自分の中であった妄想を形に出来たら、と思い書いた次第です。なので遅筆だったり地の文があやふやだったりするかもしれませんが、その際はアドバイスをいただければありがたいです。
プロローグ
アルテリア法国 封聖省の一室にて――
飾り気の無い部屋に案内された一人の少年。ドアを開けると、少年を呼び出した女性がソファーに腰を掛けて待っていた。一言二言事務連絡を交わし、話は本題に入り――開口一番に発せられた言葉は少年の予想の斜め上を遥かに越えるものだった。
「……は? 今、何と?」
部屋に間の抜けた声が反響する。そのあまりにも突飛な話に思わず聞き返してしまう。話を持ちかけてきた彼女は自分にとって命の恩人でもある。そんな人の頼みを無下に断る事はあまりしたくはないが、話を受けるにはあまりにも脈絡が無さすぎる。
「え、いや、その。仰る事の意味がよく分からないのですが……」
「ふむ? 別段難しい事を言ったつもりはないのだがな。言葉通りそのままの意味だ。いいか、もう一度言う――」
そう言って恩人――《
「君には、帝国の学院に通ってもらいたい」
二度も告げられたその言葉に少年の開いた口が塞がらない。帝国という地を苦手としているのは彼女も分かっている筈。そのことに折り合いはつけたとはいえ、その上で言っているのだ。
「えっと、何故でしょうか。帝国に
少年はやんわりと断ろうとするが、セルナートはそれに首を横に振って答える。
「そういう訳ではないのだが……確かにその考えは道理だな。これは、私個人としての感情なのだが……君は日曜学校に通ったことがないだろう?」
「ええ、総長も知っての通り」
彼女は少年の過去を全て知る数少ない人物だ。その質問の答えは少年が語るまでもなく知っている。
「だから、せめて年相応の思いを――いや違うな。これは私の勝手な気持ちだ。君を縛り付けてしまった、贖罪のつもりなのだよ」
「贖罪なんて……!」
そんなことはない。
そう続けようとした少年をセルナートは手で制し、言葉を続ける。
「いや、私は君を
そう言うセルナートの表情に浮かぶのは、憂いや後悔。もっと別の手段があったのではないか、という何時までも消えることの無い、呪いのような感情だ。
だが、それを聞いた少年は穏やかに、だが確固たる意思を以て答える。
「お言葉ですが総長。私は、
そう言って、自分の胸の辺りを確認するように撫でた少年の言葉にセルナートがハッとした顔を向ける。そんな表情をする彼女が何処か可笑しくて、無礼と分かっていながらも笑みを溢してしまう。
「分かりました。そのお話、慎んでお受けします」
そう答えると、セルナートは憑き物が落ちたような顔で笑みを浮かべた。
「学院とは言っても軍人を育成する士官学院だ。君自身、得るものはあるだろう。是非、これからの糧としてくれ」
「はい――従騎士見習い、ソルティール・ネログリフ。慎んで拝命致します」
☆
「あれから間も無く6年、か。早いものだ」
彼が退出した後、何処か遠いところを見ながらセルナートは一人呟いた。今でも忘れられない、忘れようがない。あの日の出会い。
6年前、彼が10歳の時だ。最初に会ったときに、彼は死にかけていた。息も絶え絶えで、ただ死を待つのみだった。そこで途切れる筈だった彼の軌跡は、我等と同じ教会の狗になることで繋がった。一般人から、狗に成り下がることによって。
ずっと、悩んでいた。他に何か方法があったのではないかと。彼を一般人のまま、生き延びさせることが出来たのではないかと。だから、彼からあんな言葉が飛び出すだなんて思ってもいなかった。どうやら、時の流れというものは、予想以上に子供を育て上げるものらしい。
これで自分の罪が消えた、という訳ではない。しかし、セルナートの心の重責が軽くなった。
「全く、次に会うのが楽しみだ」
次に会うときにはどれほど成長しているのだろう。まだ見ぬ未来を想像して、セルナートは自分の知らぬうちに慈愛の籠った笑みを浮かべていた。
ここまで読んで下さってありがとうございます。文章が自分が思っていたよりも短くて読み返して驚きました。本当に難しいやつやでぇ……。
ソルティールの為に入学手配をするカーネリアさんマジお母さん。