土曜日、それは学生にとって一週間頑張った自分へのご褒美を与える日。この日はどんなに遅く起きようと、どんなに遅く寝ようと何の害もない素晴らしき日。日曜日の次の日に対する憂鬱もなく幸せを謳歌できる日。だが、
「俺には関係無いんだよなぁ…」
はい、只今わたくし神連ハヅキは朝6時起きで朝食を作っております。いつもならあと一時間は長く寝られるはずの俺がわざわざ早起きしてる理由はただひとつ。
「おいこらナオトォ!!さっさと起きろぉ!!てめぇのせいで早起きしてんだぞぉ!!」
「すぐに起きます、サー!!」
「誰が好き好んで男に飯を作らなきゃならんのか…」
そう、本来なら別に作らなくても良いのだ。今時コンビニで朝飯を買って道すがら食べるやつもいる。だがこいつはそれを拒んでいる。それはなぜか?
「うー…リューズ、卵食いたい」
『はい、ではナオト様、あーん』
「あーん」
…これをしたいが為である。外でやれ!と言いたいところだがナオト曰く、
“えっ、いや、外でやると周りの視線で蜂の巣にされそうなんですよ。家だったらそういう視線で見られないんで。あ、先輩もしてもらったらどうです?”
と、のたまいやがった。残念だなナオト、すでに俺は済ましてあるのだ。だが俺だって人前ではやらない。イースと二人っきりの時のみやるのだ。そうすれば要らん嫉妬は買わないしイースの太陽のような笑顔を独り占めできる。だがこいつは、
“え?先輩の前なら別に大丈夫です。何かもう色々知られてるんでかく恥も無いって言うか…てか先輩がいつもイースさんとイチャイチャしてるんでその仕返しです”
そう言われて俺は何も言い返せなかった。それもその筈。
「…何て言うか、もう見慣れましたけど相変わらず猟奇的っすね」
『むふぅー』
はい、現在イースに後ろから抱きつかれて肩口から血を吸われてます。これだから何も言い返せないんだよ…
「あー、イース、もういいか?」
『もぉひょっとまっふぇ』
『…姉さん、それは毎日必要なのですか?ハヅキ様が貧血になると思うのですが』
「しかも最近レバーとか多いよな。…血足りないから補給?」
事の始まりは俺が退院したとき、イースが
『ハヅキにはもう入院してほしくない、だから普段から少しずつ吸わせてもらって良い?血は溜められるから』
俺を思っての発言だったのでこの時は二つ返事でオーケーしたのだがまさか毎日吸われるとは思いもしなかった。お陰で増血成分のあるものが毎日食卓に並ぶようになった。
「ってもう抱きついてるだけだろ」
『ありゃ?バレちゃった』
『姉さん…自重してください』
『いや、リューズちゃんも人の事言えないよね?体ぴったりくっついてるじゃん』
『私は従者ですので常に主の側にいるのが常識です。例えそれがハヅキ様の言い付けを守れず勉強をサボりまくって赤点を取りまくった3歳児並みの知能しか持てないナオト様であってもです』
「むぐっ?!えーとそれは…そう!俺が解けないテストを作った教師が悪い!」
「自分の責任を他人に擦り付けるんじゃねぇよダァホ。この補習で赤点取ったら三日間お前の飯は白米に梅干しのみだ」
「そんな殺生な!?」
俺は大きく溜め息をつく。そしてふと時計を見る。
「てかもう時間じゃないのか?」
「え?…あ゛!!ヤバいめんどくさいことになる!」
『ナオト様、着替えはこちらです。既に荷物の方は準備してあります』
「サンキュー、リューズ!愛してる!!」
『…私へそのような戯れ言を言う暇があるのなら早く出発の準備を済ましてください』
『リューズちゃーん、口元緩んでるよー』
『…この駄姉が』
『なんか急に詰られた!?』
「今のはイースが悪いだろ…ああ、そうだ。リューズちゃん」
『はい?なんでしょうかハヅキ様』
「ほどほどにね」
『?一体どういう意味で…』
「おしっ!準備完了!リューズ、行くよ!」
『お待ちくださいナオト様、筆記用具を忘れております』
ドタバタとナオトとリューズが家を出ていく。
「はぁ…朝から騒がしい」
『賑やかで良いじゃん。ところでハヅキ』
「ん?なんだ?」
『リューズちゃんに言ってたほどほどに、ってどういう意味?』
「ああ、単純に教師の心を折るのをほどほどにねって意味」
『…あ、なるほど。少しでも二人きりになりたいから心折るかもって事か』
「
俺とイースはしばらく顔を見合わせたあと、学校に向けて合掌をした。担当講師にご冥福を…
時間が経って昼過ぎ、ナオトの補習は午前中なのですでに帰って来てもいいのだが…
「おせぇ…何してんだあのバカ…」
『もしかしたら本当にリューズちゃんが撃退してどっかで時間潰してるのかもよ?』
「だとしてもナオトはともかくリューズちゃんが時間を守らないなんてことあるか?」
『うーん…ちょっと考えずらいかなぁ、もしかしてマリーちゃんに絡まれてたりして…』
その時玄関のほうからドタバタと足音がした。
「…イース、やってくれたな」
『あ、あはは…』
見事にフラグを建ててくれたな…しかも即回収か。
「せ、先輩!助けて!」
「待てやナオトォォォォォォ!」
『マリー様、どうやら今すぐに首と体をお別れさせたいようですね。迅速に切断してあげますので遺言をどうぞ』
「待て待て待て!頼むから待ってくれ!早々に姫さんを葬ろうとしないでくれ!」
……とりあえず、
「いっぺん黙れ」
「俺だけ理不じっ!?」
『うわー…痛そう…』
ナオトの顔面に足跡つけてやった。
「あー、つまり、ハルターさんがマリーちゃん宛ての違法な通信技術の電波通信を拾って伝えたらマリーちゃんがキレて場所を特定するためにナオトを見つけ説明し使おうとしたがめんどくさがったナオトが逃げてそのままご近所さんを鬼ごっこしたと…」
「はい…その通りです…」
「なんで私まで…」
現在俺の目の前には件の鬼ごっこをした四人が正座しています。てかマリーちゃん?
「君が原因の一端だからだよ」
「悪いのはあんな通信をしてきたクソヤローよ!」
『いえ、マリー様が発情した獣の如く騒ぎ立てたのが原因かと。私のように広い心を持っていればこのような事にはならなかったと思います』
「…ナオトがちょっと他の機械を見ただけで嫉妬するあんたが広い心を持っている訳ないでしょう」
「頼むマリー…これ以上お嬢さんを煽らないでくれ…」
「君たち状況分かってる?これ以上怒られたい?てか怒らせたいの?いーよー、思いっきり怒ってやるよ!」
『ハヅキー、キャラが定まってないよー』
イースのツッコミで若干冷静になる。
「はぁー…ご近所に謝罪しに行かなきゃならないか…」
「すまないな、ハヅキ」
「いや、まぁハルターさんが止めようとしたのは分かってますけど…一ついいすか?」
「なんだ?」
「ブレゲって国際協定ガンスルーしてんの?」
「いや、一応俺が特別だ、第八世代の先々行型でブレゲの令嬢であるマリーの護衛だからな」
「お父様がそんなことする訳ないでしょ」
「いや、ヴァシュロンがあんなことになったしリョウ兄も就職したからスキャンダルされると困るんだよ」
「…それもそうね」
一つ個人的な不安が解消されたところで、
「本題に入るがまずどんな通信があったんだ?」
「そ、それは…」
マリーちゃんが顔を赤く染め俯く。するとリューズちゃんが…
『…ヘイ
「『はい?』」
あれ?リューズちゃん?いつもの丁寧口調は…?
『小娘の幽霊が随分調子コイてるじゃないか』
「リューズちゃん?ど、どしたの?」
『構って貰えなくて穴が寂しいのかい?』
『ど、どーしよハヅキ!リューズちゃんが!?』
「おおお落ち着け!まだそうと決まった訳じゃ…」
『リトルでビッグなコックでファックしてくれる連中が待ちかねてるぜ?可愛いケツ振っておねだりしてみな
「『リューズちゃんが壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』」
「うがあああぁぁぁぁぁ!!」
これはマジでヤバイ!!あとマリーちゃんの顔もヤバイ!
「イース、どうすればいい!?あれか?頭の辺りの機構をいじれば直るのか!?うちの設備で何とかなるのか!?」
『ここまでになるといっそのこと
『…ハヅキ様、姉さん、私は正常に稼働しております』
「『いやだって!』」
『私はマリー様宛の通信を一字一句正確に読み上げただけです。頭を疑うのならこのような品のない言葉を使う者と知己であるマリー様を心配してさしあげて下さい』
「こんな言葉を使う奴と知り合いのはず無いに決まってるでしょ!!」
…あー、つまり、
「俺達の早とちりか、良かった…」
『ほんとに…』
「良くないわよ!!」
あー、うん。良くないね。被害がこっちに…ご近所さんのお詫び、どうしようか…
ペースは相変わらず不定期ですが流石に半年とかは空けないようにします。これからも温かく見守ってもらえると幸いです。