【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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最終決戦へ向け、一気に動き出します。


023 共同作戦

ピュアとグレアムが忽然と消えた後。

 

「ど、どうしよう、クロノ君……」

「落ち着け」

 

クロノは念話で、巻き込まれた武装隊員の状況を確認しながら、言った。

 

「バリアブレイク、試してみるかい?」

「うん。お願いアルフ」

 

アルフの問いに、フェイトは頷く。

 

「今のって、追いかけて来いってことだよね?」

「他に解釈のし様がない」

 

ユーノはピュアが残した『この結界はバリアブレイクで破れる』という言葉について考えた。

クロノも、それは『結界を壊して追ってきてほしい』と伝えているようにしか受け取れなかったと頷く。

 

「結界の破壊に5分ほどかかるそうだ」

「私達も手伝うの」

「うん」

 

なのは、フェイトも結界破壊に加わり、ほどなく結界が破壊されて、通常空間へ戻ることができた。

 

「エイミィ、聞こえるか?」

『聞こえてるよ。追跡(トレース)はバッチリ』

「すぐにそちらへ行く」

『転送準備ね?』

「ああ、頼む」

 

クロノはなのは達に方針を伝える。

 

ピュアの転送魔法を追尾し、彼女らが向かった無人世界は特定できているそうだ。

だから、一度管理局の臨時指令所であるマンションへ向かい、そこにある転送ポッドから目的の無人世界へ移動。

 

おそらくそこには『闇の書』とその主、それに守護騎士達と、ピュアとグレアムがいる。

ピュアもグレアムも、何か目的があって守護騎士達に協力しているようだ。

 

そこで最終決戦になることは間違いない。

しかし。

『アースラ』に『次元破砕砲(アルカンシェル)』を搭載するための改修は終わっていなかった。

決戦にはまだ準備が整っていないが、ピュアが追いかけてくるように言ったのは、何か理由がありそうだ。

 

だから、まずは武装隊とクロノが現地へ向かい、状況を確認する。

そして、必要ならなのは達も転送する。

そういう作戦を伝えた。

 

 

 

時空管理局、臨時指令所。

 

「クロノ、さっきグレアム提督から念話で伝言があったわ」

 

一斉走査の指揮のために詰めていたリンディがクロノに言った。

 

「『闇の書』はもう機能停止状態になってるそうよ」

「そんな馬鹿な。じゃあ、どうして守護騎士が顕現し続けているんですか?」

「それはわからないわ。でも、何か『闇の書』の方にトラブルがあったのは確かみたいよ」

「……」

 

クロノは少し考える。

 

「でも、鵜呑みにするには……」

「ええ、作戦に変更はないわ。ただ、慎重に状況を確かめること。いいわね?」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

無人世界。

 

広漠とした砂漠が一面に広がる世界。

海はなく、空気も乾燥していて、封時結界を張っていなければ、魔導師といえど長時間の待機は辛いだろう。

大気の組成こそ地球に酷似しているのだが、気温は120℃とかなり高く、生物が誕生するには苛酷な環境である。

もちろん、生物は存在しない。

それでいて魔力素は充分あることから、かつては人類のような生命体が繁栄していたのだろうと推測されていた。

記録によれば500年以上前からこの状態だったそうだ。

 

拘束条件の緩い封時結界の中で、儀式は行なわれた。

 

「杖と書で鏡を挟み、カバーを外す。使用方法はそれだけだ」

「私がやろう」

 

人間形態のザフィーラが名乗り出た。

多少なりとも危険が伴う作業である。

防御力が高い彼の出番だ。

 

『闇の書』と、歪に改造された『デュランダル』の間に鏡を挟み、一気にカバーを外す。

一瞬、鏡が光った。

 

“もういい、戻せ”

 

そう言ったのは、シグナムではなく、グレアムでもなく、『デュランダル』。

その声に従い、ザフィーラは鏡にカバーをかけ直した。

 

「あ……リインフォース!」

 

少し離れて見ていた車椅子の少女が声を上げる。

 

“リインフォース?”

「私が考えてん。『闇の書』って、なんか嫌な響きやろ?」

“ありがとうございます。主はやて”

 

歪な杖ははやての手に収まった。

すると、杖が少し光って、淡い球体がはやての身体に吸い込まれる。

 

“辛うじて確保できた、主はやての『魔力資質(リンカーコア)』です”

「ありがとうな、リインフォース」

 

『デュランダル』、いや、今や『リインフォース』と呼ぶべき杖は、照れるように明滅した。

その感情の動きを感じ取ったピュアは微笑む。

 

“今の内に離れましょう。しばらくすれば暴走するはずです”

「どういうことかね?」

“『闇の書』が暴走する理由は、防衛プログラムの改変にある。

本来は管制人格である私がその辺のバグを直す役割を負っていたのだが、何代目かの主が防衛プログラムの権限を私の上位に設定してしまった”

 

防衛プログラムはあらかじめ設定されていた本能に従って自己進化を行い、『闇の書』を維持するために機能を特化させていった。

その結果、本来は守るべき主を、維持のための『部品』として利用するようになってしまったのだ。

主を電池として使い捨てにし、暴走するのは、大規模に『蒐集』を行なうためである。

 

放って置けば全次元世界を侵蝕しつつ広がっていき、ありとあらゆる魔導師の力を吸収して、全次元世界を結果的に破滅に導く。

その間に主の意思が介在することはなく、精神的な苦痛を強いられることになるため、今までは完成した際、暴走までの僅かなタイムラグの間にリインフォースが主を、苦痛のない夢の世界に閉じ込めていたのだ。

 

「それを知っていれば『アルカンシェル』の準備が整うまで待ったものを」

“一番厄介な『無限再生』と『無限転生』の術式が破損していることは確認している。

『闇の書』が暴走装置になる以前の姿と戦うことになるが、それでも『アルカンシェル』が必要なほど強くはない”

 

グレアムはほっと安堵の溜息をついた。

少なくとも、リインフォースは今の戦力で倒せると考えている。

それが解っただけでも御の字だ。

 

 

 

シャマルの転送魔法で離れた位置に移動する。

 

「リインフォース、暴走体はピュアの魔法をどの程度使える?」

“擬似再現は可能かもしれないが、恐ろしく低速になる。

実際は他の魔法が多少鋭くなる程度と考えていい。

『闇の書』は性質上、完全無詠唱魔法は再現できないからな”

 

シグナムの質問に答える形でリインフォースは説明した。

つまりピュアが使うような、恐ろしく隠密性に優れた魔法を使ってくることはないらしい。

 

グレアムも、シグナム達が何を懸念していたのか、おぼろげながらにわかってきた。

例えばピュアが無詠唱で使った結界。

あれを使いこなしてくるとなると、戦力を簡単に分断されるということになり、個々で暴走体と戦わなければならなくなる。

 

戦いとは数だ。

大人数で向かえば、強敵を倒すこともできるかもしれない。

それが通用しなくなるとすれば、あるいは管理局始まって以来の強敵となる可能性があった。

 

幸い、今回はそうはならないようだが。

 

「見つけた!グレアム提督!」

 

そのとき、転移装置で転移してきた黒衣の少年クロノが武装隊を率いてやってきた。

 

「クロノか!」

「管理局か」

「何が起こっているんですか?」

 

周囲を油断なく囲ませながら、クロノはグレアムに聞く。

 

「伝言は聞いたようだな」

「はい」

 

黒衣の少年は頷いた。

 

「現在、『闇の書』の機能は、膨大な魔力を『蒐集』したことで、大部分が破損している。

さきほど彼女らに確認したが、『無限再生』と『無限転生』の術式が発動しなくなっているようだ」

“内部で抑えていた私が外に出た以上、『アルカンシェル』搭載艦の到着を待っている時間はない”

「つまり、今が『闇の書』を永遠に破壊する、唯一無二のチャンスというわけですね?」

「そういうことだ」

 

クロノの前にモニタが現れた。

深緑色の長い髪をした女性が映っている。

グレアムと同じ、本局上官の制服だ。

次元航行艦『アースラ』艦長リンディ・ハラウオンである。

今は地球にある臨時指令所からの映像だ。

 

『随分と無茶をしてくれたものですね』

「監獄送りも覚悟の上だよ。リンディ提督」

『信じていいのですね?』

「クライドに誓おう」

 

リンディは数秒、黙祷を捧げるように目を閉じた。

 

クライドとは、リンディの今は亡き夫の名である。

クロノの父であり、グレアムがその手で殺した部下でもある。

11年前の『闇の書』事件の際、暴走に巻き込まれた彼を、グレアムは『闇の書』ごと『アルカンシェル』で葬り去ったのだ。

そして。

『アースラ』は、当時のグレアムが搭乗していた艦である。

 

そんな『アースラ』のチームが今回、『闇の書』事件を担当することになったのは、何の因果だろうか。

そんな想いを馳せ、リンディは目を開いた。

 

『……増援を転送します』

「ありがとう」

 

 

 

『各位へ、作戦を伝える』

 

管理局の現場指揮官として、クロノが念話で音頭を取る。

 

『武装隊は武装結界を展開。

設定は内から外への移動を封鎖。

武装隊以外の全員でピュアの準備が整うまで、敵を引き付ける』

 

これはリインフォースの提案を踏まえた作戦であった。

シェオール魔法にある召喚爆撃という大魔法で隕石を召喚し、『闇の書』に直撃させるのである。

 

一応質量攻撃に当たるが、そもそも相手は次元破砕砲(アルカンシェル)で吹き飛ばすのが定石だった程の敵である。

次元破砕砲(アルカンシェル)が使用されれば、周囲100kmは完全に消失してしまい、巻き込まれれば生存は不可能なのだ。

核兵器よりも凶悪な兵器の使用が許可されるような相手に、質量兵器の使用が許可されないわけがなかった。

 

ちなみになぜ召喚爆撃が選ばれたのかというと、現時点で確実に行使できる中で、破壊力が最も高い魔法だからだ。

八神はやてがリインフォースのサポートを受けて使う魔法は、過去に『蒐集』されたものを再現するため、それなりに強力だが、人格と記憶の強制移転に伴っていくらかは劣化しており、シェオール式の大魔法には勝てないのである。

 

『隕石の召喚後はそれぞれ、転移魔法で脱出すること。

エイミィ、召喚する隕石の選定は任せた』

『オッケー』

『僕達は手前と左翼側、守護騎士が右翼と奥側の配置、武装結界が破壊されないように注意を引き付ける。

ロッテとアリア、それにグレアム提督と八神はやてはピュアのサポート。

以上だ』

 

念話で返事を確認した時、『闇の書』の形をしていた暴走体がある形をとり始める。

それは1人の少女の姿だった。

 

黒く短い髪の毛、黒い瞳の血走った目。

肌はフェイトと同じ、白人の白。

服は黒い騎士甲冑姿だった。

顔や手には赤い紋様が奔っている。

 

「ピュア……!」

 

誰かが呟く。

 

輪郭は確かに、今は結界の外で長い呪文を詠唱している、真っ白い少女のそれだった。

 

 

 

 




第23話でした。
アルカンシェル搭載が終わっていなかったのは、『闇の書』の情報取得からの『アースラ』改修開始が、原作よりもかなり遅かったためです。

『闇の書』の暴走原因については、捏造するしかありません。
どこを探しても、詳細な情報はありませんでした。
この『闇の書』の暴走原因は、他のリリなの小説の作者も結構設定を捏造しているようです。
作者の腕の見せ所ですね。
そう考えて読んでいると、結構面白いですよ。

召喚爆撃って、なんで誰も考えないんだろうってくらい、凶悪な攻撃方法です。
時限爆弾を起動して上空に転送するだけで、テロを防ぐ方法がありません。
ミッド式にも転送魔法はあるので、この方法は可能なはずなのですが。
どうしてなんでしょうね。

それでは。
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