「釣れないし、眠くなるし、やってられっか」
キリトは釣竿を放り出し、寝っ転がった。
ソウもソウでどこかに行ってしまうし・・・
すると不意に頭のほうから声を掛けられた。
「釣れますかな」
顔をあげると一人の男が立っていた。
キリトはじっとその男を見ていた。
「NPCじゃありませんよ。
私はニシダと言います。東都高速線の保安部長をしておりました。
名刺がなくてすいません」
「どうも、すいません。俺はキリトって言います。」
「まあ、無理もない。私は突出して高齢でしょうから
ほかにもいい年こいた親父たちと共にこれをしてますよ」
ニシダはそういって、竿を、くいっとしゃくって見せる。
その時ウキが勢いよく沈み込んだ。
間髪入れずにビシッと竿に合わせた。
「お見事・・・」
「いやーここでの釣りは数値次第ですから
ただ、釣れるのはいいんだが料理のほうがどうも・・・
煮付けや刺身で食べたいのですが醤油なしじゃどうにも」
「あっ、えーと、醤油に似てるものなら心当たりがあります・・・」
「なんですと!!」
「なんだと!!」
ニシダさんとは違う男の声が聞こえた。
聞き間違えるはずがないソウだ。
振り返ると目を輝かせてキリトを見ていた。
◆◆◆
「ふう、堪能しました。この世界に醤油があるなんて」
「全くです」
ソウとニシダさんが笑っている中で
キリトは頭を抱えていた。
「ソウは釣れるのに俺は釣れないなんて・・・」
「まあ、元気だしなってそのうちキリト君にも釣れるって」
ログハウスのキッチンで「これも頼むわー」と言って出してきたのは
大量の魚だった。ニシダさんも称賛の言葉を発していた。
「釣れないなら、場所を変えるのが普通だぜ。キリトクン」
「そうですな、場所を変えることは一つの方法ですが
キリトさんが釣られていた場所は難度が異様に高いのです」
ニシダの言葉にキリトは絶句した。ソウとアスナはお腹を抱えて笑っている。
「どうしてそんなことに・・・」
「どうやらあそこには主がいるそうなんです。」
「「「ヌシ?」」」
「面白そう、やろうよキリト君」
「「それは、釣り上げるしかねぇ!」」
後日、ニシダさんから主釣りの連絡が来た。
「あっはっはっ、晴れてよかったですな
では、主釣りを開始します」
あほみたいにでかい餌を取り付け湖に放り込む。
数十秒で竿がぴくぴく動き出す。
ニシダはじっと振動する竿を見据える。
と、大きく竿の穂先が引き込まれた。
「今だ!!あとはお願いします。キリトさん!」
「おれ!? じゃあ、スイッチィィィィィ」
猛烈な力で湖に引き込まれる。
「思いっきりやっちゃってください。」
「おう、頑張れキリト!」
キリトは思いっきり引っ張り上げた。
するとギャラリーたちが全速力で逃げてくる。
ソウもアスナも一緒だ。
「どうしたん・・・」
キリトが振り向くと二メートルを超える古代魚が宙を舞っていた。
全パラメーターを駆使してアスナのもとに逃げる。
「ず、ずるいぞ。自分たちだけ逃げて!」
「おおー陸を走ってるぞ!」
「もう、そんなこと言ってる場合じゃないよ。
キリト君、ソウ君、武器持ってる?」
「スマン、持ってない」
「うーん・・・」
「しょうがないなあもう」
アスナは細剣を引き抜く。
巨大魚を悠然と待ち構える。
「キリトさん!奥さんが、奥さんがあぶない!!」
「大丈夫ですって」
アスナは大きくかがみ彗星のように全身から光の尾を引きながら正面から突っ込んでいく
最上位細剣技の一つ『フラッシング・ペネトレイター』だ。
「やば!」
巨大魚のHPバーがほんの少し残っている。
アスナは技の後の硬直状態、キリトは持っていない。
飛んでくる巨大魚に走り飛んでいく影が一つ。
『三刀流 三道の辻』
巨大魚が綺麗に三枚おろしにされてしまう。
そしてそのまま光の結晶となって消えてしまう。
「や、おつかれ」
「ってソウ君武器持ってるじゃない!
なんで私にさせたの!」
「え?だって、ほら」
ソウの手に持っていた剣が光の欠片となって消えた。
耐久値がもうなかったのだろう。
アスナが「ああ」と納得したようにうなずいた。
あの刀はソウが一番初めに購入した刀『雪走』。
一番最初ってことでなかなか手放せなかったのでお守り代わりとして持ってたのだが
最後の最後でいい仕事をしてくれた。
ソウは光の結晶が一つ残らず消えるまで見届けた。
一番最初ってなんか愛着わきますよねwww