【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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まさかのアノ人登場。
ご都合主義って言わないで!


019 交渉

2週間ほど前。

『時の庭園』。

 

「手間取らせやがって」

 

ヴィータは破壊された傀儡(くぐつ)兵の残骸を後に、最後の門を開いた。

この先に強大な魔力反応がある。

それも、状況から考えれば人間のものだ。

『蒐集』できたなら、かなりのページを稼げる。

 

ザフィーラが他の傀儡兵を引きつけてくれている今がチャンス。

ヴィータにその門をくぐることを躊躇う理由は何も無かった。

 

「あなたは誰?」

 

出会ったのは、1人の黒髪の女性。

 

「こんなとこに御大層な移動研究所って……!」

 

轟音と共に雷が、咄嗟に張った防御魔法を打ち据える。

 

「私が聞いているの。あなたは誰?」

「ヴィータ。これ以上は名乗れねえ」

 

内心、『おっかねえ』などと思いながら、名前だけを名乗る。

所在を名乗るわけには行かない。

 

「名乗れないということは、管理局の者ではないのね?」

「ああ、確かに管理局は関係ねえよ」

 

ヴィータの心は、緊張で一杯だった。

 

「では、次元犯罪者?」

「そうなっちまうのか。なりたくてなったわけじゃねえけどよ」

「そう」

 

強大な魔力の源は、この女性で間違いない。

そして。

軽く倒せると思った自分を張り倒したくなるほど、強い。

 

「なら、さっさと立ち去りなさい。今、あなたを相手にしている暇は……ケホッ」

「え!?」

 

女性が咳き込んだ。

かなり激しい。

ヴィータは突然のことに、動く機会を逸した。

 

何か、病気を患っている。

 

「私にはやらなければならないことがあるの。あの子達のためにも、今ここで死ぬわけにはいかないのよ……!」

「わ、わかった、出てくから!撃つな、撃つなって!」

 

結局、無数の誘導弾に追われながら、ヴィータは『蒐集』できずに逃げ帰ってきたのである。

 

 

 

「ヴィータ……それがあの時の真相か」

「だってさあ!なんか、ぶちのめして『蒐集』なんかしたら死にそうだったんだから!しょうがねえだろ?」

 

睨むザフィーラに、ヴィータは言い訳交じりに話した。

 

「しかし、病身を押してまで続ける研究か……」

 

シグナムは唸る。

よほどの覚悟を持って進めているのだろう。

ただの犯罪者とは、到底思えない。

 

「研究してる内容を聞いて、もしはやてを治せるんなら、ダメモトで頼んでいいんじゃねえか?」

「ちゃんと話を聞いてくれるかしら?」

「とにかく、やってみるしかない。我々だけではどうにもならないのは事実だ」

 

 

 

 

 

 

 

海鳴臨界公園。

 

「身体の方は大丈夫?」

「あ、はいさ」

 

ピュアが再び合図をして、やってきたのは金髪の女性、シャマルだった。

『時の庭園』には他の3人で赴き、シャマルが留守番をすることになったのである。

彼女らの主はやての容態が急変した時、対応できるのは彼女しかいない。

 

「まずは、私の話を聞いていただけないだろうか。『闇の書』の守護騎士、ヴォルケンリッターよ」

「……はい」

 

一緒にいたグレアムにシャマルも警戒心を抱かないではなかったが、ここまでされては話を聞かないわけにはいかない。

 

現在、グレアムは死装束の上に、黒い布の目隠し、両腕をロープで後ろに縛り、両足首にも枷をつけていた。

地面に膝を付き、俯いたまま。

 

古来日本では、重大な失態で死を覚悟した武士が、君主にそれを報告する際、死装束を身につけたという。

古来中国では、同様に死を覚悟して報告を行う際、罪人の装いとしてあらかじめ黒い目隠しにロープで縛られ、足枷をつけた状態で君主に(まみ)えたそうだ。

 

「私は、『闇の書』事件を永久に終わらせようと考え、そのために『闇の書』の次の主である八神はやてを発見してからも管理局に報告せず、殺すと言ってもいい計画を立てた」

 

グレアムは包み隠さずに話した。

 

『闇の書』の主と確定したはやての地球での保護責任者となり、影から金銭的な支援を行なった。

これは、せっかく見つけた『闇の書』主を、この時点を殺しても、結局転生させてしまい、同じことの繰り返しになることを知っていたためだ。

 

その間に凍結封印可能な専用のデバイスを開発させ、間もなく完成というところで、『闇の書』の守護騎士システムが起動。

もうデバイスの完成まで秒読みとなったところで、『アースラ』に『蒐集』の動きについて匿名で情報を漏らした。

これは管理局員を『蒐集』させるためだ。

手紙でのやり取りから、八神はやてが他人の犠牲を嫌うことは知っていた。

 

『闇の書』を完成させると、必ず主を取り込んで暴走する。

しかし、暴走までの間、数分だけ凍結封印可能な隙があることも、グレアムの独自の研究で判明していた。

そこを、あらかじめ作らせておいたデバイスで、主ごと凍結封印する。

後は、その封印が永遠に解かれないように、監視システムを組むだけ。

それはグレアムの逮捕後、管理局上層部が勝手に行なうだろう。

 

守護騎士が敗北しそうな時は介入し、管理局に捕まらないようにすることも考えていた。

守護騎士からはやてのことが発覚した場合、はやてが罪人として捕まり、悪くすれば10年前の『闇の書』事件の二の舞となる。

10年前、次元航行艦『エスティア』の制御を乗っ取った『闇の書』を、逃げ損なった部下、クロノの父親ごと次元破砕砲『アルカンシェル』で葬り去ったのは、他ならぬグレアムなのである。

 

「じゃあ、この子の行動は予想していたの?」

「予想はしていた。だが、止められなかった。止めるつもりではあったが……止められなかった」

「つまり、今『書』に異常が出ているのは、完全に予想外だったのね?」

「そうだ。この子への『蒐集』も、適当なところで切り上げるだろうと思っていた」

 

シャマルは考え込む。

おそらく、嘘は言っていない。

 

名乗った名前も、確かに仕送り金の送り主のものと一致する。

 

「だが、逆にこの異常事態はチャンスかもしれない」

「チャンス、ですって?」

「そうだとも。私は腐っても法を司る人間の端くれだ。できることなら、はやてを助けたい。

僅かでも希望があるのなら、それに縋りたい。

『闇の書』をはやてから完全に切り離す希望があるのなら、それに賭けたい」

 

グレアムは土下座をするように頭を下げ、地面にすっかり白くなった頭を擦り付けた。

 

「そのために、『闇の書』の現在の状態を知りたい。時間が無いことは解っているつもりだ」

「……」

 

シャマルは一瞬、躊躇った。

彼女ら守護騎士と、時空管理局との因縁は深い。

これが罠ではないかと、一瞬思ってしまった。

だが、現状を教える程度なら、構わないかと判断する。

 

「『闇の書』は……ごめんなさい。私達にもわからないの。

アクセスしようとしても何も反応しないし、『蒐集』もできなくなっていて……」

「はやてちゃん、の、症状はわかるさ?」

 

それまで黙っていたピュアが口を開いた。

 

「ええ。多分、『リンカーコア』を『闇の書』に取り込まれた上で、魔力を搾り取られているんだと思います。

それで、足先から徐々に麻痺が上がってきていて……近い内に命に関わる恐れがあると……」

「それなら、先延ばしにするだけなら、何とかできると思うさ」

 

 

 

 

 

 

 

「間抜けな話よねえ。トラブルがあったときの連絡法を決めていなかったなんて……」

 

黒髪の女性、プレシアは自嘲気味に呟いた。

『時の庭園』へ守護騎士達が侵入した際、場所を移動させようとして、はたと気付いたのだ。

動かしてしまえば、守護騎士達が追尾不可能になるのはいい。

だが、肝心のピュアやフェイトにまで居場所がわからなくなってしまう。

 

そうやって悩んでいる内に、再度守護騎士達の侵入を許したのである。

ただ、今度はシグナム達に戦闘を行なうつもりが無かったため、話を聞いてから、どうしようか悩んでいた。

 

この半年でアリシアへの施術は成功し、移植した心臓も問題なく機能している。

後は、生体再生剤を投与しつつ、拒否反応を見ながら、循環系の状態を維持しているだけでよかった。

しかし、以前の侵入者(ヴィータ)の件で少し無理をしたこともあって、持病が悪化しつつあったのだ。

プレシアの予想より、『リンカーコア変質症』による諸症状の発症が早かったのが原因である。

 

そこへ、グレアムの提案を携え、子猫を連れたピュアが1人で様子を見に来た。

一度、デバイスに動画撮影したデータを見てもらうという、シャマルとピュアの判断であった。

ちなみにシャマルは入院している八神はやてにつきっきりで、この『時の庭園』には来ていない。

 

ピュアの医療補助用デバイスの動画データを見ている間、今ピュアは回復結界でプレシアを治療している。

 

「麻痺の進行を遅らせることは難しいけれど、人工臓器で内臓機能を維持することは可能よ」

 

『ただし』とプレシアは付け加える。

大掛かりな手術が必要となり、どう考えても9歳児の体力ではギリギリか持たないのだ。

それに、麻痺が心臓まで到達してしまった場合。

本来『リンカーコア』があるのもその位置なので、『闇の書』の転生が発動するかもしれない。

そして、そこまで侵蝕が進むと、今度は人工臓器を外すことができなくなる。

少女の体力が、手術に耐えられなくなってしまうのだ。

たとえ『闇の書』の問題が解決したとしても、体力の回復にはかなりの時間がかかってしまうだろう。

 

ただこれは、ピュアの回復結界と併用することで、数年以上まで引き伸ばすことができる。

ピュアが使うシェオール式回復結界は、『リンカーコア』の代わりをしている宝石の力を借りていることもあり、それだけ強力なのだ。

 

「問題は『闇の書』をどうにかする方法ね」

「やはり、そうなるか……」

 

シグナムは唸った。

 

守護騎士達でもアクセスできなくなった『闇の書』だ。

簡単に解決できるとは思えない。

 

「私は、アリシアが目覚めてからになると思うけれど、管理局に投降するつもりなの」

「そうでしたか」

 

これはプレシアのけじめだ。

いずれ、フェイトとアリシアに、気兼ねなく顔向けできるようになるために、罪を償っておきたいのだ。

 

「だから、一応はその時のことを決めておきましょう」

「はい」

 

 

 

 




第19話でした。
グレアム氏が頑張ります。

死装束で覚悟を示すっていうのは、世界中どこにでもあったと思います。
ま、漫画とかで結構あるから、あるんだろうって思ってるだけですけどね。

10年前のクライドごと『闇の書』を吹き飛ばした事件、どういう状況だったのか、調べてもわかりませんでした。
なので、逃げ損なったと書いています。
アニメの絵を見るに、そもそも逃げる暇があったのかどうか疑問ですけどね。

プレシアさん再登場です。
『リンカーコア変異症』そのものは治っていませんから、時間を置けば病気で体力が削られていきます。
地球の近くに停泊しているなら、守護騎士の次元転送で偶然発見されてもおかしくないとは思っています。
ああっ、石を投げないで!?
そうなんですよね、そんな偶然で発見できるのなら、半年かけてアースラが発見できなかったのはどうなのかと。
まあ、アリシア復活までは話の都合上、管理局には発見してほしくないんですよね。
まさにご都合主義でした。

それでは。
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