やあ、おれハード!元男の現女!悪い奴らに簀巻きにされたピンチなヒロイン系女の子さ!
「やっ…ああん…」
おれの口から出る甘い喘ぎ声。だって縄が気持ちいいんだもん、仕方ないね♀
さてグスタフを駆る謎のトリに捕まったおれはまんまと人質として利用されグルグル巻きにされた挙句連れ去られたというオチである。その上意外と優秀なサンシターがロース一家を脱獄させるというオマケ付。警察ちゃんと仕事しろよォ!
現在おれは謎のトリ型飛行物体に乗せられて牢屋の中で遊覧飛行中である。一緒に牢屋に入っているサンシター三匹でおれを苛めてくれるというサービス付なのでハードちゃんは大変満足していましたとさ。
「クケケケケ!とんだ間抜けだぜぇー!」
「わざわざ人質に取られにくるなんてよー!クケーッ!」
でも言葉攻めのサービスまではいらんかった!おれは痛いのが大好きなだけであって断じてマゾじゃないのだ!!ちくしょうこいつら絶対酷い目に遭わせてやる…。
腰の入ってないムチらしきものでペチペチやられている間におれは両手の縄をグリグリとこすり付ける。摩擦熱戦法だ!両手を燃やせえええええええええええ!
「クケッ!?コイツ何かしてるぞ!」
「ふてえ野郎だ!おい金属の鎖もってこい!クケーッ!」
ばれました。
こうなったら鎖がやってくるか縄が千切れるかのスピードレースだ!ぬうおおおおおおおおお!
結論から言う。
摩擦熱じゃ縄は切れなかったよ…。簀巻きだったおれは金属ミノムシにパワーアップした!頭に血が上ってなんか気持ちいい。
シタッパー共(さっき艦内放送で名前を思い出した)はグライダーみたいな名前の奴に「戦闘準備よ!」などと呼び出されてどっか行ったので絶賛一人プレイ中だ。寂しいなあ…。
このままぶら下がっているのはあまりに退屈なのでおれはスーツに隠しておいたミニマインを起動させる。俗に言う切り札という奴だ。
ポチリと機動させるとアラ不思議、綺麗な爆炎が立ち上ったではありませんか。新品だった金属の鎖はただの鉄くずに、爆心地にいたハードは真っ黒焦げに大変身です(劇的BA風)
「けほっ、けほっ!…トロンになった気分だ」
真っ黒=やられ役 これはヤッターマンの時代から続くお約束というものだ。ケホケホと煙を吐いた後、不用心にも開いたままの牢屋を抜け出し近くにあった鉄パイプを手に取る。これでサイレントヒルでも安心だ!
「脱走だー!クケーッ!」
ばれました。そりゃミニマインだって爆弾だからな、爆音しますよそりゃ。とりあえず目の前のシタッパーを鉄パイプで優しく眠りにいざなってから外に飛び出す。
廊下には異変に気が付いたシタッパーで溢れていたのでとにかく数の少ない方に駆け出した。毎日のランニングのおかげもあって体が軽いのでスイスイと避けつつ走っていると例のグスタフが停められている部屋に到着した。
しめた!コイツの武装があれば脱出だって簡単だ!
グスタフの周りで工具をもって何かをしているシタッパーを鉄パイプで締め上げた後おれはグスタフに乗り込んだ。
「ん?なんだ──」
「なんでロースが乗ってんだよ!!」
鉄パイプでロースを眠りに誘う。いやマジでなんで乗ってんのこの肉。あと出そうとしても詰まってて抜けないんですけど。
「クケッ!ヤツがいたぜー!」
ああ逃れられない!こうなったらロースごとパイルダーオン!そこに見える壁からバン!脱出だー!
「って海やん!」
そりゃ考えたらこいつら脱獄したあとだったから島から逃げてるわな!これぞまさしくフォールアウト!
海に投げ出されたおれはやがて考えることをやめた。
■■■
なんやかんやあっておれはロースと共に海から救出された。
どうにも警察が後ろから追撃していたらしく、海に落ちたグスタフを見て回収に向かったそうな。んでもって文字通り蓋を開けたら人質と脱走者が入ってたんだからそらもうてんやわんやである。
おれは病院に突っ込まれた後人質になった後の経緯を話して、ロースがなぜグスタフに詰まっていたのかを聞いた。
なんと間抜けなことに太りすぎてて脱出時に無理をしたおかげで底が抜けて出れなくなり、グスタフのコクピット周りの解体を待っていたのだという。そりゃトロンとかティーゼルみたいな細身のヤツが乗るために設計されてるんだから無理があるでしょ。
そもそもの話、グスタフは廃棄されていたものをシタッパー共が有りあわせの物で修理した物であり耐久性にも難があった。ツメが甘いというかなんというか…。
で、
「ハード!無事でよかった!」
「心配したんだよ!」
現在ロックとロールの熱い抱擁を受けている。最初顔を合わせた時はまた怒られるのかビクビクしていたが、別にそんなことは無かった。まあ今回は完全なもらい事故であっておれ何も悪くないよね。むしろロースを捕まえたファインプレーを褒めるがよいぞ…。
そんな一幕の後は警察から感謝状と治療費と気持ちという名の結構な金額が送られてきた。治療費はぶっちゃけディグアウト協会の保険が効いたので大して掛かってないし、精神的負担とロース逮捕に対する気持ちの金額についても同様だ。
だがおれはもらえる物はもらっておく主義なので、ちょろっとお小遣い程度のゼニーをもらったあとは全部ロールに預けた。ぶっちゃけ金なんて外食と開発以外で使わんし…。
そう言って渡したゼニーは何故か服になって返ってきた。
「ハードはスタイルいいんだからオシャレしなきゃ勿体ないよ!」
ロールが持ってきたのはゴスロリドレス(ヘッドドレス付)と編み上げブーツとその他色々。こやつはおれに銀様になれと言っておるのか。
「ロック!見ろよこの無残な姿をよぉ!」
「……」
楽しかったぜェ~ロールとの着せ替え人形ごっこォ~!!まあ人形役はおれなんですけどね、ハイ。
最終的におれはロール一押しの真っ赤なフリフリドレス姿になっていた。手も真っ赤な長手袋、靴も真っ赤なピンヒールで赤尽くしである。ぶっちゃけ鏡で見た時は目に悪そうだと思ったものだ。
なんというか可愛いのは理解できるが、なんというか普段の格好が男物というかボーイッシュ系だからドレスなんか着ると全身がムズムズする。だけどやっぱり可愛いのでロックに見せつけに来た次第なのだ。でもやっぱりムズムズ。
「なんというか全身がムズムズするから脱いでいいか!?」
「駄目だよ」
何!?兄妹なら裸を見せてもOKではないのか!?
脱ぎたいけど脱げないジレンマを感じながらもじもじしてると、ロックがこっそり「可愛いよ」って言ってくれた。
ロックが…デレた…!?
衝撃である。今まで風呂上りに誘惑しようが胸を押し付けようが全く反応らしい反応をしなかったロックが「可愛いよ」…?
全身の血が頭に昇っているんじゃないかと思うほど顔が熱くなる。
「ロック!もう一回言ってくれ!」
「う…その、可愛いよ」
はあああああああん!(北斗有情破顔拳)今なら天にも昇れそうな気持ちだ!鼻やら口やらから溢れそうになるリビドーを押さえながら、おれは緩やかにロックの部屋から退室したあとその場で蹲る。
悶々とした気持ちが心のなかでグルグルしているのが分かった。やべえわ心臓発作とかで死にそう。
なんというか、そう。おれはやっぱりロックに惚れているのだ。この時ばかりはおれが女であることに感謝できるほどには。
でも無理やりは良くない。ロックの気持ちだってあるしロールもロックに惹かれているのだ。ここはロックが選んでくれるまで待つとしますかね、まだ14歳だし!
ちなみにその後胸を押さえて廊下で蹲っているおれをみたロールが再び病院にぶち込んでくれた。いやこれは恋という不治の病でございましてね…。