世界変えるは天才少女と傭兵とバカップル二組   作:砂利道

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お待たせしてほんと申し訳ありません!色々と原作と変えていった結果納得できるものが上がらずに随分とリテイクを繰り返してしまいました!その分読み応えのあるものになっている筈ですのでそれでご容赦を…


‟わたしは何者か”

 俺とナオト、それにマリーちゃんとハルタ―さんは事前に決めていた集合地点に集まっていた。時折、ズズン、と言う音が底部から聞こえる。それは恐らく区画(グリッド)・秋葉原とその周辺の軍の部隊があのデカブツと戦闘している音だろう。てかそうだ。一方で注視していたイース達の方だが途中で一切の振動が消えた。とんでもなく強い圧力を感じたので恐らく固有機能を使ったのだろう。一分に満たない短い時間だったが…まぁ、なんだ?妙に例のアンクルがボロボロの様な感じがするのだが…

 

「先輩…今、リューズ達がこっちに向かってますよね?」

 

「ああ、来てるな」

 

「…アンクル、ボロボロじゃないすか?」

 

「…専門知識に乏しい俺達だから何とも言えないが、そうだな」

 

「…アンクルってinitial-Yシリーズ最強なんすよね?」

 

「イースとリューズちゃんが言うにはそうだな」

 

「…俺達が知らない一分で何があったんすか?」

 

「知らねぇよ…」

 

俺が知りたいくらいだよ…この後アンクルには一仕事があるんだぞ?最悪計画変更だ。まぁ第一はイースとリューズちゃんの安全だけどよ。

 

「マリーちゃん、あと少しでイース達が到着する。把握できる限りどうやらアンクルはそこそこやられてるみたいだからすぐに直せる準備をしといてくれ」

 

「分かりました」

 

マリーちゃんの表情は硬い。直せるか不安なのか?

 

「…マリーちゃんなら直せるぞ」

 

「え?あ、違います。そっちは一切心配してません」

 

「そ、そうか…」

 

如何すれば自分の技術にそこまでの自信が持てるのだろうか…

 

「じゃあなんでそんなに表情が硬い?」

 

「それは…」

 

そこでマリーちゃんはちらりとナオトを見た。ナオトはナオトでアンクルを心配してか変な踊りをしている。そこで俺はふと、マリーちゃんがナオトを見た意味を理解した。俺は懐から紙を取り出しペンでさらさらと要件を書く。書いた紙をマリーちゃんに見せる。するとマリーちゃんはこくりと頷いた。なるほどねぇ…

 

「なぁマリーちゃん」

 

「はい?」

 

「マリーちゃんにとって自動人形(オートマタ)ってなんだ?」

 

「?それは…」

 

そこでマリーちゃんは口に拳を添えて考え込んでしまった。これはあれか、今まで深く考えて無かったことに焦点が行って思考の迷宮に入ったな?

 

「…深く考えすぎだ」

 

「え?」

 

「よし、二極論でいこう。第一問、マリーちゃんは自分の特技が好きか?」

 

「それはもちろん。まぁ好きと言うより誇りを持っているですね」

 

「なるほど。じゃあ第二問、initial-Yシリーズは好き?嫌い?」

 

「それは…」

 

マリーちゃんは言葉を詰まらせてしまった。しばらく考え、口を開く。

 

「…学術的には興味深いです」

 

「俺が聞いたのは好きか嫌いかだよ」

 

「…好きです」

 

ものすっごい渋い顔で言った。大方リューズちゃんの毒舌を思い出しているのだろう。

 

「イースから聞いた限りだとアンクルという自動人形(オートマタ)は見た目も精神年齢も幼いそうだ。いいか?‟人”として幼いんだよ」

 

「…?あの、余計意味が…」

 

「要は一人の人間として考えろって事。来たよ」

 

まだ混乱しているようだけど次の案件が来てしまったのでカット省略。集合地点にはアンクルを背負ったリューズちゃんがまず到着して少し遅れてイースが到着した。

 

『ナオト様、ただいま戻りました』

 

「おかえりリューズ!損傷は無い!?アンクルは無事!?」

 

『はいはい落ち着いて、マリーちゃーん、簡単な整備おねがーい。機関部その他重要な部分は無事なはずだからすぐに終わるはずだよ』

 

「分かったわ」

 

リューズちゃんがアンクルをゆっくりと降ろして服の背面を開いた。人工皮膚が開かれ芸術の如しの内部が見える。マリーちゃんは素早く重要な部分から点検していき、やがて終えたのかその人工皮膚を閉じて一言。

 

「あ、頭痛い…」

 

まぁ、うん…大方物理法則無視の機構を見て不条理を嘆いているのだろう。

 

「もう言いたいことは五万とあるけど、とりあえず問題は無かったわ」

 

「良かった…」

 

『本当に良かったです。ですが安心はできません、マリー様が直したとなると何かしらの異常がある可能性が…』

 

「喧嘩売ってるってことは充分に分かったけど今は買う気力もないわ…」

 

盛大な溜息をマリーちゃんが吐いた時、アンクルから駆動音が聞こえた。ゆっくりと目が開く。

 

「っ…」

 

…どうやってもつい数分前までは俺達にとって最大級の脅威だったアンクルには身構えてしまう。だがそれは次の瞬間、霧散してしまった。アンクルはナオトと隣に居たマリーちゃんを見てハッキリと言った。

 

『…おはよう、おとうさん、おかあさん』

 

『『「「「「…はい?」」」」』』

 

…どうやら、ナオトとマリーちゃんは子持ちになったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…マリー様、アンクルに何という事を…』

 

「ちょ!?私のせいだって言うの!?」

 

「それ以外なんだって言うんだよ!?変なとこ弄ったんだろ!?」

 

「弄ってないわよ!?あんたの耳を誤魔化せる自信は非常に残念ながら無いわ!?」

 

ギャアギャアとナオトとマリーちゃんが喚いているがアンクルはきょとんとした顔で首を傾げていた。俺はハルタ―さんと唖然としていたがやがて再起動をする。

 

「あーと…これって認証機能の異常すかね?」

 

「いや…どうなんだろうな、もしかしたら最初に見た存在をそう認識するように設定されているのかもしれないぞ?」

 

「鳥の刷り込み(インプリンティング)じゃないんすから…イース、何か知ってるか、ってあれ?」

 

俺はイースに意見を求めようとしたがイースは近くにいなかった。どこに行ったのか探すとアンクルの視界から絶妙に隠れられるような場所にいた。俺はイースに近づいていった。

 

「何やってんだ?」

 

『あー、うー…ちょっとね…アンクルちゃんを止めるときに少しやらかしまして…』

 

「はぁ…?」

 

確かに一時期俺とナオトの索敵反応から消えたけど何があったのだろうか?イースの反応を見る限り罪悪感で一杯って言ったところか?それに俺にも詳しくは言いたくはなさそうだ。

 

「まぁ言いにくそうだから詳しく聞かないけど…あのアンクルの反応は何かの異常か?」

 

『いや、違うと思うよ。多分だけど…重ねてるんじゃないかな?』

 

「重ねてる?」

 

『うん。‟あの人”達と』

 

‟あの人”?

 

「それって…」

 

「ハヅキさーん!ちょっとこのバカどうにかしてください!」

 

俺が聞き返そうとした時、お呼びが掛かってしまった。

 

「っと、詳しく聞きたいが後だな。行くぞ」

 

『え、ちょ!まっ…』

 

ぐずるイースを無理やり引っ張って連れて行く。元の場所に戻ると何やら必死にナオトがアンクルへと説明をしていた。

 

「──というわけで俺の嫁はリューズ一択なわけ、な?センス良いだろ?だからね?俺をお父さんと呼ぶのは良いけどこっちの地雷女はお母さんって呼んじゃだめだよ?非常に心外なことに夫婦って事になっちゃうからね?」

 

『…?おとうさんって呼んじゃダメなの?』

 

「ううん、いいんだよ?お父さんそう呼ばれてゾクゾクしちゃったから」

 

「「うわぁ…」」

 

俺とマリーちゃんの声が重なる。

 

『……?』

 

アンクルはナオトの説明を聞いて何がいけないのかよく分からなかったのか首を傾げる。するとふいに立ち上がりマリーちゃんの下に駆け寄り抱き着いた。

 

「ああ!ずるいぞマリー!そこ変われ!」

 

「うっさい!近寄るんじゃないわよ変態!」

 

マリーちゃんの足技がナオトを直撃する。ナオトの悶絶姿を見ながらリューズちゃんが言葉を発する。

 

『ナオト様、その機械への愛情は変態的な美徳ではありますが厳しくするときは厳しくしませんと…』

 

「お前さんら、今の状況理解してんのか…?」

 

ハルタ―さん、ごもっともです。

 

「あー、アンクル?少しいいか?」

 

『ヒッ!?』

 

アンクルはマリーちゃんの後ろに隠れ、俺は思いっきり怖がられた。え?なんで俺そんなに怖がられてんの?と思ったらアンクルの視線は俺の背後に向かっていた。

 

『……』

 

視線の先にはイースがいる。これはよっぽどだな。

 

『…大丈夫ですよアンクル』

 

するとリューズちゃんが聞いたことないような優しい声音で言った。

 

『あそこにいるのは私の姉です。あなたに危害を加えることはありません』

 

『おねえちゃんの、おねえちゃん?』

 

『ええ、そうです。姉さん、自己紹介を』

 

リューズちゃんに促されてイースは恐る恐ると言う風に前に出る。アンクルはマリーちゃんの服を強く握り締め顔半分を残す形で隠れる。イースは何度か口ごもったがやがて決意を固めたのかアンクルを直視する。

 

『…初めましてかな?あなたの姉になるinitial-Yシリーズ監督機、イースです』

 

アンクルはなお隠れている。

 

『…アンクル、あなたを助けてくれた方ですよ?確かに少々…いえ、非常にやり過ぎた感がありましたが』

 

イース、マジで何した。

 

『──あなたを助けるために自らの心を殺してまで動いてくれた方です。ほら、言う事があるでしょう?』

 

…こうしてみるとちゃんと‟姉”してるんだな、リューズちゃん。アンクルはおずおずと顔を出しては引っ込めるを繰り返し、やがて伏し目がちにイースを見てポツリと言った。

 

『…initial-Yシリーズ肆番機、アンクルです。あの…助けてくれて、ありがとうございました』

 

…ま、これから長い付き合いになるんだから今はこれでも大丈夫だろ。本当ならもう少し時間を上げたいがそうも言ってられない。

 

「流れをぶった切るようで悪い。アンクル、いいか?」

 

『…おにいさん、だれ?』

 

「俺はハヅキ、イースのマスターで恋人だ。でだ、アンクル、君にはすまないけどマスター登録をして欲しいんだ」

 

『おにいさんはわたしのマスターになりたいの』

 

「いや、俺じゃなくて「はいはいチョーなりたいです!」…ナオト」

 

俺は顔を引き攣らせてナオトを見る。あとでシバくの確定。

 

『…うん、わかった』

 

アンクルはマリーちゃんから離れた。その途端、アンクルから一切の表情が消えた。

 

「ッ…!」

 

──これだ、これがまだ俺から警戒を解かせない原因だ

 

「…イース、これが?」

 

『…そう、これがアンクルちゃんのマスター認証だよ』

 

 

 

『マスター認証条件確認──設問、〔わたしは何者か〕』

 

 

 

「…よし、リューズちゃん!」

 

『──了解しました』

 

「え?なに…モガッ!?」

 

俺の合図と共にリューズちゃんがナオトの口を塞いだ。

 

「モガ!?モガガガ!?(訳:ちょ!?リューズ!?)」

 

『申し訳ありませんナオト様。今この時ばかりはお許しを』

 

「モガーーー!?(訳:えーーー!?)」

 

ナオトが状況が読めずに目を白黒させる。すまん、許せ。

 

「さて、頼んだよ」

 

「…はい」

 

そうして歩み出たのはマリーちゃんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は感情と言うものが一切抜け落ちたアンクルの前に立った。始まりはハヅキさん達と合流した時の京都だった。私の前に出された紙切れ、それは耳が異常に良いナオト対策のものだった。私に渡された紙にはこう書いてあった。

 

[アンクルのマスターになってくれ]

 

最初から興味が無かったと言えば噓になる。これでも時計技師の端くれだ、いつかはその全てを解き明かして自分の技術として吸収したいと思っていた。

 

…だけど、それは余りにも高い壁だった。脳を拒否し、常識を破り捨て、物理法則に真っ向から喧嘩を売るような技術のカタマリ。それを理解しようなど私には百年経とうが不可能だと思った。そしてそれを行う気も失せてしまった。時に怒り、時に笑い、人と同じように感情を…心を持つような存在をただの自動人形(オートマタ)と割り切ることが出来なかった。もしこれがリューズだけだったらまだ怒り任せに割り切れたかもしれない。だけど彼女、イースのせいでそれも出来なくなった。あの短い学校生活の中で彼女と幾度と無く接した。学校そのものはくだらないものだったがそれでもあの短い期間で私が飽きずに済んだのは彼女のおかげだろう。私は全然違う筈なのにイースに私の親友である()()を重ねてしまう事もあった。そう、人間と同列に扱ったのだ。いくら彼女が意味不明な技術の結晶であっても、私はもう前の価値観に戻ることは出来ない。

 

──…ああ、なんだ。そういう事か

 

ふと、ストンと私の中に落ちてきたものがあった。あの紙を受け取ってから私の中で引っかかっていたものだ。これはあの二人と同じところに進む事になる。

 

「はぁ、まだまともな人でいたかったんだけどなぁ」

 

「なんかひどい暴言を聞いた気がするぞ」

 

「モガッ(訳:同じく)」

 

──…上等、今の視点から見えないってんなら上にも下にも行ってやるわよ!

 

私はしゃがんでアンクルと目の高さを同じにする。相変わらず無機質で感情の無い目だ。だが、それがどうした!

 

『…設問、〔わたしは何者か〕』

 

アンクル、私はあなたを()として理解してみせるわ!

 

「あなたは一人の女の子よ、アンクル」

 

カチリ、と何かがはまるような音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イースから事前にどんなマスター認証なのか聞いていた。それについての答えはすぐに分かったし、ナオトもすぐに気付いただろう。だが俺はあえてマリーちゃんにアンクルを任せたかった。これから先テロリストとして俺達は扱われる。その時にinitial-Yシリーズがそばにいるいないでは雲泥の差がある。決してハルタ―さんを軽視している訳ではない。だが事実としてその性能はずば抜けていい。何より、マリーちゃんは俺達の中で一番成長が出来るだろう存在だ、そこに精神的にも未熟である()()()()()()()をそばに置けば互いに良い成長が出来るのではないかと思ったのだ。

 

「モガガ…プハッ!ちょちょちょ先輩!どういう事っすか!!」

 

「あん?」

 

「なんでマリーにアンクルちゃんをマスター登録させたんすか!Why!?」

 

「なんでって…お前にはもうリューズちゃんがいるだろ?何浮気しようとしてんだよ」

 

「いやいやいや!お父さんとしてでしょ!?俺そうアンクルちゃんに言われてたじゃないすか!?」

 

「それを言うならマリーちゃんはお母さんって呼ばれてたぞ?」

 

「むぐ!?」

 

すごい渋面をしてるな。

 

「で、でも!マリーなんかに任せたらとんでもない地雷女になっちゃいますって!」

 

「お前に任せるよかマシだと思うが?」

 

「──ちょっとハヅキさん?その言い方じゃあ私とそこのバカがほぼ同列に聞こえちゃうんですが?」

 

「ああ!?俺とお前が同列なわけないだろこの泥棒地雷原女!!」

 

「ほほほ、確かに私とあんたが同じな訳無いわよねナオトくん?低脳なあんたが私に勝とうなんて100年経ってもあり無いわ」

 

「んだとぉ!?」

 

「なによ!?」

 

「…ガキかお前ら」

 

「ハルタ―さん、俺らまだ高校生です」

 

「ああ…そういやそうだったな」

 

いやまぁ気持ちは分かりますけどね?

 

「さて、とにもかくにも条件は揃った。さっさとあのデカブツを地に沈めましょう」

 

俺はアンクルちゃんのもとに向かって歩き、止まった。

 

「…イース、どういうことだ?」

 

「ハヅキさん?」「先輩?」

 

俺の硬い語気に二人の口喧嘩が止まった。だが俺は気にも留めずにイースを見る。その目は鏡の様に俺を映すのみだ。

 

「…なんで、アンクルが元に戻ってない?」

 

「え…」

 

マリーちゃんがアンクルちゃんを覗き込む。

 

「あ、アンクル…?」

 

『──命令をどうぞ』




明日の10時にもう一話上げます!
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