【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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負けるな最新科学!


014 使い魔

ピュアは、運動神経が悪い。

お世辞にも良いとは言えない。

その、まあ、言わぬが仏という言葉もある。

 

そんな、とりとめもないことをマリエルは考えながら、体力測定のデータを取る。

 

肉体改造を施されているようだが、運動神経や体力の強化はされていないようだ。

本当に『ウィジャボード』と、先ごろ『シルマリル』と命名された、『リンカーコアのようなもの』を埋め込まれているだけである。

それ以外は何も改造されていない。

 

兵器として改造手術を施したのなら、これはむしろ不可解だ。

こんな、『ウィジャボード』の連続使用に耐えられないような体力では、使い勝手が悪かろうに。

 

それに、こんな運動神経では、どんな魔法や戦闘技術があっても台無しだ。

遠方の敵を感知できると言っても、それを一度使っただけで肉体への負荷から気絶してしまうのである。

しかも、小回りの利く直射魔法や誘導弾の適性が皆無。

これはシェオール魔法にそういった射撃魔法が無いとか、そういう話ではなく、ピュアの体質によるものらしい。

飛行魔法も使えない。

いや、今の彼女の運動神経では、使えたとしてもむしろ危険か。

 

「きゃん!?」

 

ルームランナーを模した体力測定装置の上で、ピュアは転ぶ。

 

「あっちゃー……」

 

マリエルは頭を抱えた。

 

この装置は、心肺機能や体温を計測し、1分ほどで体力の目安値を出すことができる優れものだ。

ベルトコンベアーの部分は、走る速度に応じて自動でスピードを調整する安全装置が付いている。

だから、それでも歩行中に転ぶピュアは、ある意味凄いのである。

現代科学の敗北だった。

 

同時に、くじけそうになった。

この装置をピュア用に調整したのは、他ならぬマリエルなのだ。

下限速度を排除し、正確でなくとも値が出るようにして、予想される数値でよしとしてもらえるように、上司に交渉したりもした。

まさか測定開始20秒で転倒するとは思ってもみなかったが。

 

そう。

ピュアの体力測定の前に立ちはだかったのが、後に『マイナス』と称される運動神経だったのである。

 

 

 

「護衛、ねえ?」

 

深緑色の長い髪をした上官服の女性、リンディは呟く。

マリエル・アテンザは、クロノと交替で諸手続きのために本局へ戻ってきたリンディ・ハラウオンに相談していた。

 

「ピュアちゃんは魔導師として登録されると思いますけど、あれじゃ戦闘なんて無理です」

「でも、いつも局員を貼り付けておくわけにはいかないわよ?」

 

時空管理局は、どの部署でも慢性的な人手不足なのだ。

それはマリエルも知っている。

 

だが、護衛がいなければ、ピュアの活動領域が、ほぼ管理局の部署内に制限されてしまうのだ。

大目に見ても聖王教会の敷地内までである。

とても現場には出せないし、一般社会に放り出して生きていけるような体力はない。

何より、様々な稀少特性のおかげで、反体制系の次元犯罪者の恰好の的である。

 

アルハザードからの生還者というだけで、違法研究者が飛び付くには充分なのだ。

さらにその身体に2つも『ロストロギア』を埋め込まれているとなれば、狙われない方がおかしい。

 

「ええ。ですから、使い魔を持たせてはどうでしょうか」

「いい手ね。異例だけど、あの子なら上も承認するでしょう」

 

リンディは頷いた。

なら、次にやることは使い魔の選定だ。

この手の話なら、使い魔を持った人間に頼むのが一番いい。

 

 

 

「なるほどな。

確かに今後を考えるなら必要だろう。ああ、選定は任せてくれ」

 

グレアムは話を聞いて頷く。

自分のところに相談が来たことも含めて、充分理解できる話だった。

 

モニタを閉じると、リーゼロッテを呼ぶ。

リーゼアリアは現在、地球にて守護騎士の動向を監視中だ。

 

「はい、お父様」

「ピュアが契約する使い魔を選定することになった。

そうだな、戦闘力を重視した種類の動物を中心に資料を集めておいてくれ」

「了解です」

 

リーゼロッテは退出する。

 

次に、申請が行くであろう第1統括部長にこの異例な申請について説明し、許可するように根回し。

この辺は別に越権行為ではなく、業務を円滑に進めるための準備である。

 

幸い、事情を説明すると、護衛が必要なことと、使い魔が最適ということは、すぐに理解してもらえた。

選定はこちらで行うことも話す。

それから他愛の無い愚痴や世間話をして、通信を切る。

 

「やれやれ、すっかり老人の仕事をするようになってしまったな」

 

1人きりとなった部屋で、グレアムはぼやいた。

 

使い魔は、古来未解明の術式を使用して、死に際か死んだ直後の動物の魂と契約を結び、擬似魂魄を与えて主従関係となるものだ。

契約後は元々の魂を元に擬似魂魄を精製するため、ほぼ同じ記憶を留めた別の存在となる。

必要に応じて短期間だけ契約することもあるが、基本的に契約が解除された後は使い魔は消滅する。

また、一部では高性能な使い魔と生涯の契約を結び、良きパートナーとして助け合うこともあるようだ。

 

ミッド魔法で唯一、未解明な『魂』の概念が適用される魔法でもある。

 

 

 

「……」

 

ピュアは苦笑いを浮かべていた。

一種の不死身であるこの真っ白な少女は、自分の死を恐れない。

自分より他人を優先する。

だから、護衛も使い魔も、必要だとは思っていないのだ。

 

「君はいいかも知れんが、我々は君を護衛しなければならない。

犯罪者が狙ってくるのがわかっているのに、むざむざ放ってはおけないんだよ」

 

グレアムは言葉を選びながら説得する。

 

「君には既に何人もの友人がいる。私だって、君には幸せになってもらいたい」

「う、うん……それは……うん……わかったさ」

 

ピュアは、白黒2つのリボンに手をやりながら、色々と悩んでいる顔をしながら、渋々頷いた。

 

はっきり言って、この説得に一番骨が折れたとグレアムは思う。

自分のために、死にそうな誰かを犠牲にすることを好とするか。

それについては未知数だった。

完全に納得したわけではないだろうが、頑固に拒否しなかっただけ説得のし様はあった。

 

 

 

第203管理世界『シュレイド』。

 

管理世界と言いながら、その世界に魔法は存在しない。

いや、ある意味で存在すると言っていいのか。

ただ、その世界の野生生物には魔法が効き難い。

 

一応、密猟防止のために管理局の拠点があるのだが、実際は密猟者の保護(・・)が主任務である。

質量兵器もその世界で人に向けないなら特例として許可されているのだが、現地の専門家でなければ、高価な素材を入手可能な野生生物と、まともに戦うことすらできないのだ。

 

専門家は、自分が倒した魔法生物の素材を集めて道具を作り、それが魔法のような効果を生み出す他、魔法が通じにくい魔法生物を打ち倒すことができるほどの威力を持った武器を作る。

ただ、それは忍耐力と判断力、そして果てしない根気が必要な戦闘であり、数日間狩りに出かけたまま戻ってこないこともある。

 

そんな危険な魔法生物の子供が保護されたらしい。

 

種族名は『ラージャン』。

現地では牙獣種に分類されるモンスターで、素早い動きと強大な魔力、それに威力の高い攻撃力を誇るそうだ。

危険度のレベルは現地では最高ランクで、生態調査すらままならない危険生物である。

 

問題は、子供を保護したはいいものの、育てる方法を誰も知らないし、引き取り手もいないことだ。

かといって、野生に戻すわけにもいかない。

『ラージャン』が1頭出れば何人専門家が死ぬかわからないというほどの、文字通り怪物(モンスター)なのだ。

 

 

 

「にゃあ」

「かわいい」

 

フェイトはピュアの肩にちょこんと乗った子猫を撫でた。

 

毛並みは茶色と山吹色の虎模様。

親代わりであるピュアに頬擦りし、舐める。

 

「名前はクリアさ」

「よろしくね、クリア」

 

話しかけながらフェイトが顎を撫でると、応えるようにその手をぺろりと舐めた。

アルフが苦い顔で眺めている。

 

「色々と不思議な使い魔なんだよね」

 

リーゼロッテが言った。

 

まず、『ラージャン』とは、体長5、6mほどもある巨大なゴリラのような容姿の動物である。

頭の左右に長い角を持つのだが、子猫フォームのクリアには角が無い。

また、本来『ラージャン』の体毛の色は黒であり、戦闘時、時折部分によっては金色になるそうだ。

クリアは辛うじて虎模様だが、似ても似つかない。

 

最後に、『ラージャン』は猫科の動物ではない。

 

「後で、猛獣フォームの時の戦闘力を測るからよろしく~」

「あ、私やりたい」

 

フェイトが手を挙げた。

 

「推定ランクAAだけど、いい?」

AA(ダブルエー)!?」

 

アルフが驚きの声を上げる。

 

「魔力量からの推定値でAA(ダブルエー)だから、単純計算でSまで伸びるのかなってとこだね」

 

成長の早い使い魔といえど、ある程度の訓練は必要になる。

訓練や実戦で有効な魔法や戦術を覚えて、成長しきると魔力量に応じた性能を十全に発揮する。

そこまでには大体半年くらいかかるのだが、一応それ以上に経験を積んで強くなることは可能。

 

ちなみにアルフは現在推定でAAランクで、魔力量に値するくらいまで性能を発揮できるが、数十年もの歳月を生きてきた、同じAAランクのリーゼロッテには負ける。

 

なぜアルフが驚いているのかというと。

契約したばかりのアルフは、推定Bランクだったのだ。

生まれたてでAAのクリアは、彼女から見ればエリートなのである。

 

「あ、アタシやる!!」

「アルフ、声大きい……」

「あ、ごめんよ……」

 

 

 

順番は、アルフの強い希望でアルフが一番最初、次にフェイト、最後にリーゼロッテとなった。

 

模擬戦の会場は本局内の訓練施設だ。

ミッドチルダの魔法技術で空間容量を誤魔化した、最新鋭の空戦シュミレータである。

部屋の容積よりも、内部の空間は遥かに広い。

空戦は基本的に上空で行なうため、陸戦と違って広い空間があればいいため、技術的にはそう難しくはない。

 

ただ、空戦ができないクリアのために、漂流物を宙に浮かべてあった。

この漂流物は、大破した次元航行艦の残骸だ。

小さいサイズの船の操作を誤り、派手にぶつけたらしい。

幸い、軽傷者が1名で済んでいるが、操舵手は弁済のために悲鳴を上げているそうだ。

 

原因究明の調査も終わったため、処分するところだったものをリーゼロッテが借りてきたのだ。

もうこの残骸に用は無いので、派手に壊していいという。

 

『クリアがんばるさ~』

『にゃあ』

 

念話に鳴き声で返してくる子猫。

大破した次元航行艦の上で、よたよたと定位置まで歩いている。

 

言葉はわかるようだが、鳴き声でしか返さない。

これも、この使い魔の不思議なところだ。

 

『それじゃあ模擬戦スタート!』

「さあ、遠慮なくかかってきな!」

 

同じく残骸の上のアルフはオレンジ色の狼になって気勢を上げた。

決して、フェイトが可愛がっていたから、その嫉妬をぶつけたいとか、そういう意図はない。

ないったらない。

 

作戦はこうだ。

クリアはなりたての使い魔のため、ペース配分が全くできない。

おそらく序盤からガムシャラな猛攻を仕掛けてくるはずだ。

それを避け続けて疲れさせ、頃合を見て反撃するのである。

 

「にゃー」

 

クリアはひと啼きすると、瞬く間にそのシルエットを変えた。

人間の身長ほどもある体高、拳を地面に付けながら間合いを測るその黒い巨躯は、ゴリラに似ていなくもない。

だが、頭の両側に長い角の生えているゴリラなど存在しない。

 

ざわり、とアルフの鼻先から尻尾まで、悪寒が駆け抜ける。

今まで抑えられていた魔力が、変身と同時に解放されたのだ。

荒々しくも猛々しい魔力は、なるほど、鍛えればSランク、というのも納得させられる。

 

クリアは大きくモーションを付けて突進した。

アルフの位置まで、重厚感たっぷりに走り、角を振り上げる。

しかし、そんな大振りの攻撃に当たるアルフではない。

難なく避けて、そして思わず誘導弾を撃ち込む。

まだ反撃する予定ではなかったのに、圧迫感(プレッシャー)のせいで攻撃させられたのだ。

 

クリアはその誘導弾の直撃を受けてごろんと転がるが、さしてダメージを受けたようには見えず、すぐに起き上がって向き直る。

 

「そむ、そんなんで終わりってんじゃないだろうね!」

 

アルフは挑発した。

一瞬セリフを噛んだのはご愛嬌だ。

 

「がおー!」

 

クリアは甲高い少女声で吠えると大きく口を開いて、巨大な直射弾を放った。

誘導はしないが、大きさが砲撃魔法に匹敵するほどある。

電撃の変換資質を持っているらしく、白い火花が散っていた。

 

「どわっ!?」

 

まさかそんなものが飛んでくるとは予想していなかったアルフは、慌てて回避に入った。

その巨大な直射弾は、小型次元航行艦の艦首に直撃し、一瞬で粉々に粉砕する。

 

「あれって、非殺傷、だよね?」

『非殺傷だよー。でも、直射なら幾つかに分散した方が、この場合は効率はいいねー』

「チキショー!」

 

リーゼロッテの呑気な念話にアルフは毒づいた。

目の前でクリアがその通りのことをやったのだ。

 

大きく開いた口から10発ほどの雷弾を散弾銃のように放つ。

 

「うああああああっ!!?」

 

なんとか、辛うじて雷弾の雨を回避する。

リーゼロッテが余計なことを言ったおかげで、回避が格段に難しくなった。

しかし、まだまだ雷弾の大きさがあって数は少なく、回避だけで凌ぐことはさほど難しくない。

 

そんなことを思っていたら、クリアが突進してきた。

回避直後の隙を突いてきたのだ。

 

「だああああああっ!?」

 

アルフは慌てて空中に退避する。

 

大きいというのは中々に厄介だ。

特大雷弾も下手をすれば、以前戦った白い魔法衣の少女が得意な砲撃魔法に匹敵する威力がある。

直撃を受ければ、決闘の時のように防御の上からでもかなりのダメージを受けるだろう。

そして、その隙に飛び込んできた巨体に()かれる。

 

しかし、空中なら少なくとも、あの突進を受けることはない。

それが唯一にして最大の、猛獣クリアの欠点だった。

 

「うがー!」

 

クリアは前足を天に掲げて、2本の後ろ足で立ち、吠える。

ビリビリと空気を震わせる咆哮の直後、圧迫感(プレッシャー)が増した。

クリアの黒い毛並みが金色の虎模様に変化し、逆立つ。

 

「くっ……!」

「がおー!」

 

クリアは4足歩行に戻ると、アルフに向けて30発以上の雷弾ブレスを放った。

数が増えるに連れて小粒になっていくが、回避は難しくなっていく。

1発だけ防御魔法で耐え、クリアの様子を見る。

 

「!?」

 

眼前に迫った金色の巨体に、一瞬判断が遅れた。

まさか空中に飛び出してくるとは思わなかったのだ。

 

縦回転しながらの空中突進を避け損ない、それに接触したアルフは空戦シュミレータの壁面まで弾き飛ばされた。

壁面に張られた衝撃吸収バリアに受け止められるものの、全身がバラバラになるような衝撃を受け、その日再び立ち上がることはできなかった。

 

 

 

 




第14話でした。
使い魔クリア誕生です。
モンスターハンターより、金獅子ラージャンです。
殺るにせよ殺られるにせよ20分で終わると言われたアレです。
ひろっさんはMHP2ndGまでしか持っていませんが。

モンハンのラージャンって、何科の動物なんでしょうか?猿?
もちろん、なぜ待機状態が猫なのかは、考えていません。
あえて言うならば、ネタ的においしいからです。

使い魔の説明について。
wikiで調べました。
NANOHAwikiの方には無かったんじゃないかと思います。
魂の概念が無いとされることが多いミッド魔法ですが、この使い魔に関してのみ存在するようです。
本編にもある通り、未解明ですが。

ただし、使い魔のランクについては捏造です。
クリアがここまで高レベルなのは、ロストロギア補正があるからです。
シルマリルから魔力を引き出せば、魔力資質は実質SSS以上ですからね。

それでは。
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