世界変えるは天才少女と傭兵とバカップル二組   作:砂利道

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あれだね、やっぱ書き始めた直後はスラスラとストーリーが浮かぶね。この調子で書ければな~…







六月三日、十年前の滋賀のパージで死亡→十年前に滋賀のパージを調査に行って行方不明、に書き直しました。


限界時間(タイムリミット)

今俺の足元には様々なパーツが散らばっている。既に2体は整備し終わったのだが残り1つが1度バラさなければならないような場所だったのだ。

 

「あーと…これか、まーた深いとこにあったな…」

 

故障箇所が見付かれば後は簡単だ。触った感覚が気持ち良くなるように直せば良いだけ。

 

「こうか?いや違うな…ああ、こうか!」

 

うむ、なんとも心地いい振動だ。

 

「よーし後は元の位置に戻すだけ、思ったより早く終わったな~」

 

テキパキとパーツを元の位置に戻していく。約1分でほとんど終わり後は中枢を戻すだけ。

 

「これで終わり…」

 

その時、

 

ガチャ

 

「ん?どなた…てぇ!?」

 

扉が開いた音がしたので振り返って見るとそこには立派な筋肉を付けた禿頭のグラサンを掛けた男がいた。ぶっちゃけよう。ヤーさんにしか見えない。

 

「うん?…ハズレか。あー済まないな坊主、仕事の邪魔だったか?」

 

「あー…いえ、もう終わりなので…」

 

「そうか。所でお前さん、軍か?そうには見えないんだが…」

 

「えっと、知り合いが軍でして…その伝手でバイトをしてるんです。主に備品の発注とかここの技師が直さないような備品の修理とか」

 

「なるほどな。あと聞きたいんだがここにお前さんと同じか少し年下位の女の子を見なかったか?頼まれた物を買ってきたんだが見付からなくてな…」

 

そう言ったヤーさんの手にはキャラメルたっぷりが売りのチョコレートが入った袋が握られていた。

 

「女の子ですか?…いえ、見てないです。というかここ30分位は俺以外居ませんでしたよ?」

 

「そうか、すまな「ハルター!どこ行ってたのよ!」…悪い、見付かった。ありがとな」

 

「あっ、いえいえ」

 

「じゃあ失礼する」

 

そう言ってそのヤーさんは部屋から出ていった。扉の向こうからは「遅い!あと十分早く来なさいよ!」「十分って言ったら買いに行ってすぐじゃないですか…」と会話が聞こえた。振り回されてんだなーと軽く同情を送る。会話からしてあの女の子に仕えているのだろう。ボディーガードかなんなのかだろうか。

 

「にしてもあれスゴいな…あんな義体初めて見た」

 

腕から感じ取った微細な振動からあのヤーさん事ハルターさんは完全義体であることは分かった。そしてあれが恐ろしく高性能ということも。

 

「どっかの…それこそ五大企業のプロトタイプか?見てみてぇな…」

 

ああいうのを見るとナオト程じゃないがこう、好奇心が掻き立てられる。やはり男の子はロマンとエロが好きなのだ!

 

「まぁそれは置いといて、ほい完成。やべぇ、かなり早く終わっちまった…仕事くんねぇかな?」

 

この後俺は迎えに来たリョウ兄に仕事が無いかを訪ねたがこれから先関係者以外立ち入り禁止になるとかで何時もより早く大支柱(コア・タワー)から追い出されてしまった。そんなに切羽詰まってるんならさっさと()()()()の異常直せばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明けて翌日、俺はいつも通り学校に着く。俺は2年だがまず向かうのは1年の階、ナオトの所だ。ナオトにはたまに家に余ったパーツをお裾分けしている。

 

「おーいナオトー、いるかー?」

 

「んえ?ああ、先輩…」

 

「うわ、お前どうしたよその隈!夜更かしでもしたか?」

 

「昨日色々あったんですよ、ええ、そりゃほんと色々…」

 

「お、おう…そうか、ゆっくり休め。でも授業は受けとけよ、お前の耳なら将来技師としてやっていけるかも知れないがどうなるか分かんないんだから。あとこれな」

 

「いつもありがとうございます、授業は…無理そうっすね。興味ないんで」

 

「そうなったら補習で機械いじりの時間が減るだけだ」

 

「全力で頑張らせていただきます!!」

 

「相変わらずの手のひら返しの速さだな…」

 

苦笑混じりに俺は話す。そこでチャイムが鳴った。

 

「ま、相談出来ることがあるなら話せよ。できる範囲で手伝ってやるから」

 

「うす、あざした」

 

ナオトは教室に戻っていき俺もクラスへと向かっていった。途中ナオトの担任とすれ違ったがその後ろに途轍もなく綺麗な少女がいた。人間離れした美貌だ。

 

ーん?これって…

 

俺はすれ違った少女の後ろ姿を見詰める。

 

「おいおいマジかよ…昨日のヤーさんなんて目じゃねぇぞありゃ。あんな綺麗な振動初めてだ。何なんだあの()()()()()

 

俺は自動人形が生徒として学校に来たことよりあまりにも調和が取れているその振動に目を剥く。そのまま振動を感じてみたかったが生憎と時間なので後ろ髪引かれる思いでクラスへと戻っていく。

 

「眠り姫さんも動けばあんな綺麗な振動を感じさせてくれんのかな…?」

 

俺は自宅の作業部屋に眠っている自動人形(オートマタ)に期待を寄せながらその場をあとにした。

 

 

 

 

その頃のナオト

 

「いや、なにしてはるん?」

 

目の前にいきなり昨日主従を結んだばかりの自動人形が転校生としてやって来たので思わず方言で突っ込んでしまった。頑張れナオト、あと3秒後には君は視線による針の(むしろ)だ。耐えきってみせろ、男見浦ナオト!

 

 

 

 

 

 

 

 

「順調すぎですね…」

 

そう嘯くのは史上最年少で一級時計技師(マイスター)となった希代の天才少女、マリー・ベル・ブレゲだ。齢16と言う若さで国境なき技師団(マイスターギルド)の一翼を担っている。

 

「軍の介入が無い…という事ですね?」

 

答えたのはコンラッド。マリーの一団の整備士長を任されている老年のマイスターだ。片眼鏡から注がれる目線は優しくも意志の強い歳経た者が出せる独特のものだ。

 

「その通りです。呼び出した時から不信感はありましたがこれはもしかしたらもしかするかもしれませんね」

 

「ふむ…」

 

「…ところで整備士長、異常のある階層は分かりましたか?」

 

「いえ、既に三階層までは調べ終えましたが未だに見付かりません」

 

「そうですか…」

 

するとおもむろにマリーはエレベーターへと歩き出す。

 

「…外の空気を吸いたいのですが良いですか?」

 

マリーは監視役の軍属技師(テクニカル・フォース)に問う。

 

「…どうぞ」

 

そう言うと監視役の軍属技師も一緒に乗り込む。マリー達が居るところから地上までは分速1000メートルでも8分程かかる場所だ。その間エレベーター内部は重苦しい沈黙に包まれる。やがてマリーは耐えられなくなったのかのように振り返り、

 

「その銃、BR-19ですね?」

 

殊更明るい声で訪ねる。

 

「歯車の回転運動ではなく高速運動による空気の圧縮・解放で弾を飛ばす…従来の物に比べて反動が強いものの、その反動を利用して次弾の圧縮力を増幅させる為ストッピングパワーにも優れています。装弾数は通常七発。グリップには鹵獲防止のワイヤーが付いてますね。口径は…あら?45口径ですか?威力を優先するならBR-sp33ショートアサルトの方が便利では?」

 

スラスラとマリーの口から拳銃の説明が出たことに男は半ば呆れた顔になる。

 

「随分詳しいですね…」

 

「ええ、私の実家が作っているんです」

 

「実家?…ああ、成る程。ブレゲ社のご令嬢でしたね」

 

ブレゲ社…世界を代表する五大企業の一つでベビーベッドから大型輸送機まで手掛けている時計技師一家が運営する会社だ。

 

「ブレゲ家に生まれた者はブレゲ社で設計・販売している全ての製品を覚えるまで叩き込まれるのですよ。それはもう…」

 

「それは大変な苦労ですな」

 

「ええ、子供の頃は苦労したものです」

 

「ですが同時に幸せなこととも私は思いますよ」

 

「あ、あら?そうですか?」

 

マリーは予想外の返答にペースを崩す。

 

「それだけの事を覚えられる程の環境が整っていて、苦労はしたが不自由はしない生活だったと私は思えます」

 

「え、ええ。そうですね…」

 

「羨ましい限りです。何故あいつは良い家に生まれたのに恵まれなかったのか…」

 

「…失礼ですが"あいつ"とは?」

 

「私の実家の近くに住む弟分です。両親をマイスターに持つ才能ある奴ですよ」

 

「マイスター、ですか?お名前は?」

 

「神連です」

 

「か、神連!?それは本当ですか!?」

 

「ええ、やはりご存じで?」

 

「当然です!私の父と姉を抜かせば世界一の技師と呼び名が高い夫婦でしたよね?だけど確か…」

 

「はい、十年前に隣の区画(グリッド)・滋賀のパージを調べに行ってそのまま行方不明に…」

 

「…心中お察しします」

 

「いえ、本当に辛いのはあいつでしょうから…」

 

「お子さんは?」

 

「今年で17ですね。軍でバイトをしています」

 

「バイト?軍で、ですか?」

 

「生活費位私達で出してやると言ったんですがね…渋りまして。私が神連の名をフルに活用して上を説得したんです。実際名に見会うだけの働きはしていますよ。持て余してる感じですが…」

 

「そうですか、是非とも国境なき技師団(マイスターギルド)に欲しい人材ですね」

 

「軍も狙ってますよ?」

 

「なら早めにスカウトしておかなければ」

 

互いにどこかのほほんとした会話が続く。そこでふとマリーは何のためにこの状況を作り出したのかを思い出す。

 

ーし、しまったーーーーー!尋問して異常箇所吐かすつもりだったのについ話に乗ってしまったーーーーー!!

 

そこで無情にもエレベーターは地上に着いてしまう。

 

「ああ!しまった!」

 

「え?なにがです?」

 

「い、いえ。なにも…」

 

マリーはどんよりと肩を落とす。扉が開くとそこにはヤーさん…ではなくボディーガードのハルターがいた。

 

「あれ?マリー先生どうしたんですか?肩を落として?」

 

「なんでも無いわよ…」

 

「?とりあえず言われた通り持ってきたんだが…」

 

マリーはエレベーターに乗り込む前にハルターに水銀と偽って使う粒子歯車(ナノ・ギア)保存液を持ってくるようにお願いしてあったのだ。今となっては必要が無くなってしまったが。

 

「ええいもう!こうなったら実力行使だ!」

 

「「は?」」

 

ハルターと軍属技師…新島リョウジは同時に声を漏らす。その瞬間マリーは弾かれた様に動きだしリョウジを倒そうとするが…

 

「!?ぐっ…」

 

「嘘!?」

 

マリーの放った足払いをリョウジはその場で跳ねてマリーの足に手を付きバク転で躱す。そのまま空中で銃を引き抜きマリーに照準を合わせる。が、マリーはハルターに目線で指示を出し拘束させる。いくら軍属で戦闘訓練を受けていようが本物の戦場を潜り抜けてきた元陸軍のハルターには流石に分が悪かった。

 

「クソッ…」

 

「マリー先生…事情が飲み込めないんでなんとも言えんがいくらなんでもこれは無いでしょ…てかお前さん良く今の避けたな」

 

「生憎とこの手の技は何回も受けてきたんでな…というか離せ!」

 

「いや、離したいのは山々なんだがこのお嬢さんの指示が無きゃどうしようもなくてな…」

 

そう言うとリョウジはマリーを睨む。マリーは居心地が悪そうに視線を逸らす。

 

「し、仕方無いじゃない。元々尋問する予定だったのが思わぬ話を聞いちゃって忘れてたのよ…」

 

「「なおさら俺/この人に罪は無いじゃないか…」」

 

「うう…」

 

「はぁ…で何が聞きたいんだ?」

 

「え?喋ってくれるの?」

 

「こっちの出す要求を飲んでくれたらな」

 

「勿論飲むわよ!で、要求は?」

 

「一つは俺と家族の安全の保証」

 

「分かったわ、ブレゲ家に掛け合いましょう」

 

「もう一つはあいつの…神連ハヅキのサポートだ」

 

「さっきあなたが言ってた神連夫妻の子どもよね?こっちからお願いしたいくらいよ」

 

「ちょっと待ってくれお姫さん、神連って言ったか?」

 

「ええ、どうやら実家がここらしいのよ」

 

「マジかよ…とんだ儲けものだな」

 

「それで、要求はこれだけ?」

 

「ああ、それで、何が聞きたい?」

 

「もう分かってるでしょ?全部よ全部」

 

リョウジはため息一つの後自分が知りうる限りの情報を話した。異常があるのは二十四層であること、気候・重力制御に異常がある事、そしてそれが致命的であること。

 

「致命的…それはどのくらい?」

 

「…軍上層部が四十二時間後に崩壊(パージ)を行うと決定するくらいだ」

 

その言葉にマリーもハルターも思考が凍りつく。こいつは今なんて言った?四十二時間後にパージ?パージは時計仕掛けの惑星(クロックワーク・プラネット)にとって悪影響を及ぼすと判断された場合選択される最終手段だ。名の通り都市機構を人為的に崩壊させる。その場合は最低でも一ヶ月前に区画(グリッド)外退避の勧告が出るはずだ。なのにそれが四十二時間後に起こるというのに未だに勧告は出ていない。つまり、

 

「まさか…軍は2000万人の民を見捨てるってのか!?」

 

「…ああ、そうだ」

 

「ふざけるんじゃないわよ!!なんで勧告を出さないのよ!」

 

「気付いたのが遅すぎたという事、そして…証拠隠滅だ。軍のメンツの為にな。それにな、勧告は出てるんだよ。“軍と政府関係者”にはな…」

 

そうリョウジは諦めたような笑みを浮かべる。その顔をよく見ると目の下に隈が出来ている。

 

「それを聞いたあなたは何もしなかったの…?」

 

「…したに決まってるじゃないか!上層部には何回も再考を進言したし噂を流して不信感を煽ろうともしたさ!だけどな!たかだか下っ端のいち軍属技師(テクニカル・フォース)には何も出来なかったんだよ!」

 

それは慟哭とも言えるような叫びだった。そのあまりの剣幕にマリーはおろかハルターでさえ気圧される。

 

「もう手遅れなんだよ…だから俺は要求にハヅキのサポートを加えたんだ、やる事があるらしくてな、どうしても出ていかない…こうでもしないとあいつは京都から出て行ってくれない」

 

「…お姫さん、こいつを責めるのはお門違いだ」

 

「そうね…名前を聞いてもいいかしら?」

 

「…新島リョウジだ。」

 

「新島リョウジさん。この度はご協力感謝します。ブレゲの名に誓ってあなたとの約束は必ず守ります」

 

「ああ、家族を…ハヅキをよろしく頼む…」

 

リョウジは唇を噛み締め俯く。自分の無力さを嘆いているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思っていたより何百倍も事態は深刻ね…」

 

「だな…どうするよ?」

 

「愚問ね、私が逃げるとでも?」

 

「だろうさ。それでこそお姫さんだ」

 

「ハルター、彼の家族の保護と神連ハヅキの発見を急いで。"リューズ"と同じくらいに」

 

「了解、至急手配する」

 

「さーて、面白くなってきたじゃない。飛行機から落とした"リューズ"然り、四十二時間のタイムリミット然り…ここからが本当の勝負よマリー・ベル・ブレゲ。気合いを入れなさい!」

 

ハルターは慌ただしく件の家族と少年の保護に移った。マリーは自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。不安と恐怖、不可能という文字を無理くりに抑え込んで。

 

 

 

 

 

 

 

その頃のナオト

 

「で、説明をくれるかなナオト君?」

 

「え~と、それは…」

 

『ナオト様、この身の程を弁えずに私達に話しかけてくる愚民はどなたでしょうか?返答によっては排除させていただきます…この世から』

 

「待って、リューズそれは待って!」

 

と、なかなかにカオスなことになっていた。ナオトの受難はまだまだ続く…




新島君超良い人に…根は悪くないんだよね、漫画でもマリー達に危機を教えてたし!
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