【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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最新科学は勝てませんでしたが、機械には弱いようです。


015 シェオール魔法

“不正な処理が行なわれました。強制終了します”

「う~」

 

白髪、真っ白な肌、白い瞳の少女、ピュアは涙目になる。

 

「大丈夫だから、ね?」

 

優しく教えるのは長い金髪に、ピュアに較べればやや色付いた白い肌、赤い瞳の少女、フェイト。

 

ピュアはデバイスの操作が苦手である。

ミッド式デバイスに多いコマンド方式が苦手なのだ。

 

以前、『ジュエルシード』に関するレポートを作った時は、アルフにデバイス操作は任せ切りだったし。

何より、ピュアが生まれた時代、デバイスは存在していなかった。

少なくとも、シェオールには。

 

だから、デバイスの操作法を習うのはこれが初めてである。

 

それでも、とりあえずリーゼ姉妹に習い、魔法以外での利用法に関してはなんとか覚えたのだが。

コマンドによる魔法発動に関しては、中々進んでいない。

 

今はとりあえず、翻訳魔法について試していた。

数少ない、効果の上ではミッド式が勝る魔法である。

唯一、デバイスで発動可能な魔法でもある。

 

 

 

場所は変わり、本局第4技術部、マリエル・アテンザのデスク。

 

「全く、難儀な魔法もあったものよねえ」

 

現在、シェオール式デバイス開発計画が立ち上がっている。

メンバーはマリエルを含む数名の技術者と、外部の人間ではあるが、中央大学の魔法科学専攻の教授2名。

 

はっきり言えば、ここ数ヶ月の解析で、教授2名はシェオール専用デバイスの作成については匙を投げていた。

センサーや演算力で術者をサポートする方式に切り替え、お茶を濁す方向に出ているのだ。

しかし、上層部の命令はあくまでシェオール魔法の術式を保有し、手っ取り早く適性検査が可能なデバイスの開発である。

 

ところがである。

ピュアの話では、今現在発動可能な翻訳魔法を除き、特殊な訓練がなければ発動させることができないというのだ。

肝心の訓練の内容については、魂の瞑想や修行など、非科学的な言葉が並び、とても実現できるとは思えない。

 

わかったことは2つだけ。

シェオール魔法の、3つの会得条件と、シェオール魔法がどうやって発動しているか、である。

 

3つの会得条件は以下の通りである。

1.自分の魂を感じ取る、特殊な訓練。

2.既に会得した術者の血を飲む儀式。

3.死の体験。

この内、2つを満たせばシェオール魔法を会得することができる。

 

3つ目の『死の体験』は、言わば臨死体験である。

危険の多い管理局員とはいえ、臨死体験となるとそうそうあるものではなく、実際に危篤状態にするわけにもいかないので、却下だ。

 

自然、1つ目の『特殊な訓練』が必要になるのだが。

ピュア自身はその訓練を受けていないため、実際に何をするのか知らないのである。

 

彼女がどうやってシェオール魔法を会得したかというと、臨死体験をしていたからなのだ。

転生によって。(※ 一般向けの説明。実際は死亡、蘇生を体験したため)

 

次に発動方法である。

これがシェオール式デバイスの肝となる部分だ。

 

まず、高度なシェオール魔法には、ありえない術式が存在する。

本来、何も処理しないはずの部分で処理を行なうのだ。

どういうことかと言うと、魔力素の濃淡で、その部分を通る魔力の減衰増幅や減速加速を行なうのである。

その部分の処理を行なうためには、修行などによって魔力素を感じ取り、操作する技術を会得しなければならない。

 

つまり、単純な術式と魔力結合が基本である現在のミッド式の魔法技術がベースでは、完全再現は不可能なのだ。

もしできたとしても、魔力素操作が可能な装置とセンサーを組み込むだけで、開発予算の数倍もの値段がかかってしまう。

その上に術式と連携させることができる演算装置を組み込めば、どうやっても大型トレーラーの大きさになる。

しかも、それだけのことをしたとしても、実用には遠く及ばない精度にしかならない。

 

「どう、マリー?例のプロジェクト」

 

腐の道に入ってしまった同僚が聞いてくる。

あの性癖がなければ、腕は確かなのだ。

変態性癖のせいでプロジェクトから外されてしまっているが。

 

「もうどうにもならないわ。上層部が命令を取り消さない限り、確実にポシャるわよ」

「融通利かないわねえ」

「しょうがないわ。課長も部長も、評議会の命令には逆らえないんだから」

「現場も辛いわねえ」

「全くよ」

 

マリエルは苦笑した。

 

とりあえず現在はプロジェクトの会合での、『評議会が望む形でのデバイス開発は不可能』という報告を上げて、返答を待っているところだ。

その間は、補助用デバイスの構成を考えながら、他の業務をするしかない。

 

「ただ、構成って言っても、ミッド式と互換性を持たせるか、シェオール式1本で特化するかしかないわ」

「やることが限られてくるのね」

「そういうこと。こんなの、誰が考えたって差は出ないわよ」

 

ミッド式と互換を持たせるというのは、1つのデバイスで2種類の体系の魔法を使えるようにするということ。

近代ベルカ式デバイスについては、大半がこのタイプである。

 

もう1つ、シェオール式のサポートに特化したデバイスにする場合、結局ミッド式がベースになるため、ミッド式デバイスを別にもう1つ持って、連携させるという使い方が基本となる。

もちろん、ミッド式ベースの近代ベルカ式デバイスと連携させることも可能だ。

 

この2つを踏まえた上でデバイスを設計するとなれば、生産性、性能、拡張性の面から、どうやっても設計が似通ってくる。

まあ、それだけに少しの差が如実な結果となって現れるため、手を抜くわけにもいかないのが辛いところだが。

 

 

 

 

 

 

 

海鳴病院。

 

赤い三つ編みの少女は壁際のベンチで眠っていた。

膝枕をしているのは、短めの金髪の女性。

 

2人が待っているのは、検査結果だ。

彼女らの主である八神はやてが、発作で倒れたのである。

 

理由は分かっていた。

『闇の書』による侵蝕である。

以前から下半身の麻痺に苦しんでいた少女だが、その麻痺は徐々に進行し、ついには内臓の部分にまで達しつつあるのだ。

 

果たして、出てきた検査結果は予想通りであった。

いや、予想以上か。

 

「ここ最近、麻痺の進行率が異常に早まっています。何か、心当たりはありませんか?」

 

『闇の書』の起動による守護騎士達(ヴォルケンリッター)の出現と維持。

そのために、まだ年端もない少女の体から、魔力が搾り取られているのだ。

既に魔力資質(リンカーコア)を『闇の書』に取り込まれて、その上で搾り取られている。

だから、麻痺が進行している。

 

彼女らはそう結論付けた。

 

そして。

主の意思に背いての『蒐集』を決意する。

 

 

 

「とはいえ、パトロールしている魔導師を襲えば、何かあると言っているようなものだな」

 

シグナムは唸った。

 

簡単に襲えばいいという話ではないのだ。

彼女らの主、八神はやてはまだ年端もない少女で、しかも下半身を麻痺している。

 

ミッドチルダの魔導師が別件で次元犯罪者を警戒している以上、下手に襲撃すれば本物の次元犯罪者が出てきて、彼女を危険に晒す可能性があった。

パトロールが続いている現状は、別口の犯罪者にとって厄介な状況で、八神はやてにとってはある程度安全な状況とも言えるのである。

 

「まずは人間じゃねえヤツから探すか?」

 

ヴィータが聞く。

 

「ああ、それも、この世界の生物は避けよう。

この世界で『蒐集』するのは、我々の個人転移ではどうしようもなくなったときだけだ」

「それが無難か」

「はやてちゃんに疑いの目を向けさせるわけには行きませんから……」

 

シグナムの言葉に皆が頷いた。

 

臆病とも言えるほど慎重になっているが、管理局のパトロールが味方として働くのは、彼女らの主が魔導師として認識されていないからである。

『蒐集』している事実はいずれ明るみに出るだろうが、その際に主を特定させる材料は少なくするように動いた方がいいのは言うまでもない。

また、管理局が『蒐集』に気付くのが遅れれば、その分『蒐集』活動は早く進めることができる。

 

管理局のパトロールが付近をうろついているという事実が、彼女らをそれだけ慎重にさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

ピュアのデバイス操作練習の最中に、ユーノがやってきた。

 

彼は一度、しばらく故郷であるスクライア一族の里に戻っていたのだが、家族と折り合いを付けて戻ってきていた。

考古学者を志す彼は、今はピュアの持つ知識に興味がある。

最近はピュアに色々と質問して、話をレポートにまとめる毎日である。

後にこのときのレポートが高く評価されるのだが、それは別の話か。

 

辛うじて10回に1度くらいは成功するようになってきた、デバイスを利用した魔法発動を練習するピュアに、ユーノは声をかける。

 

「ピュアから見て、ミッド魔法ってどんな風に見えるの?」

「物凄く力任せに発動してるように見えるさ」

「力任せ?」

「術式が凄く丈夫で、大魔力を流しても術式が潰れたりしないさ」

「術式が潰れる?」

 

ピュアはデバイスを操作して、術式を表示する。

いわゆる『デバッグモード』だ。

魔法が発動するかどうかをチェックするのに、よく使われる。

ピュアが持たされている医療補助用の記憶型(ストレージ)デバイスだけでなく、フェイトの『バルディッシュ』や、なのはの『レイジングハート』にもある機能だ。

 

「ここのところ、よく見てるさ」

 

ピュアは指差し、何度も練習に使った翻訳魔法をデバイスで起動する。

 

魔力結合を行ない、一気に魔力を流すと、彼女が指差した部分が弾けて勢い良く魔力が漏れ出した。

 

「あっ」

“不正な処理が行なわれました。強制終了します”

 

計測された瞬間出力は、さほど大きなものではない。

しかし、術式の強度が低いため、すぐに短絡(ショート)してしまうのである。

 

術式の強度とは、普通の魔導師も一般人も、まず知らない用語である。

大抵はデバイスの側で調整するし、調整しないとしても、基本的に強度は高く設定されているため、普通は気にすることはない。

 

この術式の強度は、電子回路に例えれば解り易いだろう。

強い電流(魔力)を流すには、高い電圧(出力)が必要になる。

しかし、ダイオードなどの部品によっては、電圧(出力)に耐えられずに壊れてしまうものがあるのだ。

 

また、高い電圧を流せば容易に放電を起こし、回路が短絡(ショート)して破壊されてしまう。

強い電流は熱を発し、細い導線なら簡単に熔けるだろう。

 

対策するとすれば、より強い部品を使ったり、より太い導線を使うことである。

これが魔法の場合は『術式の強度を上げる』という言い方をする。

 

ただし、魔法の場合は術式の強度を上げると、発動のためにより多くの魔力が必要となってしまうのだ。

 

ミッド式では、この強度がかなり高く設定されており、その分制御も容易で詠唱の高速化が可能となっている。

シェオール式の場合は、魔力素操作技術の普及と共に術式強度の変更が普通になり、消費魔力の節約のために、術式強度は低く設定されているのだ。

その分魔力の制御が難しくなり、詠唱にも長大な時間がかかるようになってしまっている。

 

今回は、元々低い強度の術式のまま登録してしまったため、デバイスによる最低出力が術式の強度を上回ってしまったことで、術式が破綻してしまっているのである。

 

「そんなことになってたんだ……ごめん、ピュア、全然気付かなかった」

 

時々、どこか抜けているフェイトである。

まあ、今回は知らなかったことも多く、仕方なかったかもしれない。

 

「これはデバイスで出力操作できるのかな?」

「なんだか、無理っぽいさ」

「でも、そんな状態でよく成功したよね?」

「魔力の流れを半分逸らすように術式を変えたさ」

「そうだったんだ……」

「でも、逸れる魔力が不安定になって、10回に1回はまぐれで発動しただけさ」

「そんなことまでわかるんだ……」

 

ユーノは感心した。

さっきのように短絡(ショート)の模様をちゃんと見たわけでもないのに、状態を理解して術式に手を加えたのである。

 

だが、ピュアは拗ねたような口調で言った。

 

「50回も繰り返せばさすがにわかるさ」

「あ、ああ、そうだったね」

「とりあえず、強度操作ができないか、マリエルさんに聞いてみるよ」

 

この後マリエルに指摘されるまで、術式強度を強くして登録し直せばいいとは気付かなかった3人である。

 

 

 

 




第15話でした。
シェオール式デバイス開発計画というのは、つまりシェオール魔法をピュア以外にも使えるようにしようという試みです。
妙な命令による横槍が入っていますが、その命令の大本は最高評議会です。
このくらい言わないと本気でやらないとか考えているようです。

守護騎士の行動が最初から原作から外れます。
無断で蒐集するのはそのままですが、いきなり別の世界で始めます。

シェオール魔法の説明ですが、ミッド式の天敵になるように考えました。
そのために捏造した設定がこの、術式強度です。
最強系女主人公も楽じゃないんですよ。

それでは。
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