東方幻想物語   作:空亡之尊

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不死を恐れるP/藤原の娘

 

 

神無 優夜side

 

 

深紅から永琳の弓矢を受け取った翌日、都に変えるために光姫を探していた。

しかし、今朝から神社内を探しているが、どこにも姿はない。

目的の物は手に入ったし、都に帰りたい。というより、ルーミアとゆかりに会いたい。

 

 

「ったく、どこに行ったんだ?」

「光姫なら神社の蔵で読みものしてるわよ」

「そうか、ありがとう」

 

 

俺は蔵へ行こうと踵を返すが、一瞬遅れて声の主に気付いた。

もう一度振り返ると、賽銭箱の上に腰掛けるように、妹紅が座っていた。

 

 

「何してるんだ?」

「暇だからここで光姫の事を待ってるだけだよ」

「てっきり一緒にいるものかと思ったよ」

「難しい話は苦手なの。それに、今の光姫は私なんて目に入ってないみたいだし」

「そうか」

 

 

俺はそう呟くと、妹紅の隣に座った。

 

 

「っと」

「光姫を呼びにいかなくてもいいの?」

「調べ物の邪魔はできないからな。それに、今日は妹紅と話したいと思ってね」

「変わった人ね。光姫がご執心なのもなんだか分かるわ」

「褒め言葉として受け取っておくぜ」

「褒めてないわよ」

 

 

妹紅は楽し気に笑う。

 

 

「ところで、光姫とは付き合い長いのか?」

「うん。数年前にウチに来て、お父様の付き人なんかをしてたわ」

「それで今は教育係か」

「光姫から言ったらしいわ。理由は聞いてないけど」

「……百合か?」

「どういう意味かは知らないけど、多分違うと思うわ」

 

 

妹紅は小さく笑う。

 

 

「ねえ、優夜はかぐや姫の事をどう思ってるの?」

「そうだな………確かに美しいとは思ってるけど、好きという感情はないな」

「そう……少し安心したわ」

「なに? もしかして俺に惚れてた?」

「そんなわけないでしょ。ただ、気になっただけよ」

「そんなこと言って、本当は?」

「何も無いわよ」

 

 

怒った妹紅は俺の足を思い切り蹴った。

その痛みで悶絶しそうになるが、何とか耐えてみせる。

ただ、女の子の蹴りとは思えないほど威力があった。もこたん恐るべし……‼

 

 

「そういえば、優夜は神様なの?」

「昨日の話か。………どうかな、これでも人間なんだけど」

「なら、不老不死なの?」

「そうだな。まだ一度も死んでないから、不死の実感はないんだけどね」

 

 

でも、確かに俺の中には『月美』と『星羅』がいる。

俺が一度死ねば、この中の魂が一つ消える。それだけは、どうしてもできない。

いくら不老不死でも、命は大事しないと。二人に顔向けなんてできない。

 

 

「妹紅は、不老不死に興味とかあったりするの?」

「まあ、人間誰しも死ぬのは怖いわ。死ぬことが無くなれば、怖いものなんてないから」

「いや、それが結構怖い物だってあるんだぜ」

「例えば?」

「死にたいと思っても、死ねないことだな」

「それは………確かに恐いわね」

 

 

どこかの完全生命体じゃないけど、死にたくても死ねないのはある種の拷問だ。

痛みや苦しみから逃れるための死、前世では嫌というほど見てきたからよくわかるよ。

しかし、妹紅から不老不死の話を聞かれるとは、ある意味驚きだった。

 

 

「なあ、妹紅」

「なに?」

「不老不死の怖いところは、自分が人間なのか信じられなくなっることだ」

「今の優夜みたいに?」

「ああ。人よりも永く生き、容姿も変わることもない。傍から見れば、化物だ」

「解ってる。世の中には妖怪よりも、人間の本心の方が怖いってことくらい」

「俺が絶望していないのは、そういう人間に出遭わないようにしてきたからだ」

 

 

そうだ。俺が諏訪から旅立って、八ヶ岳の樹海に籠った理由。

修行なんて言っていたが、本当は怖かったんだ。人間に化け物として見られることが。

どこかの村に留まれば、原作の妹紅と同じ結末を辿ってしまう。俺はそれを恐れた。

復讐のために生きてても、やっぱり臆病者なんだな、俺は…………………………………

 

 

「妹紅は、復讐のために全てを捨てることはできるか?」

「わからない。でも、復讐心は何よりも行動を生むって、光姫が言ってたわ」

「アイツ、何を教えてるんだよ」

「色々よ。私が一番気に入ってるのは妖術とか蹴り技かな」

「もはや何者なんだよ」

「興味がある事に対して熱心に追求するただの暇人だって言ってた」

「暇人がそんな領域に到達できねえよ」

 

 

聞けば聴くほど、愛識光姫という人物がよく分からなくなってきた。

だからだろうか、何故かアイツの事をもっと知りたいと思ってきた。

 

 

「ところで、さっきの質問だけど。私なら迷わず捨てるわ」

「その心は?」

「私なら、復讐する相手の悔しがる顔を見るまで決して諦めないからよ」

「もし、それで俺と同じ不老不死になったらどうする?」

「その時は、化け物としての自分を認めて人と関わらないかな。私って臆病だから」

 

 

妹紅はそう言って笑った。

結末を知る者としては、彼女の事が気になっていた。

もしも、俺がここで何かを伝えれば、妹紅の未来を変えることができるのだろうか?

そんな考えさえ抱いてしまう。

 

 

「妹紅……実は」

「ああでも、不老不死になった時の楽しみもあるかな」

「え?」

 

 

妹紅は賽銭箱から降りると、照り付ける太陽を見上げた。

 

 

「優夜のみたいに、人間とか妖怪とも仲良くなれたらいいなって」

「俺みたいに?」

「だって、人間とも妖怪ともどっちつかずなら、そういうこともあるでしょう?」

「そうだけどさ………もっと考えることあるでしょ」

「う~ん………あ、優夜みたいに数百年後の歴史とかも間近で見れるかもね」

「いや、そういうことじゃ………」

「そう思うとちょっと楽しみだな………不老不死っていうのも」

 

 

妹紅は楽しそうに笑いながら、俺に笑顔を向ける。

能天気というか、後の事を深く考えてないというか、良くも悪くもアホだと思った。

こっちが必死に悩んでいるのが、何だか馬鹿馬鹿しくなってきた。

 

 

「はあ………不死なんてなるもんじゃねえのに」

「そうかもね。でも、悲観したままじゃ人生楽しくないでしょ」

「それもそうだな。まだ二十歳にもなってないようなお嬢さんに教えられるとはな」

「優夜は難しく考え過ぎなのよ。たまには肩の力を抜かないとね」

「そうだな………」

 

 

俺は小さく笑うと、賽銭箱から席を立った。

いつも俺は何でも深く考えてしまう癖がある。折角の人生、楽しまなきゃ損だ。

 

 

「さて、これでようやく心が落ち着いたぜ」

「そういえば、ずっと気になっていたんだけど」

「なんだ?」

「優夜、もしかして光姫の事が好きなの?」

「……………………え?」

 

 

俺はその一瞬、妹紅が俺に言った言葉が理解できなかった。

 

 

「光姫って私意外とあまり喋らないのに、優夜と話してる時は楽しそうなんだし」

「いや、それなら聞くべきは光姫だろ」

「でも、優夜だって光姫と話してるときの方が何だか楽しそうに見えるわよ」

「え、いや、俺は………」

 

 

俺は否定の言葉を必死に探すが、何故か出てこなかった。

今思えば、俺が人を好きになった時の感情は最後まで解らなかった。

気付いた時には遅かったからか、こうやって指摘されるとどう反応すればいいか困る。

 

 

「優夜?」

「ふ、ふふふ、ばれてしまったか。だが、妹紅のことも俺は好きだぜ」

 

 

俺は誤魔化すようにそう言った。

その場しのぎの苦肉の策だが、これで妹紅の気が紛れれば…………………………………

 

 

「……そうか、お前はそういう奴なんだな」

 

 

だが、この時の俺の考えは甘かった。

妹紅は明らかに怒ってるし、何でだろうか背後には炎を纏った鳳凰が見える。

どこで選択肢を間違ったのだろうか?

 

 

「も、妹紅?」

「まずはその舌の根から焼き尽くしやる‼‼」

 

 

その後、境内の掃除に来た巫女さんに俺は真っ黒に燃やされた状態で見つかった。

そして俺は学んだ。女は怒るととんでもなく怖い。

 

 

 

 

 





空亡「もこたん凄い」
優夜「いや、それよりも妖術教えてる光姫がすごい」
空亡「いいじゃないですか。別にそんなこと」
優夜「そんなことで片付けるな」
空亡「だて………東方ですよ?」
優夜「………納得しかけた自分が憎い」
空亡「でも、まさかここまで解り易い反応を見せてくれるとは」
優夜「な、なんのこt「光姫さんが好きなんですね~」ああ、言うな‼‼」
空亡「女たらしが、今更弁解なんて必要ないんですよ」
優夜「分かってるけど、目の前でそう言われると恥ずかしい」
空亡「この人、結構純情なんですよね~」


次回予告
二度の恋をし、二度の別れをした彼は、三度目の恋をどう思うのか?
東方幻想物語・蓬莱編、『Tな口付け/あなたを想い気持ち』、どうぞお楽しみに。

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