コードギアス反逆のルルーシュ Children in succession to will   作:ラムネ便

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そんなこんなでもう五月の中旬。これから暑くなってくるのでスポーツをやる人もやらない人も気をつけて下さい。


人格崩壊大作戦

「人斬り・・・彦斎?」

「キシは・・・いや彦斎は、この世界の住人ではない。儂が異世界から連れてきたのだ」

「異世界からなんだ。まあそれはいいとして、その彦斎がどうしたの?」

 

紅茶を一口飲んでカップを元に戻したあと震える唇で真実を話し始める。

 

「あやつには病気で死んだとかで適当に誤魔化したが・・・本当の死因は自殺じゃ」

「自殺⁈あのキシがか⁈」

「あやつは多重人格を患っておった。普通の優しい青年と人斬りの青年。血すら見れない優しい青年のあやつは人斬りを自分の記憶外でしていたことに気づき自殺した」

「で?それが?」

「儂は確かに神だが所詮は力の乏しい神。あやつの人斬りは・・・消えてない」

 

人斬りが消えてない。それはE.Eが黄昏の間という自分のギアスを取り戻し戦闘の記憶を回収した時以来、疑問が消えない原因の一つだったもの。別世界の誰かと戦うのがあの戦闘の掟。ただ、キシの分身ともいえる彼が自身を『ジャック・ザ・リッパー』と呼んだのには疑問が消えなかった。

 

「なら俺と同じ方法で統合すれば・・・」

「彦斎の人格は完全に乖離しておる。統合は不可能じゃ」

「じゃあキシは?どうなるの?」

「自分の意志で封じるのは難しい。じゃがキッカケが無ければ出ることは無い」

「つまり・・・」

「キシを戦場に出してはならん。人斬りを出したら最後。奴は止まらんぞ」

 

超がつくほど人外レベルにまで強化されたキシの剣術は帰り際に自慢されていたので分かる。だがもし、その人外レベルの剣術を彦斎が使えばどうなるかは全く分からない。更にPMCを立ち上げたからには戦場に出ない可能性など少ないだろう。

 

「それと彦斎には痛覚抑制を施してある」

「痛覚抑制?クレアがジェレミアに組み込んだものと同じなのか?」

「彦斎の痛覚抑制は精神的なものじゃ。人を斬る事や倒す事による罪悪感の減少を目的としてかけてあるが・・・そろそろ限界が近い」

「要するに時間がないと」

「そうだ。しかしこの責任は儂にある。だから其方達に話しておきたかった」

 

この件を聞いたオーキスは、ある案を弾き出し神狐に提案した。それは神狐を震え上がらせたがオーキスはE.Eに命令し強引にキシのいる並行世界へと向かわせる。三人は光に包まれ現界したのはキシがいるフロント企業。しかも社長室に直で。

 

「よおキシ」

「ん?オーキスじゃないか!久しぶりだな!どうした?」

「ちょっと来い」

「え?」

 

キシがその一言を聞いた瞬間、社長室ではなく嵐が吹き荒れ雨が激しく地面に叩きつけらる音がする場所に移動していた。神狐はキシに何か言っているが奴には聞こえない。何故ならE.Eに空間を作らせたからだ。いるのは俺とキシの二人だけ。

 

「どうしたんだよ⁈何処なんだ此処は⁈」

「キシ。お前は心のどこかで迷っていたはずだ。世界が平和になって平穏に暮らすことも出来た。だがお前は自ら戦場に足を運んだ」

「オーキス・・・何を・・・」

「キシ。その腰にある剣は何の為にある?」

「そりゃ仲間や愛する人を守る為に」

「違う。剣はどこまで突き進めようと人斬り包丁に過ぎない。それが剣でなくとも」

「・・・」

「もう抑えつける必要はない。剣をとれ。キシ。”ジャックに戻る刻が来た”」

 

神狐はキシの顔が一瞬だけ下に向いたのを見ると顔が真っ青になる。当たり前だ。いくら限界に来ていたとは言え神の付けた封印のようなものを能力が人外ですら不可能のはずなのに自分から解除してしまったのだから。

 

「痛覚抑制を外しおった・・・しかも自力で」

 

彦斎は一回だけ自分の顔を手持ちの剣で少し斬ると、付着した血を手で拭き取る。そしてキシではない笑い方でオーキスに剣を向けた。

 

「ハッハッハッ・・・死にたいのはお前か。ハッハッハッ!俺の名前は河上彦斎。又の名前をジャック・ザ・リッパー。冥土の土産に俺の戦い方を持っていくがいい!」

 

その眼は完全に人ではない。知性のある獣に近い何かだ。

 

「KMFにも使われる強化金属製の両刃剣か。俺は玉鋼を10年かけて鍛えさせた戦国太刀に高周波システムを導入したコイツを使わせて貰う」

 

オーキスは彦斎の両刃剣を見ながらブレードの刀身を露わにする。赤いチタンコーティングをされたそれは、その長い刀身に雷を纏い鞘にはトリガーが付いていた。

 

「現代の英雄!お前に私を殺せるか⁈」

「行かせて貰おうか。大昔の人斬りさんよぉ」

 

一歩前に進んだ彦斎。だが、その一歩から放たれた一振りはオーキスの黒い防刃ジャケットを容易く切り裂いてしまう。一方オーキスは斬られた直後に鞘のトリガーを引き、太刀の柄を顎に直撃させた。一瞬退け沿いた彦斎だが、バク転して距離を置く。

 

「ほぉ。人外になると脳震盪すら効かんのか」

「それだけか?見せてみろ。お前のチカラを!」

 

そういって挑発してくる彦斎は剣に波紋を流し込んで強化する。持ち方も変えて両手持ちで構えると動かなくなった。

 

「波紋・・・か。なら俺も少し本気になるかな」

 

太刀を鞘に収めて居合斬りの構えになるとギアスを発動。彦斎は上段からの一撃に特化した構えだがオーキスより剣先が長く、もし居合切りが遅ければ勝機は彦斎にある。

 

「人斬り彦斎。一つ聞いておこう。お前が人を斬る理由を教えろ」

「理由などない。俺は人を斬ることが生きる事に直結して・・・」

「?」

「違う・・・俺は・・・人斬りなんて・・・」

「まだ迷いがあるのか」

「人斬り?そうだ・・・。よくもまあ俺を蘇らせてくれたな。神狐」

 

神狐の事を未だに分かっているところを見ると前の記憶が失われている訳ではないようだ。それどころか更に前の記憶まで思い出している。彦斎は剣先を空間の仕切りに向けると、なんと斬り裂いてしまった。

 

「は⁈嘘でしょ⁈ギアスの空間を斬り裂くなんて聞いた事がないんだけど!」

「記憶を取り戻しおった。まさかこんな事が出来るとは」

 

剣を出したまま神狐に近づく彦斎。数秒後、剣が握られていた彼の右手はどこかに吹っ飛んでいた。俺にもE.Eにもその原因は一切分からない。これが神の力ってやつなのか?

 

「殺気垂れ流しで近づく阿呆がどこにおる。儂を殺したければ神にでもなるのだな」

「そうか。知ってるか狐。世の中には狐狩りってのがある」

「ほお?で?」

「貴様を狩らせて貰おう」

「やれるというなら・・・やってみるがいい。人斬り如きに遅れをとる儂ではない」

 

瞬間、神狐の可憐な着物がいつの間にか再生された彦斎によって斬られる。だがその下に着込んでいたのは防刃ベストなどの防具ではなく普通の服だ。刃先は服によって止められていたのではなく刃先自体が服に触れる事ができない。つまりどんなに刃が届いていようと神狐の前には意味がない事を示す。

 

「勝手に俺の記憶を刷り込みやがって・・・人斬りを転生させた事を後悔しろ!」

「後悔すんのは貴様の方だ」

 

オーキスの居合切りが先程の鞘の爆発力により途轍もない勢いで飛んできたが、彦斎は背後の状態で受け止めた。更に高周波ブレードの斬撃が波紋による強化で剣自体が破壊できていない。

 

「転生時に厄介な能力を組み込んだもんだ」

「儂は単に無双する映画を撮りたかっただけなんだがな。撮影が終わってからの後始末がこれだけ面倒だとは思わなんだ」

「神ってのは無責任なのが売りなのか?」

「まさか」

 

E.Eはこの世界を維持しているので隠れて貰っているが、彼女のギアスの維持はかなりのエネルギー消費が付き物。もしも限界がくれば彦斎の並行世界での戦闘となる。絶対に俺の作戦を成功させなければ後でどうなるか分からない。

 

「来るがいい人斬り!追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だぞ!」

「クソ狐が!」

 

神狐はオーキスが彦斎の素早い剣戟を防いでる隙に大量の札を用意。隙をついて連続的に札を彦斎にあてていくが止まる様子など一切見せない。本来なら封印の効果で止まるはずだが人外の能力で殆どが無力化されており彼にとっては蚊同然。彼を止める術はない。

 

「どうした!俺を止めてみせろ!」

「・・・時よ止まれ」

 

全ての時間が止まりあらゆるものが動かなくなる。俺は彦斎の腹部を刺し切断した。

 

「そして時は動きだす」

 

彦斎は腹部から真っ二つに斬られたところを見ると俺を気味の悪い笑みで見つめ倒れる。大量の出血をしていながらも小さく笑い再び振り向いた時、奴は既に身体をくっつけていた。これが無限ループするのだからジリ貧になるな。仲間くらい連れてくりゃ良かったか。まあいい。作戦の下準備は終わった。

 

「彦斎。確かにお前は人外レベルの能力を持つ。だが残念だったな。キシ!覚醒の時間稼ぎはしたぞ。その人格を捻り潰せ!」

「何を・・・⁈」

「SEEDの種割れは覚醒!彦斎!統合が無理ならば主人格に潰されて消滅するがいい!」

 

この方法が確実だと思ったのは単にキシという人格の方があらゆる面において強いからだ。神狐の話や彦斎の言動を聞く限り『人を斬る事』が人生の目標。だが、もしそれが強者弱者関係なく殺っているのならば彦斎に勝ち目はない。

 

「彦斎。さっき人を斬ることが生に直結すると言ったな。あながち間違ってはいない。しかしお前は決定的なものが欠けている。自分のプライドを守る人斬りと家族を守る青年。さてどちらが強いのかね?」

「うるせぇ!俺は俺だ!」

「そう。お前はお前だな。河上彦斎。だがお前に居場所はない」

「返してもらうぜ。人斬り!」

 

何かが吹っ切れたように白いモヤが蒸気のように噴き出し彦斎はその場に倒れた。だが数秒もしない内に立ち上がり剣を収めると澄み切った顔をこちらに向ける。

 

「彦斎か?」

「もう人斬りはいらない。そうだろう?」

「お疲れだったな。キシ」

 

キシは人斬りの人格を追い出す事に成功しているようだな。これなら神狐が心配するような事は二度と起こらないだろう。人格を概念化出来る空間を作ってくれたE.Eには感謝せねば。

 

「んー。そろそろ次の予定の準備をするかの。撮影は終わってる事だし」

「は?」

「キシ。其方に儂の加護はもう要らぬ。よって能力を全部返してもらうぞ」

「はい⁈今⁉︎」

「今だ」

「いや・・・ちょっと勘弁してもらえませんかねぇ?まだやる事とかあるし・・・」

「いい加減生への執着を断ち切れ。オーキスはこれでも自らの力と先代の技術力の結晶で生きておるのだからな」

「じ、じゃあ条件付きで!俺がオーキスに一番いい礼品を渡せばどうだ⁈」

「それなら許可する」

 

キシは胸ポケットからタッチパネル式端末を出すとアクセサリーを外して俺に渡した。受けとって画面を見てみると青い画面の中心にctOSと表示されたマークがクルクルと回っている。

 

「コレは?」

「俺の最高傑作品だ!このスマホ一つでガス、水道、電気を操り車の警報機を消し、あらゆるネットをクラッキング。人物のプロファイリングも可能だ。脆弱性がある電子機器ならショートさせたり制御も出来る。これさえあれば負けることはない!」

「そんなことが?」

「出来るんだよ!この『ctOS』なら!」

 

キシの言ってる事を要約すると、コレに搭載されているOSによって凡ゆる電子機器を操る事が可能だということだ。例え対象がネットワークに繋がっていなくても。

 

「面白いが足りんな。代わりに六割の能力を」

「待てぃ!まだだ!まだ終わらんよ!」

 

キシは謎の石をどこからか取り出し俺に渡した。見た感じ純度の高い紫の鉱石だがルビーでもない。それに割と人工感が半端ないほど綺麗な正八面体をしている。大きさは手の平にちょっと収まらないくらいだ。

 

「・・・いや本当は渡したくはないんだけどな?能力が返されるよりかはいいし。でもなぁ。コレ回収するまでアチラの世界に何度行ったことか」

「そんなに凄いものなのか?」

「ctOSの比じゃない。ヤバイもんだ」

 

先程の端末も十分凄い。だがキシが渡すのを渋るという事は珍しい。

 

「ま、いいか!また行きゃいいもんな。色々迷惑かけた礼の一つだと思って受けとってくれ」

「で、コレは一体なんだ?」

「フォールド・クォーツ」

「は?なんだそれ。ダイヤ的な?」

「ダイヤより価値は高い。それさえあれば半永久的に機械を動かせる。これなら良かろう」

「よっしゃ!」

「じゃが幾つかは返してもらうぞ。剣術と波紋と覇気。あとスタンドの弱体化。これは絶対だ」

「え?ちょ・・・」

 

神狐はコインをポケットから出すと思い切り弾いてキシの額に直撃させた。かなり痛かったのか気絶してしまい膝から崩れる。光るコインを回収した神狐は小さな穴を作り出す。

 

「これで少し動きやすくなった。さて。儂は新しいタレントを探す。元気でな」

 

穴が広がって神狐はそこへ消えていった。キシは未だに気絶しているので元の世界に返しておき俺とE.Eは空間を出て基地に帰還後、渡されたフォールド・クォーツなるものの研究を開始した。だが俺達はまだ分からなかった。このフォールド・クォーツの研究ミスがあんな化け物を蘇らせる事になるなんて。

 

続く

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