世界変えるは天才少女と傭兵とバカップル二組   作:砂利道

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何とかっ!時間の!隙間を見つけて!書ききった!この作品を!投稿だ!!


伝説激突編
新たな始まり


光の無い暗い空間、その中で一人の男が口から煙を吐き出した。

 

ータバコが不味い…

 

機械の目を細めて口元を歪ませる。男の姿はおおよそ三十歳、若く見積もって二十後半だろう。全身を黒いラバースーツで覆い隠している容姿は堅気とは言い難い。

 

…人と呼べるかも微妙ではあるが。

 

男のラバースーツの内側には生身の肉体は無く、骨格(フレーム)で支えられた筋腱歯車(マッスル・ギア)がぎっしりと搭載されている。

 

男の名はベルモット。表には出てこないある企業の諜報工作員(エージェント)だ。ついでに言えばベルモットという名前も偽名だ。

 

「…なぁアマレット。俺達の仕事はここで朝を待つことだったか?」

 

「そんな急かさないでくださいよ、ベルモットセンパイ」

 

ベルモットが話しかけたのは暗い部屋にある一つの巨大な壁の前に踞る細身の男だ。

 

「この不感症の()をしっかりと鳴かせるにはちゃんとした前戯が必要でしてね」

 

「タバコがな、不味いんだよ。こう言うときは大抵キナ臭い仕事って相場が決まってんだ」

 

「毎度思うんですけど完全義体の貴方が味を感じるんですか?ただフィルター汚してるだけでしょ」

 

「験担ぎってやつだよ。俺としては息するように下ネタに走るお前が信じらんねぇよ、なんだよ扉の鍵に不感症って…」

 

その時ベルモットが突然腰の銃抜き放ち前方の天井に銃口を向けた。それにコンマ数秒遅れてアマレットが同じように銃を向けた。実際アマレットは気付いて無かったのだが先輩であるベルモットがそうしたので考える必要もなく従ったのだ。二人が銃口を向けて数十秒後、天井の一部が落ちる。正確にはダクトの入り口が。そこから二人と同じ様なラバースーツを纏った女性が生クリームを搾る様に降りてくる。

 

「…ストレガか、どうだった?」

 

「あかんなぁ、この扉の先は完全に独立しとる。どんな方法でも探れんかった、ネズミどころか蟻一匹も入れんわ」

 

ベルモットは少し考えるように頷く。

 

「余程隠したいものがあるんやろね、最早国家クラスのセキュリティやわ。確実にただの工場とは思えへん」

 

だからうちらがいるんやけどな、と続けたストレガの言葉を聞き流しベルモットは顔を顰める。

 

「たくっ…キナ臭い仕事確定かクソッタレ、ああ、タバコが不味い」

 

この三人の仕事はある工場の内部調査だった。一見すればただの所属不明の工場なのだが問題はこの工場が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事だ。誰の指示か、何を作っているのか、どのような目的なのか、それらを調べ上げ自身が所属する企業の利益へと繋ぐ。それが彼らの日常業務だった。

 

『表向きは"軍"払い下げの中堅工場、だがいざ侵入すれば民間警備会社に国家クラスのセキュリティ…ここまでやって背後関係すら見えないなんてただ事じゃなくとも限度ってもんがある』

 

ベルモットは内蔵されている"共振歯車"を用いて声なき声を発する。

 

『隠れてこないな施設作れるん、五大企業か"軍"だけやろねぇ』

 

『真っ先に浮かぶのはヴァシュロンですが今はそんな余裕無いですからねぇ』

 

『そういやブレゲの御令嬢が死んだフリしてヴァシュロンから"技師団(ギルド)"の火薬庫爆破したって頭のネジとんどる話、ホンマなん?』

 

『少なくとも公的には死亡している』

 

ベルモットは肩を竦める。

 

『社葬もやってたぞ。さりげなく紛れたが社長と長女の涙を誘うスピーチ付きだったぞ。…最中に長女と目があって背筋が冗談抜きで震え上がったが』

 

『…それ大丈夫なんですか?センパイが震え上がるって…』

 

『少なくともかなり後ろで百メートル近く離れていたんだがな…』

 

『化け物やね…』

 

三人に何とも言えない沈黙が降りる。

 

『…まぁとにかくあのお嬢様が生きてるのは間違いないだろう。接触は無いとは思うが片隅には覚えとけ』

 

『分かりました』『分かったわ』

 

二人が返事をしたとき扉からガコン、と重たい音が鳴った。扉はゆっくりと左右へ動く。

 

「よし、サンブーカを起こせ。行くぞ」

 

隅に置かれていた支援型の自動人形(オートマタ)のゼンマイを巻いて起動させ、ベルモット達は扉の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ…」

 

ベルモットは呆然と呟く。扉の奥は結果的に言えば空っぽだった。放置されたクレーン等はあるがその他資材は無かった。が、奥にあったある一室、そこには計画書に設計図が置かれていた。そしてそれがベルモット達が思考停止するほどの爆弾だった。

 

「これ…正気なんか?」

 

「下手すれば都市一つ…」

 

いや、この惑星そのものを…

 

「…とにかく証拠を持ち帰りましょう」

 

いち早く正気を取り戻したアマレットがその声に少なくない動揺を混ぜながらも提案する。その声に我に返った二人は撮影機材を取りだし証拠を残そうとした。だがその時、

 

「「「ッ!!!!??」」」

 

三人の体は完全義体、唯一の生身は脳のみ。ラバースーツの下は人工皮膚、なのに三人は皮膚が粟立つ感覚を覚えた。本能的に三人は同時に扉から距離を取り臨戦のフォーメーションを作る。既に手には最終手段である機械銃剣(コイル・スピア)を構えている。携行できる武器では最強を誇る機械銃剣は五大企業以外では作ることは出来ない、そして企業事に特徴が出る。これを使うということは最悪どの企業が侵入したかが一発で分かってしまう。だが彼等は使うべきだと即断した。これの使用が許される条件はただ一つ。

 

―非使用での生還が絶望的であり、かつ死亡より優先すべき生還理由があること。

 

つまり機械銃剣を抜くこと事態が既に詰んでいるのだ。そんな存在が扉の向こうにいる。三人の緊張が高まり続ける中、ついに扉が開く。

 

「子、供…?いや」

 

自動人形(オートマタ)か…!

 

幼い少女型で愛玩用人形の様に艶かしい機体、華奢な手足には見るものに恐怖を植え付ける禍々しい装甲、地面にまで届いている髪は血の色をしている。そして幼気な顔には半分以上を覆う無骨な仮面が嵌められている。ベルモットは一瞬思考を取られるが仮面越しに目があった様な気がした瞬間、叫んだ。

 

「!?サンブーカ!!」

 

直ぐにでも排除をしなければ、今頭を埋め尽くしているのはそれのみ。

 

「コードD3!ソイツを止めろぉ!!」

 

コードD3―目の前の目標を自壊前提で拘束せよ

 

サンブーカが音を鳴らさずに飛び出す。

 

―だが、

 

 

ゴバッ!!

 

 

「……は?」

 

サンブーカは一瞬の内に()()()()()()消失した。少女のかざした右手には宙に滞空する立方歯車(ソリッド・ギア)が捻転した名残を見せている。

 

―勝てない

 

「!壁を壊せ!!」

 

ベルモットが少女から目を離さずに叫ぶ。

 

「うちが時間稼ぐから頼むで!!」

 

ストレガが自身の歯車を限界まで動かし精一杯の時間稼ぎを敢行する。ベルモットとアマレットは弾種を徹甲榴弾へと変え援護をしようとしたがその瞬間ストレガの上半身は消し飛んでいた。

 

「んなバカな!!」

 

アマレットは無言で引き金を引いたが弾ごと圧縮されスクラップとなった。

 

「クソッタレがあぁ!!!」

 

ベルモットは踵を返して反対側のドアから逃げようとする。その瞬間ついさっき迄いたところに大穴が開く。左腕が巻き込まれた。突然の質量の消失にバランスを崩しかけながらも死に物狂いで逃走する。

 

―クソッ、クソッ!!なんなんだよコイツはぁ!!

 

心の中で罵り声を上げたとき頭の中で一つの単語が浮かび上がる。

 

Initial-Yシリーズ

 

都市伝説とまで言われている人類史最高の天才が作り上げた自動人形。

 

―なんでそんなのがこんなところにあるんだよチクショウ!!

 

後ろからは破壊の権化が絶えず攻撃を放ってくる。そしてついにその一発がベルモットの右足を捉えた。膝から下が消失する。なんとか右腕で這って壁際まで移動する。だがそこから先の逃げ道は無い。

 

─考えろ

 

絶望的な状況、その中でベルモットは思考回路が焼き付く寸前にまで頭を回す。

 

─殺される前に考えろ!何とか…何とかしてあの情報を外へ持ってく手段を!

 

ベルモットがここまで思考を回してるのは別に同僚への弔いでもない。また諜報工作員(エージェント)としての意地でもない。彼の心に居座っているのはただひとつ。

 

─あの化け物に一発もカマせずに死ぬのは…

 

「心底ムカつくんだよ、くそボケが…!」

 

─今できることは体に搭載されてる電信装置で通信文を送ること…だが送ったとして誰が受信できるのか…

 

そこまで思考を働かせ突如思い至った。つい最近起こった京都パージ未遂事件。そこで死んだこととなっているイカれたお嬢様、そしてそのとなりに常にいる自分の憧れ。

 

「くっ、くははははは…!いるじゃねぇか」

 

ベルモットは一転、口角を上げ顔を歪ませる。懐から折れ曲がったタバコを取り出し失った左腕の断面に押し付ける。高温を持っていた断面に押し付けられ音を立ててすぐに火が付いた。理不尽の塊はもう目の前に迫っていた。

 

「イカれた奴らをどうにか出来んのはイカれた奴らだけだ」

 

俯いていた顔を上げる。そこには清々しさが見えていた。

 

「締まらねぇなぁ…これで自分が報われるなんて、そんな人間らしい感情忘れちまってたよ」

 

立体歯車(ソリッド・ギア)が目の前で宙に浮く。ベルモットは大きくタバコを吸い感じる筈の無い味を堪能し吐き出す。

 

「ふぅ…タバコが美味(うめ)ぇや」

 

右手を首元にある電信装置のスイッチに持っていき、電源を入れる。既に考えてあった文が送信される。立体歯車(ソリッド・ギア)が捻転を始める。

 

「ははっ!てめぇら…ざまぁみろ」

 

立体歯車(ソリッド・ギア)があまりの回転に発光する。不可視の攻撃がベルモットを飲み込んでいく。

 

─届け

 

ただ願っていた。

 

─彼女なら、世界中に喧嘩を売ったあのお姫様なら──

 

ベルモットの意識はここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マリー」

 

「ん?」

 

一組の男女が世界有数の観光地の茶屋で休んでいた。男の方は筋骨隆々のスキンヘッド、女の方は金髪碧眼の美少女。暇をもて余していたのか少女の方は少し気怠げだ。だが男の言葉に怪訝そうな顔をする。食べていた団子を飲み込む。

 

「私宛にメール?」

 

 

 

 

 

 

 

この世界から消えた、裏に生きていた男の足掻き(希望)は確かにこの瞬間、新たな歯車を動かした。




余裕が…欲しいです…(がくっ)
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