轟音と衝撃が俺達を包み込む。それは修理を完遂して喜びに浸っていた俺達には思考を奪う程度には不意打ちだった。
「な、なんだぁ!?」
ナオトの困惑の絶叫が俺達の言葉を代弁する。
「痛ってぇ…イース、無事か?」
『大丈夫だよ、ハヅキは?』
「ちょいヤバい…左腕軽く打った…」
全身の痛覚は俺にはない。だが代わりに両腕の感覚は異常なまでに鋭い。つまり少しの強い接触で俺はいとも容易く行動が不能になる。
『ハヅキ!?だ、誰か鎮痛剤…!』
「悪い、イース…それ意味無いんだ」
『そんな…!じゃあどうすれば…』
「触れてて」
『え?』
「打った所に触れてて。それで感覚上書きするから…」
『わ、分かった…』
イースが腫れ物に触れるように恐る恐る俺の左腕に触れる。そのうち包み込むように両手が動いた。
ーあぁ、やっぱり安心する…
イースから伝わる振動は心地よく、俺に安らぎを与えてくれる。イース…Easeの名は伊達じゃない。その心地よい振動に痛みが上書きされる。完璧ではないがそれでも大分マシだ。
「それにしてもなにが…」
「おいヤバいぞマリー!高度が下がってる!」
「なんだって!?」
ハルターさんが叫び解析班長さんがハルターさんを押し退け計器を見る。そしてその顔が紙より白くなる。
「ぱ、パージが始まってます!」
その言葉に再び全員が硬直する。解析班長の言葉が信じられなかった。
「そんなバカな!」
「異常は直ったんだぞ!!」
「パージまでは一時間以上あっただろう!?」
怒号が飛び交う。その時、
「マリー先生!通信です!」
「繋いでください!」
連絡班の人が通信を繋ぐ。
〔おい!おい!マリー・ベル・ブレゲ!聞こえてるか!?〕
「この声…リョウ兄!?」
〔ハヅキ!?なんでお前がそこにいるんだ!?〕
「都市障害を直してたんだよ!」
〔ふざけるな!何のために軍を裏切ってお前を逃がそうとしたと思ってんだ!マリー・ベル・ブレゲ!話が違うぞ!!〕
「後で弁明はします!それより軍は直った事に気付いて無いんですか!?」
〔気付いたさ!その上で奴等はパージを強行したんだ!証拠を消すためにな!〕
「そんな…!」
〔早く逃げろ!じゃないと…〕ブツ!
「リョウ兄!?リョウ兄返事しろ!!」
その通信はいとも容易く途切れ絶望感のみを残していった。
「おい!返事をしろ!お…ガッ!」
「新島く~ん、怪しいとは思ってたけどやっぱり君がマリー・ベル・ブレゲにリークしてたんだね?」
新島は襟首を大柄な体の上司に掴まれ叩き付けられた。
「…!京都を見捨てられるわけ無いでしょう!」
「ハハハハハ!正義感溢れてるねぇ、だけどもう遅いんだよぉ。連中がどんな手品を使って直したかは知らないけどパージはもう始まったんだ、あと15分もあれば京都は地の底だ。君の頑張りも無駄だったのさ!」
新島はその言葉に奥歯が砕けるほどに強く噛み締めた。
ーハヅキ…すまない…
静かな空間、ナオト達を含めた約40人の人間はついさっき入った通信によって絶望の中に叩き込まれていた。修理に成功していた分、反動で心は簡単に折られていた。誰もが自分の終わりを認め座り込んでしまっている。だが一人の少女は立ち上がる。全身に怒りを溜め込みながら。
「ふざけんな…」
通信を聞いていたハヅキはそのなかで妙に冷静にその光景を見ていた。
「ふっっっっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
少女…マリーは吼えた。その理不尽を認めないと言うように。
「諦めてたまるものですか!!!こんなところで!!!」
マリーは設計図に飛び付き猛然と図面を引く。
「整備士長!この星が設計された時に重力制御も機械仕掛けに置き換えられたんですよね?」
「え…ええ、そうです。それすらも歯車によって発生させているのですから」
「その場所は特定出来てますか!?」
「それなら…この階層にあるはずです。しかしなにをなさるので?」
マリーは問いには答えずに今度はリューズに向かって問う。
「リューズ!歯車で重力を発生させる原理を知ってる?」
『…歯車の強力な運動と熱によって莫大なエネルギーを発生させる事です』
「ありがと。つまり重力とはより大きな質量とエネルギー量の場所に向かって空間を歪ませて生じさせる。だったらあなたの"
『…理論上は可能です』
リューズは躊躇いがちに答える。だがすぐに顔を伏せ、
『しかし私のギア一つで街一つ分の重力を反転させるとなるとどれだけ持つか…』
「目算だと?」
『希望的に考えまして、30分が限度かと…』
「上等!それだけあればここからシステムをハッキングして逆操作出来る!」
マリーは口の端を吊り上げる。
ー…すごいな、やっぱり天才は違う
その様子をハヅキは静かに見ている。だがすぐに気づく。あくまで希望的、つまり…
「ちょっと待てマリー。いったいリューズに何をさせる気なんだ?」
「良い?都市が落ちるのは重力があるからなの、そしてその重力を操る機構はこの層にある」
「…それで?」
「そのシステムに干渉して落下の重力に釣り合う"反重力"を都市底部に発生させれば一時的に止まる。その間にパージ・システムに割り込んで再接続させるの」
「…そんなこと出来んならなんで最初にやらなかったんだ?」
「出来なかったのよ、でもあなたとハヅキさんがこの層の事を事細かく教えてくれたからこの階層からのルートを割り出せた。具体的な仕組みは……今から5分で作る」
その言葉に整備士長を含めた
ーああ、そうか。あまりに振りきってたから分かんなかったわ…
ハヅキは静かに自覚をした。自分が抱いていた感情に。
「分かった、じゃあリューズが耐えられないかもってのは?」
「…膨大なエネルギーと、重力制御のシステムにリューズの小さな歯車を押し込むの。失敗したら即破壊、長引いても壊れる」
「なら却下だ」
ナオトは即答で切り捨てる。
ーなんだ、すごい簡単な事だったんだな
『…ハヅキ?』
イースはハヅキの変化にようやく気づく。
「リューズ、今から脱出出来るか?」
『不可能です』
「いや、リューズの機動性なら一人でも間に合う…」
『私はナオト様の従者です。主を見捨てるという選択肢はありません』
「ならどっちにしろ詰んでんじゃねぇか!どうしろってんだ!」
ナオトは怒鳴り散らす。
ーなんてことはない、これは…
『いえ、ナオト様。この自称天才少女の言う通り私を犠牲にすれば助かります』
リューズの言葉に観測班長が食い付く。
「本当に可能なのかね!?」
「できねぇよダアホ!!」
ナオトが観測班長に吼える。
「……ナオト」
『できます』
「どういうことかね!?都市を救えるなら…」
「できねぇっつてんだろ!リューズを犠牲になんか出来るか!!」
「…ナオト」
「だが、
「2000万も2億も知ったことか!!じゃあてめぇは世界で一番大切な人が死ねば皆助かるって聞いて迷わず殺すのかよ!!」
「ナオト」
「さっきからなんだよ先輩!!」
ー怒りだ
「少し黙れ」
その瞬間、ハヅキの頭上で金属のぶつかり合う甲高い音が響いた。向かってきたリューズの鎌をイースがスピアで弾いたのだ。
『……リューズちゃん、今ハヅキに何しようとしたの?』
人間性の消えた声音に全員の呼吸が止まる。息を吸うことが出来ない。一度リューズの鎌に挟まれた事のあるマリーは足が震え腰が抜けそうになる。あのリューズに即座に反応してみせたハルターでさえ動くことを許されない。そしてリューズは、
『ッ!?』
目の前の姉の出す自分以上の殺気に固まる。その中で何とか眼球を動かし、自分が反射的に鎌を抜いた相手を見る。
ーあの少年は誰だ?
そんな疑問がリューズの中にエラーを溜める。イースによって動くことが許されない空間においてハヅキは平然と続ける。
「…マリーちゃん」
「は、はい…」
「今から3分でルートを引け」
「え?」
「引けと言ったぞ?」
「は、はい!」
マリーは動くことの出来ない空間の中で唯一動くことを許される。猛然と思考を動かし、手が霞むほどに書き始める。
「ナオト」
「あ…う…」
ハヅキは足元に落ちていたドライバーを拾い上げナオトに放る。ナオトは足元に落ちたドライバーを目で追う。
「それでリューズちゃんから"
「ッ!リューズを犠牲にするつもりかよ!」
「勘違いするな、リューズちゃんは死なねぇ」
「は?」
ナオトは呆気に取られる。
「命を賭けるのは…俺だ」
その言葉に全員が疑問を浮かべる。
『ハヅキ!それって…』
「イース、やってくれるな?」
『そんなことしたら本当にハヅキが…』
「だけどこれが最善だ」
イースが瞳に動揺を浮かべる。
「お前には辛いことをさせちまう。でも死んだらそれこそ終わりだ。だったら俺は今お前に辛いことをさせて全部終わったら死ぬほど謝る。その方がいい」
『…死んじゃ、ダメだよ…』
イースの辛そうな顔にハヅキは胸に鋭い痛みを覚えるがそれを飲み込む。ハヅキはイースに近付いていき、
『んむッ!?!!?』
ーキスをした
『なっ!?』
「ええ!?」
「おいおい…」
リューズ、ナオト、ハルターが三者三様の反応をする。コンラッド達はあまりの展開に茫然とし、マリーは必死にルートを書き上げていたので気付かなかった。
「ん…俺は死なない。皆と…イースと生きる。俺はお前と言葉を交わらすのを夢見てた、お前と笑いあうのを夢見てた、お前と一緒に見に行きたい所がある、お前にこの今の世界と俺を知ってほしい」
ハヅキはイースの肩に顔を埋め言葉を漏らす。
「だからさ…生きようぜ、二人で」
顔を上げ笑顔を見せる。その笑顔は決意を固め、確固たる意思を持つ力強く勇気を与える笑みだ。その笑顔を見たイースは一度強く目を瞑り、ゆっくりと頷く。伸びたスピアがワンピースの中に戻っていく。既にリューズは殺気から逃れナオトの側にいた。
「ナオト、リューズちゃんから"
「…本当なんすか?」
「本当だ、信じろ」
ナオトは暫くハヅキを見詰め決意する。
「…リューズ、良いか?」
『それがナオト様の意思ならば』
リューズはスカートの裾を摘まみ深々と一礼をする。
「か、書けた!…って何この状況?」
「お姫さん…あんた本当良いところを見逃したな…」
全員がマリーちゃんの書いた図面通りの配置に着く。事前に何をするのかは伝えてある。半信半疑だったがイースがinitial-Yシリーズであると話すと一応の納得はしてくれた。そして今、俺とイース、ナオトとリューズちゃん、マリーちゃんは重力制御の機構の前にいる。リューズちゃんは既に"虚数運動機関"を抜かれていて機能停止している。現在ナオトが膝枕中。ハルターさんにはあるものを取りに行って貰っている。俺は上半身の上着を脱ぎ捨て、手袋も外す。
「ナオト、お前がマリーちゃんを誘導しろ」
「了解です」
「マリーちゃん、ナオトの言ってることは正しい。従ってくれ」
「分かってる」
「よし、皆さんもお願いします」
〔〔〔任せなさい〕〕〕
頼もしい返事が返ってくる。
『じゃあハヅキ、始めるね?』
「おう、二人で生き残ろうぜ」
そして、宣言が始まる。物理法則…いや、世界に歯向かう宣言が。
『定義宣言』
ゆっくりと
『Initial-Yシリーズ監督機、"
機械的に、だが奏でるように
『固有機能―【
イースの中の不明だった機構が、バラける
『―一方運動から全方運動へシフト開始』
全ての歯車が連結から外れ、全身にまわり、噛み合うことなく廻る。そして中心には
『
それは
並行世界―無数の可能性に溢れてるこの世界において"あったかもしれない"別の未来。本来、人がそれを観測することは不可能であり、また、存在しない世界である。
だがイースは、その別世界に移動するのではなく、世界と世界の僅かな隙間に移動する。そこには一切の可能性は無く、全てが止まっている世界である。イースは普段ここに中枢と"
イースはその姿を反転させるように変えていた。空色の髪は夜空に星を散りばめた様な移り行く髪に、瞳は夜空の色から全てを覆う空色に。
『今の"血"の量だと二分が限界だよ』
「その為に俺が脱いだんだ、好きなだけ吸え」
『うん』
イースは返事をして終句を告げる。
『―
直後、
京都の外周部、そこにあるパージ・システムに繋がる機構がある建物では20人もの軍属技師が今まさに京都を落とさんと動いていた。
「…第二十六層、全連結解除を確認!」
「よし、続けて最終連結の解除に移れ!」
上司の声に従って部下達は動く。その顔は一様に硬い。
「全く…最近の若者は覚悟が足りないと思わないかい、新島く~ん」
「…躊躇って当然だ。故郷を落とすんだぞ」
「そこが覚悟が足りないと言ってるんだよ、これは軍のメンツを保つ崇高な行いなんだから!」
新島リョウジは拘束されたまま上司だった者に返答する。その顔は苦々しく、辛そうなものだった。
「まぁ覚悟というなら君は中々だったよ、軍相手にここまで喧嘩を売るような真似をしたんだからね!」
「間違ってると思ったから行動した、それだけだ」
「全く残念だよ。その覚悟を軍の為に使ってくれれば良かったものを」
上司だった者が嘲笑う様に話す。
「―全信号確認、接続完了。最終工程、準備できました」
「ようし、ではカウント始め!」
「了解、カウント開始。―5、4、3…」
カウントが進むにつれ緊張が高まる。
「2、1、―最終連結、
瞬間、京都は落ち…
「…?どうした、なぜ落ちない!?」
なかった。
「状況を確認しろぉ!」
「じ、重力異常です!」
「それは都市機構の異常だ!パージと関係は無いだろう!」
「違います!都市底部では反転…大支柱に至っては固定されてます!」
「な、なにぃ!?」
上司が目を溢さんばかりに見開く。
「まさか、ハヅキ…?」
「マリーちゃん、北西35度、距離2万4906メートル付近、軍用ヘリ3機」
「妨害ね、落とすわ」
マリーは手元を僅かに弄る。
「…落ちた」
「了解」
2万キロ以上離れた空中に浮かぶヘリを感知して落とす、これだけでも十分異常な事だ。だが実際は更に異常だ。なにせ観測者…ハヅキは既に別世界となったもとの世界の現象を察知しているのだ。
この世界、実際には完全に別世界ではなく一部が融け合った様な世界である。大支柱の内部は確かに元の世界から一時的に消失した。だが狭間世界には簡単に言えば魂のみが移動したその時の状態を保ち、こちらの世界と重なっている。つまり二重にダブり、永久保存状態となる。リューズの"虚数運動機関"もこの原理を利用して崩壊を防いでいる。ここでは機能は働くが時間は進まないという矛盾が発生している。その影響は元の世界にも及び、こちらの世界で起きたことは元の世界にも反映される。今京都が反重力によって押し上げられているのがいい証拠だ。しかしあちらからの現象はこちらに届くはずが無いのだ。ではなぜハヅキは軍用ヘリが近付いてきたことに気付いたのか。
―南西24度から圧力、距離は…2万4589メートル
そう、圧力だ。実際には圧迫感だろう。あらゆる物体が持つ万有引力、それと同じ様に物体には空間を圧する力がある。だがそれは同じ世界であっても感じることはほぼ不可能、辛うじて本当に近くにある場合のみ感じたことがある人はいるかもしれない。だが別世界で、2万メートルも離れた場所から感知できるのはハヅキだけだ。ナオトでは感知出来ない。音が届かないからだ。ハヅキは限界を越えて集中しその異常を神の領域にまで押し上げている。だが、
―くっそ!頭がボンヤリしてきやがった!
ハヅキは限界を越えている代償として膨大な量の情報が頭に流れ込んで来ているのだ。それはナオトの比ではない。加えて右肩からイースによって血を吸われ続けている。脳に廻る血液が減ることによって思考能力は加速的に止まり始める。
『ハヅキ…』
「口を離すな!能力が切れたらその瞬間全エネルギーがリューズちゃんのギアに掛かるんだぞ!妹を殺す気か!」
『ッ!あむ!』
イースはハヅキに叱咤され再び血を吸い始める。既に15分、顔は蒼白くなっている。イースの内部は今やリューズを超える数の歯車がそれぞれ矛盾した動きを見せている。そのすべてが普段は存在しないイースの中身だ。
「マリー、5番目のシリンダがはまってない。直上1メートルの別のシステムが干渉してる。1番目のシリンダを右に34度回転させて」
「了解、集水システムね…OK、接続成功」
また一つ、新たなシステムが生まれる。この光景をあるもの…血液パックを持ってきたハルターは静かに瞠目した。ナオトが"観測"して、マリーが"操作"する。それはまさに人間の出来ることを超越していた。だがそれ以上にハルターはハヅキの能力に疑問を抱く。
―こいつの腕は本当に人間の物なのか?別世界の圧力を感知するなんてそれこそ神の御業だ
ナオトとマリーが奏でる演目、既に別次元の領域に達てしているハヅキ、それを見たハルターはつい漏らす。
「ったく、たまんねぇなぁ…」
頭が軋むように痛い、でもまだ終わっていない。耐えろ、耐えるんだ。
「…あと10秒!ハヅキさん、イース、頑張って!」
〔マリー先生!メインテンプが0.2度ずれてます!〕
伝声機から声が響いているようだ。だが聞き取れない。視界はとっくに明滅している。
〔…!合いました!角度調整完了!回路接続!〕
「先輩、頑張ってくれ…!マリーまだか!」
「あと6秒頂戴!」
かろうじて6という数値は聞こえた。もうすぐ終わりなのか?その時、両腕が物凄くでかい圧力を感知する。
〔接続成功!〕
「イース!戻して!」
イースの気配が遠ざかる。終わったのか…?
『活動終了、狭間世界から現実世界へワープします』
腕が押し潰されそうな感覚を覚える。ああ、戻るのか…そうか、成功、した、の…か…
『ハヅキ!!』
イースは"
「ハルター!輸血パック!」
「分かってる!」
ハルターは持っていた血液パックを手早くセットしてハヅキに繋ぐ。
「う……あ………!」
『あ、手袋!』
イースは丁寧にそっと手袋をハヅキに嵌めた。幾らか顔色が良くなる。だがそれでも顔は白を通り越して土気色に近い。
「マリー先生!」
そこで他の階層にいたコンラッド達が帰ってくる。
「!!神連君!?」
あまりの顔色の悪さに全員が動揺する。
『…大丈夫、ハヅキは死なない』
そう言ったイースの顔は気丈だった。ハヅキは約束を守る。そう信じている。
「イー…ス…」
ハヅキの右手がゆるゆると何かを探すように動く。意識は無い。
『!ハヅキ、私はここにいるよ』
イースはゆっくりとその手を握る。ハヅキは安心したように顔を綻ばせ、静かに眠った。
ここに今、テロリスト“セカンド・イプシロン”最初の救済は完了した。数日の慌ただしさを経て京都はいつも通り廻り続ける。
狭間世界のイメージはシュタゲの負荷領域のデジャブで岡部の行った誰もいない世界です。