やあ!おれは幽霊!一般的なサラリーマンだったけど些細な勘違いが原因で毒を飲まされ後頭部をぶん殴られたうえ4発くらい銃弾を喰らってタコ殴りにされ、そんでもって高所から落とされた挙句海にぶち込まれて死んだ哀れな男さ!
泣きたい。なんで電車で鞄取り間違えただけでこんな事になったんだ…。福本漫画ばりの黒服ヤクザに追い掛け回された時はちょっとちびった。
それと途中から半分くらい意識なかったけど海にぶち込まれるまでは生きてたよ。超苦しかった。
「うわぁ…この死に方はさすがのワシもドン引きじゃよ」
半透明の体をふわふわ浮かしながら自分の死体をぼんやり眺めてると誰かがおれの死体を見ながらドン引きしていた。
振り返ると痩せたサンタクロースみたいなじいさんが自分の髭を触りながら「うわぁ…」とか言いながら浮いている。
浮いてるから幽霊なのかと聞いてみた所、じいさんは神と名乗る。そっか神かー、なんて気の無い返事をしたら持ってた杖で頭をポカリとやられた。
ところで何の用で神さんはここに居るのだろうか。気になったので聞いてみる。
するととんでもない不運に見舞われた男、つまりおれがいたので気になって天界から野次馬に来たとか。そんでもってあまりの不運ぶりに同情中だとか。
「まあ…ワシもお前の死に方に同情を禁じ得んのでな。何かこう、救済的な…あっ転生なんてどうじゃ?」
そんな今思いついたような救済されましても。
「う…うむ。いや正直今回のような場合は初めてでじゃな…。お前は悪行を働かずそこそこの善行を積んでいたのに対してこの死に方は…のう?」
まあ、潔白とは言いづらいけどそれなりに真っ直ぐ生きてきたつもりではありますが。でも転生した先でまた苦しんで死ぬようなのは勘弁願いたい。
「その辺はワシが調整しておくから大丈夫じゃよ。それでお前はどんな場所で生きたいか、聞いてみても良いかの」
そうだなあ…そこそこ幸せな家庭で刺激的な生活が送りたいかな。サラリーマン生活なんて面白くなかったし。
「うむ、その願い聞き受けたぞ!」
神さんはうんうんと大きくうなずいた後、手に持った杖で地面をゴツンと叩いた。すると大きな扉が生えてくる。
すげー。幽霊の世界じゃ扉って収穫できるんだ。
「さて、この扉の先にお前の未来がある。ちなみにこれはワシの力であって種をまいたら生えてくるとかは無いぞい」
無いのか。
さて、そんなこんなで扉を潜ったおれだった。
これはおそらく14年くらい前の話で、おれは今日14歳の誕生日を迎えた。
今は双子の兄であるロック・ヴォルナットと共に誕生日を祝われている。
おれの今生の名はハード・ヴォルナット。キャスケット一家の一員で、ロック・ヴォルナットの妹である。
そう、ここはおれの愛したロックマンDASHの世界なのだ。
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やあ、おれハード!歳は多分14歳!特技はロッククライミングで趣味はランニング!前世の記憶がうっすら残っているちょっと変わった女の子!最近の悩みは名前が男っぽいことかナ!
…実はこの名前、裏がある。この間、バレル爺さんという、おれたちの保護者の日記をたまたま読んでしまった。
掃除中に誤って落としてしまっただけで故意ではない。堕ちた衝撃でたまたま開いたページが悪かったのだ。拾い上げようとして、自分の名前が書いているから目がそっちに行ってしまった。
───ロックとロール ロックンロール
───ハードとロック ハードロック
───なんちゃって
つまりバレル爺さんはダジャレでおれの名を決めた訳である。なんてこった。
精神的に打たれ弱い俺はその日一日中どんよりしていたのを覚えている。
で、今生のおれは精神的にはともかく、肉体的には打たれ強かった。どうしてかって?簡単な話である。
痛い事や苦しい事が気持ちいいのだ。
…違う。おれは断じてマゾなんかじゃない。たぶん神さんが言っていた「ワシが調節~」の下りの部分なんだろう。
ランニングなんかすると脳内麻薬の分泌に息苦しさの興奮がプラスされて凄い事になるのだ。走るのが趣味になるのもやむなきことだと思う。あ、いや断じてマゾじゃないぞ。
特技のロッククライミングはディグアウトに行くときに、高い段差を上る際に身についただけである。断じて高い所から落ちた時を妄想して興奮してなんかいない。
それともう一つ。おれは今生、女となってしまった。これは多分「刺激的な~」の下りだと思う。どちらかというと衝撃的だったよ、うん。
その件に関して男を愛せるようになるのか心配していたが14年も股にぶら下がるものが無くなっていると考え方は変わるもので、いつの間にか男も女もイケる口になってしまっていた。はい、バイです。
おれの無二の相棒ことロックだが、こいつはわりと何でもできる凄いヤツである。家事洗濯掃除と、女の子に必要なスキルは大体収めていると言っていい。おれもソコソコ出来るつもりだがコイツの手際には敵わない。
それにおれより力持ちだ。まあ男の子だからな。腕相撲もそうそう勝てないし組手しても大体負ける。でも女の子と組手するときは手加減した方がいいぞロック、たまに痛気持ち良すぎて気絶しそうになるからな。
そうそう、一度懸垂勝負をしたことがあるが僅差で勝てなかった事がある。マゾパワー全開で対抗したところ筋肉が先に逝ってしまわれたのだ。肉離れした瞬間気持ち良すぎてビクンビクンしていたが、ロックに滅茶苦茶心配されたので痛がる振りしてなんとか誤魔化した。
ディグアウトをするときはロールをナビゲーターに据えて、ロックと二人でダンジョンに入る。ロックが主に戦闘を行って、おれがロックにできない事をするのだ。たとえば遺跡の中にある機械の修理とか。
メカニックやエンジニアとしての腕はロールほどではないがかなり自信がある。ロールちゃんは戦えないしフラッター号を守ってもらわなきゃいけないからおれがするのだ。
その他と言えば荷物持ち。ロックに荷物を持たせたまま戦闘をさせられないので二人分の荷物は大体おれが持っている。ゲームと違って食料とか水が必要だしディフレクターも嵩張るしで大変だ。体力だけはロックよりあるからな、動機はどうあれ毎日のランニングのおかげだ。
あとはリーバードの背後から忍び寄って爆弾仕掛けたり、ロックが上れないような壁を登って先を散策したり。まあサポート全般がおれの仕事だ。そんなわけで直接的に戦闘に加わることは少ないが、戦えない訳じゃないぞ。射撃だけならロックと同じくらいはできるからな。
「おーい、ハードいくよー?」
おっといかん。これからディグアウトに行く予定があるんだった。ロックに呼ばれたおれは黒いアーマーをさっさと着てからフラッター号の甲板に出る。
アーマーが黒い理由?それは青だとロックと被るしコブンに「青い人だ~」なんて呼ばれたら区別つかないから別の色にしたのだ。かといって赤だとロールと被るし、黄色だとコブンに呼ばれた時に語呂悪いし…ってなわけで黒。
ロックのやつと違って軽装甲タイプなので体のラインが結構出るのが困りものだが、とにかく軽いので動きを阻害しないしなにより攻撃を喰らうとちゃんと痛いのがいい。黒は女を美しく見せるってどこかの人も言ってたし美人に見えて一石三鳥である。あ、いや断じてマゾじゃないぞ。
「おまたせ。今回のダンジョンどんな感じ?」
「地下深くにある採掘施設って感じかな」
ほらあれ、と言われてロックの指差す方を見ると海にポツンと一本の円柱があった。柱と言っても直径は余裕で30メートルは超えている。ああいう形をしたダンジョンは大抵、柱の中のエレベーターで降りた先の地下にディフレクターがあるのだ。
ダンジョンとは数千年前の遺跡なのでエレベーターが壊れていることもある。そんな訳でおれの役目も多いのだ。それにしてもリーバード然りいまだに稼働し続ける物が数多くあるというのが驚きだ、古代文明パネェぜ。
ぽやっとダンジョンの内部構造を考えながらいるといつの間にか到着したようで、フラッター号はダンジョンに横づけを完了していた。ロックが飛び移るのを確認してからおれも荷物を持って飛び移る。
「本日も絶好のディグアウト日和なりー」
「ハード、前から思ってたけどディグアウトに天気は関係ないんじゃ…」
「気分の問題だって」
真面目なロックは今日もつっこみを欠かさない。ロックは生真面目だからおれが多少ポンコツくらいでバランスが取れるのだ。
「じゃあ、ロールちゃん。あとはよろしく」
『うん、気を付けてねロック!』
「ロールぅ、おれはー?」
『ハードはもうちょっと自分を大切にね』
去り際にロールはおれの心をグサッとえぐっていった。まあ自覚はあるんだよね、おれが結構無鉄砲ってのは。ロックを庇って怪我をしたことなんて一度や二度じゃないし。ロックもそれについて気にかけてるみたいだし。
まあロックを庇う動機はたいてい「そう何度もお前だけに良い思いさせるかー!体のどこかにあたってくれー!」って感じなので、理由をぼかしてロックに気にするなとは言っているのだが、生真面目くんにどこまで通じる物か。
ま、とにかくディグアウト開始である。エレベーターのスイッチをぽちっとな。