東方幻想物語   作:空亡之尊

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太陽と闘いと月

神無 優夜side

 

 

諏訪大戦のど真ん中、俺は三貴子と対峙していた。

天照大神、太陽の神格にして最高神、その力は他二人よりも遥かに凌駕している。

須佐之男、髪の中でも純粋に戦闘力が高く、子供っぽいところもあるがかなりの戦闘狂。

月夜見尊、色々と謎の多い神だが、油断ならない相手ということには変わりない。

これ、なんて無理ゲーだよ。普通に考えたらゲームオーバー決定だろ。

 

 

「行くぜ‼」

 

 

須佐之男は勢いよく飛び上がると、俺に向けて剣を振り下ろした。

俺はそれを軽く受け流すが、負けじと須佐之男は乱暴に剣を振るって応酬してくる。

剣の使い手だけあって、依姫との相性は良いほうだったが、何度も相手していればその行動を覚えるのも簡単だった。

だが、須佐之男が持っている剣、どう見ても『天叢雲剣』なんだよな。

 

 

「一応聞きたいんだけど、それってもしかして」

「この剣か? こいつは『天叢雲剣』、少し前に手に入れた神器だ」

「マジかよ。後でちょっと触らせてくれ」

「え?」

「これでも刀とか剣を集めるのが趣味だったからな。是非ともその神器もほしい」

「お前、人格揺れすぎだろ」

「そうだ。この気持ち、まさしく愛だ‼」

 

 

俺はできる限りの声で愛を叫ぶと、須佐之男は後ろへと飛んで身を引いた。

その瞬間、前の方から視界を覆い尽くすほどの弾幕が展開された。それは天照と月夜見の弾幕だった。ただでさえ一人一人が強力なのに、それが同時に来るとなると避けるにも防ぐにも困難だ。

弾幕を斬り払って弾くが、弾幕の向こうから須佐之男が剣を突きだして俺の刀を弾き飛ばした。

 

 

「しまっ!?」

「もらった」

「――とでも言うと思ったか?」

「なに?」

 

 

『星熊 勇儀:怪力乱神を持つ程度の能力』

 

 

弾き飛ばされた刀が光となって弾けると、俺の拳へと集まった。

武器というわけではないが、力が漲ってくる感じだ。

 

追撃を仕掛けようとする須佐之男に向けて、剣を間一髪で避けると、俺は拳を突き上げて腹部にアッパーカットを放った。

須佐之男は顔を歪ませると、勢い良く地面をバウンドしながら吹き飛んでいった。

 

 

「決まった……」

「くそ……なんて力だ」

「怪力乱神の力、流石の須佐之男でも少々痛かったか?」

「嘗めるなよ」

「……落ち着いて。逆上しても勝てないよ」

「うるさい。そのくらい分かってる」

「なら、一人で突っ走らないでよ」

「ああ」

「うわ……なんか俺が悪者みたい。一応主人公なのに」

 

 

哀しみで頬を濡らしていると、再び弾幕が展開された。

月のような輝きを放つ弾幕、勢いや強さはそこまで無いものの、密度が濃い所為で視界が遮られている。まるで弾幕で目隠しされている気分だ。

弾幕の壁を斬り裂くと、その小さな隙間から月夜見の姿が見えた。

その周りには光を帯びた小さな勾玉が個々に浮かせ、その勾玉は俺に向かって飛んで来た。

その速さは銃弾のそれを同じで、弾幕の隙間を掻い潜りながら俺を狙ってくる。

見た目が完全に某神ゲーのが勾玉装備なんだが、これ関係あるのかな。

 

 

「というか、意外と戦闘できるんだな」

「……これぐらいできないと月の民を束ねられない」

「ごもっとも。だが、これで負ける気もしねえけどな」

 

 

『八意 永琳:あらゆる薬を作る程度の能力』

 

 

勾玉を弾くと刀が光に包まれ、その形を弓へと変えた。

一見すればただの弓矢だが、矢の方には様々なバットステータス付与の薬が付与されている。

 

俺は弾幕の僅かな隙間から月夜見の姿を覗き見て、弓矢の狙いを定めた。

勾玉の弾丸が俺の頬を掠めると同時に、その一瞬を突いて弓矢を放った。

放たれた弓矢は一直線に月夜見へと飛んでいくと、俺と同じ様に頬を掠めた。

 

 

「ちっ」

「可愛い顔に傷をつけるのは、やっぱり嫌なもんだ」

「……そんな余裕、今に言えなくなるわよ」

「そうかな」

 

 

俺はニヤッと笑うが、妙な違和感を感じた。

その場には天照が居なかった。圧倒的な存在感を放つ彼女が居ないのに全く気付かなかった。

さっきの目隠しの弾幕は天照を俺の視界から外す役割もあったようだ。

だが、それなら彼女は今どこにいるのだろうか? こういう時の定番は―――――!?

 

 

「後ろだよな」

「当たりです」

 

 

後ろを振り返ると、そこには鏡を胸に抱えた天照が立っていた。

天叢雲剣、勾玉、となればあの鏡は八咫鏡だろうな。正に三種の神器ってわけか。

しかも天照がしようとしていること、あれは以前依姫との戦いで放った光線の前準備だ。その証拠に鏡を中心に力が集まっていくのが目に見える。

マスパに匹敵、いやそれ以上の威力を持つ閃光。ここは避けた方がいいかな。

そう思ったが、いつの間にか左右に須佐之男と月夜見が待機していて、俺の逃げ道を塞いでいた。

 

 

「悪いが、逃がさねえぜ」

「……こう言うのはちょっと嫌だけど、勝つためにはしょうがない」

「いいぜ。プライドで勝利は掴めない。結局勝つのは貪欲な奴だけだ」

「そうですね。神なんて名乗っても、所詮醜い生き物です」

「けど、俺はお前ら好きだぜ。変に人間染みてる方が共感できるからな」

「ありがとうございます。でも、もう止められませんよ」

「なら、遮るだけだ」

 

 

『サニーミルク:光を屈折させる程度の能力』

 

 

俺は刀を宙へと放り投げると、太陽のキーホルダーが付いた短剣へと変わった。

スマホの説明を見る限り、どうやらこの能力は重複できるみたいだ。今度試してみるか。

 

 

「そんなもので防げるとでも?」

「甘く見るなよ。俺が好きなのは弱者が強者に勝つ下剋上だ」

「なら、やってみなさい」

 

 

鏡に集められた力が眩い光を放つと、閃光となって一気に放出された。

威力はファイナルマスパ並みといったところか。これで防げなかったら消し炭確定だな。

だが、ここで退いてたら男が廃る。ここは度胸でどうにかやるか。

 

 

「さて、そう言えばそれって太陽の光だよな?」

「え?」

「太陽の光なのかって聞いてるんだよ」

「そうだけど」

「なら、勝ちだな」

 

 

俺は短剣を差し出すと、太陽の飾りが光り出した。

閃光が俺を包み込んだ瞬間、目の前に透明な壁が現れて閃光がありとあらゆる方向に屈折した。

幻想少女大戦永で見たイベントだが、本当に効果があるとは思わなかった。

渾身の一撃をあっさりと防がれた天照は、目を見開いて俺を見つめている。

 

 

「さて、まだまだ続けるか?」

「当然だ。こっちも神としての威厳があるんだ」

「……こんな戦いでも、負けるわけにはいかない」

「そうね。もう、これは私たちの我が儘。気が済むまで殺り合いましょう」

「まったく、どいつもこいつも……」

「神がやることは訳が分からないよね~」

「「「「――ッ!?」」」」

 

 

突然割り込んできた妙に明るい声、それはもう聞き慣れてしまったものだった。

視線を向けると、そこには死体の山に腰かけた『アイツ』が無邪気に笑う姿があった。

 

 

「お前…………ニャルラトホテップ」

「やあ。元気にしてるかな」

「お蔭様でな」

「それより、こんな所で悠長に殺し合いをしてる場合か?」

「なに?」

「今頃、私の眷属が動いているはずよ。……君の愛する人を殺しにね」

「――ッ!? お前、まさか!?」

 

 

奴は口元をニヤッとさせると、遠くから異様な殺気を感じた。

それは怒り、悲しみ、そして果てしない憎悪、それらが交り合ったような気持ちの悪い感覚。

その中に一握り、良く知っている神の力を感じた。この感覚は…………。

 

 

「諏訪子……!?」

「ふふ……行かなくていいのかな?」

「お前……‼」

 

 

俺は怒りに任せて奴に刀を向けるが、その前に須佐之男が斬りかかった。

しかし、奴は涼しげな顔でそれを受け止めると欠伸を一つ掻いた。

いつの間にか周りには天照と月夜見が殺気全開で構えていた。

 

 

「ふぁ~あ。なに? 僕と彼の邪魔をしないでくれる?」

「うるさい。何だかお前を見ていると腹が立つんだよ」

「何より、貴方は部外者ですからね。少し話を聴かせてもらいます」

「……私は、ちょっと恨みがある」

「これはこれは。東方の神は随分と荒っぽいんですね」

「お前ら」

「……優夜は早く行って。ここは私たちがやるから」

「月夜見」

「……もう、後悔はしないで」

「――解った。ありがとな、お前ら」

 

 

俺はそう言ってその場から立ち去った。

一瞬、奴が声にならない言葉で小さく口遊んだような気がした。

 

 

「心せよ旅人よ。夜明け前が最も暗いのだと」

 

 

 

 




次回予告

歪んだ歴史、繰り返される悲劇、忌まわしき神話生物………………

苦戦を強いられる彼の耳に届いたのは、かつて愛した人の声だった。

東方幻想物語・大戦編、『忌まわしき狩人』

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