神無 優夜side
この屋敷に着て初めに目にしただだっ広い庭。そこに俺と依姫は立っていた。
互いに殺気を発しているが、お互いそれに退くことなく相手を見て対峙している。
依姫の手には原作で見たことのある長い刀が握られている。
「初めに言っておく、逃げるなら今のうちだぞ」
「易しいな。喧嘩を売ったのは俺の方なのにか?」
「いくら穢れた貴様でも、殺してしまえば八意様が悲しむ」
「ただし、殺さないから永琳の傍から離れろと?」
「それを了承するのなら私からは手を出さない」
「なるほど。嘗められたものだな」
俺は怒りを噛みしめながら右手を握り締めると、刀を召喚した。
「ふざけるなよ。こっちははなからそんな事どうでもいいんだよ」
「なに?」
「こっちが喧嘩を売ったのは月美への言葉を訂正させるためだ」
「……元から負ける気などないような口ぶりだな」
「そういうことだよ。神様に頼らなきゃ戦えないようなお嬢様に負けるかよ」
俺は挑発するように口元をニヤッとさせる。
案の定、その言葉にキレた依り姫は握り締めた拳を震わせている。
「なるほど………そんなに死にたいか」
「死ぬかよ。お前の口から謝罪の言葉を聞かなきゃいけねえのに」
「なら、やってみろ。穢れた人間!!!」
「ああ、やってやるさ。依り代のお姫様!!!」
互いに踏み込むと、一瞬で距離を詰めて刀を振り下ろした。
鍔迫り合いになると、互いに弾いて間合いを空け、互いに向けて斬撃を放った。
刃と刃がぶつかり合い、だだっ広い庭には激しい金属音が一種の音楽のように鳴り響いた。
「中々やるな」
「三ヶ月も特訓したんだ。それなりには動けるさ」
「だが、ただの人間に私が負けるものか!」
依姫が俺の刀を弾くと、彼女の周りに只ならぬ気を感じた。
「燃やし尽くせ! 『火之迦具土』」
その瞬間、彼女の持つ刀に激しい炎が纏った。
彼女が刀を振るうと、炎の嵐が激しく燃え盛りながら俺に向かって迫ってきた。
俺は何とか炎の隙間を掻い潜りながら避けていくが、彼女はそんな隙さえも逃がさないように俺に斬りかかってくる。
燃え盛る炎の刃を受け止めると、その熱が俺の刀に伝わって力が入らない。
『神霊の依代となる程度の能力』、八百万の神を宿し、その力を使うチート級の能力。
原作じゃ霊夢や魔理沙でも歯が立たなかった最強の能力、どうやって立ち回ろうか?
「ふふっ」
「どうした? 負けを認めたか」
「いや、本当に面白いなと思ってさ」
「なに?」
「主人公でも倒せなかったチート、俺が倒せたらどうなんだろうなって思ってさ」
「何を訳の分からないことを」
「訳が分からなくなるのはここからだぜ、依姫!」
俺はポケットからスマホを取り出して起動させる。
炎に対するのはすでに決まっている。選択するのは『チルノ』だ。
『チルノ:冷気を操る程度の能力』
刀が光りだすと、刀の刀身に冷気が纏い、鍔がチルノの羽根みたいになっている。
刀が変わった瞬間、周囲の温度が一気に下がり、周りを囲んでいた炎の勢いを殺していった。
冷気を纏った刀を依姫へと振り払うと、激しい吹雪が巻き起こり、依姫の炎を瞬時に凍り付かせた。
「っ!?」
「さっすが最強、➈のでも使い方次第で神を上回るか」
「何だ、そのふざけた能力は」
「お前の神様よりもよっぽど愛している奴等の力だ」
「神より優れた力なんて……そんなものはない!」
「だったら証明してみな」
「雷鳴よ轟け! 『建御雷神』」
空が曇天に染まると、依姫へと稲妻が落ちた。
落ちた稲妻を彼女のは全身へと纏わせると、目にも止まらぬスピードで俺の背後へと回った。
咄嗟に刀を後ろに回して攻撃を防ぐが、今までの斬撃に速さが上乗せされ威力が増したのか、たった一振りで吹き飛ばされてしまった。
吹き飛ばされている途中に彼女は異常な速さで先回りをし、俺が飛んでくるのを待っていた。
「速さなら断然これだよな」
俺は刀を地面に突き刺してその場に留まると、『射命丸 文』を選択した。
刀の形状が薙刀へと変わり、持ち手には鴉の羽根のような飾りが付いている。
『射命丸 文:風を操る程度の能力』
「刀が変わった……」
「さあ、スピード勝負と行こうぜ」
「迅き雷に追いつけるものか」
「疾い風なら追いつけるかもしれないぜ」
俺はその身に風を纏い、依姫へと向かって走り出した。
依姫はそれを迎え撃つかと思ったが、自身も雷を纏って俺に向かって走り出し、互いに交差した。
疾風と迅雷のぶつかり合い、庭全体を駆けまわってもそれは抑えきれず、やがて屋敷の壁を壊して外へと出てた。
勢い任せで攻撃をしていた俺たちは街にある広場へと辿り着いた。
能力が途切れると、傷だらけで息を切らしながらお互いを睨みつけていた。
「やるじゃねえか。神様も」
「貴方も凄いですよ。ここまで互角に渡り合えるなんて」
「ああ。ただ、互角じゃお前に勝てない」
「私も同じ考えですよ。八意様の教え子として、負けるわけにはいきません」
「なら、最後の一勝負と行くか」
「臨むところ」
依姫はそう言って満足げに笑みを浮かべると、刀を俺に向ける。
「慈母の光明よ、照らせ! 『天照大御神』」
依姫の背後に一人の女性の姿が見えたと思うと、彼女から超高密度の光が放たれた。
俺は刀を左手に持ち変えると、スマホを片手に『霧雨 魔理沙』を選択する。
刀は一丁の銃へと変わり、銃身には『Barrage power!!! (弾幕はパワーだぜ!!!)』と書かれている。
『霧雨 魔理沙:魔法を使う程度の能力』
「火力勝負ならこっちも負けねえぜ」
俺が引き金を引くと、銃口からマスパの威力を超えるレーザーが放たれた。
互いの攻撃がぶつかり合うと、その衝撃で周囲に凄まじい風が巻き起こった。互いに一歩も譲らないと、レーザーが競り合い、俺と依姫のはその攻撃に最後の力を込める。
「「負けるかあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」
少 年 祈 祷 中
「何か言いたいことはあるかしら?」
「「すみません」」
屋敷へと連れ戻された俺と依姫は正座させられていた。
目の前には決して笑っていない笑顔で俺たちを見下ろしている豊姫の姿がある。
「屋敷の壁を壊すぐらいはまだよかったけど、広場の方まで被害を出すのはダメだったわね」
「あはは……申し訳ない」
「つい戦いに熱が入って周りが見えなくなっていました」
「だからって衝撃波だけで地面を抉るのはどうかと思うわよ」
「消滅するよりはまだマシだったかと」
「何か言ったかしら?」
「いえ。だからそのこの世で最も危険な扇子をこっちに向けないで下さい。お願いします」
俺は必死に土下座をすると、その隣で見ていた永琳が溜息を吐いた。
「プライドはないのね」
「プライドを捨てることで生きられるのなら、俺は喜んで捨ててやる」
「格好つけた言葉を言ってるようだが、やってることは格好悪いぞ」
「まあ、反省しているみたいだし、これで許しますわ」
「「ありがとうございます」」
俺と依姫は揃って頭を下げた。
「依姫」
「なんでしょうか、八意様」
「貴女、楽しそうだったわよ」
「え?」
「優夜と戦っている時に見せた生き生きとした顔、とても良かったわよ」
「え? え?」
依姫は混乱している。
永琳はそれを見て楽しそうに微笑んでいる。……明らかに楽しんでいる。
「それじゃあ、戻るわよ。優夜」
「爆弾置いて帰る気かよ。……ああ、それじゃあ、俺はこれで」
「ええ。またいつでもいらしてください」
「……この決着はいつか着ける」
「俺もそのつもりだよ。じゃあな」
俺は永琳の後を追ってその場を立ち去った。
滅茶苦茶な出会い方をしたが、何とか仲良くなれたような気がする。
後日、依姫から月美に対しての言葉の訂正しに出向いてきた。
俺は嬉しかったのだが、それを機に何故か決闘を申し込まれるようになってしまった。
一難去ってまた一難、なんだかこの感じがずっと続きそうな気がするのは俺だけなのだろうか?
優夜「なんだろうこの世界に来てから強敵としか戦ってない気がする」
空亡「あはは………。言われてみればそうですね」
優夜「しかもあれ、どうせ全力じゃないんだろ?」
空亡「まあ、相手を嘗めていたという点では全力ではありませんね」
優夜「やっぱり、まだまだだな」
空亡「ちなみに、神の力に対して相対する能力で挑んでましたね」
優夜「ゲームでも相性の有る無しで難易度が変わるからな」
空亡「まあ、それでも引き分けたんですから上々ですよ」
優夜「納得いかねえ」
次回予告
月美の遊び相手、それは誰しもが知る物語の姫君だった。
東方幻想物語・神代編、『蓬莱の姫君』、どうぞお楽しみに。