東方幻想物語   作:空亡之尊

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運命の切り札で斬り開け

神無 優夜side

 

 

月照らす下、対峙する俺とルーミア。

彼女は剣を握り締めると地面を蹴り、俺の懐に踏み込んできた。

俺は咄嗟に刀でそれを防ぐと、刃と刃が互いに火花を散らせた。

 

 

「その力、貴方何者?」

「通りすがりのただの人間だ。恐らくは」

「なら試してあげるわ。本当にただの人間か、そうでないか!」

 

 

彼女がそう言って距離を空けると、それと同時に周りの暗がりから実体を持った影がその形を刃にして俺に向かってきた。

俺は影の一つ一つの動きを見切ると、それら全ての攻撃を刀で受け流していき、それで出来た隙を狙って影を根元から斬り裂く。切り離された影は塵となって風に乗って消えていった。

塵となる影の先では、ルーミアが面白そうに笑みを浮かべていた。

 

 

「なるほど。ただの人間にしては良い腕ね」

「これでも伊達に剣術を習ってきたわけじゃないんでな」

「ふふ、俄然食べたくなってきたわ」

「良薬は口に苦し、って言葉を身を持って味あわせてやるよ」

「その頃には貴方はとっくに私の胃の中よ」

 

 

彼女はそう言って宙に浮くと、腕を大きく振り払って目の前に弾幕を展開した。

夜符『ナイトバード』、平面2Dなら避けやすいんだけど、生憎と現実は3D、弾幕は壁のように俺の目の前に迫ってきている。これが二次元との差ってやつか。

俺は弾幕の合間を次々と避けていくが、俺はある勘違いをしていた。

次の弾幕を避けようとしたその時、その合間からさっきの影の刃が飛びだしてきたのだ。

咄嗟に刀を盾にしてそれを防ぐが、避けるタイミングを逃して弾幕に吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ったく、回避不能かよ。原作なら起訴も許さない」

「さすがに身体だけはただの人間みたいね」

「当たり前だ」

「なら、あと何分持ち堪えられるのかしらね」

 

 

彼女はそう言って両手を広げると、手の先から闇色のレーザーを放った。

月符『ムーンライトレイ』、原作なら2本のレーザーが自機を挟み込むように展開されるだけの比較的簡単なスペカだが、現実とはここまで厳しいものなのだろうか。

放たれたレーザーは2本ではなく10本、しかもそれぞれが四方八方をの逃げ場を失くすように展開されている。この後のことを考えて、どうやって避けろと!?

レーザーは互いに交差し合いながら上下左右に動きだすと、またもその間から影の刃が至る所から迫ってきた。

 

 

「ただの人間に本気出し過ぎ!?」

「獅子は兎を狩るにも全力を出すのよ?」

「だからってオーバーキルすぎるだろ!?」

 

 

レーザーの隙間へと上手く避けていくが、影の刃からは逃げられず、影は俺の胸を一突きした。

しかし、その攻撃は俺の身体を傷付けず、代りに不自然な金属音が胸の辺りから響いた。

俺は動きの止まった影を斬り裂くと、胸の辺りを探った。

そこから出てきたのは俺と長年連れ添ってきたスマホだった。背面には去年アニ〇イトで買った陰陽玉のシールが貼ってある。しかし、画面には傷が付いた様子もない。

 

 

「そんな鉄くずに邪魔されるなんて」

「ああ。まったく、運が良いぜ」

「でも、次はそういかないわよ」

「そうだな。……ん?」

 

 

その時、スマホの電源がひとりでに点いた。

そこには『好きなキャラを選んでください』という言葉と、東方のキャラの名前が作品別で表示されていた。

 

 

「なんだ、これ」

「よそ見をしている暇はないわよ」

 

 

突然のことで俺が唖然としていると、ルーミアは剣を構えて俺に向かって飛んで来た。

俺は迷い無く『ルーミア』を選択すると、突如俺の持つ刀が光り出した。

光が納まると、刀は黒い刀身へと変わり、鍔には原作の赤いリボンが巻かれている。

咄嗟に刀を前に構えると、俺の背後から別の影の刃が飛び出し、ルーミアの攻撃を防いだ。

 

 

「私と同じ能力!?」

「どういうことだよ」

 

 

『ルーミア:闇を操る程度の能力』

 

 

スマホの画面にはそんな説明が表示されていた。

推測だが、もしかしたら今のこの状態ならルーミアと同じ能力が使えるってことだろう。

 

 

「とりあえず、使わせてもらうぜ」

 

 

俺は刀を構えて彼女の下へと走りだすと、周囲の暗がりから影の刃が飛び出し、ルーミアに向かって一斉に突き刺す。

彼女は自分の影でそれらを防御し、それを振り払って俺の影を退けるが、そこには俺の姿はすでになかった。

 

 

「隙ありだぜ、お嬢さん」

「なっ!?」

 

 

影で目の前を覆っている隙に、俺はルーミアの背後へと移動していた。

それに気付いた彼女は再び影を展開するが、一瞬の差で俺は彼女の下へと歩み寄り、影ごと斬り抜けた。

 

刀は再び光となって消えると、俺は後ろを振り返って彼女へと視線を向けた。

そこには膝を着いて地面についているルーミアの姿があった。

 

 

「勝負あり、だな」

「そうね」

 

 

彼女は満足そうな笑みを浮かべてその場に座り込んだ。

だが、体力の限界が来ていた俺もその場に倒れそうになりながらもその場に仰向けに倒れた。

 

 

「ははっ、どうやら俺も限界が来たらしい」

「今なら簡単に食べれるかもね」

「それは勘弁してもらいたい」

「冗談よ。私は強い相手には牙を向かないわ」

「これでも結構ギリギリだけどね」

「まだ何か隠してそうで後が怖いのよ。少なくともそう感じるわ」

 

 

彼女は小さく笑うと、立ち上がって俺に背を向けて歩き出した。

 

 

「じゃあね。名前も知らない人間さん」

「神無 優夜だ。そっちも一応名乗ってくれないか?」

「知っているとは思うけど、ルーミアよ」

「そうか。やっぱり……」

「なんで私のことを知っていたのかは聞かないでおいてあげるわ」

「そうしてもらえると助かる」

「それじゃあ、また会いましょう。ユウヤ」

 

 

彼女は俺に手を振ると、森の暗がりの中へと消えていった。

それを見送ると、俺は仰向けに寝転がった体勢で目の前に広がる夜空の景色を眺めた。

 

俺は寝転びながらこの数時間の出来事を思い返してみた。

殺されたかと思えばいきなり東方の世界に飛ばされ、ルーミアの晩飯になりそうになるし、何故か変な能力が身に付いてしまい、そして今に至ってしまったというわけだ。

不安とか恐怖とかが俺の胸の中で未だに渦巻いているが、それ以上に思っていることがあった。

 

 

「会えるかな……」

 

 

それはこれから先に待っているだろう未来への好奇心だった。

憧れていたキャラに会えるかもしれない。そう考えるだけでも期待で胸が躍る。まあ、その前に生きていけるかどうかが問題だ。蓬莱の薬でも飲もうかと本気で考えている。

これが本当にあの女神さまのお陰なら、今度会ってお礼でも言いたいな。

 

 

「そういえば、あの子は大丈夫かな?」

 

 

俺は逃した少女の事をふと思い出した。

ルーミアからは何とか逃げられたと思うけど、この森の中には他の妖怪もいただろうし、何とか逃げていてくれればいいんだけどな。

 

 

「とりあえず、寝るか」

 

 

妖怪に襲われる危険など忘れ、俺はそのまま眠りに着いた。

起きたら街を探しに行こう。そしてここが本当にどこなのかを確かめに行こう。

 

 

 

 




空亡「一応、これで序章は終わりですね」
優夜「最初にしては上々だな。二週目だけど」
空亡「言わないでください。これでも初期よりは上がったんですよ?」
優夜「別にどこも変わってないよな」
空亡「うっ………いや、ちゃんと探せば文章がちょっと違う」
優夜「それをどうやって判別するんだよ。もう前のは消すんだろ」
空亡「そ、それは……(;^ω^)」
優夜「まあ、今後に期待するか」
空亡「うちの子がいじめてくる件について」
優夜「茶番だからな」


次回予告
その昔、この地球には現代よりも高度な技術を持った人間が住んでいた。
東方幻想物語・神代編、『始まりの街』、どうぞお楽しみに。
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