はんぱもののラブライブ!   作:夕藤

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第十二話 言うほどの事でもない?

「雪ちゃんお砂糖ない?」

「砂糖、ですか?」

「うん。お砂糖この間切らしちゃったみたいなんよ。お裾分けしてもらえない?」

「あー、ちょっと待っててください」

「ゆっくりでええよ」

「この家に、固形物が残ってるかすぐに確認してくるんで」

「よぉーし雪ちゃん、希お姉さんに雪ちゃんの食生活全部教えてくれてもええんよ?」

「えっ」

 

 

 

 元から雪は食べない方ではあった。昔から食が細く、一日食べない事もざらにある程度には、食には疎かったのだ。それが()()()()()があって益々食べなくなって、今では物を食べている事の方が珍しいのではないかと思うほどには。

 

 希がそれを知り、最近では雪を無理矢理家に拉致し食事させ始めたのもつい最近の事。以前までは時折呼ぶ程度だったが、今ではほぼ毎日希が雪の食のサポートを行っていた。

 

「はい雪ちゃんお弁当」

「……あの、やっぱりいいです。希先輩迷惑ですよね?」

「うちは自分のお弁当作りのついでに作ってるだけで手間はそんなに変わらんよ。それよりも自分の後輩が一日にパン一枚とか、インスタントのお味噌汁一杯しか食べてなかったことのほうがショックやわ……」

「惣菜パンも偶に食べます」

「うーん残念。そういう問題やないんよ……はぁ、とにかくこれ持ってって」

「ありがとうございます……食費出します」

「食費が浮くからありがたく受け取らせてもらうな?」

 

 そんな奇妙な会話を交わしながら、雪と希は共に登校する。

 途中で道を別れるのは、雪がコンビニでお気に入りのジュースを買い込むからであり、希は生徒会の仕事を片付けなければならないからだ。

 本来ならば雪も行くところなのだが、朝は生徒会長である絵里の唯一の癒やしの時間である。絵里から服装やピアスの件で睨まれている雪が行った所で、絵里の平穏な時間を崩すことにしかならないのである。

 

 

 希に合わせて登校するようになり、雪も遅刻ギリギリに登校する事はなくなったが、あまりにも早く着いてしまうと何もやることがなかった。

 鞄を席の上に置き、筆記用具等の最低限の準備をすれば、本当にやることは残っていない。仕方なく、未だあまり使っていないリンゴのスマートフォンやμ'sの今後の活動について纏めようと買ってきた新しいスケジュール帳を取り出し部室へ向かうことにした。

 以前、朝一番にやってきたクラスメイトが雪を見て怪訝な顔をし、そのまま居心地が悪そうにしていたのがキッカケで雪は朝の時間、あまり教室にいないようにすることを心がけていたからだ。

 

 朝の静かな廊下を一人歩くというのも、この音ノ木坂学院に入学した頃には考えられなかったことだと感慨に浸りながらも、雪が歩いていれば――

 

「ああ、ちょうどいい所に。天海さん、ちょっといいかしら?」

「えっ、あ、はい」

 

 雪を呼び止める声がかかった。声の主はこの学院のトップであり南ことりの母である南理事長。

 教員に幾度となく呼び出しをくらい、挙げ句の果てには理事長室に連れて行かれた雪は、また私は何かしたんだろうかとビクビクしながら理事長室へと招かれた。

 

「ごめんなさいね、忙しかったかしら?」

「いえ、特には……え、っと。私なんで呼ばれたんですか?」

「天海さん、アイドル研究部に入ったでしょう?」

「は、はい……」

「私はあまりとやかく言いたくはないのだけど、天海さん、生活態度や平常点があまり良くないでしょう? だから、今度の期末テストである程度結果を出せないようなら――」

「……退部、ですか?」

「ええ、そういうことになるわね」

 

 まあ妥当のペナルティだろうと雪は思った。

 素行不良の生徒が、学校の廃校を防ごうとする部活に入っているのだ。これから音ノ木坂の顔になるかもしれない部活に不真面目な生徒がいては、学校側が困る。とどのつまり、わざとこういったペナルティを与え、雪に部活を辞めさせるつもりなのである。

 だが、雪もそれを重々承知していたことだった。

 

「分かりました。結果を出せばいいんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Love Live?」

「スクールアイドルの甲子園みたいなもので、ネットで中継もされるんだって! だからそれにエントリーしようって話になったんだけど……」

「今度の期末テストで赤点を取ったらエントリーできないのぉぉぉ!」

 

 放課後、遅れて部室にやってきた雪に大まかな現状がことりと穂乃果から告げられた。

 急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれたμ'sならば、確かにいけるかもしれない。一部とはいえ出待ちのファンがいるというほどだ。少なくとも、可能性はまったく皆無というわけではないだろう。

 手渡されたプリントにはラブライブの詳しい概要が書かれている。これに出て良いところまで、あるいは優勝すれば学校の知名度は上がり廃校が阻止できるかもしれない。――しれない、が。

 

「穂乃果、まずくない?」

「穂乃果だけではないのです……凛とにこ先輩も」

「数学だけはどうしても無理! うぅうう……!!」

「英語なんてわかんないにゃー!! 凛日本人だもん! 大体なんで凛たちは日本人なのに英語を覚えなきゃいけないの!?」

「屁理屈はいいの!」

「べっ、べべべべべつにぃ!? にこにかかればよよよよ余裕だしぃ!?」

 

 穂乃果は数学、凛は英語、にこに至っては殆どの教科が危ないのだろう。三人ともこの世の終わりのような顔をしている。

 これでは赤点をとったのでラブライブには出ません、ということになりそうだと雪は溜息をつく。

 

「でも、これで危ないのは穂乃果先輩と凛とにこ先輩に、雪先輩ね」

「へ?」

 

 突然出てきた自身の名前に、雪は素っ頓狂な声を出した。

 

「そういえば私たちも雪の成績は知りませんね……どの教科が危ないのです?」

「え、いや……」

「全教科とか言わないでよねー」

 

 ラブライブにエントリーするためには、部員全員が赤点を回避しなければならない。マネージャーといえど部員は部員。雪自身も対象に入っているのだ。

 

 普段の素行、授業態度から誰しもが『雪の成績は危ういに違いない』と信じて疑わなかったのだ。

 

「ああ、海未ちゃん。雪ちゃんなら大丈夫だよ」

「? 大丈夫、とは?」

「だって雪ちゃん頭良いもん」

『え?』

 

 穂乃果から告げられた言葉に、その場にいた全員が思わず雪を見た。

 相変わらず規定通りに着ていない制服に、水色に光り輝くピアス。校内放送で時折呼び出されたり、全校集会での頭髪服装点検では必ず呼び止められていた。海未とことりに至っては授業中に寝ていたりジュースを飲んでいたりと不真面目な姿を思い出していた。

 

「……それは何かの勘違いではありませんか?」

「酷い!? 私ってそんな頭悪そうに見える?」

「はい」

「あはは……雪ちゃん前回のテストとか持ってないの?」

 

 雪が項垂れるのを見て、穂乃果が苦笑しながら問いかけた。

 穂乃果の言葉に、雪はスクールバッグの中からクリアファイルを取り出しテストを探す。

 

「あ、この間の小テストだけど」

 

 漸く見つけ出した英語の小テストの答案。中々難しかったと海未とことりが呟き、数学以外は案外まともな穂乃果も撃沈した難解なテストだった。

しかし雪の小テストの結果を見て、海未とことりは絶句した。

 

「きゅ、九十八点……」

「ゆ、雪、これは本当なのですか!?」

「あれ、百点じゃないんだね雪ちゃん。珍しい」

「ああ、一個解答欄間違えちゃってて。でも解答欄さえ合ってれば満点だったはずだよ……っていうか、まあ、一応音ノ木坂を主席入学してるからね、これでも」

『えぇ!?』

 

 雪の言葉に、再び全員が声を荒げた。

 事実、雪の言ったことに嘘偽りなど一切なく、確かに雪はこの音ノ木坂学院で全教科ほぼ満点という申し分のない主席入学を果たしていた。

 

「い、以外……」

「普通に仲間だと思ったのに……マネージャーの癖に生意気よ!」

「部長の癖に赤点なのも不味いと思うんですけど……」

 

 雪のぽつりと呟いた言葉に、にこは撃沈した。

 しかし意外も意外だと穂乃果以外のメンバーは思っていた。能ある鷹は爪を隠すと言うけれど、こんなに極端な例はそんなにないだろう。

 

「雪ちゃん全国模試も全部一位だもんね」

「まぐれだから……」

「まぐれで全国模試一位なんてあるわけないよ!?」

「……はい」

「では、雪にも教師役をやってもらっても良いですか? 丁度復習になるでしょうし……」

「ああ、言われなくてもやる予定。今回の期末テストで私も結果出さないと退部しろって言われてるんだよね」

「……雪」

「んー? 何、海未」

「正座しなさい」

「えっなんで」

「正座です!!!」

 

 

 

 雪から次々と告げられる重大発表に、海未は我慢の限界だと言わんばかりに声を張り上げた。

 

 

 

 




初めての後書きで言う事ではないと思ったのですが言わせて下さい。
朝のテレビ番組Z○Pのラブライブ!特集…良かったですね!!
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