神無 優夜side
前回のあらすじ、“ゆかり”が仲間になりました。
まさか金髪の少女があの八雲紫ご本人だと知った時は本気で驚いた。
しかし、彼女と出会って数日、彼女に関して色々な事が分かった。
まず、妖怪として誕生してからまだ日が浅く、自分の能力を満足に扱いきれていない。
スキマ妖怪特有の『境界を操る程度の能力』、まだ幼い彼女には大きすぎる力だ。
とりあえず今は俺の八雲紫の能力を使って修行している。本来は立場が逆のような気もする。
なんというか、出会うのが早過ぎた。この言葉に尽きる。
だけど、彼女の意外な面も見れたし、これはこれで面白いから退屈せずに済む。
それに、ルーミアもなんだか気に掛けてるようだし、仲違いしないで良かったと思っている。
さて、ところで今俺は何をしているのかと言えば、今日の食糧調達だ。
だが、獲物となるような動物は見つからず、川で魚釣りをしても一向に掛からない。
今日はどうも厄日らしい。このままではルーミアに喰われる(物理的)。
「どうにか食料を確保しなければ」
自分の命の心配をしながら歩いていると、目の前を少女が通り過ぎた。
視線を向けると樹海の向こうに走っていく少女の姿が見えた。
幻覚かと思い、そのまま小屋に帰ろうとしたが、少女の手にはある物が握られていた。
それは月美から受け取ったリボンだった。
慌てて確認するが、腕に巻いていたはずのリボンがそこにはなかった。
いつの間に盗られたのか分からなかったが、こうなった以上、あの少女を追うしかない。
「……誘ってるみたいだな」
俺は少女に導かれるようにその後を追った。
ここ数百年間、樹海の中で生活をしてきた所為か、この辺の地理にも詳しくなっていた。
少女が向かっているのは山とは反対側の方向、確かこの先には小さな村があったはずだ。
村の子…………でもなさそうだし、何だか不気味だ。それに、俺は全速力で追っているというのに少女との距離が縮まらない。
不思議に思いながら走っていくと、ようやく樹海を抜けて村のあるところへと辿り着いた。
しかし、そこは村と呼ぶには程遠いほど廃れていた。
燃やされて真っ黒な炭と化した家屋、あちこちに散らばっている骨と化した人の亡骸、廃村という言葉を具現化したような光景が広がっている。
「見ない間に随分と変わったな……」
俺は寂れた廃村の中を歩ていく。
荒れ果て具合から見て妖怪の仕業だというのが分かるが、何か不自然だ。
白骨化した亡骸もあるが、腐敗すら進んでいない亡骸もある。それと崩壊した家屋や亡骸には植物の蔦が巻き付いており、いたる所に野花が咲き誇っている。
まるで植物に襲われたかのような有様だ。でも、そんな事をする妖怪なんて……………………。
しばらく歩いていると、目の前にリボンが巻かれた花を見つけた。
黄色い花をつけたオトギリソウ、その茎に月美のリボンが巻かれていた。
わざとらしい配置だと思いながらも、俺はその花へとゆっくり歩み寄った。
リボンを取ろうと手を伸ばしたその時、地面から植物の根が槍のように突きだしてきた。
「……やっぱりか」
あらかじめ予想していた俺は身体を右にずらしてそれを回避すると、花に巻かれていたリボンを回収した。
その瞬間、地面から次々と蔦が這い出てくると、俺に向かって一斉に襲い掛かってきた。
「オトギリソウの花言葉は『敵意・恨み』、感情がもろバレだぜ」
俺は『月美』を構えると、迫り来る蔦を斬り落としていく。
間違いない。ここにある亡骸はこの地にいる妖怪に殺された者達だ。
俺が出遭った少女、それを囮にしてここに誘い込み、油断しているところを一気に喰らう。
まるで食虫植物みたいなやり方だが、実際こうやって罠にかかった人間は大勢いるようだ。
「問題は、本体がどこにいるかだ……」
俺は蔦を斬り払うと、前へと走り出した。
恐らくこの蔦は能力によって操られているだけ、本体となる妖怪は別の所にいるはずだ。
本体を叩けば一気に勝負は付く。だが、こういうタイプは見つけにくいと相場が決まっている。
気長に探すのもいいが、さっきから蔦に混じって草花まで俺に向かって襲い掛かってくる。お陰でさっきから花びらや花粉が宙を舞って大変だ。花粉症の人には地獄だな。
「とりあえず、村を一周すれ……ば…」
速度を上げようとした時、激しい目眩が俺を襲った。
それだけじゃない、頭痛、手足の痺れ、吐き気、呼吸困難、ありとあらゆる症状が出ている。
一心不乱に迫り来る蔦や花を斬り伏せていくと、その中に気になる花を見つけた。
ジキタリス、スズラン、トリカブト、スイセン、毒を持つ花の花びらだとすぐに分かった。
「さっきから攻撃に花を混ぜていたのはこの為だったのか…………」
毒の影響で行動できない俺は、ついに地面へと膝を着いた。
その隙を逃さまいと、蔦が俺の手足へと巻き付き空中へと持ち上げた。すると地面から大きなラフレシアの様な花が出現し、その中心には牙が付いた口が俺を待っている。
「くっ……この状況、俺を喰う気か……エロ同人誌みたいに‼ エロ同人誌みたいに‼」
なんてふざけた事を思っていると、蔦の拘束が解かれ、口を開けた花へと落とされる。
毒の所為で身動き一つ取れないが、毒には毒なりの使い方もある。
ぶっつけ本番で使うのも躊躇われるが、こうなれば自棄だ。
俺は何とか動く左手でスマホを取り出し、『メディスン』を選択する。
『メディスン・メランコリー:毒を操る程度の能力』
能力の発現を確認すると、俺は体中に蔓延する毒を極限まで薄める。
何とか自由に行動できるようにはなったが、地面の食人花は俺を喰らおうと身構えている。
このまま自由落下で喰われるのなら、その前に倒す‼
『魔砲の開花:霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド、風見幽香』
俺の手にデザートイーグルとコルトパイソンが握られる。
いつか忌まわしき狩人に使ったマスタースパークに似せた技、それに改良を加えたものだ。
さあ、俺が導き出した能力の組み合わせ、初公開と行かせてもらうぜ。
「ぶちかませ‼ 『トリニティドライヴ』」
銃口に七色の魔法陣が浮かび上がると、食人花に向かって七つの魔法陣が並んだ。
引き金を引くと、二つの銃口から閃光が放たれ、魔方陣を通り抜けながら威力を増し、食人花を覆い尽くした。
俺が地面に無事着地すると、食人花は奇声を上げながら燃え尽きた。
それを見届けて後ろに振り返ると、そこにはあの時の少女が立っていた。
「みーつけた」
俺は少女に微笑みかけるようにそう言った。
少女は俺を睨みつけると、足元から草花が生えてきた。
この妖怪は恐らくここに住んでいた人間の怨念が集まったモノ。
村の住人は妖怪に襲われ全滅、その恨みや未練がこの妖怪を生み、ここに訪れる人間を養分として生き長らえてきた。
生まれて間もないのか本能に忠実だ。それ故に、俺への敵意が凄まじい。
だが、俺に子供を苛める趣味は無い。ここは大人しく逃げさせてもらうとしよう。
「お前のすることに文句はない。ただ、次俺に同じことをすれば容赦はしねえからな」
俺は少女を睨み返すと、その横を通り過ぎた。
今日は骨折り損、疲れた上にこの後人喰い妖怪から逃げる作業が始まる。
空亡「お疲れさまでした」
優夜「うん。あのさ、今って邂逅編だよね?」
空亡「そうですよ?」
優夜「原作キャラとの出会いがテーマだよな?」
空亡「はい」
優夜「原作キャラで花の妖怪って…………あの人だよね?」
空亡「合ってると思いますよ」
優夜「……つまり俺は初対面で目を付けられたということか」
空亡「再会するのが楽しみですね」
優夜「終わった……」
次回予告
死を恐れるのは悪いことじゃない、なら、不老不死なることは悪いことなのか?
東方幻想物語・邂逅編、『生きて後悔しろ』、どうぞお楽しみ。