【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
ピュアの書類手続きが終わった。
保護指定人種、障害認定、次元漂流者認定など、他10種もの手続きの認可が下りた。
何より時間がかかったのは『ロストロギア』特別所持認可だろう。
普通、『
その人でなければ扱えないものでも、封印状態での所持が基本となる。
ピュアの場合、ミッドチルダの技術ではピュアの命を損なわずに摘出、あるいは封印する方法がない。
しかも、ピュアが死んだ場合、別のどこかわからない世界へ転生してしまうのだ。
その場合、反体制派の次元犯罪者の手に渡ってもおかしくない。
それなら起動できないように処置した部屋に監禁してしまえという乱暴な意見もあったが、当然却下された。
『伝説の三提督』の総意で。
理由は、『ジュエルシード』事件の最終的な解決に、命懸けで尽力したことである。
いつ暴れ出すかわからないプレシアの狂気を鎮めたのはピュアなのだ。
おかげでプレシアは危険度の高い古代遺失物『ジュエルシード』を最良の形で手放した。
その功績に監禁で報いるのは、管理局の信用を失墜させることに他ならない。
だから、ピュアの身体に埋め込まれた2つの『ロストロギア』について、評議会は認可せざるを得なかったのだ。
というわけで、11月の半ばから、ピュアは自由の身である。
フェイト、ピュア、アルフ、ユーノ、クリアが地球に降り立つ。
パトロールが続いているのは心苦しいが、今は新しくできた親友達と自由を歓びたい。
「何か、空気が違うさ」
真っ白な少女ピュアは呟いた。
「そうかな?」
「もしかして、魔力素の違い?」
長い金髪の少女フェイトは首を傾げ、薄茶色の髪の少年ユーノはピュアの性質を考えて言ってみる。
ピュアは『魔力素操作』を行うことができるのだ。
ならば、何らかの方法でそれを感知する能力があってもおかしくない。
「特に変な魔力反応はないけどねえ」
「ちょっとわからないさ。でも、前に来てたときと何か違うさ」
「何かな?前と違うのって、『ジュエルシード』の有無とか?」
「わからないさ。でも、何かピリピリしてるさ」
「ピリピリ?」
「ここで考えても仕方ないよ。とりあえずなのはの家に行ってみよう」
「そうだね。なのはが知らなかったら、アースラの方に連絡を入れてみよう」
4人の考えはまとまり、降り立った海鳴臨海公園から、目的地である友人の家に向かった。
「(ピリピリ?監視されていることに気付いたのか?)」
そんな4人を遠くから眺めるのは、白い仮面の男。
「(『情動感応』を警戒して距離を開けているのに、まだ足りないというのか?
……いや、『闇の書』が起動している。その影響かも知れない。いずれにせよ用心に越したことはないか)」
男の位置は、4人から1kmは離れていた。
「(しかし、最初から別の世界で『蒐集』を開始するとは予想外だった。
情報をリークしていなければ、管理局側も気付かなかったかもしれないな)」
男は少し距離を離すように移動しながら4人を監視し続け、4人が友人の家に入ったところで溜息をついた。
「とりあえず守護騎士に動きはなしか……別世界での蒐集に徹するようだな」
彼は呟き、監視を続行する。
高町家。
今日は休日ということもあり、自営している駅前の喫茶店『翠屋』は忙しい。
本場で修業してきたパティシエであるなのはの母、高町桃子が作るシュークリームは絶品で、大人気なのだ。
クリスマスが近いこともあり、彼氏が頑張って良い雰囲気のままクリスマスに入ろうとしていたり。
いわゆる書き入れ時である。
ゆえに、今日はなのは以外は店の手伝いで外出している。
ということで、家の中ではアルフもユーノも遠慮なく人の姿でくつろぐことができた。
「にゃ~」
「かわいい!」
なのはが目をキラキラさせながら指先を舐められている。
クリアはいつも通り、子猫フォームのままである。
シェオールにも使い魔はあるようだが、術式が違うのか、基本が子猫で戦闘時は猛獣、そして言葉を話さない。
アルフだけはなぜかビクビクしていた。
最初の模擬戦で圧倒的な
ちなみに、『ウィジャボード』やピュアの出生については、フェイトのビデオレターを通してなのはは聞いていた。
今は特に気にせずに振舞ってやってほしいというフェイトの言葉も。
フェイトは、もう1つ埋め込まれている『リンカーコアのようなもの』が、
しばらく様子を見てから、仮の保護者であるリンディから知らされる予定だった。
ユーノもアルフも大体同じである。
これには出る情報を制限するという意味もあり、フェイトの精神状況を鑑みただけの決定ではない。
「そういえばなのは」
ユーノがなのはに聞く。
「何か変わったことはない?」
「特にないけど、どうして?」
「あ、ピュアが『ピリピリする』って言ってたの?」
「うん。早い目に聞いておいた方がいいと思って」
フェイトの言葉にユーノは頷いた。
「ピュアには魔力素を感じ取る力があるみたいなんだ。多分、それで地球の変化を感じたんだと思う」
「魔力素をなの?」
「うん。だから、感じ取ることは魔法的なことだとは思うんだけど……」
「えっと、私にはちょっとわからないの」
「そっか……じゃあ、『アースラ』に連絡してみる?」
特に異論は出ず、『レイジングハート』から地球付近の次元空間に停泊している次元航行艦『アースラ』に通信を入れた。
『はいはーい!大勢で揃ってどうしたのー?』
茶髪のノリノリな管理局の制服の少女エイミィが出た。
「『アースラ』の方で何か変化は観測されてませんか?」
ユーノが聞く。
『地球で?』
「ええ。ピュアが『ピリピリする』って言ってたんです」
『地球で、はないかな……そうそう、ついさっきのことなんだけど、近くの無人世界で魔法生物が襲われてた痕跡が見つかったの。砂嵐の中だったから、ノイズが酷くてまだ確定ではないんだけど、何かわかったらまた教えるね』
「あ、はい」
「そうだったんだ……」
「じゃあ、ピュアは別の世界のことを感じ取ってたってことなのかな?」
「えっと……多分それは、偶然が重なっただけさ」
ピュアは否定する。
魔力素の感知能力も、あくまで地球上どころか付近数kmの魔力素を感知する程度である。
皆には秘密にしている
別の世界のことなど、次元間通信か『ウィジャボード』でも使わなければ、感知することはできない。
『ピュアちゃん、今もピリピリするの?』
「今はなくなってるさ」
これは正直なところである。
おそらく、原因となる何かがピュアの感知範囲の外に出てしまったためだろう。
今は何も感じない。
一方、次元航行艦『アースラ』。
エイミィは艦長リンディに、なのは達との通信について報告していた。
「シェオール魔法の解析データから、ピュアちゃんは魔力素の操作能力があるとされています」
「ええ、『ピリピリ』というのは、
あの子の魔力素感知能力が地球の変化を感じ取ったということも考えられるわね」
シェオール魔法は、半年に及ぶデータ収集にも関わらず、デバイスで再現するには至っていない。
その理由はシェオール魔法には必要な、魔力素の感知能力なのだ。
それを本来は修行で身につけるのだが、情報が少なすぎたため、修行法も操作技術も確立できなかったのである。
「本当に関連性はないんでしょうか?」
「現時点ではなんとも言えないわね。一応、地球のパトロール隊に異常が無いか確認の連絡を入れてみて」
「わかりました」
リンディは言い知れぬ不安を感じていた。
エイミィの判断は正しい。
原因がはっきりしていないなら、調査を買って出ただろう。
しかし、まだ早い。
これは『ジュエルシード事件』とは、性質が全く異なる。
あの時は対抗勢力がフェイトとアルフだけで、次元を跨いだ事件ではなかったからこそ、調査を任せたのだ。
遭遇戦時のバックアップ体制も整っていた。
今回は違う。
負傷者が出たのは、砂嵐に伴う磁気嵐に調査員が巻き込まれ、通信が途絶えた後だった。
同時に広範囲の人工的と思われる
犯人は原住の魔法生物ではない。
そして魔法生物に被害が出ているらしい痕跡がある。
となれば、密猟者の可能性もあった。
密猟者は性質が悪い者になると、管理局員であろうと、目撃者を殺してでも逃走しようとする。
砂嵐のせいで撃墜した管理局員が死んだかどうか確認できなかったのか、今回は止めを刺していかなかったが。
だからといって甘く見ることはできないし、放置もできない。
最初から相手を殺す気が無かったフェイトのような、優しい敵ではないのだ。
高い魔力を持つなのはでも、同等の実力を持つフェイトと組んでいても、万一は起こり得る。
「地球に仮拠点を作る計画、急いだ方が良いわね」
リンディは呟いた。
第16話でした。
守護騎士がついに動き出します。
ただし、地球ではなく原作アニメで砂漠だった辺りの世界です。
そのため、管理局側もまだその動きが何を意味するのかについては気付いていません。
子猫ってなんであんなに可愛いんでしょうね。
それでは。