東方幻想物語   作:空亡之尊

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目覚めろ、その魂

神無 優夜side

 

 

前略。

天国で楽しく暮らしているだろう両親、お元気ですか?

親父の女好きに母さんに迷惑を掛けていませんか?

母さんはそんな親父に嫌気がさして喧嘩などしていませんか?

 

二人がいなくなって早くも三年が経ちましたが、俺は相変わらず元気です。

大学では変な人が多いけど退屈せずに過ごしています。

今では全力を捧げるほどの趣味も持っていますから、毎日が楽しかったです。

 

そんな俺ですが、今、澄み渡る大空をパラシュートなしでスカイダイビングしています。

もしかしたら、しばらくしてそっちの方に行くかもしれませんので、用意しておいてください。

 

 

「……って、どうしてこうなった」

 

 

俺は体を捻って寝転ぶような体制を取ると、頭の中で色々と整理し始める。

まず、俺は誰かも解らない奴にナイフで刺されて瀕死になった。そこで走馬燈を眺めていると一人の女性が現れた。その女性と話していると抱きしめられて眠った。そして今に至る。

 

 

「訳が分からね……」

 

 

結論、訳が分からないことがよく分かった。

まあ、さっきから落下している間に感じている相対風の感覚が夢ではないことを物語っている。

そう、この感覚は高速道路で窓から手を出した時に感じられるおっ……いや、こんな事を言うのはよしておこう。健全なこの作品が穢れてしまう。

そんな一人茶番を脳内で繰り広げていると、下の方から光が見えた。

 

 

「ん?」

 

 

首を傾けてみてみると、そこには太陽があった。

不思議に思って首を元に戻すと、そこにも太陽はあった。

再び首を傾けてよく見てみると、それが大きな湖の湖面に映った太陽だと気付いた。

その時、俺の頭にこの先に待ち受ける出来事がある程度の予想できた。

 

 

「えーと、確か水面にダイブするときは腹じゃなくて足か手から……」

 

 

そんな事を考えていると徐々に水面が近付いてきた。

予想以上に速い着水に戸惑っていると、俺は咄嗟に水泳の飛び込みの体勢を取った。

運が良ければ腕の骨折、悪ければ本当にあの世に逝く羽目になりそうだ。

 

 

「ええい、ままよ!」

 

 

 

               少 年 祈 祷 中

 

 

 

「………はっくしょ!」

 

 

静かな夜の湖に大きなくしゃみの声がこだました。

結局、あの後湖へダイブしたが幸い怪我はなく、その代償に夜の冷たさを更にも増して全身に感じる結果となった。

目の前には自分で起こした焚き火があるが、濡れた身体に夜風の鬼畜コンボは俺には効果抜群すぎる。だからと言って今着ている服を脱ぐつもりはない。

 

 

「……というか、俺の服」

 

 

俺は焚き火に照らされる自分の姿を改めて確認する。

白いシャツに黒いズボン、黒いロングコートと黒いフィンガーグローブを身に纏っていた。

死んだときは普通の服装だったはずなのに、なんでよりにも俺が自作した服を着ているのか、本当に訳が分からなくなってきた。

 

 

「まあ……そんなことより、ここは何処だ?」

 

 

服が乾いてきた頃に、俺は周囲を見渡して小さく呟いた。

周りには鬱蒼と生い茂った森ばかり、空には無数の星々と大きな三日月が輝いている。

これだけで分かる事と言えば、天高く立ち並ぶビルがある都会よりは空気が綺麗だということと、俺の知っている世界ではないということだった。

 

 

「ここは過去か、それとも平行世界か……」

 

 

俺の問いに応えてくれる声は聞こえない。

これが某二次創作投稿サイトの作品なら、その可能性も無きにしも非ずなんだよな。

教授やアイツならこんな状況を楽しんだりできるだろうけど、今の俺には不安で胸が一杯だ。

 

 

「俺のUSB、覗かれてないよな……」

 

 

そんな俺の不安にツッコミを入れるように、近くの草むらが揺れた。

風が吹いて揺れただけかと思ったが、それを否定するように草むらが不自然に揺れた。

気になって近付くと、草むらがピタッと止まった。それでも好奇心が抑えられない俺は恐る恐る歩み寄り、草むらへと手を伸ばした。

 

次の瞬間、俺の勘がこの先にいる危険を察した。

すると、草むらの向こうから黒い光の弾のような物が俺に向かって飛び出してきた。

 

 

「――っ!?」

 

 

俺は咄嗟に後ろに跳んでそれを避けると、草むらの先を睨みつけた。

今の攻撃で全てを察した。そこには何かが居て、加えて確実に俺の命を狙っている。

 

 

「……残念」

 

 

草むらの向こうから落胆したような声が聞こえると、そこから一人の女性が現れた。

金髪のロング、白い長袖のシャツに黒い上着と黒いロングスカート、頭には闇色のリボンが付けられている。見た感じは美人なお姉さんだが、その周りに纏った殺気は明らかに人外だった。

彼女は獲物を狙う獣ような目つきで俺を見つめると、口元をニヤッとさせた。

だが、それ以上に驚愕していた俺は咄嗟に声を上げた。

 

 

「久しぶりにご馳走にありつけたわ」

「マジか………『ルーミア』、しかもEX」

 

 

天国の両親へ、

俺はどうやら東方projectの世界に来たようです。

あと、どうやら食べられるみたいです。性的な意味ではなく物理的な方で。

 

 

 




空亡「これが、彼の初めての出会いだった」
優夜「初めてがいきなりルナティックなんですけど」
空亡「もしかしたら仲間になるかもしれませんよ?」
優夜「この出会いでそうなったらある意味奇跡だよ」
空亡「そうですね。奇跡、ですね」
優夜「なんか含みのある言い方だな」
空亡「そんなことないですよ」


次回予告
物語もままだまだ序盤、だというのに始まったのは死のリアル鬼ごっこだった。
東方幻想物語・序章、『戦わなければ生き残れない』、どうぞお楽しみに。

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