東方幻想物語   作:空亡之尊

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第4章『明日照らす焔の光』
Eへの始まり/旅立ちは突然に


神無 優夜side

 

 

八ヶ岳の麓、静かな樹海の奥で二つの影が走っていた。

 

一人は俺、木々の合間を走り抜けながら並行して走るもう一人の影へと『星羅』の銃弾を放つ、銃弾は真っ直ぐ向かうが咄嗟に開いた『スキマ』の中へと消えた。

それと同時に、俺の周囲に幾つもの『スキマ』が展開されると、そこから殺気の銃弾が俺に向かって飛んで来た。俺はそれを『月美』で叩き落しながら銃弾を放つ。

 

もう一人は少女、余裕そうに微笑みながら『スキマ』を盾にするが、放たれた銃弾は軌道を変え、『スキマ』を避けながら目標に向かう。

少女はあたふたしながら銃弾を避け、やがて銃弾に足を取られて尻餅をついて転んだ。痛そうにしながら少女が顔を上げると、俺が銃口を彼女の額に付けていた。

 

 

「勝負ありだな、ゆかり」

「……参りました」

 

 

ゆかりは残念そうに顔を俯かせながら両手を上げて降参した。

彼女と出会ってもうすぐ100年程度、能力を十分に扱えるようにもなり、今では背も俺と同じくらいに成長した。幼かった面影はなくなり、今は少し大人びている。

関係上は師弟みたいな感じなのに、なぜか娘の成長を見ている気分になる。

 

 

「どうかしたの?」

「いや、ゆかりも大きなったなと思っただけだ」

「ユウヤの前ではまだまだ子供よ」

「……そうだな。ほら、手を貸せ」

 

 

俺はゆかりの手を握ると、引っ張って起き上らせた。

今ではたまに演習などをして互いに鍛え合っているが、やっぱり彼女のが強いと感じる。

流石原作では最強と謳われていることだけはある。そのうち俺も抜かされそうだ。

 

 

「さて、そろそろ帰るか」

「はい」

「しかし、『スキマ』の使い方もだいぶう上手くなったな」

「先生の教え方が上手いお陰よ」

「元はゆかり自信の力だ。俺はただの偽物だ」

「偽物でも本物を超えることだってあるわ」

「言うようになったな。まあ、その方がゆかりらしいか」

「どういう意味よ」

「知らない方が良いこともある」

 

 

俺は笑って誤魔化すと、歩みを進めた。

そういえば、今俺は歴史のどこにいるのだろうか?

太子様が尸解仙になったのは今から80年程度前、時間軸から推測すると次は竹取物語。

だが、その出来事が起きた時期は曖昧だ。今都に行っても、すれ違う可能性がある。

 

 

「さて、どうするかな」

 

 

そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にか小屋の前に辿り着いていた。

仕方ない。考えるのは明日にでもして、今日は行くり眠ろう。意外とさっきの演習で体力を使いすぎた。

俺は行くりとドアを開けて小屋の中に入ろうとした時、異様な光景を目にした。

 

満面の笑みを浮かべたルーミアの前に、薊と凪が正座させられている。

俺の思考が一瞬停止したが、すぐさま外に出てドアを閉めた。

 

 

「ゆかり、俺疲れてるのかも」

「大丈夫。私にも同じ光景が見えたわ」

「あれってどういう状況なんだ? 凪ならともかく、薊まで」

「どうせユウヤ関係だと思うわよ」

「ああ……それじゃあ、俺は今夜野宿するから。ルーミアには」

「私にはそう伝えておいてとでも言う気かしら?」

 

 

振り向くとそこには、笑顔の(決して笑っていない)ルーミアが立っていた。

 

 

「お帰りなさい。優夜、ゆかり」

「ただいま」

「た、ただいま~」

「さて優夜、これがどういう状況なのか教えてあげましょうか?」

「いや、俺は別に」

「…………………………(無言の圧力)」

「はい、お願いします」

 

 

ルーミアに首根っこを掴まれると、そのまま俺は小屋の中へと引きずり込まれた。

ゆかりは「相変わらずね」と呟きながらその後について小屋に入った。

俺は正座する二人の真ん中へと移動すると、言われ前に正座した。

 

 

「って、これってどういう状況なの?」

「まず私が優夜さんに面白い情報があると伝えようとやってきて」

「それに我が付いて行き、そこの人喰いにどこにいるのか尋ねた」

「そこで私は答えず、そのまま戦闘。そして二人まとめて倒して、今は反省中よ」

「凄い解り易いけど、若干一名巻き込まれてる人がいるよね」

「私はただ情報屋として仕事しただけなのに……とほほ」

「昔の鬱憤を晴らしただけよ」

「うぅ……あの頃の私に忠告したい」

 

 

凪は俺の隣で深い溜息を吐いた。

 

 

「まあ、今はこうやって反省しているわけだし、もう許したら?」

「ユウヤがそう言うのなら、仕方ないわね」

「本当ですか!? ありがとうございます、ルーミアさん、優夜さん」

「じゃあ、我のことも」

「ユウヤの事を諦めるのならね」

「それはできない相談だな。あやつはいつか我の婿にする」

 

 

そう言って薊は俺の腕に抱き着く。

 

 

「……わかったわ。でも、決めるのはユウヤ自身だから。そこは分かってほしいわ」

「ああ。無理矢理婿にしても、どうせ逃げられるだろうからな」

「なんだろう、勝手に話が続いてる」

「というわけだ。いつまで待っておるぞ、ユウヤよ」

「はいはい。まあ、今は友達から始めようか」

「おう」

 

 

薊は嬉しそうに微笑むと、俺の手を取って握手した。

こう見てれば普通に可愛いんだけど、戦闘公と酒癖が悪いのはどうにかしてほしい。

 

 

「ところで、凪が持ってきた面白い情報って何?」

「そうでした。いや~色々な事があったのですっかり忘れてました」

「で、何なの? くだらないことだったら暗闇に」

「それだけは勘弁して。まあ、面白いといっても、人間が勝手に騒いでるだけなのよね」

 

 

凪はそう言うと、立ち上がって語りだした。

 

 

「ここから南に行った都に、それはそれは見るも麗しい絶世の美女が居るそうよ。

 何でもその少女は竹から生まれ、またその竹から小判や豪華な着物が出てきたという。

 少女を養った老夫婦はそれを元手に都に屋敷を建て、今はそこで暮らしている。

 人間たちはその少女の美しさに見惚れ、今では求婚する貴族たちが押し寄せている。

 その少女の名前は『なよ竹のかぐや姫』、人間の間で話題になってる、いわば時の人ね」

 

 

凪は分かりやすく語ると、そこで話をやめた。

間違いない、この話は竹取物語そのもの。しかも、どうやら輝夜はもう都にいるらしい。

 

 

「どうですか? 優夜さんも気になりません」

「絶世の美女、ね。まあ、どうせ行く気でしょ?」

「まだ何も言ってないけど?」

「見ればわかるわよ。そのかぐや姫に何かあるんでしょ」

「ああ、もしかしたら俺の知り合いかもしれないからな」

「なら、決まりね。ゆかりも来るかしら?」

「聞かれるまでもなく、私は二人について行きますよ」

 

 

二人はそう言うと、俺の手を取った。

俺はそのまま立ち上がると、薊と凪へと振り返る。

 

 

「ま、そうことだから。しばらく留守にする」

「う~ん、どうやら何か訳ありみたいですね」

「まあな。それに、そういう理由じゃなくても、美女なら一度は見てみたいからね」

「お主は一ヶ所に留まるより、自由に旅していた方が性に合っているのかもな」

「そういうことだ。まあ、気が向いたら帰ってくることもあるかもしれないけどな」

「その時は旅の話でも聞かせてくれ。酒の肴にはなると思うからな」

「ああ。それまで、元気でな」

 

 

俺はそう言って小屋を出ると、そこには楓が立っていた。

 

 

「あ」

「……二人を追って来れば、まさかな」

「悪いな。俺にも目的があるんだ」

「……分かっている。ただ、これだけは約束しろ」

「なんだ?」

「……いつか、もう一度私と戦ってくれ。あのままでは剣士の名折れだ」

「ああ。それまで、楓も元気でな」

「……優夜こそ」

 

 

俺はみんなに別れを告げ、その場を後にする。

お供に常闇の妖怪とスキマ妖怪、退屈しない旅になりそうな予感だ。

 

 

「さあ、目指すは都。麗しのかぐや姫だ」

 

 

 

 

 




空亡「ようやく突入しました。竹取物語こと蓬莱編」
優夜「時間経過が百年単位か。俺って今いくつなんだ?」
空亡「少なくとも億は越えてますよ。多分輝夜さんの次です」
優夜「節分の豆がたらふく食えるな」
空亡「なにくだらないこと言ってるんですか」
優夜「ところで、タイトルが見たことあるようなのになってるけど?」
空亡「今回からちょっと変えてみました。ちなみにEは『Eternal』です」
優夜「永遠か……もしかして不老不死と掛けてるのか?」
空亡「その通り。今回からそういう風な感じでタイトル付けますから、お楽しみに」


次回予告
都を目指す一行はなぜか竹林で迷子。そこで優夜は人間に捕まった妖怪に出会う。
東方幻想物語・蓬莱編、『Lに迷わされ/彷徨って竹林』、どうぞお楽しみに。

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