東方幻想物語   作:空亡之尊

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人と妖の戦

神無 優夜side

 

 

月の民もいなくなった地上、そこに残った俺と奴と激戦を繰り広げていた。

俺は『月美』を構えて奴に斬りかかるが、奴は不敵な笑みを浮かべながら剣を薙ぎ払って土煙で目潰しすると、その向こうからデザートイーグルの引き金を引いた。

『月美』で銃弾を防ぐが、その隙を突いて奴は俺の背後に回り込んで剣を斬り払った。俺は咄嗟に振り返って斬撃を相殺した。

 

 

「ははは♪ どうやら一筋縄ではいかないみたいだね」

「お前だけは殺す。俺の手で必ず」

「そうだね。僕もそう思ってくれる方が助かるよ」

「てめぇ……!!!」

「だけど、今はその時じゃない」

「なに」

 

 

その時、俺と奴の間に割り込むように深紅に染まった大鎌が振り下ろされた。

危険を察した俺は後ろに跳んでそれを避けると、そこには一人の女性が立っていた。

長い黒髪、鮮血の様に真っ赤なドレスと瞳、紅いリボンが巻かれた黒い帽子を被っている。

女性は俺を一瞥すると、奴の方へと視線を向けた。

 

 

「まったく……こんな所で遊んでいるなんて」

「おや、もうお迎えですか」

「勝手に動き回られたら迷惑なのよ」

「なるほど。では帰ることにしましょうか」

「そんなことさせるか」

 

 

奴へと向かおうとしたその時、遠くの方から魑魅魍魎のうめき声が大地を振るわせた。

 

 

「どうやら、貴方の相手は僕ではないようですね」

「そうみたいだな。くそ」

「あの軍勢に、君は勝てるかな?」

「言われなくても分かるだろ?」

「ふふ、それじゃあ、次会う時を楽しみにしているよ」

「次会ったらぶっ殺す」

 

 

奴は俺の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべると、闇に溶けるように消えていった。

いつの間にか俺の目の前には目を血走らせた妖怪の軍勢が押し迫り、その一部が俺に襲い掛かる。

俺は刀を構え、一瞬でそれらを斬り抜ける。

 

 

『レミリア・スカーレット:運命を操る程度の能力』

 

 

斬り抜けた瞬間、スマホで『レミリア』を選択すると、刀が赤い光に包まれた。

刀は槍へと変化し、紅い光を纏った長さ2mほどの巨大な武器へとなった。

 

 

「避けてみろ……」

 

 

槍を構え、妖怪の群れへと向かって投げると、槍が30本へと分かれ、妖怪の群れを次々と貫いた。『スピア・ザ・グングニル』を連続で放っているものと考えた方がいいだろう。

避けるタイミングや場所、それら全ての運命は視えている。外すわけがない。

放たれた槍を追いかけるように走ると、地面に突き刺さった槍を引き抜いた。

 

 

『フランドール・スカーレット:ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』

 

 

槍は剣へと変化し、刀身にゆらゆらと燃える炎を纏った武器へとなった。

本家のレーヴァテインとは違うが、こいつら程度なら十分過ぎるほど心強い。

 

 

「壊れろ……」

 

 

俺は目を閉じると、暗闇の中に無数の『目』が見えた。

ありとあらゆるモノの力が最も緊張している『目』、それに力を加えるだけで脆く破壊される。

妖怪の群れに向かって走り出すと、その『目』ひとつひとつを片っ端から斬り裂いた。剣を納めると、斬り裂かれた妖怪は真っ二つになって消え去った。

 

あれだけやっても、減ったのは10分の1程度。まだまだ、先は長そうだ。

 

 

「その分、まだ楽しめるってわけだけどな」

 

 

『西行寺 幽々子:死を操る程度の能力』

 

 

剣が扇子へと変化し、その周りには桜の花弁と蝶が舞っている。

ちなみに模様は原作同様、御社車が描かれたカリスマ扇となっている。

 

 

「美しく優雅に……」

 

 

扇子を構え、舞を踊るように扇子を振るうと、桜の花弁が舞い、蝶は妖怪へと飛んでいった。

ゆらゆらと飛んでいった蝶は、妖怪たちの目の前まで行くと花火のように爆ぜながら花弁の弾幕を展開した。

しかし、その弾幕を避けた妖怪たちは一斉に俺に向かって襲い掛かってきた。

 

 

『藤原 妹紅:老いることも死ぬこともない程度の能力』

 

 

扇子が燃えるように消えると、その炎は俺の脚へと纏った。

元といえる武器が無い所為でもあるが、このスタイルの方が妹紅らしいといえる。

 

 

「火の粉は振り払う……」

 

 

襲い掛かってきた妖怪を踏み台にして上空へ避けると、妖怪たちは何も無い地面に着地した。

キョロキョロと見渡している堕ち神へ、俺は上空で体勢を整え、地上にいる妖怪の群れへと足を突きだして急降下した。いわゆる、〇イダーキックだ。

蹴りが妖怪の群れへと直撃すると、それと同時に足に纏った炎が地面へと伝わり、火柱を上げながらその周りを燃やし尽くした。

 

 

『東風谷 早苗:奇跡を起こす程度の能力』

 

 

炎は風に乗って俺の手元に集まると、紙幣の付いた日本刀へと変わった。

刀身には呪詛のような物が刻み込まれており、神々しい力が宿っている。

 

 

「刮目しろ……」

 

 

刀を構えると、俺は妖怪の群れへと向かって走り出し、地面ごと斬り裂いた。

それを6回繰り返すと、地面には六芒星の模様が刻み込まれ、それが光り出すと周囲一帯をすさまじい風が吹き荒ぶった。妖怪たちはそれによって粒子レベルまで分解された。

 

攻撃が終わると、目の前にまた妖怪が迫ってきていた。

 

 

『古明地 こいし:無意識を操る程度の能力』

 

 

刀は小太刀へと変化し、柄からは青色のコードが俺の腕に巻き付くように絡まっている。

無意識に潜り込んで寝首を掻っ切る。深秘録でそういうことやってたのが影響してるな。

 

 

「無意識を捉えられるかな………」

 

 

俺は口元をニヤッとさせると、その場から姿を消して妖怪の攻撃を避けた。

見失った妖怪は周囲を警戒するが、認識されることなく動き回る俺を見つけることはできない。

雑踏に紛れるように群れの中へと潜り込むと、小太刀で次々と妖怪の首を掻っ切った。

 

その時、堕ち神の刃が俺の胸を貫いたが、スマホには新たな表示がされていた。

 

 

『封獣 ぬえ:正体不明にする程度の能力』

 

 

小太刀は弓へと変化し、赤い線と青い線が交差するように模様が描かれている。

原作のトライデントかと思ったけど、鵺を射抜いた弓とは………少し皮肉だな。

 

 

「見つけてみろよ………」

 

 

俺はニヤリと笑うと、その姿は煙に消えた。

妖怪は再び俺を見つけようと見渡すが、無慈悲な一矢がその身体を射抜いた。それを利用し、俺は次々と妖怪の身体を弓矢で射抜いていく。

 

周りの妖怪たちを蹴散らすが、まだまだ数は残っている。

体力の限界を感じた俺は呼吸を整えようとした。その一瞬の隙を突いて妖怪が襲い掛かってきた。咄嗟に刀で防御しようとするが、妖怪は影の刃によって斬り裂かれた。

 

視線を向けると、そこには剣を構えたルーミアが立っていた。

 

 

「大丈夫?」

「ああ。人間の身ではこれが限界らしい」

「それはそうよ。あんな強大な力、普通の人間が使えば気を失ってもおかしくないわ」

「ここまで連続で使えるのは“月美”のお陰だよ」

「あの時の子ね。貴方の中からそれを感じるわ」

「でも、このままだと俺が死にそうだ」

「その割には策がありそうな顔付きね?」

「一発逆転の策はあるけど、最悪お前まで巻き込む」

「別に構わないわ。それとも、私がそれで死ぬとでも?」

「………解った。なら、行くぜ」

 

 

俺は『月美』を抜刀して月に掲げると、月の光が刀身を照らす。

ルーミアは俺と背中合わせに立つと手を掲げ、その手の中に黒い闇を塊を収束させていく。

そういえば、こういう時って名前が必要かな? だとしたら、初めて自分で名前を付けるか。

 

 

「………『幻想交響曲』」

「………『終わりの闇』」

 

 

俺が刀を振り下ろすと、スマホの画面を覆い尽くすように数々のメッセージが表示される。

その瞬間、ありとあらゆる武器が周りに出現すると、それら全てが意志を持ったかのように妖怪たちへと向かって飛んでいき、斬り裂き、貫き、粉砕し、撃ち抜き、燃やし、凍らせ、吹き荒ぶった。

 

ルーミアは収束させた闇を握り潰すと、そこを中心に視界を覆うような闇が広がった。

俺の目には見えなかったが、俺の武器とは違う音が聞こえた。それは何かが貪るような音だった。肉を千切り、血を啜り、骨を砕く、闇の先では惨状が広がっているだろう。

 

 

人と妖との戦いは、これにして終わりを告げた。

 

 

 

 




次回予告

誰にも知られず、一つの物語が終わった。

人を捨てた人間と、妖を裏切った妖怪。

これからどう物語が進むのだろうか?

東方幻想物語・神代編、『悠久の始まり』、どうぞお楽しみに。

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