。懲罰はなしにしてやろう」
「は……」
「いくらお前達三獣士でもエクセリオンを斃す事は難しいだろう。お前も知っているのだろう?奴の実力を。だから戦わずに撤退した、違うか?」
「……その通りですエスデス様。奴の強さは私が将校として戦場を駆け回っていた頃から聞いています」
エスデスはイスから立ち上がると背後にあったバルコニーへと続くガラス張りの扉から見える帝都を見下ろした。
「
「は?」
「お前達は今度“竜船”で開かれる完成セレモニーで出席するターゲットを殺れ。そしてこれにはナイトレイドが動くはず、共に葬ってやれ。エクセリオンについては私が手を打っておこう」
そう言いながらエスデスは髪をゴムで結い、別室の扉を開ける。
開けた部屋には沢山のご馳走がテーブルに並びニャウとダイダラが席に座って食べるのを今か今かと待っているところだった。
「お、エスデス様が来たって事はようやく飯が食えるという事ですね」
「よく言うよ、さっきエスデス様やリヴァに黙ってつまみ食いしようとしたのはどこの誰だっけ?」
「は、馬鹿!オレがつまみ食いする訳ねぇだろっ!」
ニシシ、とニャウはあたふたと慌てるダイダラの様子を見ていたずらっぽく笑う。
エスデスは軽く(一般的に強めに)ダイダラの眉間にチョップをしてから自分のイスに座った。
「さて、待たせてすまなかったな。夕食にしよう、リヴァも座れ」
「はい」
軽く会釈をしてからリヴァは自分の席であるダイダラの隣に座る。
それを確認してからエスデスはワインの入った自分のグラスを持ち話し始めた。
「お前達と共に食事を取るのもこれが久しぶりだな。今日はリヴァの料理ではなく城の一流料理人に作ってもらったものだ、存分にむさぼり食うがいいぞお前達」
「「おぉーっ!!」」
「では、竜船での作戦が成功した暁にはこの私が腕によりをかけて──」
「「「かけんでいいかけんでいい」」」
「え、エスデス様まで……」
自分の料理を仲間のニャウとダイダラどころか主であるエスデスにまで拒否されリヴァは軽く落ち込む。
そんなリヴァの様子を見ながらダイダラとニャウは目の前の食べ物にがっつき、エスデスも小皿に取り分けてワインを飲みながら料理を食べた。
「あ、ダイダラ!それ僕が食べようと残してたのに!」
「がっはっはっ!早い者勝ちだニャウ──あ、ちょ、お前!それオレが残してた肉!」
「お前達、もう少し静かに食べないか。エスデス様の前だぞ──」
「あれ、リヴァ食べないの?ならこのフライドチキンもらうねー」
「あ、馬鹿!私がこのデザートランナーのフライドチキンが大好物だと知っておきながら!」
騒がしくも楽しげな雰囲気の食事の中、エスデスは1人別な事を考えていた。
(エクセリオンに対抗できる帝具使い……確かまだ帝都にいたな、元“黒き狼”のメンバーが。フフフ……さて、
◇◆◇◆
──帝都近郊。
《キシャアァァァァァッ》
とある街道で一級危険種『ダガーヘッド』と呼ばれる大蛇の危険種が現れ、人々はパニックに陥っていた。
「な、なんでこんな場所にダガーヘッドが現れるんだ!?」
「知るか!逃げなきゃ食われるぞ!」
逃げ惑う人々、だがそんな人々とは違いダガーヘッドへと向かって歩くローブを深く被った女性がいた。
「お、おいあんた!死にたいのか!」
「…………」
女性は答えない。
その女性にダガーヘッドは狙いを定め、ダガーヘッドと呼ばれる由縁である頭部のダガー状の突起で突進してくる。
「……急いでいるのに。こんなところで、足止めを食う訳にはいかない」
女性はそう呟くと両腰から双剣を抜き放ち、向かってくるダガーヘッドへ向けて右手の剣を振る。
それに合わせたかのように風が吹くと迫ってきていたダガーヘッドはのたうち回り苦しんでいた。
《グオォォォォッ!!》
ボタボタとダガーヘッドの頭から真っ赤な血液が流れ落ちる。
よく見ればダガーヘッドのシンボルであるダガー状の突起が綺麗に切断されていたのだ。
これに怒り狂ったダガーヘッドは我を忘れて女性へと再び突進をして、噛み殺そうと巨大な口を開く。
「消えなさい」
女性は高く跳躍しダガーヘッドの攻撃を回避する。
間髪入れずに女性がダガーヘッドに双剣を構えると、双剣の刃に“風”が宿り風の刃として姿を変えた。
「……ルストストリーム」
女性が双剣を振った刹那、刃から巨大な竜巻が発生しダガーヘッドの体を抉る。
ダガーヘッドの体は竜巻の力によってぐちゃぐちゃに潰れ千切れ、次の瞬間には“消えて”なくなってしまった。
「……こんなもんか。あー、暑いな今日は!」
女性はフードを脱ぎ真っ青な青空を仰ぎ双剣を両腰に戻した。
「……もうすぐ会えますよ、“隊長”。ようやくあなたの力になれる時がきました」
女性──少女はポケットから出したボロボロの写真を一瞥し、“狼のエンブレム”が描かれたマントを翻しながら帝都へ向けて歩き出した……。
◇◆◇◆
「私も行くぞ!」
「……いや、来ないでいい」
2日後、ディセントは頭を抱えていた。
帝都へ向かい三獣士や他ターゲットを斃しに行こうと潜んでいた小屋を出た矢先だ。
目の前には先日襲ってきたブラックハウンドの1人が持っていた槍を拝借し、着替えを済ませ仁王立ちしているスピアがいた。
「何故だ!私にはやらねばならない事があるのだ。なのにディセント殿、あなたはその私に故郷へ戻れと言うのか!」
「そうだ」
ばっさり言われ思わずよろめくスピアだったが負けじとディセントへ反論する。
「私は父上や部下達の仇を討たねばならない。奴等に臆して故郷へ帰るなどできん!」
「……まだ傷は癒えてない。正直足手まといだ」
「い、言ってくれるなディセント殿……。ならばこうしよう!あなたの後ろを私が勝手についていく!これなら文句はないだろう?」
「……オレ、空飛べるけど」
「そ、それは困る!せめて歩いてくれ!」
なんとかディセントは故郷へ帰るように説得するがスピアは頑として首を縦に振ろうとはしない。
むしろ余計にムキになってディセントへ詰め寄っていた。
「いいか!あなたが何を言おうと私は故郷へは帰らない!父と部下達の仇である三獣士を斃し、諸悪の根源である大臣を殺すまではな!」
「……胸を張って故郷には帰れなくなるぞ」
「いいさ……この手を血で染めようと屍を積み上げようと、覚悟はできてる」
スピアの頑ななまでの決意を目の当たりにしたディセントは溜め息をつき、くるっと彼女に背を向けて歩き出した。
「ちょ、な、なんだまだ話は──」
「オレは歩いて帝都へ向かう。ついてくるなら好きにしろ……」
「っ!!も、もちろんついて行くとも!」
ぱぁっと顔を明るくさせながらスピアは先を歩くディセントへ小走りで近付き、隣まで来るとディセントと同じ速さで歩き出した。
「これからどこへ向かうんだ?」
ふと気になってスピアはディセントへ訊ねる。
ディセントは懐からタバコを取り出し口にくわえて火を付けてからその問いに答えた。
「……もちろん帝都だ。ある情報屋から三獣士が竜船での完成セレモニーで要人を暗殺するというネタを掴んでな。……そのセレモニーが明日だ」
「あ、明日?随分と急な話だな……」
「……仕方ない。だが三獣士を斃す絶好のチャンスだからな」
スピアは話を聞きながら水筒に手を伸ばし、中に入った水を飲む。
それにつられてか隣を歩くディセントもポケットから水筒を取り出し、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
それから1時間ほど歩き、2人は潜んでいた小屋があった村を抜け、一本道の街道にいた。
街道にはディセントとスピア以外人はおらず、辺りを見渡しても建物や畑等は見えない。
スピアの提案で2人は街道のそばにあった岩に腰掛け休憩する事にした。
「……傷は大丈夫か?」
「あぁ、おかげさまでな。大した荷物も背負ってないし、ただ歩いているだけだ。問題ない」
歩いていて暑かったのかスピアは着ていたコートを脱ぎ、手で顔を煽った。
「あとどのくらいで帝都に着くんだ?このままでは日が暮れてしまいそうだ」
「……日が暮れるまでには到着できると思う。途中で馬車でも通れば乗せてもらって楽なんだがな」
「そうだな。帝都にさえ着けばこっちの──」
「帝都には行かせないよ」
突然の第三者の声、その声を聞いたディセントは隣にいたスピアを抱えると跳躍して後退する。
後退したその瞬間、轟音と共に今までいた岩があった場所は深く抉れ消滅していた。
「な、なに!?」
「黙ってろ」
土煙が上がるその先をじっと睨みながらディセントはスピアを降ろし、両腰のアスティオンとアクティオンを抜いた。
「へぇ?今のを人を担いで避けるとは……さすがですよ」
土煙が晴れる、晴れたその先には眼鏡をかけ白いスーツを着た青年が立っていた。
その端正な顔立ちとは裏腹に青年が浮かべているのはディセントに対する嘲笑であった。
「けど、生きてるとはナンセンスですね。
「……“クレイオル”……!」
「僕の名を……気安く呼ぶな裏切り者がッ!!」
嘲笑していた表情とは一変、クレイオルと呼ばれた青年は怒りを露にし、右手に持つ短剣をディセントとスピアへと向けた。
「消し飛べ」
短剣が光ったかと思えばクレイオルの周囲に球状の光がいくつも浮かび上がり、クレイオルが短剣を横に振った刹那、光の球はディセントとスピアへ向けて放たれた。
「……ちっ!」
ディセントは再びスピアを担ぐと縦横無尽に走りながらクレイオルの放つ光の球を回避していく。
その間右手に持ったアスティオンでクレイオルへ向けて銃撃するが、クレイオルの前に展開された光の壁によって防御されてしまう。
「効かないねぇ!そんな豆鉄砲、届く訳がないんだよ!未練がましく部隊のマントを身に付けているような奴に、この僕が負ける訳がない!」
「何なんだあいつは!帝具使いか?!」
「……輝光翔刃『スターライト』。それが奴の帝具だ」
「その通り!!この帝具でオネスト様の敵であるお前達を抹殺してやるんだ!!」
高笑いしながらクレイオルは光の球を次々に出現させ、駆け回るディセントへ向けて放つ。
対するディセントもスピアを担ぎながらアスティオンで反撃するも、やはり光の壁と球によって遮断されてしまう。
「無様なものだなガンスイーパー。かつては伝説のスイーパーとまで言われたお前が今や部下であった僕に当てられないなんて……滑稽すぎて笑えてくるよ!……シャーナメリアも可哀想に、こんな奴のために
「……貴様ァッ!!」
怒りを露ににしながらもディセントはスピアの安全を最優先にし、森へと入り込み近くにあった岩影に隠れて担いでいたスピアを降ろした。
「いいか、絶対にここを動くなよ……」
「わ、分かった……」
素直にスピアが頷くのを確認するとディセントは両手のアスティオンとアクティオンを構え、未だに街道から攻撃してくるクレイオルの元へと乱射しながら向かっていった。
「おや?殺される覚悟ができたのかい、裏切り者?」
ディセントの攻撃を防御し、己の攻撃を一時止めてクレイオルはディセントへと嘲笑を浮かべる。
対するディセントは冷静にアスティオンとアクティオンをクレイオルを向け話し出した。
「……クレイオル。お前こそ堕ちたものだな、あの大臣側の人間になるとは……」
「……君は誤解しているよガンスイーパー。大臣は最高だよ?気に食わない奴を殺せば僕の欲しいものをくれるんだ。そう、地位も名誉も女もだ。部隊にいた頃の生活と比べれば天と地程の差があるよ……そう、この世は弱肉強食なんだ。強ければ生き、弱ければ死ぬ。だから強者の僕が弱者の君を殺すんだよ、ガンスイーパー!!」
醜悪な笑みを浮かべながらクレイオルは再び自身の周りに光の球と、新たに光の剣を出現させた。
「消えなよ?『ライトシューター』」
刹那、無数の光の球と剣がディセントへと向けて放たれる。
──だが。
「そうはさせません!」
女性特有の甲高い声と共に一陣の風が吹き荒れる。
そして気付けばディセントへ向かっていた攻撃は消え去っていた。
「なに……?僕のライトシューターを相殺した?」
「これは……!」
思わずディセントは後ろを振り向く。
そこには黒いマントを羽織り、両手に双剣を構える青髪の少女がいた。
「……この時を、この時をどれだけ待ちわびた事か……!」
少女は双剣の切っ先をクレイオルへ向ける。
「
腕を交互に重ねて叫びながら少女は重ねた腕を一文字に振り切る。
するとV字型の真空の刃が発生し、まっすぐクレイオルへと向けて放たれた。
「ちぃっ!貴様は!」
クレイオルはギリギリで回避し少女を睨む。
「お前は……やはり」
「はい、隊長!“元”特殊戦闘部隊『シュヴァルツェア・ヴォルフ』隊員、レイル・ロード!隊長の力となるべく馳せ参じました!」
狼のエンブレムの描かれたマントを翻しながら少女──レイル・ロードは風を纏ってクレイオルへと再び双剣を構えた。
「元シュヴァルツェア・ヴォルフ隊員クレイオル・セントメール、あなたを殺します」