【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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決闘後です。


009 事情聴取

取調室。

 

「どうしてもかい?」

「うん。それだけはダメ」

「そうか……」

 

クロノは頭を抱えた。

人体複製に関わる研究を再開したというプレシアの居場所を、フェイトは頑なに話さないのだ。

 

それがフェイトの選択であった。

やはり、母に想いを捨てさせることはできなかったのである。

 

「……そろそろ時間だな。昼食にしよう」

「あ、うん」

 

クロノは現時点でのプレシアの逮捕について、ほぼ諦めていた。

それよりも優先させなければならない課題は山積している。

最早プレシアは悪意を持ってクローンの量産を行うような、救いの無い犯罪者ではないと確定した。

 

ただ、フェイトを作り出した完全複製技術(プロジェクトF)が他の違法研究者の手に渡らないように、警戒していなければならない。

そのためにも次元航行艦『アースラ』をここから動かすわけにはいかなかった。

そうなると移送手続きが少々ややこしくなる。

護送艦の手配をしなければ。

 

フェイトの証言から事件の全容が明らかになり、戦闘を含む捜索等がしばらく必要なくなるとわかっているため、現地協力者であったなのはとユーノは自宅に戻り、元の学生生活に帰っている。

ユーノは『ロストロギア』を埋め込まれたというピュアに興味を持ち、数日に一度はアースラを中継して色々と話を聞いていた。

 

そしてピュアである。

髪の毛、肌、そして瞳までもが白一色に統一されている異常な容姿の、病弱な少女。

フェイトやアルフの証言では、完全に巻き込まれただけの次元漂流者にして協力者。

しかし、フェイト側にとっては彼女がいなければ解決には至らなかったと断言してしまえるほど、この事件の重要な鍵となった人物である。

 

まず、『ジュエルシード』探しについて、彼女のその魔法は凄まじい威力を発揮した。

詠唱には時間がかかるようだが、使うたびに1つは『ジュエルシード』が発見されていたのだ。

『アースラ』の設備をフルに活用した時と同等かそれ以上の性能を、個人が使う魔法が発揮していたのである。

 

次に、次元震が起こった戦闘の後。

フェイトは手の平を中心にそこそこ深い傷を負い、疲労も激しかったのに、ものの数分でほぼ全回復と言っていいほど回復させてしまったのだ。

 

さらに。

ピュアはプレシアの所に自ら乗り込み、何かを話したらしい。

話の途中か、プレシアは持病の発作で倒れてしまったが、それをきっかけに自分がやっていたこともすべて話し、フェイトとも向き合うようになったのだそうだ。

 

これはフェイトが完全複製技術(プロジェクトF)の産物、つまり人造魔導師であると知っていれば、まず不可能だと言える奇跡的な出来事であった。

プレシアに必要だったのは死んだ娘のアリシアで、当初プレシアはフェイトを娘とは認めていなかったのだから。

『ジュエルシード』をすべて集めたところで用済みとして切り捨てられ、つまり殺されていた可能性は高い。

管理局で捕らえたところで、まずその耳に言葉が通じるかどうかから試す必要があり、解決に持ち込むには膨大な時間が必要だっただろう。

 

ちなみに何を話したのかは、『自分の身の上を話した』と誤魔化すばかりで、ピュアは一切話さない。

フェイトもアルフもその場にはおらず、内容を知るのは聞いたプレシアと話したピュア本人のみ。

 

ここまで来ると、最早ピュア1人で事件を解決したようなものだった。

 

だが、ピュアは、ある余計な証言をしてしまっていた。

つまり、今現在プレシアが最後と定めている完全複製技術(プロジェクトF)の、完成への最後の道標を、ピュアが示したというのだ。

これは違法研究幇助、れっきとした犯罪である。

 

さらに、自身に埋め込まれた『ロストロギア』の使用についても、違法性を認識していたという証言が出てきている。

一応、所持については、ピュアがこれまで関わってきた人間では摘出が不可能なため、情状酌量の余地を認められる。

しかし、使用に関しては明らかに事情が異なってくる。

フェイトかピュアのどちらかが違法性を認識していれば、認識していた方に罪が向かう。

今回は悪用とは言い難い用法ではあるのだが、使用された『ロストロギア』の危険度が高すぎた。

 

『ウィジャボード』は次元を超えて目標に直接『接続』することで、あらゆる距離を無視して魔法を届かせることができる。

それだけならばそれほど危険度も高くないのだが、あらゆる防御まで無視してしまう特性があるのだ。

つまり、殺傷設定の弱い魔法でも、簡単に『接続』した対象を殺害できるのである。

防御を無視できるという話は、フェイトもアルフも知らなかった。

ピュアが黙っていたためだ。

 

フェイトが『ウィジャボード』の正確な危険度を知らなかったのならば、低い方の危険度で判定が行なわれ、精々指導か補導程度で済む。

それを見越して、ピュアは黙っていたのである。

 

ただし、これに関しては別の証言もある。

『時の庭園』に記録されていた、管理局の法律を記したデータの内、『ロストロギア』に関わる部分が削除されていたと言うのだ。

おそらく、フェイトやアルフが確認するのを防ぐ意味で、プレシアが削除したと思われる。

だから、あの時点でピュアが管理局の法律に目を通す機会は無かったのである。

これに関して、両者の証言が矛盾しており、現時点では確認することもできないため、どちらを信用するか、ということが焦点となる。

 

 

 

「クロノはどっちを信用したいの?」

 

供述調書を読んだリンディは息子のクロノに聞いた。

英才教育を受けたエリートとして何度も修羅場を潜ってきているとはいえ、クロノはまだ14歳の少年である。

こういう時の法律の『利用法』について話しておくのは、年長者の仕事であった。

 

「アルフの証言を信用するように持って行きます」

「不正解」

「え?」

「法律は自分に直接関係の無いものまで目を通しておくように」

 

と言ってから、模範解答を提示する。

 

「次元漂流者特例法、第2条2項を適用します。

倫理基準が違っていることもあるのだから、今回に限り細かいことは不問にするように」

「細かいことって……それでいいんですか?」

「今回限りよ。

ピュアさんに悪意は無かったわけだし、

ピュアさんの故郷がどこにあるのか、見つけ出すことがほぼ不可能だからこそできる、裏技ね」

 

実際、次元漂流者が元の世界に帰還できた例は皆無である。

法律としても半ば適当気味で、全3条。地球で言えばA3用紙1枚分と非常に短い。

次元漂流者に遭遇する確率が非常に少ないこともあって、管理局員ですらその法律の存在を知っている者は全体の2割ほどである。

 

「保護法じゃなくて特例法……あ、あった……日付が60年前……よくこんなの知ってましたね」

 

話を聞いていたエイミィが呆れ気味に呟く。

 

「えへん。伊達に提督はやってません」

 

リンディは胸を張る。

 

『次元漂流者特例法』。

内容は保護前に問題を起こした次元漂流者についての対応を定めた法律である。

大雑把に、第1条は悪意がある場合、第2条は悪意が無い場合、第3条はそれ以外の場合となる。

 

まさに今のピュアの状況に一致した法律であった。

 

 

 

「ピュア、有罪になるの?」

「その可能性はあるが、刑罰は発生しない。

管理局に保護される前の次元漂流者の行動は、違法な点があっても多少は罰が軽減されるんだ」

「そうなんだ……」

「僕も提督に指摘されて初めて知ったよ」

 

クロノは苦笑した。

 

限りなくゼロに等しい確率だが、次元漂流者が保護前に犯罪を起こしたり巻き込まれたりというケースがあるのだ。

保護前という事は管理局の法律を知らない可能性があるわけで、知りもしない法律に基づいた行動を求めるのは酷である。

 

そういう場合、どうするのか。

次元漂流者の故郷の法律で判断するのである。

故郷がわからない場合、大抵は罰が大幅軽減されることになる。

悪意が認められない限りは、だが。

 

「特に今回、あの子の行動は『ロストロギア』事件の解決に大きく寄与している。

裁判官がそれを考慮すれば、無罪も十分ありうる」

「そう、よかった」

 

フェイトはホッと溜息をついた。

 

自分の家庭の事情やワガママのせいで恩人であるピュアが犯罪者になってしまうのではないかと、話を聞いてから気にしていたのだ。

 

 

 

「さて、特例法の手続きのために1つ聞きたいんだが、君の故郷の名前はなんて言うんだ?」

「シェオールさ」

 

ピュアはクロノの質問に答える。

 

隣に控えていたエイミィが即座に『アースラ』のデータベースにアクセスし、検索を開始した。

『アースラ』のみのデータベースとはいえ、任務で出航する直前の最新データであり、量は豊富にある。

主に、管理世界、管理外世界、過去に滅んだ無人世界の3種から検索される。

そこから、該当する名前の世界が無いかどうか探すのだ。

これも必要な手続きの一つであった。

 

次元漂流者が元の世界を発見、帰還できたケースは皆無。

ゆえに、今回も発見される可能性は限りなく零に近かった。

 

だが。

 

「シェオールだって!?」

 

クロノは思わず聞き返す。

 

「え、どうして?でも……」

 

エイミィも戸惑う。

そこは、ミッドチルダから次元航行連絡船で1時間という近さにある。

 

「200年前に滅んだ無人世界だぞ……?」

「多分、そうだと思ったさ」

 

ピュアは目を伏せて言った。

 

「ミッドチルダとシェオールは敵対していたさ(・・・・・・・)

シェオール魔法が知られてなくて、ミッド語が標準になってるさ。

それなら、シェオールは滅んだんだと思うしかないさ」

 

 

 

 




第9話でした。
プレシアが生きていることで、アースラが地球付近に長期間留まります。
フェイトが『時の庭園』の所在を言わない以上、他の2人が口を出すべき話ではありませんから。

ピュアが6話でやったことが問題になっています。
やっぱりね、とも思いますが。

法律部分については捏造設定です。
罰を発生させても良かったんですが、色々と面倒臭い手続きが要ることに気付きまして、急遽管理局の法律を捏造しました。
法律はどう活用するかですよ。
もちろん、限界はありますが。

多分、読者がピュアをどう思うかはこの時点で大部分が決定されると、作者は考えています。
単なる最強系にありがちな、自分に酔った中二病か、Fateの衛宮士郎のような、正義の味方か。
あなたはどちらだと思いますか?

それでは。
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