ただ大分長くなりましたけど…
それと今回、新上なお様からイースの挿絵をいただきました!もう感謝の極みです!あとがきの方に乗せておきますので是非後一見してください!
ガタガタと
「ぐおぉぉぉ…」
「触れるな~触れるなよ俺~今こそ根性見せるときだ!」
「…二人は何してるのよ」
「さぁ…」
「
『超感覚も行き過ぎると不便だね~』
『ナオト様、ハヅキ様、後三十分程で
「「おおぉ…了解…」」
「普通の天才で良かったと素直に言えるわね…」
「苦労するんだなコイツらも…」
ハルターさんとマリーちゃんが同情の目を向けているが反応するほどの余裕はない。それほどまでにこの移動手段は俺とナオトにとって地獄なのだ。
『あー、ハルターさん。出来れば帰りは騒々しく無いのでお願いね』
「了解した、空路を手配しとくよ」
『出来ることなら今すぐにでもこの低階層用の運ぶガラクタをマイクロ単位まで切り刻みたいのですが…』
「あんた絶対にやめなさいよ!?そんな事したらひき肉じゃ済まないわよ!?」
『リューズちゃーん、主人が辛いのは分かるけど抑えてね?やった瞬間にナオト君も線路の染みになっちゃうから』
『…分かっています』
「「おおぉぉぉ…」」
早く着いてくれ…
俺とナオトは大地に足を着け踏ん張る。あぁ、なんて、なんて、
「「揺れない大地は素晴らしいんだ…」」
「…あの状態を見てると軽く茶化せないのよね」
『ハヅキ、大丈夫?』
「オッケー大丈夫無問題!今なら空も飛べそうだ!」
『おおぅ、余程堪えてたんだね…』
そりゃもちろん!ナオトに至ってはマジで小躍りしてるし。
「まあ何はともあれ─ここに私の平手が欲しいマゾ野郎がいるのね」
マリーちゃんが昏い笑みを浮かべる。
「…あ、そっかその為に来たんだったな」
「はぁ!?ナオトあんた忘れてんじゃないわよ!」
「てかぶっちゃけ俺とか先輩必要なの?二人で行けば良いじゃん」
「あんたがいた方がより早くあの腐れマゾ野郎をぶん殴れるのよ!」
「えー、でもマリーどうせもう場所割り出してんだろ?」
「当然でしょ!あれから発信予想時間の気象データや都市歯車の回転数から概算を繰り返して、既に半径五百メートルまで絞りこんだわよ。後は現地に行ってあんたを使って一方的な鬼ごっこをするのよ!」
「…やってることはとんでもないのに理由が幼稚すぎてなんも言えねぇ」
『才能の無駄遣いだね…』
『マリーさま、これ以上ナオト様を低レベルの愚者が行う下らない戯れに巻き込むのであれば容赦は「海水浴場」はい?』
「区画・三重には海水浴場があるのよ?ナオト、あんたリューズと水着でイチャイチャしたくない?」
「…んなぁにをしている野郎共!さっさとマリーを罵った腐れ外道マゾを絞めにいくぞ!待ってろ俺の眼福海水浴っ!!」
「あ、こら待てやナオト!第一水着はどうする気だよ!」
「ここから382メートル先に反響具合からして服屋があり!そこから調達!リューズ!お金を用意!」
『お待ちくださいナオト様、外は猛暑かと…』
リューズちゃんの警告は一歩遅く既に遠いナオトが「暑ぅ!」と叫んだのが聞こえた。
『マリーちゃん、こっちに連れてきた後に海水浴を提示することでナオト君の逃げ道無くさせたね?』
「あら、何の事かしら?私はただそんなところもあったなって思っただけよ?」
「マリー…お前さんどんどんお姉さんに似てきたな」
「ありがとう、最高の誉め言葉よ」
「この場合はナオトの単純思考を恨むべきか…」
俺達は先行したナオトを追いかけた。
「うわ、アツ!」
『うーん、千年前のデータだとこんなに暑いはず無いんだけどな』
「隣の区画・滋賀がパージされてるからね、その影響よ」
「滋賀、か…」
「あ…その、ごめんなさい」
「あー、いいよ、もう割りきってる」
そう俺は言いながらも滋賀と言う言葉に今はいない両親を思い出す。
『…ハヅキ、私がいるよ』
「ん、そうだな。ありがとう」
あー、やっぱりイースは癒しです。
「先輩、遅いっす!早く行きますよ!」
「お前はちょっとは落ち着け!」
俺の怒鳴り声は周囲に
「ったく、まって…」
…あれ?
『ハヅキ?』
「ハヅキさん?どうかしましたか?」
…おかしい。
「マリーちゃん、今何時?」
「え?出たのが遅かったから…ハルター」
「約7時だな、それがどうし…」
そこでハルターさんも気付いた。
「先輩?ハルターもどうしたんだよ?」
「…ナオト、夜7時ってまだ出歩くことあるか?」
「?そりゃありますけど…」
そこでナオト、聞いていたマリーちゃんも気付いた。
「…静か過ぎないか?」
そう、静かなのだ。話し声ひとつしない。仮にも駅前であるのに。周囲を見渡すと道路を照らす
「なによ、まるでゴーストタウンじゃない…」
ナオトはヘッドホンを取り、俺は左の手袋を外し、地面に着ける。
「「…なんも感じない/聞こえない」」
「何にもって人の足音とかも?」
「いや、それ以前に…」
俺はナオトと目を合わせ確認する。ナオトはひとつ頷いた。
「時計塔すら、空っぽだ」
沈黙が場を支配する。
「…ハヅキさん、何を言ってるんですか?時計塔が空っぽって、だとしたらこの街は…」
「だからさマリー」
ナオトが神妙な顔で告げる。
「この街はとっくに死んでるんだよ。ありとあらゆる歯車が無いんだ」
マリーちゃんが息を飲む。
「一体何が起きてるのよ…」
俺は一人思考に耽る。そもそもここに来たのはマリーちゃん宛のメッセージの発信者をぶん殴る為だった。では、何故マリーちゃんがぶん殴りたいと思ったか、それは淑女(かどうかは分からないが)には堪らないスラングが盛り込まれていたからだ。しかしその発信方法はなんだったか。
「ハルターさん、電波通信ってどんな人が使う?」
「…非合法活動に従事する義体の奴が殆どだ。俺も積んでる」
「通信事態は長波?短波?」
「短波だ…詳しいな」
「高校の一般教養で習いはするよ。それに技術に関しては貪欲な両親もいたし。それよりも短波ってことは…」
「そうね、長距離には飛ばせない。そしてあのクソ忌々しい内容から察するに私を名指ししてる」
「仮に名指ししてるとしてどうして相手は届くと分かったんだ?」
「あー、そりゃ恐らく昔俺が派手にやったからだな。そこそこ有名だ。だとすれば少なからずマークはされてたんだろうよ」
「マークっておっさん何やらかしたんだよ」
『多分ナオト君よりはマシなことだと思うよ?』
「あっれ唐突なディスり!?」
俺とハルターさんとマリーちゃんは無視をする。
「…罠?」
「だとしたら片手落ちだ」
俺の意見をハルターさんが即座に否定する。
「だからこそイタズラの可能性が高いと思ってたんだが…この方法だとナオトかお前さんがいないと逆探ができない」
「…誘き出すにしても情報が足りないわけね」
『そうなると…"警告"?』
「イース、聴いてたのね」
『まぁね!』
「あるいは"密告"だな。だとしてもわざわざ短波通信を使う理由にはならんな」
「そもそもどんな状況になったら一般的な歯車通信じゃなくて電波通信を使うことになるんだ?」
すると唐突にナオトが声をあげた。
「なるほど、謎は全て解けたぜ!」
「「「『………』」」」
リューズちゃんとナオトを除く全員が"何言ってんだこいつ"的な目をナオトに向ける。
「…期待はしてないけど、とりあえず言ってみ?」
「期待されてなくて辛い…」
「どうでもいいからさっさと言いなさい」
ナオトは不満げな顔をしながらも自信満々に言い放った。
「つまり──ここにInitial-Yシリーズがいるかもって事だろ!?」
「イース、最寄りの病院調べて。とりあえず放り込んどこ」
間髪入れずに言った。
「え?酷くない?言っただけで病院なの?」
「話が全っ然繋がってないのよこのアンポンタン!あんたの脳ミソどこの異次元に飛んでんだコラァ!?」
『少なくとも狭間世界には無いよー』
「いや、普通に考えれば分かるだろ」
「どこが…」
『──なるほど、そういう事ですか』
唐突にリューズちゃんが声を出す。この主従唐突が好きだな。
『この送信者の目的は情報の送信、しかしそれができない状況にあった。そのような状態が発生しうるとなると…可能性はありますね』
「だろ!?さすがリューズ分かってるぅ!」
「下手な巻き舌止めろ腹立つ。ってああ、そういうことか。くっそ、理解できちまった自分に腹立つ…」
『あ、あー…そういうこと』
「…ハルター、どうやら理解できてないの私達だけみたいよ」
「蚊帳の外なのに全く悔しくないのは何でなんだろうな」
「つまりな、マリーちゃん、ハルターさん、。この送信者は…」
「イース達の妹に遭遇して脱出不可能に陥ったんだよ」
マリーちゃんとハルターさんが訝しげな顔をする。
『そこのガラクタが言ってたように非合法活動に従事する義体なら搭載していると。そして送信者は短波通信を使わざる終えなかった。そういう状況であるなら何らかの任務遂行中だったと考えるのが自然です』
「多分送信者はなんか重要な情報を手に入れたんだろ。でも想定外の事態になってしまい最終手段としてマリーちゃんに宛てた暗号を送信した」
『その想定外って言うのが私達の妹に遭遇した、って可能性』
「さすが先輩達!俺の事をちゃんと理解してる!」
「おぞましいから止めろ」
俺たちの意見を聞いたハルターさんは胡乱げに顎を撫でている。
『どうしました?まだ何か異論が?』
「異論しかねえよ。脱出出来ない任務なんざいくらでもある。そもそも作戦中の工作員がうちのお姫さんに
『そこまでは存じませんし、特に重要な事ではないかと』
「いや、そこが一番の謎なんだが…」
「でも、確かにそれなら説明はつくわね」
「おい、お姫さん」
「飛んでるけど可能性はあるわ。宛先が何故私なのかはとりあえず置いといて、残る疑問は一つ。あのメッセージの意味よ」
俺達がここに来ることになった原因。それは…
『"ヘイ、
スラスラとリューズちゃんが再生するように言う。
「…いつ聞いても酷いな、これ」
「…たとえほんとに有益な情報だとしても、やっぱり絶対に吊るすわ、コイツ」
マリーちゃんがこめかみに青筋を浮かべながら言う。だがそんなマリーちゃんをよそにリューズちゃんが追い討ちをかける。
『しかしナオト様、この中に本当に暗号などあるのでしょうか?品性こそ劣悪ですが実に的を射ている慧眼な方かと、私には真実しか含まれてないように思われますが』
「あんた
そして渾身の一言。
「私は処女よ!!」
よーよーよーょーょー…
「「「『『……』』」」」
「あ…」
いたたまれない空気が流れる。
「…OK、俺は何も聞いてない。イース、何か聞こえた?」
『うぅん、何も聞こえなかったよ!』
「お姫さん、安心してくれ。その年で経験が無いと言うのは健全な事だ。恥じることじゃない」
「へーそうなんゲボァ!!」
「バッカ合わせろ!」(小声)
「す、すんません…」(小声)
マリーちゃんは羞恥から顔を真っ赤に染めて顔を背ける。
「…まあ、その推測が正しいと仮定しよう。まずは…なんだ、"リトルでビッグなコックでファック"ってとこか?一見しておかしいところは」
ハルターさんが軌道修正してくれたお陰でなんとか本題に入る。
「フツーに考えて…まぁナニだよな。
『ナオト君サイテー』
「ええ!?」
「鳥、とか栓って意味もあるぞ」
『あとは戯言や風見鶏と言った意味もございます』
「他には…あまり考えたくは無いんだがな」
ハルターさんが渋い顔をして閉口する。
「なによ、さっさと言いなさいよ」
マリーちゃんの言葉に一つ溜め息をしてハルターさんは答える。
「…"撃鉄"をそう呼んでた」
沈黙が落ちた。
「…つまり、小さいが火力のある、デカイ銃器があると?」
「ああ、だが今時、」
「分かってます。コッキングなんて今じゃ骨董品…あ」
俺とマリーちゃんは同じ答えにたどり着いたのかイースとリューズちゃんを見る。
「小さくて強力な兵器…」
「…当たり引いたかもね」
『この人良く考え付いたね…と言うことは私達の妹かな?』
「ナオトの奴、これを直感で当てたのかよ…」
「ん?どうかしましたか?」
この能天気が…
「…反論はいくらでも思い付くんだけど、私も全てのInitial-Yシリーズを把握している訳じゃない。ここにその一つがある可能性は否定出来ないわ」
「おい、お姫さん」
「分かってる。完全否定出来ないだけ。実際には…」
マリーちゃんは眼下の街に目を向ける。
「あそこに潜ってみないとね」
「おお!つまりリューズの妹を探しに行くんだな!ならばさっさと行くぞ野郎共!!」
「お前ブレねぇなぁ…」
欲望全開なコイツが一周回って羨ましくなってきた。
「…情報に確実性が無いうちは行動は勧められないんだが」
「そうね、でもこの異常な場所から私達を知る人物が逆探知も不可能な通信を送ってきた事実は変わらないわ」
「いや、俺もハルターさんに賛成だぞ?ああは言ったが情報が不確定過ぎる」
「でもこれが罠や警告である可能性は低いわ。なら本当に切羽詰まった誰かの"情報提供"なのかもしれない」
それに─とマリーちゃんは続ける。
「ここにいるメンバーなら大抵の危険は皆無に等しいわ。何もなければさっさと引き返せば良いのよ」
そう言ってマリーちゃんはナオト達の後を追った。
「…ハヅキ」
「なんです?」
「マリーは冷静に俺たちの戦力を分析した結果大丈夫と判断したようだが、戦場じゃ圧倒的優位が簡単に引っくり返されるなんてザラだ。油断も慢心もしないでくれ」
「…了解」
『私も気を付けるよ。最悪は"監督機"としての役目も果たさないと(ボソッ』
「イース?」
『ん?んーん、何でもない!』
そう言ってイースは先に向かった。
確かにこのメンバーなら大抵の危険は無いかもしれない。でも、俺の中でどこかハッキリとしない、得たいの知れない不安が渦巻いていた。
そして、俺は十年前の真実を知ることになる。