神無 優夜side
かぐや姫の噂を聞いた俺とルーミアとゆかりは、姫が居る都へと向かっていた。
凪からは妖怪の山の麓から南に行くと都に辿り着くと教えてもらった。
あそこから南だと、現代では静岡県の比奈地区と呼ばれる所に行き着く。あそこは古くから竹取物語発祥の地とも云われている。と、昔見たネットに書いてあった。
それが本当なのかどうなのか分からないが、とりあえずそこを目指している。
そして今、俺たちは『竹林』の中を歩いている。
「ねえ、ゆかり」
「なんですか?」
「かぐや姫って美味しいのかしら?」
「食べたら都中の人間に追いかけられますよ」
「それは嫌ね。観光する余裕がないわ」
「観光って」
「あれから人類も発展したことだし、美味しいものでもないか見てみたいのよ」
「相変わらず、食い意地は張ってますね」
「当然よ。人間を食べない分、そういうので補わないと」
「大変ね」
俺の後ろでは女性陣二人の他愛のない会話が行われていた。
前までは二人旅だったけど、一人加わると場の雰囲気が一気に変わる。
お陰で俺は目の前の問題に集中できる。そう思った時、ゆかりから声を掛けられる。
「……ところで、ユウヤ」
「なに?」
「私たちは都に向かってるのよね?」
「そうだけど?」
「旅立ってから一週間は経ちますよね?」
「そう……だね」
「この竹林に入ってから何日経ちましたか?」
「………………三日です」
「「「………………………………」」」
全員の足が止まり、その場が沈黙に包まれた。
竹が風に揺れる音と虫の鳴き声がいい具合に聞こえてくる。
それと同時に全員の腹の音が鳴る。そして、二人の不満が爆発した。
「一体いつまで迷ってるんですか!? ただの竹林にここまで迷うってあり得ないですよ‼‼‼
方向音痴にもほどがありますよ‼‼ なんで空を飛んでいこうとしないんですか、バカですか」
「優夜、歩くのは私も我慢できる。でもね、ごはん抜きって言うのはさすがに私でも耐えられないわよ‼‼ もうさっきから二人がただの喋る肉にしか見えないんだけど、どうする?」
「二人とも落ち着いて。ゆかり、俺の背中叩かないで。ルーミア、腕食べないで」
俺は混乱する二人を何とか宥める。
実はこの竹林に入ってから俺たちは迷いに迷って、現在迷子三日目だ。
その間、食べ物にありつけるはずもなく、ただ俺の勘任せでここまで来た。
「なんで……なんで飛ぼうとしないんですか」
「いや~旅の醍醐味ってある気だと思うから」
「それで飯が食えるのなら、私はもう何も食べない」
「ルーミアが私たちを喰うのも時間の問題ね」
「それだけは阻止したい。けどさ、二人とも飛べる?」
「「無理です/無理ね」」
二人は力なくそう答えると、その場に座り込んだ。
これはどうやら相当お疲れのようだ。もう歩く力も無さそうだ。
その時、竹林の先で何かが走るのが見えた。もしかしたら、食べられるような動物がいるのかもしれない。
「仕方ない、二人はここに居て」
「どうする気ですか?」
「ちょっと狩ってくる」
「本当? いってらっしゃ~い」
「ちゃんと戻ってこれます?」
「大丈夫、お前らの所にはちゃんと戻ってこれる自信はあるから」
「それならいいですけど。気を付けてください」
「ああ」
俺は二人をその場に残し、さっきの影が走っていた方向へと走りだした。
さて、吉と出るか凶と出るか。
少 年 祈 祷 中
「ありのまま起こったことを説明するぜ。
俺は獲物を追って竹林を走っていると思っていたら、いつの間にか竹林に仕掛けられていたトラップに襲われ、妖怪兎たちから弾幕を放たれていた。
俺も何を言っているのかよくわからない。超能力とか程度の能力とか、そんなちゃちなものじゃ断じてない。もっと恐ろしいもの片鱗を味わったぜ…………‼‼」
俺は走りながらポルナレフ状態で事のあらましを説明した。
さっきから俺の背後では竹槍が飛び交い、俺の真横からは弾幕が舞っている。
「どうしてこうなった‼‼ というより、やっぱりここだったか‼‼」
俺は目の前に空いた落とし穴を飛び越え、直地すると同時に走る。
俺の推測が正しければここは『迷いの竹林』、妖怪兎が住み付く迷路のような竹林だ。
原作では永遠亭があるはずだが、現時点では何も無い。
なのに、なんで竹林の中にこのようなトラップがあるのか? 答えならすぐに出た。
「あの兎詐欺の仕業か……‼‼」
俺は『星羅』の銃弾で周りの妖怪兎たちを撃退しながら走る。
あの兎詐欺ならこんなのを用意していても不思議ではない。どうせこれも、侵入者撃退用のトラップに過ぎない(殺す気MAX)。
とにかく、大元のボスを突き止めるのが先だろう。
「ったく、こっちはただでさえ腹減ってるんだぞ‼‼」
少 年 祈 祷 中
数多のトラップを潜り抜け、妖怪兎たちを撃退した俺。
その先には当然あのう詐欺あ待ち受けているのだろうと思っていた。
しかし、この世界は俺の期待の斜め上を行くようだ。
「命だけはお助け下さい‼‼」
「……今日の夕餉は兎鍋ですね」
そこには二人の人物がいた。
一人は少女、癖っ毛のある短めな黒髪、裾に赤い縫い目のある桃色の半袖ワンピース、兎のような耳と尻尾がある。少女は視えない糸で逆さ吊りされながら涙を流している。
一人は青年、後ろにだらりと垂らしたポニーテールに藍色の髪のセミロング、男物の着物の上に黒い羽織を着ている。青年は目の前の処遇をどうするのか検討している。
この異様な光景を見た俺の思考は一時停止していた。
「………どういうこと」
「…? おや、どうやら迷い人がもう一人いたみたいですね」
俺の事に気付いた青年が視線をこちらに向ける。
「どうかしましたか?」
「いや、目の前の事に頭が追いついてないだけだ」
「そうでしたか。なら簡単に説明しますと、僕を殺そうとした悪い妖怪を捕えました」
「死ぬほど解り易いな」
「誤解だって‼‼ 別に殺す気は」
「その割には無数の鋭利な竹槍が飛んで来たような気がしますけど?」
「そ、それは……」
少女はバツが悪そうに目を逸らす。
「まあ、本人が悪気が無いって言ってるんだ。許してやれよ」
「……相手は妖怪ですよ? 正気ですか」
「反省してるなら妖怪も人間も関係ねえよ。それに、少なくとも俺は正気だ」
「……面白い人ですね」
青年が面白そうに笑うと、少女を吊るしていた糸が一瞬光った。
糸が緩み、少女は地面に落とされた。糸は青年の手元へと戻った。
「妖怪を助ける人間、なかなか面白い」
「それはどうも」
「興味が湧きました。都に寄ることがあれば、また会うかもしれません」
青年はそう言ってその場を立ち去った。
俺はそれを見送ると、地面に落とされた少女へと歩み寄った。
「いたた……酷い目に遭った」
「大丈夫か?」
「……ありがとう。お陰で助かった」
「どういたしまして」
「あんた、人間じゃないでしょ?」
「あ、やっぱり解る?」
「人間にしては長生きしてる感じがするし、なにより妖怪と一緒に旅してるでしょ」
「よく知ってるな」
「ここに入って三日も彷徨ってれば、ね」
「うっ……」
もはやこの竹林の中ではもう有名になっているようだ。
「でもまあ、助けてくれたお礼にここから出るまで案内してやるよ」
「本当か?」
「恩人には嘘をつかない。私の流儀だよ」
「そうか。……あ、そういえばまだ名前を言ってなかったな」
「律儀だね~」
「俺は神無 優夜、ただ長生きが特徴の人間だ」
「因幡 てゐ、この竹林の所有者だよ」
空亡「というわけで、キリの良い所で今回は終わりですね」
優夜「またオリキャラか」
空亡「今回恋に落ちるのはこの方です」
優夜「おい。冗談じゃねえぞ」
空亡「冗談だったらこんなこと言いませんよ」
優夜「ふざけるなよ‼ 俺はこれでもノーマルだ‼」
空亡「解ってますよ。だからこそ面白いんじゃないんですか?」
優夜「くそ……なんでコイツが作者なんだ」
空亡「誤解してるようですけど、俺は薔薇より百合の方が好きですからね」
優夜「知るか‼‼」
次回予告
てゐの案内で竹林を抜けた優夜達、都に辿り着くと思わぬ出会いが待っていた。
東方幻想物語・蓬莱編、『旅するS/記憶を刻む者』、どうぞお楽しみに。