東方幻想物語   作:空亡之尊

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綿月の姉妹

神無 優夜side

 

 

この世界に着て四ヶ月が過ぎた。俺はまだ生きている。

今日は永琳に連れられて、街の中央に位置するある屋敷を訪れていた。

立派な屋敷なのでどこかの名家なのはわかったが、表札を見て苦笑いしか浮かばなかった。

 

 

「永琳、ここは?」

「私の教え子がいる家よ。どうせだから紹介しようと思って」

「そうですか」

 

 

俺は表札に書かれた『綿月』の二文字がどうしても気になった。

永琳の教え子、苗字が綿月、名家っぽい立派な屋敷、もうあのチートな姉妹しか思い浮かばない。

 

 

「まさかここでとは」

「何か言った?」

「いや。それより早く行こう」

「ええ。案内するから着いて来て」

 

 

俺は言われるがまま彼女の後をついて行く。

幾つもある部屋、広い庭、長い廊下、飾られた高そうな品々、いかにも名家って感じだ。

 

 

「掃除するのが大変だな」

「着眼点がそこなのね」

「一人暮らしだったからな。それに、掃除が大変な同居人もいるし」

「居候の分際で言いたい放題ね」

「今日はごはん抜き」

「悪かったわ。だからさっきのは取り消して」

「プライドはないのか、天才よ」

「プライドでお腹は膨れないわ」

「ごもっともで」

 

 

そんな会話をしていると、彼女の足がとある部屋の前で止まった。

 

 

「ここよ」

「なんともまあ、和風ですね」

「どこもそんなものよ」

「確かに」

「……入るわよ」

 

 

永琳が襖を開くと、そこには二人の少女が正座をして待っていた。

一人は薄紫色の長い髪を黄色のリボンで纏めているポニーテール、白くて半袖・襟の広いシャツの上に赤いサロペットスカートのような物を着ている。生真面目そうな雰囲気がする。

もう一人は腰ほどもある長さの金髪、白くて半袖・襟の広いシャツの上に青いサロペットスカートのような物を着ている。隣の子と違って、柔らかそうな雰囲気がする。

二人は永琳の方を見ると礼儀正しくお辞儀した。

 

 

「ようこそいらっしゃいました。八意様」

「今日はどのようなご用件で?」

「私のところに居候している子を紹介しに来たのよ。ついでに貴女たちの事もね」

「永琳、この子たちは?」

「紹介するわ。この子たちが私の教え子、綿月 豊姫と同じく依姫よ」

「はじめまして、綿月 豊姫です」

「……同じく、依姫です」

 

 

そう言って二人は俺に挨拶した。

綿月姉妹、東方儚月抄で紫たちと戦った月の使者。姉の豊姫は森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす扇子であの八雲紫を言詰めた強者、妹の依姫はその身に八百万の神を自身に宿らせてその力を振るう強者。歴代キャラの中でもぶっちぎりのチートキャラだ。

 

 

「ご丁寧にどうも。俺は神無 優夜、ただの人間だ」

「噂は本当だったみたいですね」

「どういうことかしら?」

「大方、永琳がよそ者の男を匿ってるって話だろ」

「八意様ってそういうのには縁がないお方なので、正直今日は驚きました」

「こっちもですよ。こんな美しいお嬢さんたちを紹介してもらえるなんて」

「あら、お世辞が上手なのね」

「残念ですが、これでも嘘を吐くのが大の苦手なんですよ」

「面白い人ね」

 

 

豊姫は楽しそうに笑ってくれている。

天真爛漫というより、絡みやすい性格をしているお蔭で話がしやすい。

この時点でこの二人がいるということは、もしかしたら…………。

 

 

「おい、貴様」

 

 

そんな事を考えていると、突然依姫から声を掛けられた。

声の感じからして少し機嫌が悪いような、そんな気がする。

 

 

「なんだ?」

「貴様のような奴が何故、八意様の近くにいる」

「ちょっと、依姫?」

「どういう意味だ」

「貴様からは穢れを感じる。それもそこらの妖怪とは比べ物にならないほどにな」

 

 

依姫は殺気を放ちながら俺を睨みつける。

穢れ、作中では生きる為に争いが始まり、物質や生物から永遠が失われ、そして死ぬことを月の民は穢れと呼ぶ。

彼女が俺から感じるのは、恐らく生への執着、死にたくないという想いだろう。

 

 

「それを感じたアンタは、どうするつもりだ」

「今すぐにでも追い出したいところだ。あの女と同じで」

「……おい、もしかして月美の事か?」

「貴様もあの女と同じ穢れを感じる。だからこそ気に食わない」

「てめぇ………」

「二人ともやめなさい」

 

 

対峙する俺らの間に永琳が割って入る。

 

 

「依姫、いくら貴女でも私の客人を侮辱するのは許せないわ」

「ですが八意様」

「いいよ永琳。正直、こいつが言ってることは正しい」

「優夜……」

 

 

俺は永琳の肩を叩いて横切ると、依姫の目の前に歩み寄る。

 

 

「依姫、俺がそんなに気に入らないか?」

「ああ。穢れの塊のような貴様が八意様の近くにいることが許せない」

「だったら、一つ勝負しようぜ」

「なに?」

「単純だ。一対一の真剣勝負、お前が勝ったら俺は街を出て行く」

「もしも貴様が勝ったらどうするつもりだ?」

「さっきの言葉を訂正してもらう」

 

 

俺は依姫へとそう言った。

俺の事をどれだけ言われようとかまわないが、月美のことまで言われると怒りを抑えられない。

 

 

「……いいだろう」

「依姫!?」

「決まりだ。いつにする?」

「今からでも構わないぞ。場所は庭でいいか?」

「構わない」

「なら、着いて来い」

 

 

依姫はそう言って部屋を出ると、俺はその後をついて行く。

その道中、永琳と豊姫に話し掛けられた。

 

 

「優夜、貴方……」

「ごめん永琳。面倒なことになって」

「それはいいけど、気を付けた方がいいわよ」

「家族だからというわけじゃないけど、依姫は強いわ。ここは」

「悪いけど、これは俺が持ちかけた喧嘩だ。他言無用で頼む」

「でも、このままだと最悪死ぬわよ」

「その心配はしておいた方がいいな」

「だったら」

「頭に血が上って危うく殺しそうだからな」

「「!?」」

 

 

俺は湧き上がる殺気を押さえながら歩みを進めた。

原作でもチート扱いの依姫、だからと言って負ける気なんてさらさらない。

 

 

チートにはチートを、勝たせてもらうぞ。依姫。

 

 

 

 





空亡「さて、公式チートの依姫さんに喧嘩を売ったわけですが」
優夜「負ける気なんてさらさらない」
空亡「でしょうね。なら、せいせい頑張ることですね」
優夜「先を知ってるくせによく言うぜ」
空亡「よくぼろが出そうにはなりますけどね。まあ、そこは御愛嬌」
優夜「なんでこんな奴がうちの作者なんだろうな」
空亡「辛辣ですね。そういうところが好きですけど」
優夜「野郎に好かれる趣味はない」
空亡「奇遇ですね。僕もですよ」


次回予告
神の依代の姫よ、ひとつ踊りませんか? 彼は口元をニヤッとさせた。
東方幻想物語・神代編、『似た者同士』、どうぞお楽しみに。
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