東方幻想物語   作:空亡之尊

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連携と無双と神々しき龍

ルーミアside

 

 

ユウヤと別れた後、私は都に残って四神の相手をしていた。

四神はそれぞれの得意な技を使いながら、互いに連携を取っていた。

青龍の稲妻、朱雀の火球、白虎の突風、玄武の氷柱、一人で相手にするには厄介な相手だった。

 

普通、妖怪は単体で行動することが多い。

群れを持っていたとしても、連携を取ることはまずない。

妖怪と言うのはどいつもこいつも自信家。自分一人で何でもできると思っているものが大半よ。

だから私は、妖怪が集団で攻めてくる時は要となっている奴を最初に倒し、集団を崩壊させる。

そうすれば後は適当に誘導して同士討ちを狙い、その隙に倒せばいいだけの話。

 

でも、こいつら四神はそれとは全く違う。

それぞれが上級妖怪以上に強いのもあるけど、何より互いが互いをちゃんと認識している。

そのお蔭で、互いの攻撃を隙を埋めたり、自分を囮にして他の奴等に攻めさせたりする。

ユウヤと楓を除いて、これまで戦ってきた奴等の中では最強ね。

 

 

「でも、諦めるわけにはいかないのよ」

 

 

私は迫り来るありとあらゆる攻撃を、自分の影を盾にすることで防いだ。

あの日、私はユウヤに一目惚れした。それから奇妙な腐れ縁で、ここまでやってきた。

数ヶ月前、彼が私の目の前から居なくなった時は不安で胸が苦しかった。

殺されるはずはない。そう思っていた私はこの国を必死に探し回った。

寝ることも食べることも忘れ、ようやく彼が見つかったと紫に聞いた時は、嬉しさで泣いてしまうほどだった。

 

 

「人喰いが……よくもここまで堕ちたものね」

 

 

私は呆れて、でも嬉しそうに笑った。

こんな私でも、一人の男のためにここまで来た。

叶わぬ願いだとしても、私はできる限り、彼の傍に居たいと思った。

だから、その時間を少しでも取り戻すために、私は目の前の邪魔者を排除する。

 

 

「さあ、遊びましょう♪」

 

 

私は口端を三日月のように吊り上げ、目を光らせた。

その瞬、私を覆っていた影が鋭い無数の針となって四方八方に伸びた。

青龍と朱雀は空に飛び上がって影の針を避け、白虎は影の針に貫かれる。玄武はその硬い甲羅に閉じ籠って一度身を守るも、残った影を収束させて巨大なドリルにすると、甲羅ごと貫いた。

貫かれた白虎と玄武はそのまま私の元へと引き寄せられ、影が引き抜かれると同時に、私の黒い剣の一振りによって、白虎は横一閃に、玄武は縦一閃にと、その身体を一刀両断された。

 

 

「残り二匹……」

 

 

剣に付いた血を振り払うと、私は上空にいる青龍と朱雀へと狙いを付けた。

それを察したのか、二匹はそれぞれ稲妻と火球を私に向かって放ってきた。

私はそれを剣や影で次々と斬り払うと、私は自分の足元の影を刃にして上空の二匹へと放った。

青龍はその細長い身体に回避が追いつかず、影の刃に尾から頭に掛けて切り刻まれると、力尽きて地面に墜落した。

 

 

「残り一匹……」

 

 

朱雀はそれぞれ逃げるように高速で飛びまわるが、それを超える速さで無数の影の刃が複雑に絡み合いながら朱雀の後を追う。

朱雀は迫り来る影の刃に火球を放つと、その隙に急降下してその追跡を逃れる。

それと同時に、私は自分の背中に影を集め、翼へと変化させると、朱雀へと向かって飛びたった。

空中で弾幕と火球が入り乱れ、互いに誘発しながら真夜中の空を明るく照らした。

私が地上へと降り立ると、朱雀は大きく鳴き声を上げると、その身に纏う炎をより強くさせ、私に向かって捨て身の特攻を仕掛けてきた。

 

 

「勇ましいわね。嫌いじゃないわ」

 

 

私は剣を構えると、炎を纏った朱雀へと向かって飛び上がった。

満月を背景に、私と朱雀が互いにすれ違う。私の身体には炎が燃え移り、朱雀の身体は私の一閃によって斬り裂かれ、地面へと堕ちていった。

 

民家の上に着地すると、私は眼下に広がる四神の亡骸を見下ろした。

突き刺されて真っ二つに斬り裂かれた白虎、甲羅ごと貫かれて真っ二つにされた玄武、尾から頭まで無数に切り刻まれた青龍、そして燃え尽きて命の絶えた朱雀。

多少時間は掛かったけど、何とか倒すことができた。

 

 

「さて、どうせだから紫の手伝いに……」

 

 

勝利の余韻に浸り、その場を立ち去ろうとした時、私の視界の端で何かが光った。

よく見るとそれは、朱雀が持っていた紅い宝玉が地面に転がったまま淡い光を帯びていた。

それだけではなく、他にも蒼、白、黒の宝玉も同じ様に光を帯びていた。

 

 

「嫌な予感がするわね」

 

 

私の予想を嘲笑うかのように、四つの玉は四神の亡骸を吸収すると、宙へと浮かび上がった。

宝玉を囲むように空中に結界のようなものが描かれると、やがて周囲を眩い光が包み込んだ。

 

思わず私は影で目を覆った。光が納まり、影を退けると、そこには信じられない者がいた。

神々しいまでの光を纏った金色の龍、四神の更に頂点に立つ神、黄龍がそこにいた。

その大きさは私よりも数百倍はあり、先ほどまでの四神とは比べ物にならないほど巨大だった。

神々しいまでの光を纏ったその姿、巨大な手には先ほどの宝玉が握り締められている。

 

 

「本命登場ってやつかしら」

 

 

武者震いを起こす右腕を抑えつつ、私は薄ら笑いを浮かべた。

黄龍はその巨大な口を大きく開けると、そこに力が集まりだした。それは正に、今から攻撃を仕掛ける為の溜め、それも四神のとは比べ物にならないくらい強力な攻撃だと私は悟った。

私は影を翼に変え、都へと被害が行かないように空中へと飛び上がった。

黄龍は力を集め終わると、空中にいる私へと向けて激しい閃光を放った。

それはかつてユウヤが見せた『マスタースパーク』よりも数百倍の威力と範囲があり、全力でその範囲から避けるのがやっとだった。

閃光は空の彼方まで撃ち上がると、雲を突き抜けて宇宙(そら)へと消えていった。

 

 

「洒落にならないわね」

 

 

次の攻撃が来る前に勝負を着けなければ。

そう思ったその時、激しい突風にあおられて地面に激突すると、私の頭上から稲妻と火球と氷柱が降り注いできた。

咄嗟に影で全て防ぐが、先ほどよりも威力が増しており、簡単に突き抜けてきた。

思わぬ不意打ちで地面に横たわると、見上げた先には先ほど倒したはずの四神が蘇っていた。

黄龍によって甦らされ、その力は以前よりも上がっているようだった。

 

 

「万事休すね……」

 

 

私は立ち上がるが、すでに黄龍は迎撃の準備を終わらせていた。

放たれる破壊の閃光、私は諦めるように目を閉じた……………………。

 

 

 

 

 

神無 優夜 side

 

 

幾つもの忘れていた記憶が、走馬燈のように駆け巡る。

それは時間を遡るように、現在から過去へと移り行く。

 

旅路の途中で琥珀と木ノ葉と出会い、佐渡の島で自分の影と戦った。

妹紅が不老不死になったが、彼女は前を向いて生きると言った。

輝夜を護る為、月からの使者を退き、永琳と再会を果たす。

都で阿礼と出会い、噂のかぐや姫と対面すると難題を出される。

妖怪の山で天狗たちと戦い、鬼姫である薊と喧嘩した。

諏訪大戦で三貴子と神々の軍勢と戦い、俺は人として見失った。

諏訪子や叶恵たちと共に暮らし、ルーミアも人間に馴染んできた。

月の都で永琳と出会い、それから綿月姉妹や輝夜と友人になった。

 

そして、この世界で初めてルーミアと出会った。

忘れていた俺が言えたことじゃないが、思えば、アイツとはずっと一緒に旅を共にしてきた。

奇妙な出会いだったが、今では後ろを任せられる大切な仲間だ。

 

そういえばさっき、アイツ俺に………………。

 

 

「……後で憶えてろよ」

 

 

俺は口元をニヤッとさせると、桜良の下へと更に急いだ。

 

 

 

 





本来、人に崇められるはずの神は邪神の下僕と化した。
それに対し、人に怖れられるはずの妖怪は人を護るために戦う。
彼女は圧倒的な力で四神をねじ伏せるも、その先には四神の長が待ち構えていた。
全てを包み込む閃光に、彼女の闇はかき消されていく。


次回予告
運命に弄ばれた少女は、最後に何を残して散っていくのか?
東方幻想物語、妖桜編、『殺しの罪と生きる罰と双花の散り様』、どうぞお楽しみに。

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