【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
グレアムは懲戒免職処分となった。
『闇の書』の主を氷結封印する計画自体は未遂に終わったが。
第1級捜索指定
危険度第1級の
そして、危険度第2級の
本局のシステムダウンを起こした責任を免れることはできなかった。
現在は懲戒免職という行政処分の後の、刑事裁判の最中である。
次に、『闇の書』の管制人格リインフォース及び守護騎士達について。
彼女らの主である八神はやての厳命から、今回は死者、死んだ生物、共にゼロという、『闇の書』事件としては奇跡的な事例となった。
2人ほど調査隊の負傷者が出た件について、実は守護騎士と交戦した結果ではないそうだ。
巨大生物の巣に入ったことに気付かなかった2人が、原住生物の襲撃を受けたのである。
それを発見したシグナムが原住生物を追い払い、シャマルを呼んで応急手当をした後、命に別状が出ない程度の『蒐集』を行い、安全な場所に退避させたのだ。
調査員のデバイスに記録されていた映像にも、それを裏付けるものがあった。
当初、その映像が何なのか、全くわからなかったそうだ。
そもそも八神はやては『他人に迷惑がかかる』という理由で『蒐集』を禁じていたらしく。
守護騎士達は、『闇の書』による侵蝕が主の命を蝕んでいると気付いたため、秘密裏に『蒐集』を行なっていたらしい。
魔導師から『蒐集』したのは、上記の調査員の件と事情を話して了承したピュアの2件、3名のみ。
今回の件に関してだけ言えば、罪状は野生の魔法生物への無許可な襲撃、搾取となる。
それも守護騎士だけの話で、主である八神はやてには法律上罪が発生しない。
守護騎士達にしても、半年ほどの懲罰任務で済んだ。
唯一、リインフォースだけは、以前の『闇の書』事件に関する裁判が行なわれた。
主が八神はやてになる以前、明確な意思が与えられていたのはリインフォースだけなのだ。
詳しくは語らないが、司法取引が行なわれた。
数百年に及ぶリインフォースの膨大な知識を抽出し利用する代わりに、大幅な減刑となる。
これに関しては、元々グレアムが『デュランダル』に無理な改造を施した際、リインフォースの知識を受ける事ができるように、メモリを増設していたのが功を奏したようだ。
最後に、ピュアについて。
『ウィジャボード』の使用についてはグレアムが庇った。
そのため、今回は保護指定人種でありながら勝手に『蒐集』を了承したことについての厳重注意のみとなる。
これに関して、本当は色々と議論があったようだが、彼女が『蒐集』されたことが今回の『闇の書』事件完全解決に繋がった事実は否定できず、他の様々な濡れ衣も含めた罪科と相殺した結果、厳重注意のみとなったようだ。
ちなみに、ピュアは希望通りグレアムの養女となることが内定したため、裁判が終わるまで、地球でグレアムが保護責任者を務める八神はやての家に引き取られることとなった。
ピュアの異常な精神状態について、ある程度理解のあるシグナム達でなければ、安心して預けるわけにはいかないという、グレアムの提案である。
本局の拘置所に大人しく入っていたグレアムと2匹の猫、リーゼロッテとリーゼアリアに、1人の老女が面会を求めてきた。
「『伝説の三提督』ともあろう方がこのようなところに来られますと、あらぬ噂を立てられますぞ」
「私は旧い友人と話をしにきたの。これくらいは許していただきたいわ」
ミゼット・クローベルは決まり口上とでも言うべきやり取りの後、本題を切り出す。
「ピュアという少女のこと。報告書は読んだわ」
「そうですか」
グレアムは本局統幕議長のミゼットに対し、ピュア監視の最終報告を行なっていた。
もちろん、極秘回線で行なわれており、クロノもリンディもこのことは知らない。
最終報告、というのは、グレアムがしばらく拘留されることが決まったため、監視を継続できなくなったのである。
「情報源が1つしかないということなら確認のし様がないのだけど、『山師』の話は興味深いわね」
「まさか、あの兵器よりも『山師』1人の方が脅威だったとは、私も予想しませんでした」
リインフォースの話では、シェオール祈祷師には3つの階級があるそうだ。
1つはミッドで言う『魔導師』と同じく、全体の総称でもある『祈祷師』。
最下級だが、修行によって充分昇格できるそうだ。
つまり、シェオールでは誰しもがここから始まるのである。
そして、この階級のまま生涯を終える者も多い。
ピュアは昇格認定を受けたことがないという理由で、この『祈祷師』を名乗っていた。
2つ目は『道士』、充分な戦闘力がある者であり、ベルカ騎士と同等以上の実力があるとされる。
だが、数は少なかったそうだ。
それも当然で、年に一度ベルカ騎士との試合を経て認定が行なわれるのだが、ピュアのように攻撃魔法を扱えない者も多くいたし、ベルカ騎士は1対1で無類の強さを誇るのだ。
そんな相手に、隠密性に優れたとはいえ高速戦闘が苦手なシェオール祈祷師が勝つ確率は、かなり低かった。
それでも問題はなかったらしい。
シェオール魔法はサポートが得意だったとか、色々な理由があるが、一番の理由は次に説明する『山師』の存在であった。
3つ目、『山師』。
意味は『山を知る者』。
この場合の『山』とは、シェオール全土を意味する。
つまり、ピュアが使う広域探査魔法で、惑星全土を探査できるほどの実力の持ち主ということだ。
これは認定条件でもあり、この探査範囲の広さは、シェオール魔法に必要な魔力素の操作範囲が桁違いであるということも意味する。
例えば。
シェオール魔法の奥義『神の光』は、その範囲の広さを利用し、遥か上空に魔法陣を展開。
たとえ夜であっても絶大な威力の集束熱線で敵を狙撃することができる。
他にも、敵の周囲の魔力素を枯渇させ、敵の魔法を一切無力化してしまう、AMFのようなことも可能。
つまり、ミッド式のSSSランク魔導師に、『山師』は1対1で勝てるのである。
ピュアは、『山師』に匹敵する実力を備えていた。
魔法を使わないときの感知範囲が、『山師』それに匹敵したのだ。
最初にシグナムと接触したときのことである。
そのとき、ピュアは素の感知範囲の外縁に、守護騎士達の緊張した魔力に影響された魔力素を捉えていた。
『アースラ』に『ピリピリ』という曖昧な表現で報告したという話がそれである。
念話で呼び出されたシグナムは、最初てっきり広域探査魔法を使ったものだと考えていたそうだ。
(※『符丁』のことは極秘のため、シェオール魔法特有の特殊な念話という事にしてある)
つまり最初、シグナムがピュアと接触した時、シグナムがピュアを殺そうとしていたなら、逆にシグナムが殺されていた可能性も、実力を考えれば充分ありえたのだ。
2度目に接触していたシャマルはそれに気付いていたので、グレアムが罪人の服装で懺悔をしていたときも、迂闊に仕掛けるわけにはいかなかったのである。
ただ。
それよりも問題になったのが、リーゼアリアが撮影した動画と音声である。
『闇の書』の主の心の声を
研究が進んだミッドチルダでさえも、精神の病気に関しては地球以上に飛び抜けているということはない。
今でこそ社会的にそれなりに落ち着いてはいるが、常識では計ることのできないのが精神疾患である。
また社会問題として取り沙汰される可能性も、決して低くはない。
そして、これに関しては問題が起こってから処置を行なう、対処療法を行なうしかないのが現状なのだ。
ピュアの症例は、多くの症例を扱ってきた本局勤務のベテラン精神科医でも、未知の領域であった。
彼女は優先順位の一番下に自分を置いているのである。
何の見返りも求めず、嬉々として、四肢や内臓すら他人に捧げてしまう。
相手が家族だったなら、それほど生活に困らないような部位なら、まだわかるのだが。
しかもだ。
もしできるのなら、自分を殺してほしいとまで、笑顔で話している。
ピュアのカウンセリングを行なっていたリーゼアリアが自信を失くしたのも、理解できる話であった。
シェオール人という種の保存を考えるのなら、軟禁についても本気で考えた方がいい。
しかし今のところ、『山師』に匹敵する力を持つピュアを完全に封じておくことができる場所など、存在しない。
そう提案した上でのことだが。
グレアムはピュアを養女とすることを了承していた。
裁判中である今は手続きを行うことはできないが、刑期が終わった後、彼女の気持ちが変わっていなければ、彼女の養父になろうと、グレアムは考えている。
その話を聞いて、ミゼットは顔を綻ばせた。
「あなたは死ぬ時まで『
「いずれ隠居するつもりであった私に返せる恩は、これくらいですからな」
グレアムも破顔する。
「多分、あの子の扱いは、管理局内に終始するでしょう。
これはもうどうしようもないことだけれど」
「致し方ありません」
「あの身体は転生によるものだと聞いたわ。
なら、精神状態は別として、知識や経験という点で言えば、もう大人よね?」
老女は悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
「ええ。正しい年齢は本人にもわからなくなっているようですが」
「それなら、今からでも育てれば、私達の良い後継者になると思うの」
「なるほど。才能と言っていいのかわかりませんが、確かに素養は充分です。
しかし、あの子がそれを好とするかはまだ未知数ですな」
「もちろん、そのためには今の異常な精神状態を、なんとかして治す必要があるわね。
あの子のこれまでの転生生活を考えれば、今はずっといい状態だもの。
待つしか方法は思いつかないけれど、今は気長に待ちましょう。
あの子の永く深い傷が癒えるのを」
べちゃ。
「きゃん」
ピュアが転ぶ。
「あらあら」
見送っていたシャマルが駆け寄ってきて、簡単な回復魔法を使い、軽く擦り剥いた膝小僧を癒した。
「やっぱよー、なのは達と合流するまでついてった方がいいんじゃねえのか?」
「私の足が治ったら、一緒について行けるんやけどなぁ」
「うぅ~」
家主はやての強い勧めから、ピュアは小学校へ通うことになっていた。
体育の成績以外は大学生クラスのため、近所で一番の進学校、聖祥大学付属小学校への編入が決まっている。
制服が白いので、真っ白な容姿と合わせて体の起伏がわかり辛い。
実はフェイトも、同じく聖祥小学校に入学することが決まっていた。
こちらは単に距離が近いからのようだ。
フェイト本人は、なのはと一緒の学校に通うことができるのが嬉しいらしい。
ピュアは実は普段、クリアが転びそうになるときに移動して体のバランスを取ってくれるので、あまり転ばない。
ところが小学校に子猫クリアを連れて行くわけにはいかない。
しばらくそれに頼っていたせいもあり、壁に手をついて慎重に歩かなければすぐに転ぶようになっていた。
なのは達との合流地点である大通りに出るまで200m。
なんとかそこまで歩けるように、ズレた
第25話でした。
グレアム氏への刑罰について、どの程度の量刑が妥当か、大して考えていませんでした。
なので、後で物凄く適当なことをやっちゃっています。
守護騎士について、半年間の懲罰任務となっていますが、これには局員2名から無断で蒐集したことへの罰も含んでいます。
最終的に助けたわけですから、これに関する罪は軽く見積もっています。
リインフォースについては、代々の夜天の主の活動記録という、歴史的に大きな意味がある資料を持っていたための司法取引です。
特に聖王教会とかにとっては、聖王在位時の生き証人でもありますから、刑事罰による破壊ということだけは絶対避けたいんじゃないかと。
ただし、後で評議会からのいちゃもんという形で、追加の刑罰みたいなものはあります。
この辺、事情が絡まってて難解なのですが、悪さをしていた『闇の書』本体は完全破壊されたため、罰も甘くなっている可能性がありますね。
祈祷師、道士、山師について。
名称ですが、祈祷師はそのまま祈る人、シャーマン的な、変なものを感じ取る技能もしっくりくるかと思い、これに決めました。
道士は、最初最高位を仙人にしようとした名残です。
山師というのは、風水師の呼び方の1つです。
元々、シェオール魔法のコンセプトが、『ミッド式と全く異なる体系』ですから、西洋的な呼び方から離れようと考えたのが最初でした。
後は印象で決めています。
私が小説を書くわけですから、印象は重要です。
イメージが噛み合わないと、それは文章にも影響してきますからね。
最後の部分、サブタイトルの『第一歩』ですが、ピュアの運動神経はこのレベルです。
ドジッ子の域を超えて障害者クラスです。
特に神経に異常があるとか、そういうわけじゃないんですけどね。
これを直すのに、ミッドチルダ最新科学が頑張ります。
負けるな科学!
それでは、次話より空白期です。