【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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もう一度言っておきますが、ピュアは最強系の主人公です。


022 希望へ

管理局臨時指令所。

 

『アースラ』艦長リンディが強引に押し通した仮設の指令室である。

『闇の書』事件を担当することになった『アースラ』チームの拠点であり、フェイトとピュアの仮住まいとしても利用される予定だ。

さらに、『闇の書』に『蒐集』される可能性のある魔導師、高町なのはへの対応もかねているため、近所のマンションである。

もちろん、本局と地球を繋ぐ次元転送装置も設置されていた。

 

「すごい、ホントに近いの。ほら、あそこが私んち」

 

友人達が近くに住むことになったなのはのはしゃぎっぷりと言ったらなかった。

地球での親友2人も招き、翠屋に遊びに行くことになったほどだ。

 

 

 

高町家が経営する駅前の喫茶店『翠屋』。

 

気の強そうな金髪の少女がアリサ・バニングス。

大人しそうな紫髪の少女が月村すずか。

 

「ここまで真っ白な子って私、はじめて見た」

「先天性色素欠乏症だっけ。元々そんなにある病気じゃないもんねえ」

 

アリサが薀蓄を語る。

 

色素欠乏症には色々とあり、遺伝子の異状によって起こるのが一般的である。

ただ、ピュアのように全身から髪まで真っ白という例は非常に少なく、大抵は体の一部が白かったり、完全な白ではなく薄く黄色に色付いていたりするものなのだそうだ。

 

白く濁った瞳に関しては、色素欠乏症とは基本的に無関係で、目の病気だろう。

と、アリサは話した。

 

「それにしても、そんな目でよく見えるわね?」

「え、ええっと……」

 

ピュアは必死に何か言い訳を考えた。

まさか魔法による擬似視力で見ているとは言えない。

 

「全然見えてないわけじゃないさ。だから、このメガネで補ってるさ」

「あ、本当、よく見たらすっごい瓶底メガネじゃない」

 

本当は全盲で、擬似視力魔法が無ければ何も見えないのだが、どうやら上手く誤魔化せたようだ。

 

ちなみに、本当に先天性の色素欠乏症だったとしても視力障害は起こりうるようだ。(wikiより)

目が光に弱くなるという程度のものだそうだが。

 

「この子は色が薄めのレッドマッカレルタビーね」

 

と、すずかも負けじと子猫フォームのクリアをあやしながら猫好きな知識を披露した。

家が猫屋敷なだけあって、色々と猫には詳しいのだ。

 

「にゃあ」

「なにはともあれ猫ね」

「うふふ」

 

ちなみにアルフは地球用に子犬フォーム。

ユーノはフェレットモードである。

2人とも、特にユーノは久し振りにアリサやすずかと会うため、色々と遊ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳が下りる頃。

 

「それでは、これより地球上の一斉走査を行ないます」

 

リンディは宣言する。

 

「目的は第1級捜索指定古代遺失物(ロストロギア)『闇の書』の捜索です」

「今まで集めてきた情報から推測するに、『闇の書』の主はこの地球上にいる可能性が高い」

「『闇の書』の守護騎士はかなり手強い相手です。

各々、発見しても攻撃は仕掛けず、まずは『アースラ』に報告してください」

「「「はっ」」」

 

声の揃う武装隊員にリンディは頷く。

 

「それでは各員、散開!」

 

武装隊員は予定されていた各自の持ち場に一斉に転送されていった。

 

「じゃあ、僕も行ってきます」

「気をつけてね」

「はい」

 

 

 

一斉走査が始まった1時間後。

海鳴臨海公園で、ピュアを立会人にグレアムと守護騎士達が接触する。

 

「いつもいつもすまないね」

「わたしも、助かる人は助けたいさ」

 

ピュアが守護騎士達を呼ぶ際、シェオールとベルカの『符丁』が利用されてきた。

一定の間隔で周囲の魔力素の濃淡を変化させるこの発信方法は、現在の管理局では再現不可能である。

 

しばらくすると、いつも通りシグナムとシャマルがやってきた。

今日は彼女らが選定した無人世界で儀式を行うため、他のメンバーは来ていない。

 

今回の接触は、グレアムが用意した『ロストロギア』と『闇の書』の管制人格を受け入れるためのデバイスの受け渡しのためである。

 

「この鏡、『ロストロギア』は人格と記憶を入れ替えるものだ。デバイスのAIでも効果は確認されている」

「こちらは?」

「管制人格を受け入れるための器だ。

元は単純記憶型(ストレージ)デバイスだが、急遽人格型(インテリジェント)デバイスも組み込んだ。

データは白紙の状態にしてある。

無理矢理組んだものでね、いずれ調整しなければならないだろうが、今はそれだけの時間がないだろう」

「感謝します」

 

シグナムは鏡と杖を受け取った。

 

「感謝するのはこちらだよ。君達が私を信用してくれなければ、ここまではできなかった」

「あなたの示した覚悟に応えたまでです」

「傍にピュアちゃんがいると言っても、あそこまでできる人はそうそういませんから」

「彼女が?それは一体……?」

 

疑問符を浮かべるグレアム。

今も柔らかな微笑みの真っ白い少女は、ベルカ騎士に対抗できるほどの戦闘力は持ち合わせていなかったはずだ。

少なくとも、今までの報告ではその片鱗を見せたことはない。

 

しかし、シグナム達の返答は第3者の介入によって有耶無耶になる。

いや。

その先はピュアがその力の片鱗を見せる事件となった。

 

 

 

周囲が一瞬にして色彩を失っていく。

 

「結界!?」

「武装結界だと!?」

 

シャマルとグレアムが驚きの声を上げた。

 

「お前達は既に包囲されている」

 

そう宣言したのはクロノ。

 

「ピュアちゃん、どうして……」

「なのは、落ち着いて」

 

既に、なのは、フェイト、人間形態のユーノとアルフも、戦闘態勢で周囲を囲んでいる。

なのはは動揺していたが、なんとなく理由がわかるフェイトはそれなりに落ち着いていた。

 

「グレアム提督。

『ロストロギア』を管理局の保管庫から盗み出したのは、あなたですね?」

「予想よりかなり早いな」

「システムダウンの直前、僕はあなたのアクセス記録を見ていました」

「そうか……」

 

グレアムは納得した。

 

時間稼ぎのために、保管されている『ロストロギア』の記録を調べていたログを消したのだ。

どうやら、それが逆効果になったらしい。

本来はどうでもいいような記録だが、それが消されていれば、疑いを抱くには充分な材料となる。

 

「私が今自首するのは構わない。どうせ後で自首するつもりだったからね」

「提督……」

「だが、彼女らのことは後1日、見逃してやってはもらえないかね?」

「それは……できません」

「そうだろうな。管理局員としては正解だ」

「提督……!」

「だが、私は今、9年間続けてきたあの子の保護者として、ここにいる」

「っ――!」

 

クロノの表情が険しくなった。

グレアムの言うことが理解できたのだ。

そして、クロノの方でも調べがついていた。

 

八神はやて。

現在起きている『闇の書』事件の中心人物、すなわち『闇の書』の主である。

グレアムは決して直接会うことなく、彼女が両親を亡くした9年前から援助を続けていた。

彼は9年前、既に『闇の書』を見つけていたのだ。

 

そこからどんな計画を練っていたのかは解っていないが、幼子をずっと1人にしておくことが正常だと思うような神経はしていないとは、付き合いの長いクロノは断言できる。

だからこそ、苦悩したのだろう。

『闇の書』は完成後、例外なく主を食い殺し、暴走する。

それは本局の無限書庫での調査でわかっていた。

 

『闇の書』の主となった幼い少女を救出するために、八方手を尽して調べ上げたに違いない。

そして、見つけてしまったのだ。

微かな希望を。

 

デバイスの無茶な改造、『ロストロギア』の窃盗を考えれば、それはつい最近に違いない。

 

「“変位相結界展開(ドウシテコウナッタ)”」

 

そこへ突然割り込んできたピュアの言葉。

 

「どうしてって言われても……」

「なのは……」

 

思わず返事したなのはに、ユーノは脱力した。

 

一瞬の出来事だった。

色彩を失った風景に、塗り絵のようにピュアを中心に半径5mほどだけ色彩が戻り、また無色の風景が戻る。

だが、戻らないものがあった。

シャマルと、シグナムである。

 

「転移か!?エイミィ!追えるか!エイミィ!?」

 

クロノは通信が繋がらない事実に気付き、焦る。

 

「一体、何をしたんだ、ピュア?」

「結界の効果を上書きしたさ」

「上書き?」

「シェオール式の戦術は、支配権の奪い合いさ。

ミッド式にはそれがないさ」

 

グレアムは思い出した。

 

シェオールは旧ミッドチルダ共和国軍が使用した大量破壊兵器によって滅んだのである。

なぜそんなものを使用したのか、理由はわかっていないが。

もしかすると、司令官が自分の無能に業を煮やしたとかそんな理由ではなく、もっと切実に使用せざるを得なかった事情があったのかもしれない。

例えば、ミッド魔導師ではシェオール祈祷師に対抗できなかったとか。

 

今回は。

魔導師と非魔導師という条件によって、現実から位相をずらした結界を展開するミッド式。

それを、シェオール式で上書きし、シグナムとシャマルだけを選択的に現実空間へ弾き出したのだ。

そうなってしまえば、ミッド式魔導師では、結界を解除しない限りは何も手出しできなくなる。

 

しかも恐ろしいのは、そんな魔法を準備していた形跡が全く感じられなかったことだ。

いくら低速とはいえ魔法陣もなく詠唱もないでは発動に気付くことができない。

もし攻撃魔法でこれができるとしたら。

考えたくもない。

話しているうちに突然魔力弾などが飛んできて、撃墜されるかもしれないなどと。

 

「だからといって、今更君を恐れることはしないよ」

 

グレアムは(かぶり)を振って呟く。

ピュアの行動理念は知っている。

だから、信用できるし信頼できた。

敵に向いた刃物を恐れるような臆病さは持っていないつもりだ。

 

「ありがとうさ」

 

ピュアはグレアムにも聞こえるか聞こえないか、震える小さな声で呟く。

そして大きく息を吸い込んで、黒衣の少年に呼びかける。

 

「クロノさん」

「君がこれを……?」

「この結界はミッド式のバリアブレイクで破れるさ」

「何?」

「わたしとグレアムさんは先に行ってるさ」

「なっ、ちょっと待っ……!?」

 

慌てるなのはを無視して。

すぅ、とグレアムとピュアの姿が消えた。

 

 

 

「来たな」

「お父様!」

 

世界に色彩が戻ると、シグナムと、グレアムの使い魔、リーゼロッテとリーゼアリアが待っていた。

万一の際のサポートとして、グレアムは2人を待機させていたのである。

介入するタイミングを計っている間にピュアが結界を上書きし、入れなくなってしまったのだが。

 

「ピュアについてはまた後日、話を聞こう。今は儀式を急ぎたい」

「ああ。助かる」

 

シグナムは魔法陣を展開し、転移魔法を使用した。

彼女の主はやてと、仲間達の待つ無人世界へ。

 

 

 

 




第22話でした。
詰めが甘かったってところでしょうか。
まさかその日の内にすぐ調べるとは思ってもみなかったグレアム氏です。

『どうしてこうなった』
安心と信頼のシリアスブレイクです。
状況に即したネタを選んでみました。

最強系主人公としてピュアが抱える本当のチートは、2つのロストロギアや『情動感応』ではなく、シェオール魔法そのものです。
能力ではなく、長い転生生活で鍛え上げた技能です。
デバイス無しの無詠唱魔法ですが、実はこれ、クロノとグレアムの会話中に準備しています。
2分くらいでしょうか。
それでも無詠唱なんです(笑)

それでは。
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