神無 優夜side
旅の途中、俺とルーミアは久しぶりに諏訪へとやってきた。
諏訪子は生憎留守中だったが、神社の巫女さんが快く家の中に招き入れてくれた。
ルーミアは近くの森で妖怪相手に“肩慣らし”してくると言って、そのまま別れた。
そして、俺はというと…………………………。
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
神奈子と二人で卓袱台を挟んでお茶を啜っていた。
お互い何も喋らないまま、ずっとこんな状態が続いている。
やっぱり、今でも俺の存在は神様の中でも恐れられているようだ。
詳しくは東方幻想物語『戦火の乱舞』を見てくれ。
そんな重苦しい沈黙を破ったのは、意外にも彼女だった。
「………あの」
「なに?」
「その、すまない」
「何で謝るのさ」
「貴方と会ってから私はこんなだから、気に障っていないかと思って」
「気にしてないよ。それより、あの軍神が俺なんかに気を使うのがね」
「貴方も知っているだろ。最高神の顔見知り、神の軍勢相手に一人で圧倒した人間」
「それだけ聞くと、昔の俺って結構無茶なことしてたんだな」
「貴方は神の中でも最も恐れられ、それと同時に畏れられている存在なんだよ」
神に畏れられてるか、何だか妙な気分だな。
とある少佐は言ったが、神の正気を証明できるものはどこにいるのかという言葉。
神の上に立つ者は誰もいないという言葉を皮肉った言葉だが、この世界では神の正気すら証明しそうな人物がごまんと居そうだな。
「神様なんて、結局はそんなものか」
「そんなものだよ。自分より上には頭が上がらない、人間と一緒さ」
「人間よりたちが悪いのは、自分より下には態度がデカい所か」
「言い返す言葉もないな」
神奈子はそう言って苦笑いした。
お、初めてかもな、彼女の笑うところを見るのは。
「うん。やっぱり笑ってる方が好きだな」
「す、好き!?」
「ああ。女性は笑ってる方が綺麗なんだよ」
「そ、そうなのか」
「そうなのだ、ってね」
俺は彼女にそう言って微笑んだ。
「ところで、一つ聞いてもいいか?」
「なんだ、改まって」
「その、月夜見様と会ってはいないか?」
「月夜見と? なんでまたアイツの名前が」
「いや、噂程度なのだが、月夜見様が行方不明だと聞いたのでな」
「アイツがね………どうせ息抜きでたそこらをぶらついてるってオチだろ」
「それならいいのだが、あの方の考えは天照様でも分からないというからな」
彼女は溜息を吐きながら頭を抱えた。
そういえば、月夜見って他の二人に比べて何考えてるのか俺でも解らないものな。
まあ、どうせアイツの事だ。何事も無かったかのようにふらっと戻ってくるだろ。
「まあ、上の奴の行動なんて案外単純なものだろ」
「そういうものだろうか………」
「神奈子は堅すぎるんだよ。もう少し肩の力を抜けよ」
「いや、それでは威厳が」
「他人ならいざ知らず、俺や諏訪子たちに対して威厳も何もねえだろ」
「それもそうだな」
彼女は諦めたかのように苦笑した。
「貴方を見てると、神なんてちっぽけに見える」
「そんなものだろ。髪だろうと人だろうと、人一人救えなかったらどっちも同じだ」
「それは………」
「なんてな。ちょっと悪ふざけが過ぎたな」
俺は立ち上がると、部屋を出ようと襖の前で立ち止まった。
「悪い、やっぱり俺はまだ神様の事がどうも苦手らしい」
「………何が貴方をそこまで苦しめるんだ?」
「さあな。もしかしたら俺の記憶が戻れば、それも分かるかもしれない」
「そうか。ところで、どこか行くのか?」
「どうせだから、俺もこの辺りで特訓してくる」
「なら気を付けろ。この近辺で妖怪に出会ったら不幸になるっていう噂があるから」
「不幸なこと、ね………まあ、気を付けるさ」
俺はそう言い残して、その場から立ち去った。
不幸を招く妖怪………まさか、ね。
少 年 祈 祷 中
諏訪から少し離れた森の中、俺は件の妖怪を探していた。
村の人達の話によれば、その妖怪は森の奥で独りでいるらしい。
直接襲われたということは無いが、その妖怪に出会うと皆不幸に見舞われるらしい。
「俺の勘が正しければ…………ここだな」
草むらを抜けた先、そこには近くの山から流れている小さな川があった。
その畔に一人、異様な雰囲気を纏っている少女が座っていた。
後ろからサイドにかけて胸元で一本にまとめた緑髪、ゴスロリ風の赤いワンピース、頭にはフリル付きの暗い赤色のヘッドドレス、腕にはそれと同じリボンが巻かれている。
俺は彼女を見て、誰なのか理解した。
「鍵山雛………」
鍵山雛、厄を溜めこむ八百万の神、俗に言う厄病神だ。
自分に集まった厄はそれは本人の意思に関係なく、無差別に人を不幸にする。
本来の性格は明るく人懐っこいはずなんだが、どうも様子がおかしい。
周りの風景がどす黒く見ててしまうほど、彼女の厄はとても濃かった。
「一体………」
「――‼」
その瞬間、彼女から真っ黒な弾幕が俺に向かって放たれた。
咄嗟に俺はそれを紙一重で避けると、そこに真っ黒な蛇の形をした影が俺に体当たりしてきた。
直前に腕で防御したが、その衝撃で近くにあっ木まで吹き飛ばされてしまった。
しかし、今の蛇………まさか‼
「忌まわしき狩人………‼」
『神……なし……ノ……ミコ』
忘れもしない、数百年前に星羅の命を奪い、俺がとどめを刺した神話生物だ。
なるほど。なんとなくだが、どうやら今回の件の仕組みが分かってきたぜ。
そんな事を考えてる間にも、弾幕と狩人の怨念は攻めてきた。
ただでさえ密度の高い弾幕の中を、狩人の怨念はそれをもろともせずに俺へと体当たりしてくる。
「そうは行くか‼」
俺は『月美』を構えると、向かってくる狩人を一刀両断に斬り裂いた………はずだった。
『……甘…イ』
「なに……!?」
アイツは鬼灯の様に目を紅く光らせながら俺を笑っていた。
狩人の身体は真っ二つになった。だが、今のアイツの身体は黒い影のようなもの。
奴は俺の両脇を真っ二つのまま通り過ぎると、背後で身体を再構築し、俺の背中へと体当たりした。
「………!?」
死角からの攻撃に、俺の身体は弾幕の中へと吹き飛ばされた。
弾幕はパチパチと弾けながら俺の身体を痛めつけていくが、俺は『月美』を地面に突き刺してその場に踏み止まる。
「どうしたものかな」
実体のない怨念、対策は一応あるが、今の奴には見切られるのがオチだ。
どうにかしてアイツの隙を作り、そこの一瞬で勝負を着けなければならない。
するとその時、俺と雛の間に季節外れの紅葉が視界を覆うように現れた。
「こっちに来て」
俺は考えるまでもなく、その声の聞こえた方向へと走った。
近くの草むらまで行くと、そこから二本の異なる腕に捕まれて草むらの中へと引きずり込まれた。
空亡「ということで、忌まわしき狩人の再登場です」
優夜「死んでも尚、ってことかよ」
空亡「雛さんを出したのは、正直言って無理やりです」
優夜「出せる限りの原作キャラを登場させるってノルマ、まだやるつもりかよ」
空亡「重要キャラはいいんですけど、他のキャラってどこで出すか悩むんですよ」
優夜「まあ、詳細なんて無いからな。そこら辺はお前の技量だろ」
空亡「ああ……厄い」
次回予告
災厄となって現世に留まった狩人よ、使われるお前の姿は哀れだな。
東方幻想物語・探訪編、『災厄の取り扱い注意』、どうぞお楽しみに。