東方幻想物語   作:空亡之尊

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悠久の始まり

神無 優夜side

 

 

闇が晴れると、そこには無数の武器が地面に突き刺さり、妖怪が串刺しにされていた。

その傍には無残に食い散らかされた妖怪の残骸が転がっている。ルーミア、恐ろしいな。

 

武器と妖怪は散りのように崩れると、風に乗って消えていった。

それを見た俺は溜息を吐き、その場に座り込んだ。

 

 

「ようやく終わった」

「お疲れ様。人間のくせによくやったわ」

「妖怪に負けてられるか。それに、アイツの手下なら尚更俺が仕留めなきゃな」

「恨みが濃いわね。そんなに好きな人を殺されて悔しい?」

「当然だ。これで何にも感じない方がおかしいよ」

「人喰いの私にはわからないわね」

 

 

ルーミアはそう言うと、俺の背中に寄り添うように座った。

 

 

「アンタはこれからどうするつもり?」

「とりあえず、あのふざけた邪神をぶっ殺す」

「人間はいつもそうね。復讐するか諦めるか、どっちかしかできないなんて」

「人間なんてそんなものだ。でも、それでも人間だ」

「確かに。化物を倒すはいつだって人間だものね」

「まさかお前からその台詞を聴くとは」

「これでも人間は好きなのよ。諦めないところとか、他人を守るところとかね」

「それってもしかして、あの時の俺も含まれてたりするのか?」

「さあ? どうかしらね」

 

 

彼女は誤魔化すように小さく笑った。

 

 

「でも、私でもわかるけど、アイツは強いわよ」

「知ってる。(TRPGリプレイで)何度も殺されかけた」

「なら、どうする気? 今のまま戦いを挑んでも返り討ちに遭うのが末路よ」

「ああ。そこでルーミア、お前に頼みがある」

「何かしら?」

「俺の特訓に付き合ってくれ。頼む」

 

 

俺は背中合わせでそんな頼みをした。

俺一人の努力でアイツに追いつくのは無理がある。なら、俺より強いルーミアに特訓の相手をしてもらって自分の力を高めるしかない。それが、今考えられる最善策だ。

だが、それは彼女が了承してくれればの話。望みは薄そうだ。

 

 

「良いわよ」

 

 

返ってきた答えは意外にも呆気なかった。

 

 

「いいのか?」

「どうせここには人間もいなくなったし、暇を潰すには丁度いいわ」

「それもそうだが。なんか他に企んでるだろ?」

「実わね、私貴方に惚れちゃったのよ」

「え?」

 

 

予想外の言葉に俺は一瞬ドキッとなってしまった。

月美の時は勢いで感じなかったが、こうもはっきり言われると何だか照れる。

 

 

「え、えーと」

「ちなみに、惚れたといっても良い意味で捉えないでよね」

「どういうことだ?」

「貴方は私の獲物。貴方が死ぬ時は、私が骨の髄まで喰い尽くしてあげるわ」

「随分とまあ、情熱的な愛情表現ですね」

 

 

どうやら、彼女に負ければ人生終了(ゲームオーバー)待ったなしらしい。

この時、頼む相手を間違えたのではないかと本気で悩んだものだ。

 

 

「でも、新しい人間が現れるまで時間が掛かるのよね?」

「少なくとも数億年も先の話だろうね」

「それまで特訓するにしても、時間が余るわね」

「それに、月美の命を取り込んだとしても、俺がそこまで死なないという保証もないしな」

「どうする気よ?」

「考えはある。輝夜の能力を使うさ」

「街にいたお姫様の能力よね。確か永遠の須臾を操る能力とか」

 

 

そう。輝夜の能力は『永遠と須臾を操る程度の能力』。

永遠とは不変であり、歴史のない世界。未来永劫全ての変化を拒絶する。永遠を持ったものはいつまでも変わる事が無く、干渉される事も無い。永遠亭が老朽化をしていなかったのはこの能力のお蔭である。

須臾とは、認識出来ない程の僅かな時間の事。言葉としては1000兆分の1であることを示す数の単位だが、この場合では認識不能の時間の最小単位。他人には認識できない時間を行動することができる。

 

 

「どうやるのよ?」

「細かい説明はできないから端折ると、別の空間で特訓して、その間に歴史が進むのを待つ」

「もっと詳しく話しなさいよ」

「例えば、その空間で1日程度修行したら外では100年経ってる。つまりはそういう事」

「そんな事できるの?」

「実際にやった。試用で1時間居座って外に出たら半月経過してた」

「それは凄いわね」

「その代り、永琳にめちゃくちゃ怒られたけどな」

 

 

俺はあの時の事を思い出し、その時射抜かれた腕を摩った。

しかし、そのお蔭で『逆版・精神と時の部屋』が完成した。そう考えれば安い代償だ。

 

 

「本当に反則よね。空間まで操るなんて」

「そこまで大したこともねえよ」

「あら、どうして?」

「これを使うと、俺の能力の大半が失われてしまう」

「それって………特訓する意味あるの?」

「ある。俺は能力に頼らずに刀で戦えるようになりたいんだ」

 

 

能力に頼れば、その分俺の元の剣術が鈍ってしまう。ならば、これを機に剣術を鍛え直す。

能力の方については、東方Project LOVEの精神があれば本能でなんとかできると思っている。

 

 

「勿体ないわね。その気になれば代償無しで時を進めることも出来るはずなのに」

「妥協はしたくない。それに、剣術を捨てると『月美』を使える機会が減るからな」

「………人間っておかしいわね。死んだ人のために頑張るなんて」

「そんなものだよ。人間って生き物は」

「ふふっ、退屈はしなさそうね」

 

 

背中合わせでも彼女が笑っているのが分かった。

しかし、その時俺は違和感に気付いた。

俺の背中に当たっている彼女の背中が、身長の割には小さく感じられた。いや、それよりもさっきから話し声が幼くなっているような気がする。

俺がゆっくりと振り返ると、俺はあまりの衝撃に目を見開いた。

 

そこに居たのは小さくなったルーミア、いやむしろ原作通りの姿だった。

リボンが黒だったり、少しジト目だったりと相違している部分もあるが、普通のルーミアが居た。

彼女は驚きで固まっている俺を見ると、首を傾げた。

 

 

「どうかしたの?」

「い、いや、それはこっちの台詞………」

「ん? ああ、この姿のことね」

「どうしたんだよ。EXからNormalになって」

「意味は分からないけど。さっきの攻撃で闇を使い過ぎた所為ね」

「どこぞの信仰足りなくてちんちくりんな巫女さんみたいな原理だな」

「………まあ、どうせすぐに元に戻るわ」

 

 

彼女は呆れたように溜息を吐くと、俺に背を向けた。

うん。完全に俺の発言に一々反応するのが面倒になったと見える。

しかし、原作キャラで特に好きなルーミア。それを目にして俺の理性は耐えられるわけはなく、俺は彼女に抱き着くと頭をわしゃわしゃと撫で回した。

 

 

「きゃ!! な、何してるのよ!?」

「ああ~♥ 可愛い、抱き心地良い、可愛い、髪サラサラ、可愛い、可愛い!」

「ちょっと、可愛い可愛いって連呼しないで!! あと離して!!」

「い~や~だ~! 折角のチャンス、ここで掴まなくていつ掴むか!」

「被害に遭ってる私はとてつもなく迷惑なんだけど?」

「俺は幸せでヘヴン状態の階段駆け上がりそう」

「人の話を聴けえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

 

 

               少 年 祈 祷 中

 

 

 

「うぅ……穢された」

「誤解を招くようなこと言うなよ!?」

「うるさい!!」

「まあまあ。俺が作った飴あげるから許して?」

「ぐすっ………」

 

 

目じりに涙を浮かべた彼女は俺から飴の包みを受け取ると、それを口に入れた。

それが気に入ったのか、彼女は美味しそうに微笑みながら頬に手を当てている。

………やばい。俺の理性がもう限界に近い。しかし、ここで襲うと(運営に)消される。

俺は頑強な精神で耐えると、その場から立ち上がった。

 

 

「さてと。それじゃあ、行きますか」

「最後に一つ聞きたいけど、いい?」

「なに?」

「あの邪神を殺したとして、その後はどうするの?」

 

 

彼女の俺にした質問、それはどこの漫画でも良く聞く言葉だった。

復讐を目的と生きるが、復讐の先にあるものは何も無い。もしも、俺が奴を殺した時、俺が次に目指す目的は何なのか。それを聞きたいのだろう。

俺は一瞬の躊躇なく、即答で答えた。

 

 

「もちろん。新しい恋をして、家庭を持って、平凡に幸せに暮す。ただそれだけだ」

「………そう。安心したわ」

「あ、ちなみにルーミアがお嫁さんでもいいぜ?」

「バカなこと言うんじゃないわよ。………早く行くわよ」

「釣れないな~」

 

 

俺は残念そうに言うと、スマホを起動させた。

すると、俺とルーミアを包み込むように、光が地面から溢れだした。

 

 

「それじゃあ、数億年分付き合ってもらうぜ」

「いいわよ。貴方が生きるその先、見届けさせてもらうわ」

 

 

お互いにニヤリと笑い合うと、光に包まれてその場から消えた。

人間も、妖怪も、全てがいなくなったこの地の物語はこれにて終わり。

 

 

再び物語で出会えることを、心待ちにしております。

 

 

 

 




空亡「さて、これにて第一章はおしまいです」
優夜「こういう路線で行くのか」
空亡「ほかの方々の物に比べれば、まあオリジナリティ溢れるものだと思いますよ?」
優夜「だろうな。邪神が出てくるものなんてそんなに無い………はずだ」
空亡「まあ、まずは失踪しないようにしませんと」
優夜「完結させないと後味悪いからな」
空亡「それまで、読んでくださる方が多くなればいいなとは思います」
優夜「そうなればいいけどな」


次回予告
時代は移り変わり、荒れた大地が緑に生い茂る頃、旅は始まる。
東方幻想物語・大戦編、『新たな旅路の始まり』、どうぞお楽しみに。
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