やあ、おれハード!元男の現女!今現在一人スープレックスからのホールドで天地逆転しているプロレスリング女の子さ!
何、難しい事ではない。みんなも飛行していた船が突然墜落すればこんな恰好になれるぞ。
そーいやロールが墜落するとか、ロックがカトルオックス島とか言ってたような気がするが頭がグルングルンしてまともに考えられない。確実に脳震盪ですわ…。
立ち上がろうにも体がフラフラで何ともならない。まるで生まれたてのビッグボスみたいだぁ…。そんなわけで床を這いまわるようなゾンビごっこをしていると視界がクリアになってきた。流石神さん特製の超回復ボディ、回復力はFPSの主人公並みである。
ガバリと体を起こすと配管だらけのエンジンルームが目に入った。そういえばバレル博士と一緒にエンジンのダメコンしてたんだっけ。
「博士、生きてるー?」
「な、なんとかのう」
とりあえずバレル博士の安否を確認すると返事があった。あたりを見回すと粉々になった真っ赤なディフレクターが…。なんてこった、フラッター号の心臓部が死んだ!
「やべえぞ博士!ディフレクターが木っ端みじんだ!」
「うーむ、困ったのう」
只でさえアガサ博士みたいな声してるんだからそういう台詞は止めロッテ!
内心にょわっていると博士が名案でも想い付いたように手をポンと打った。
「そうじゃ、ここは確かカトルオックス島じゃったな。ならまだ生きているダンジョンもあるじゃろうし、ディグアウトでもさせてもらおう」
名案でもなんでもねえ!ただの現地調達じゃねーか!
■■■
バレル博士のボケが炸裂したあと、おれはちょいと冷静になって考えてみた。あ、これ原作はじまったんじゃね。と。そして重大な事を思い出した。いや、どっちかというと思い出せないんだけどさ。
なんと今後の展開が頭からすっぽ抜けているのだ。主要なキャラの名前だったら憶えてるのにストーリーがサッパリわからん。これも全部神って奴の仕業なんだ。お の れ 神 さ ん !!
屋外に出た後そんなふうに神さんを呪ってたらいつの間にかバレル博士がパトカーに乗り込んでいる所だった。
サイレンの音を鳴らしながら走り去るパトカーを見送るおれ。わっつはぷん?
「なあロック、バレル博士は何で連れてかれたんだ?」
「…ハードってほんと人の話聞かないよね」
その後ロックに親切丁寧に説明された。かくかくしかじかまるまるうまうま。
「つまりバレル博士は事情聴取のために警官に着いてったってわけか」
改めてフラッター号を見てみると羽は折れてるわ、腹は擦ってボロボロだわガラスは割れてるわで外見上は無事な所を探すのが難しい状態だ。そらこんなん落ちてきたら事情聴取の一つや二つくらいあるわなぁ…。
ロールなんか縋りついて「フラッター号がぁ~」なんて半泣きで言ってるぞ。ロールのベソかいた顔だぞ超レアだぞ。
「泣いてるロールも…いいな!」
「ハード……」
めっちゃロックに呆れられた。
その後はなんか商店街入ってショッピングタイムとなった。なんでも街に入るには市民カードとかが必要だから、バレル博士が聴取のついでにカード作ってる間ここで暇つぶしでもしてきてネ☆というポリスメンたちのニクい心遣いらしい。
そんなわけでパンとか買ったりゴミ箱蹴ったりしてるとなんか三馬鹿っぽいズッコケ三人組がゴミ箱の前でたむろしているのが目に入った。見事にチビデブノッポが揃っている。+100点。
三人は何やら雑誌に夢中らしい。なにかなと覗き込んでみるとスケベ本である。そう、バンダナのオッサンとかが地面に設置してる系のアレだ。
チビなんか「いいオッパイでやんすゥ…」なんて言っている。ヤンスだからこいつは仮にヤベと呼ぼう。他の二人はジャイアンとイケメンでいいや。
しかしこの雑誌どうにもエロさが足りない。というかただのグラビア冊子である。おれはもう少し肌色とピンク色の多い本の方が好きだな。
「おっほほ!すっげえくびれだぜ!」
「いやらしいケツでやんす!叩きたいでやんす!」
「こんなボリュームのムネとかもんでみてぇ!」
「うぇひひ!水着めくりてぇ!」
しかしこいつらこっそり会話に参加してんのにおれの存在に気付かねえな。まあこの年頃の男の子は性に興味津々だろうから仕方ないッちゃしかたないけどね。おれ?現役で青春してますが何か。
「この水着の部分に黒い紙を置いてだな…」
「すげえ!もう裸にしかみえねえ!」
「大発見でやんす!」
「うおー!みなぎってきたぜー!」
しかしこいつらマジで気付かねえな!
■■■
なんか三人組と仲良くなった。気付かれた当初はなんか微妙な空気になったけどおれがいつも持ち歩いてる六代目「ムラムラ大百科」を見せつけるなりまたも皆で輪になって鑑賞会である。ちなみに一代目から四代目はディグアウト中に焼失、五代目はロース一味の件で自爆の犠牲となった。
そしてお互いに自己紹介。ジャイアンがジム、イケメンがマッシュ、ヤベっちがベンスリーというらしい。約66%がガンダムである彼らはカトルオックス・スーパーヒーローズという春日部とかでやってそうな自警団らしいぞ。
「だからオレの名前はオッシュだって!」
「えっマジ?」
もうちょっとでジェットストリームなんちゃらできそうな名前だったのに……。
気を取り直して再び鑑賞会。いろいろガン見している途中オルテガ?が「お前女なのに女の裸見て楽しいのか?」なんて聞いてきやがった。楽しいに決まってるだろ!
「いいかジム。世の中には男と女の両方で興奮出来る奴がいるんだぜ」
「えーっと。それって、レ、レ…ビアン?ってやつか?」
「違う!おれはバイセクシャルだ!」
バァーンと効果音が出そうなジョジョいキメポーズでドヤる。すると後ろからしばかれた。振り向くとそこには愛し(興奮材料)のロックが。
「あ、こいつロックって言っておれの兄貴な」
「コイツもバイなんちゃら?」
せっかくなので三人組に紹介するとガイア?がロックをバイと勘違いしたらしい。ロックはずっこけてベンスリーは「なんとも業の深い兄妹でやんす」とか言って戦慄していた。
「ボクはノーマルだよ!いくよハード!」
本人いわくノンケのロックに手を引っ張られて街の方のゲートに引きずられていく。三人組にじゃあなーと手を振ってロックの隣を歩くと顔を真っ赤にしたロックが「ハードのスケベ!」とか罵ってきた。ご褒美ありがたや~。
…ん?待てよ?こいつバイの意味を正しく知っていたよな。ならロックもスケベである可能性が結構なレベルで存在する…?
ロックも性に興味を持つ年頃だし枕の下にでもおれのセクスィー写真でも挟んでおこう。夢におれが出てもよし、ロックが見つけて所持するもよし。完璧じゃあないか…!
「ハード、なんか悪いこと考えてるでしょ」
「誰も損しないパーフェクトな策略なら考えてるけど」
「絶対穴だらけの策略だからやめておいたほうがいいよ」
絶対完璧だって。ロールに見つからなきゃヘーキヘーキ。