世界変えるは天才少女と傭兵とバカップル二組   作:砂利道

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やぁやぁ、しばらく出さないと言いましたがお仲間が登場してくれたお陰で創作意欲がむくむくと沸きましてね…書いちゃいました!


三感の超越者編
赫怒


 真っ暗な部屋の中、金髪の少女マリーは虚ろな目をしたまま壁に背中を預けていた。その手には一本のドライバー…否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が握られていた。マリーの周囲には全身から煙を噴くハルター、目を見開いたまま動かないベルモット、空気が揺らぐほどに赤熱した床に沈むリューズ、外に影響は出ていないが内部が超高熱になっているアンクル、まるで空気が抜けたかのように所々の人工皮膚が凹んでいるイース、気絶し床に横たわるハヅキとナオト。

 

 そんな死屍累々の光景にマリーは死んだように嗤っていた。朧気ながらにマリーは一体何があったのかを理解していた。唯一正常な人間であるマリーが無事で、歯車で出来た自動人形(オートマタ)全身義体(サイボーグ)、超感覚を持つ二人が気絶した訳、その事実に嫌でも答えは辿り着き、どうしようもない絶望に叩き落される。

 

「───ぅあ……熱ッ!?」

 

奇声を上げてナオトが起き上がった。反射的に普段は自身の聴覚を抑える熱くなってしまったヘッドホンを投げ捨てた。

 

「なんだコレ…ヘッドホンが超うるせえ!!」

 

苦痛に顔を歪めたナオトは死んだように自分を見つめるマリーを見て、当然の疑問を聞いた。

 

「な、なにが起きた…」

 

マリーはゆるりと嗤って答える。

 

「いい質問ね、現状をいっぺんに説明できるわ……推測だけど、‟電磁パルス”を喰らったのよ」

 

「デンジ……なんだって?」

 

普段ならここで怒鳴り散らすところだったがもはやその気力もないマリーは溜息一つ吐いて自身の手にあるドライバーを掲げた。

 

「何もかもが壊れたって言えば伝わる?歯車はすべて磁気を帯び、極小の粒子歯車(ナノ・ギア)導線(ワイヤー)、ゼンマイ等繊細な部品は溶解したわ」

 

それでもいまいち理解できなかったのかナオトは怪訝な顔のままだ。

 

「もっとわかりやすく言うなら──手足捥がれた状態で砂漠に放置されてるようなものよ。私達は何かをする手段を根こそぎ奪われたの、この部屋から出るという手段でさえ、ね」

 

マリーはそれこそ自分の手足が持っていかれたような気分だった。必死に学び、手に入れた技術は残さず封じられ、自身の存在を否定された。失意のどん底だ。

 

「──な!リューズ!」

 

突然、ナオトの悲鳴にも似た声が部屋に響いた。その視線の先には赤熱した床に沈むリューズがいた。ナオトは慌ててリューズを抱き起こそうと飛びつき、

 

「熱ッ!!」

 

今度こそ悲鳴を上げた。

 

「なあアンクルは!?ハルターのオッサンは!?先輩とイースは!?」

 

「…聞いてなかったの?言ったでしょ?──全部壊れたって」

 

ナオトは愕然とし、強く歯ぎしりをした。

 

「ふざっけるなよ!!」

 

ナオトはマリーに掴みかかった。

 

「だったら早く修理しなきゃ…直せるんだろ!?」

 

「…ええ、磁気抜きさえすればね」

 

「だったら───」

 

「───どうしろって?」

 

マリーの静かな気迫の乗った声音にナオトは圧された。

 

「無知って幸せよね…いい?あれだけの強力な電磁パルスによって着磁されたものを脱磁するにはね、電気が絶対に必要なのよ!!あのクソッタレな国際条約に真っ黒なクソみたいな電磁力がね…!」

 

ナオトはマリーの剣幕に手を離した。

 

「あんたの耳なら聞き取れるでしょ?区画(グリッド)・秋葉原の歯車が根こそぎぶっ壊れたって事が…そんな中、どうやってこの部屋から出て、脱磁装置を調達できるか懇切丁寧に教えてくれるかしら?」

 

マリーはそう言って泣きそうになった顔を隠すように俯いた。マリーの言葉に事態の重さをじわじわと実感していく。するとナオトは唐突に部屋中を見渡してある一点に目を止めた。

 

「マリー」

 

「…何よ」

 

「あの窓から出れるか?出れるよな?」

 

ナオトが指差した先には採光用の窓があった。

 

「ここは建物の八階よ?まさかスパイ映画の如くロープでも調達して出ようっての?」

 

「そのまさかだよ」

 

ナオトは徐に椅子を持ち出して窓ガラスに叩きつけだした。マリーは咄嗟の事に唖然とするがナオトは気にすることなく何度も叩きつける。すると何回目かに窓ガラスが割れた。

 

「よし、マリー、ロープになりそうなものってある?」

 

「え?ええ…一応あるわよ」

 

「じゃあそれ結んで長いロープ作ってくれ」

 

ナオトはそう言うと赤熱した床に横たわるリューズへと近づく。

 

「──ちょ!?あんた何するつもりよ!?」

 

「リューズを動かす」

 

「ばか!ちょっと待ちなさい!」

 

マリーは慌てて近場に落ちていた分厚い手袋と大きめの布を投げ渡した。

 

「リューズの下の床が目に見えるほどに赤くなってるってことは軽く数百度になってるってことよ!?そんなもの素手で触ったら時計技師としては死んだも同然なのよ!?リューズが大切なのは分かるけど少しは自分も大切にしなさい!」

 

ナオトは渡された手袋と布を片手にポカンとした表情を浮かべた。

 

「…なによ?」

 

「え!?いや、何でもないぞ!サンキューマリー」

 

リューズの元に向かうナオトを見ながらマリーは先程までの自分を振り返り頭を抱えた。

 

(…まったく、らしくなかったわね)

 

ナオトの直感じみた…事実直感なのだろうが、その行動力にマリーは感嘆していた。なまじ知識がある分事の重大さを深く感じていたが、仮にナオトが自分と同じぐらい知識があったとしてもきっとナオトは今と同じ行動をするだろう。足りない知識は行動で補い、決して思考を止めない。今できることを愚直に必死に探す。…とてもではないがマリーには早々に真似は出来なかった。

 

(ううん、違う。私も出来る、でもそこに至るのがあまりにも遅いだけ)

 

それもきっかけがなければ無理だっただろう。そして今ナオトはそのきっかけをくれた。

 

「…癪だけど、手助けされたわね。目を覚ましなさいマリー・ベル・ブレゲ、この状況を打破するために頭を回しなさい!」

 

マリーは今できることをするために部屋の中を駆け回った。

 

 

 

 

 

 そんなマリーをナオトは横目に見ながらどこかホッとしたように見ていた。

 

(マリーの奴、本当はとんでもなくすごい癖に時々訳わかんない事で悩むんだよな)

 

ナオトはそんなことを考えつつも手袋をはめ、布を背中に羽織る。その状態のままナオトはリューズを背中に背負った。

 

「ぐぅ…!」

 

分厚い手袋と布越しでも感じる高熱に顔を歪めながらもリューズを最も冷えている床まで移動させる。

 

「よし、これで…」

 

「ナオト、ロープが出来たわよ」

 

「よし、じゃあそれを下まで垂らそう…って、長さ足りなくね?」

 

「この部屋にあるロープになりそうな物じゃこれが限界だったのよ。ああもう、こんな時せめてアンクルかイースが起動してたら…」

 

「あ、それなら大丈夫だぞ」

 

「は?」

 

ナオトの言葉にマリーは疑問符を浮かべるが直後音声が響いた。

 

『───磁場消失確認。緊急シークウェンス終了。通常シークウェンス起動開始』

 

『───着磁パーツ交換完了。内部限定空間変換終了。通常シークウェンス起動開始』

 

アンクルとイースの目が開く。

 

『びっくり、した』

 

『うう…気持ち悪い…』

 

「は!?うそでしょ!?」

 

「よかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!アンクルちゃん動いてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アンクルが動いていたことにナオトは涙を浮かべ抱き着いた。

 

『お、おとうさん、どうした、の?』

 

「何でもないぞぉ!いやーもう!アンクルは良い子だなぁ!」

 

「ちょっとナオト!説明しなさい!」

 

「アンクルとイースはずっと動いてたんだよ。だから俺は自殺しないでいたんだからな!」

 

「う、動いてた?あの強力な電磁パルスを喰らっておいて?一体どうやって…」

 

『えっとね、‟びりびり対策”で…緊急‟かねつ”しーくうぇんす?に、入って…』

 

かねつ、その言葉を聞いてマリーは気が遠くなりかけた。確かに冷静ではなかった。だから思いつきもしなかったが流石にその方法はどうなのだろうか。

 

()()()()……キュリー温度で磁界消失って、噓でしょどうやったのよそんなのぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

詳しくは省くが簡単に言えばとても熱くすれば磁界は消失させることが出来る。だがそんなことをすれば普通は精密機械である自動人形(オートマタ)は壊れる。ましてや一度は確実に磁気を帯びて停止してるはず、そんな中どうやって稼働していたのか。マリーはまたもや見せつけられた常識と物理法則を無視した現実に眩暈がするがかろうじて飲み込んだ。

 

「い、イースはどうやって…?」

 

『私は狭間世界にストックしてある歯車をこっちの世界に持ってきて着磁したやつと交換しただけだよ』

 

イースはしばらく口をもごもごさせるとぺっと複数の歯車や導線を吐き出した。

 

『あースッキリした。やっぱり磁力を帯びたパーツは気持ち悪いね』

 

「え、えぇぇ…」

 

マリーはイースが軽々と別世界からパーツを持ってきたという発言にもはや一周回って呆れてしまった。つい先程思考を止めないと宣言したばかりだったが早速守れそうにない。

 

『で、今どんな状況?』

 

「…最悪に近いです」

 

マリーは現状で分かっていることを出来る限り伝えた。区画(グリッド)・秋葉原が磁力を帯びて壊れたこと、その余波で手持ちの道具が一切使えないこと、リューズが動いていないこと、ハルターとベルモットが機能停止している事、…ハヅキが意識を取り戻していないこと。

 

『そっか…』

 

イースは横たわっているハヅキを前に呟くようにそう言った。その手は優しく頬を撫でている。

 

『…大丈夫、ハヅキは絶対に目を覚ます』

 

強い声でイースは言う。

 

『まずはここから脱出だね。順番に皆を下に降ろしていこっか。最初にマリーちゃんとナオト君を降ろして、その後にハルターさんを降ろして…』

 

「え?あ、はい…」

 

『?どうしたの?』

 

「い、いや…その、ハヅキさんが心配じゃないのかと…」

 

『心配だよ?でも言ったでしょ?ハヅキは絶対に目を覚ますって』

 

その顔は穏やかに微笑んでいた。

 

『やるべき時にやることやっておかないと後でハヅキに怒られちゃうしね。まぁ…』

 

「ヒィ!!」

 

突然ナオトが引き攣った声を上げながら飛び上がった。マリーは思わず後ろにいたナオトを見たがそこにはガタガタと震えているナオトとアンクルがいた。ナオトは両手で耳を押さえアンクルはナオトの背後に隠れ怯えていた。

 

「ちょっとナオト、どうしたの───」

 

ナオトが必死に後ろを見ろと仕草で合図していた。同時にアンクルは後ろを見ないでと言うように首をふるふると横に振っていた。その顔は今にも泣きそうだ。

 

「?───ッ!?」

 

マリーはつい振り返ってしまった。そして後悔する。

 

 

 

イースが笑っていた。とても綺麗に笑っていた。百人が見れば百人が見とれるような笑みだ。……目、以外がだが。その目はハヅキをこんな目に合わせた奴を千度殺そうと赦さないとでも言うように凄絶な意思を感じさせるものだった。

 

『───ハヅキをこんなことにした産業廃棄物(八束脛)生ゴミ(比良山ゲンナイ)は〔自主規制(ピーー)〕するけどね?』

 

この瞬間、滅多に意見の合わないマリーとナオトは同じことを思った。

 

 

((絶対に先輩/ハヅキさんとイースは怒らせないようにしよう……))

 

心胆から冷え上がった二人であった。ちなみにアンクルは気絶しそうになりしばらくイースを怖がったそうな。




このあとどうにか二人を怒らせないようにしよう同盟が結ばれたとかなんとか…
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