東方幻想物語   作:空亡之尊

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五人のF/知られざる難題

???side

 

 

竹取物語

日本最古の物語であり、『物語の祖(おや)』と呼ばれている。

成立年、作者共に不明、遅くても平安時代初期(10世紀半ば)までには成立されたといわれている。

内容は竹取の翁が光り輝く竹から掌程度の大きさの少女をを見つけ、家に持ち帰った老夫婦はその少女を実の娘のように大事に育てる。

それから翁が竹取に出掛けると、光る竹の中から金が出てくるようになり、それから老夫婦の家は豊かになった。

少女は時が経つにつれどんどん大きくなり、僅か三ヶ月で二十歳ほどの娘へと成長した。

老夫婦は竹から出た金を元手に都に住処を移し、またその少女に「なよ竹のかぐや姫」という名前を授けた。

この世のものとは思えない美しさを持つかぐや姫の噂は都中に流れ、男共は姫の姿を見ようと必死になった。その中には恋い焦がれ、求婚する者もいた。

やがて野次馬の足は遠のき、最後に残ったのは五人の貴族。石作皇子、車持皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂となった。

 

かぐや姫は、その五人に対して『五つの難題』を申し渡した。

 

 

 

 

 

神無 優夜side

 

 

「まさか、ここで再会するとは思いませんでしたよ」

「それはこっちの台詞だ」

 

 

俺は今、かぐや姫がいる部屋の前で竹林で出会った青年と話していた。

何故こうなったのかは、その場にいた貴族たちの邪魔者を見るような視線に耐えきれなかったからだ。ったく、どの時代にも嫌な奴はいる者だな。

部屋の中からは貴族たちがかぐや姫に対して必死に求婚している。いい歳した大人がみっともない

 

 

「しかし、貴方もかぐや姫に求婚を?」

「冗談言うなよ。こっちはただ、世間様が騒ぐかぐや姫の姿を拝みに来ただけだ」

「そうですか。でも、まさかあの稗田阿礼様の連れだったとは」

「彼女とは都で出会って、なし崩し的に仲良くなったんだよ」

「面白い人ですね。どうやら、僕の糸にも勘付いていたみたいですしね」

 

 

青年はその手から伸びている糸を撫でる。

 

 

「それは?」

「『光糸(こうし)』、僕が創った特別性の糸ですよ」

「目に視えず、なおかつ硬い、いや、問題はそれを巧妙に張る本人の技術か」

「お目が高いですね。まあ、ここに張っているのは状況を把握するためですけどね」

「糸に引っ掛かれば侵入者がどこにいるのか分かるってわけか」

「僕は弱いですから。いち早く逃げるために、策は練っておかないと」

「どこ口が言いやがる」

 

 

俺は青年を睨みつける。

本人は弱いと言っているが、着物越しでもその身体付きは認識できる。

こいつは強い。恐らく、そこらの妖怪なんて目じゃないほどだ。

 

 

「さて、そろそろ戻りましょうか」

「ああ」

 

 

俺たちはそこで話を終えると、部屋へと戻った。

そこには、頭を悩ませている五人の貴族達がいた。

俺は近くで座っていた阿礼達に歩み寄り、小声で事情を聴いた。

 

 

「どうしたんだ?」

「実は、かぐや姫があの人達に難題を出して」

「それを見事達成した人と結婚するって話なんだけど」

「それが、どれもこれも無理難題なのよ」

 

 

三人は困ったような顔でそう答える。

恐らく、それは龍の頸の玉、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、燕の子安貝、蓬莱の玉の枝といった『五つの難題』のこと。

どれもこれも御伽話でしか聞いた個の内容なものばかり、実際にあるかどうか…………。

しかし、貴族たちはそれでも探すだろう。結末を知っている俺からすれば、可哀想に見える。

 

 

「………あの」

「ん?」

 

 

突然、奥から聞きおぼえのある声が漏れた。

それは部屋の奥で顔を隠して座っている彼女、かぐや姫からだった。

 

 

「貴方は、他の皆さんのように求婚をしに来たのではないのですか?」

「あはは。まあ、確かにほとんどの男性はそれが目的で来るでしょうが、生憎違います」

「それでは、なぜここに?」

「俺はただ、貴女の願いを叶えたいと思ってるだけですよ」

「願いですか?」

 

 

かぐや姫から疑問の声が上がる。

 

 

「そう。外に出たい、美味しいものを食べたい、友達が欲しい、何でも構いません」

「それで、私が貴女の事を好きになるとでも?」

「いいえ。俺はただお節介がしたいだけ、鳥籠に囚われた姫君を助けたいだけです」

 

 

俺は彼女の目の前まで歩み寄って腰を下ろすと、一枚のハンカチを取り出した。

頭上に?マークを浮かべる姫様と皆の衆、俺はそれを尻目にハンカチを手に被せる。

すると、一呼吸の間を置いてハンカチを取ると、俺の手に一輪の花が握られていた。

 

 

「……!?」

「ふふっ。どうですかな、お姫様」

「それは……」

「ちょっとした手品だよ。再会した記念に、どうぞ」

 

 

俺は彼女にその花を手渡した。

彼女はそれを受け取ると、頬に一筋の涙を流していた。

 

 

「それじゃあ、俺はここで失礼しますよ」

「待って」

 

 

俺がその場から立ち去ろうと思った時、かぐや姫が呼び止めた。

 

 

「貴方にも、難題を出すわ」

「その報酬は、なんですかな?」

「……貴方の願いを、なんでも叶えます」

「そうか。ところで、その難題は?」

「半月の弓、というのはどうでしょう」

「半月の弓ね………いいぜ、その難題受けて立つ」

「期待してますよ」

「ああ」

 

 

 

こうして、俺はかぐや姫から難題を出された。

俺はかぐや姫に別れを告げ、その場を立ち去る。

置いてけぼりの貴族たちや阿礼たちの中で、ただ一人、あの青年だけが俺の事を面白そうに見ていた。

 

 

 

少 年 少 女 祈 祷 中

 

 

 

その日の夜、俺は夜度の部屋で三人の女性に詰め寄られていた。

ルーミアは笑っていない笑顔を浮かべ、ゆかりは呆れたような表情を浮かべ、阿礼は一人だけ目を輝かせている。なんだろう、嫌な予感がする。

 

 

「優夜、あれは何だったの?」

「いや……ほら、第一印象って大事じゃない」

「だからって、あれだけの人の前でよく平然と」

「あはは………まあ、かぐや姫が楽しんでくれたからいいじゃないか」

「そうですよ。それより、あれってどうやったんですか?」

「ふふふ、そう簡単に手品の種を教えたら面白くないだろ?」

「今はそういう話をしてる場合じゃないでしょ」

 

 

ルーミアは溜息を吐くと、改めて話を切り出した。

 

 

「……で、どうするのよ?」

「半月の弓って、聞いたことないのですけど」

「私もです」

「俺もだ」

「え? 知ってるんじゃないんですか!?」

「知るわけないだろ。なにせ、取って付けたような名前だからな」

「その割には、それが何か知っているみたいでしたけど?」

「心当たりはあるからな」

 

 

下弦の弓、恐らくそれは永琳の弓の事だろう。

あの形は弓張月(半月)が元になってるし、何より彼女と俺が共通して知っている物だからな。俺が本物の神無 優夜か試すつもりか。

 

 

「となると、少し遠出になるな」

「どこに行く気ですか?」

「俺とルーミアが最初に出会った場所だ」

「……どうしてそこに?」

「あの場所になら何かあるかもしれないからな」

「よろしければ、一緒に」

「いや、今回は俺一人で行く。みんなは都に残っててくれ」

「いいんですか?」

「なに………ちょっとした、帰省だよ」

 

 

俺は三人にそう告げると部屋から出ていかせた。

目的地は月の民の街があった場所、俺の物語が始まった場所だ。

そんな事を思い出しながら月を眺めようと、俺は宿から出て都の通りへと出た。

すると、そこにはあの青年が俺の事を待っていた。

 

 

「お前……」

「夜分遅くに月見ですか。なんとも風情がありますね」

「何しにきやがった」

「酷い言い方ですね。これでも貴方には興味があるんですよ」

「興味、ね………」

 

 

俺は青年の事を警戒していた。

もしかしたら、あの貴族たちに雇われて俺を襲いに来たのかもしれない。そう思った。

 

 

「安心してください。別に僕は貴方に危害を加えるために来たわけではありませんよ」

「どうだかな」

「信用がないですね。僕はただ、お礼に来ただけですよ」

「お礼?」

「貴方のお陰で五人の貴族たちは躍起になり、ありもしない物を探しに動きだした」

 

 

青年はそう言いながら口元をニヤッとさせながら笑う。

 

 

「お前、一体何者なんだ?」

「それはこっちの台詞ですよ。神無 優夜さん」

「何で俺の名前を」

「そこの宿の主人に聞いただけですよ。名前を知らなと何かと不便ですからね」

「なら、お前の名前も教えてもらおうか」

「いいですよ。それに、貴方の誤解も解かないといけないですし」

 

 

青年はそう言うと、髪留めを外した。

藍色の髪が月明かりに照らされながら舞うと、青年は俺へと向かってこう言った。

 

 

「僕の名は『愛識 光姫(いとしき こうき)』、藤原氏に仕える者です」

「藤原って、いや、それよりも!?」

「ええ、こう見えても僕、女ですよ」

 

 

そう言って青年改め、少女は悪戯な笑みを浮かべた。

この数奇な人生で類を見ないほど、俺は驚きに満ちていた。

 

 

「そういうことなので、以後よろしくお願いします。ユウヤさん」

 

 

 

 

 





空亡「ふふ、というわけで改めて主要人物が登場ですね」
優夜「良かった……本当に良かった」
空亡「一部の人の期待を裏切るのは非常に申し訳ないんですけどね」
優夜「腐ってる……」
空亡「しかし、かぐや姫はやっぱり憶えていたみたいですね」
優夜「第10話でやった奴をそのままだからな。自分でも粋なことをしたと思ってるぜ」
空亡「昔の思い出ですからね」
優夜「ああ。そして、今度は思い出の品を求めて旅ってわけか」
空亡「楽しみですね」


次回予告
かつて月の民が見捨てた街に、優夜は弓を埋めた。それを今、取りに行こう。
東方幻想物語・蓬莱編、『Mを求めて/意外な同行者たち』、どうぞお楽しみに。
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