時計仕掛けの惑星(クロックワーク・プラネット)
およそ千年前、何の前触れも無く地球は死んだ。なんて事のないただの“寿命の測り間違え”だった。宇宙人が攻めてくるでも、殺人ウィルスの散布でも、古代の怪獣の復活などの派手なものでは無く緩やかに、だけど確かに死んでいった。やがて地球は冷え込んでいきあらゆる生命がゆっくりと死んで逝く事を感じていた。ある男が現れるまでは。その男は莫大な富があるわけでも、強大な権力を持っている訳でもない。ましてどっかの小説の様に超常の力を持っている訳でもなかった。その人物は世界にこう言葉を放った。
『私はこの星の全機能を、歯車だけで動かす設計図を作った』
その男は時計技師だった。男は自らを“Y”と名乗った。
『見ていろ。私は全てを歯車で再現してみせる』
そして宣言通り彼は地球を時計仕掛けに作り変えた。たった一人の男の手によって地球は延命をはたした。そして彼は地球を変えた設計図をこう名付けた。
"
「ぐおー…ちかれた…」
ようやく今日1日の授業が終わり帰宅を果たす。やはり毎日が同じと言うのは精神的に疲れる。世界はもっと刺激に溢れるべきだ。
「さーてと、ちゃっちゃと着替えて始めますか」
そこそこ大きい千年前から変わらない日本家屋、そこが俺、
「…ただいま、眠り姫さん」
ずっと前から、それこそ俺のひいひい祖父さんの代から家に保管されている名称不明の
「やっぱいつ見ても不思議だよな…」
出っ張りを押すことで開かれる背部の人工皮膚、その中には本来ぎっちりと何十億という単位の歯車やらシリンダーやらのパーツがあるはずなのだ。だがこの自動人形にはたったの7862個のパーツで出来ている心臓とも言える中枢とどの様な働きなのか分からない45892個のパーツで出来ている不明の機構が中心で浮いているだけ。後はどこにも歯車と言った類いの物が無いのだ。見るだけなら伽藍堂の体、でも俺だから、この両手を持っている俺だから分かる。これでいい、だけど後一つの何かが足りない。それが分かる。本来なら動く筈の無いほどに足りないパーツ、でも触れば分かるこの異次元を見ているような感覚、俺はその先が見たかった。だからこうして七歳からの十年間俺は足りない何かを探し求めてきた。こればかりは機械に異常なまでの愛情を注ぐ親しい後輩に話せないでいた。理由は簡単、
「ナオトの奴絶対に『観察させてくれ!』って言うからなぁ…こればっかりは譲れん」
俺は年がら年中ヘッドホンを掛けている機械が好きすぎる後輩を思いかける。
「そういやあいつも自動人形自作してるって言ってたな…できてんのか?お前さんはどう思うよ」
目を瞑り動かない自動人形に問いかける。当然返事はない。
「まっ、いつか見させてもらいますか。そしたらお前さんも一緒に見に行こうぜ」
叶うかどうか分からない約束に俺は不思議と顔を緩ます。いつかこの自動人形が動き、言葉を交わすことが出来ることを信じて。俺はいつも通り何かを探し当てるためにこの自動人形を調べ始めた。
しかしこの約束は未来永劫叶うことは無かった。俺に問題点があったわけでも眠り姫さんが動かなかった訳でもなく、単純にナオトの自作自動人形がこの世から消え去ったからだ。…なんか代わりに超絶美少女自動人形連れてたけど。
その頃のナオト
「なんじゃこりゃーーーーーー!!!?」
ナオト、半壊した自宅にて慟哭する。この瞬間、高校生にして
「んあ?もうこんな時間?」
早い事に既に三時間が経過していた。この後はバイトがあるので今日はここまでだ。俺は眠り姫の自動人形の背部を丁寧に閉じ、ワンピースを着せてそっと寝かせる。
「…また明日な、おやすみ」
俺は一つ挨拶をして作業部屋を後にする。本日の成果、変わらずに無し。
自転車を飛ばしておよそ30分、俺は
「ちわー!バイトの神連でーす!」
「んん?おお、神連君か。少し待ってなさい、今新島君を呼ぶから」
「うす、あざーす!」
ここが俺のバイト先。本来なら国の管轄でバイトを雇うというのはあり得ないのだが昔から良くしてくれていた新島リョウジ兄さんの必死の説得のお陰で簡単な
「ハヅキ、待たせたな」
「いやいや全然待ってないよ」
「そうか、なら行くぞ」
「うぃーす!」
俺は大支柱内部を一人で出歩くことは出来ない。当然だ。本来部外者なのだから。
「んで今日は何すれば良いの?」
「軽装型オートマタ三体の整備だな」
「え?マジで?いつもなら直接業務に関係無いものばっかだったじゃん。なんでいきなり軍関連のを?いや、触れるから良いけど」
「ああ、オフレコで頼むな。実は今大支柱に少し異常が見付かってな。その整備に大半のお付きの整備士が掛かり切りなんだよ。それに応援として
「え!?
「まぁそうだが、猫の手も借りたい位でな…」
「…そんなにヤバイの?」
「いや、心配するな。すぐに直せるから」
「そ、そう…あ、ここ?」
俺達は軽装自動人形格納庫という部屋に着いた。
「ああ、そうだ。入って右の所にあるからその三つを頼む。お前ならすぐに直せるだろ」
「直せるかは触らなきゃ分かんないよ」
「触っただけじゃ普通壊れた場所は分かんないよ」
リョウ兄は俺の手袋の理由を知っている。俺の『異常』に理解をしてくれた数少ない人だ。
「じゃあやりますか」
「…なぁハヅキ」
「ん?どったの?」
「明日から県外に出る気は無いか?」
「え?いきなり何?旅行のお誘い?そういうのはおじさん達か彼女さんを見付けて誘えよ」
「出る気は無いか?」
リョウ兄のどこか張り詰めた雰囲気に疑問を感じる。
「…今んとこ無いよ。遊びにいく友達もいないしな。それにやることもある」
「どうしてもか?」
「だからどうしたんだよ、出る気は無いって」
「…そうか」
「…なぁ、マジでどうしたの?リョウ兄らしく無いぜ?」
「…いや、何でもない。気にするな。じゃあ自動人形を頼むな、終わった頃に迎えに来る」
「え?お、おう…」
そう言うとリョウ兄は自分の持ち場に戻っていった。
「なんなんだ…?」
俺は首を傾げつつも自動人形の整備に取りかかった。
その頃のナオト
「すンませんでしたあああああああああッチョー欲しいですううううーーーーーーーーーっ!!!」
美少女
いや、もうマジで将来不安過ぎ…